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2021.01.23
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カテゴリ: アート
図書館で『村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール』というタイトルの文庫本を手にしたが・・・
小説を書いてみたい大使にとって、村上春樹風の文章がてっとり早く身につくなら・・・おいしいことである。





ナカムラクニオ著、筑摩書房、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
文章力をアップさせるのに、たくさんの本を読む必要はありません。好きなただ1人の作家の本を読みまくる、それで十分に筆力や文体は磨かれます。この本は、村上春樹の文章の秘密を徹底的に分析した参考書です。魅力的なタイトルのつけ方、雰囲気を変えたい時の工夫、妄想を飛躍させる方法…一緒に春樹作品の魅力を骨の髄まで味わい、言葉を綴ることを楽しみましょう。ちくま文庫オリジナル。

<読む前の大使寸評>
小説を書いてみたい大使にとって、村上春樹風の文章がてっとり早く身につくなら・・・おいしいことである。

rakuten 村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール



「第1章 村上春樹の文章を33の作法で読み解く」から「奇妙な名前」を見てみましょう。
p46~166
<9 登場人物は「奇妙な名前」>
 村上作品の登場人物は、名前に「巧みな罠」が仕掛けられています。
『羊をめぐる冒険』に登場する猫は、いわし。初期の作品に必ず登場する友人は、鼠。他にも羊男、五反田くん、メイ、ワタヤノボル、加納クレタ、加納マルタ、田村カフカ、天吾、青豆、牛河、多崎つくるなど奇妙な名前ばかりです。

 あえてカタカナを使うことも多く、ミステリアスな名前にしているのだと思います。読者は、謎めいた名前が気になりながら独自に解釈をして、やがて物語の迷宮から抜けられなくなるのです。

 例えば、『騎士団長殺し』には、免色渉という謎めいた男が登場します。これは「色を免れる」と読むことができるので、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』との関連性を暗示しているようです。(あるいは、何か深い意味があるのでは?という疑問がわき上がります)。

 しかし、最後まで読んでも結局、謎は解けません。
 免色さんは、54歳の独身男性。主人公である「私」のアトリエの谷間を隔てた向かい側にある豪邸に三年ほど前から住んでおり、「私」に自身の肖像画制作を依頼した人物です。インサイダー取引と脱税の容疑で検察に検挙された過去があるらしい、と描かれています。
 とは言っても『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』とは直接的な関係は簡単には見つけられません。それでも読者は気になって仕方がない。もはやこれは答えがないクイズのような感じ。そこがいいのです。

 こうやって村上作品の登場人物の名前には、いつだって「扉を開けることが出来ない壊れた鍵」がたくさん仕掛けられています。一度参加すると、ゴールが無い迷路の中を歩かされ、読者は「隠された意味」を探すゲームに参加しなくてはならないのです。

 それでもやはり登場人物の名前は重要です。地球を救うヒーローが「佐藤太郎さん」とか「山田花子さん」といった名前だとファンタジー感が欠けてしまいます。『ノルウェイの森』のようなリアリズム小説を描くときは、「ワタナベ」「直子」など現実味溢れる名前のほうが良いのですが、もし白い馬に乗った王子様が「中村宏さん」では、あまりにも普通すぎて、日常からの脱却に時間がかかってしまうのです。

 やはり登場人物にあ、現実味がない名前がついていると、ファンタジーに違和感なく、入り込めます。少し奇妙な名前は、一瞬で非日常の世界を作り出す魔法なのです。

 例えば『海辺のカフカ』の主人公は、田村カフカです。東京の中野区野方に住む15歳の中学三年生ですが、こんな名前の青年がいるでしょうか。4歳のときに母が姉を連れて家を出て以来、父親と暮らしています。そいて、誕生日に深夜バスに乗って家出をし、高松にある甲村記念図書館に住みはじめるのです。読書が好きで、名前のカフカは、チェコ語でカラスという意味があります。この時点で、物語は謎ばかり。

 読者は、この「田村カフカ」という奇妙な名前を読んだ瞬間から、フランツ・カフカとの関連性を推理したり、不条理なことが起きても動揺しない、心の準備が整うのです。


『村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール』4 :『騎士団長殺し』から学ぶ「アレンジ力」
『村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール』3 :「ねじまき鳥クロニクル」から学ぶ多層力
『村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール』2 :好きな作家の文体を徹底的に真似する
『村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール』1 :謎めいた長いタイトルをつける





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Last updated  2021.01.23 01:36:40
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