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2021.06.09
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』という本を、手にしたのです。
朝日新聞の連載コラム「村山斉の時空自在」を3年間も続けた村山博士である。
難しい事象を読みやすい筆致で面白く書くことにかけては、天下一品でんな♪


【宇宙はなぜこんなにうまくできているのか】


村山斉著、集英社、2012年刊

<商品説明>より
これほどやさしい宇宙論の本はなかった!
なぜ太陽は燃え続けていられるのか。なぜ目に見えない暗黒物質の存在がわかったのか。なぜ宇宙はこんなにも人間に都合よくできているのか・・・宇宙の謎がよくわかる、村山宇宙論の決定版。

<読む前の大使寸評>
朝日新聞の連載コラム「村山斉の時空自在」を3年間も続けた村山博士である。
難しい事象を読みやすい筆致で面白く書くことにかけては、天下一品でんな♪

rakuten 宇宙はなぜこんなにうまくできているのか


この本で最も興味深い箇所は「第4章 ブラックホールと暗黒物質」である。
その冒頭を見てみましょう。
p82~87
<太陽系は「新興住宅地」?>
 前章では、「太陽系は広い」という話をしました。ボイジャーが30年かけても外に出られないのですから、私たち地球人の感覚からすれば、太陽系が広大な「敷地」を持っていることは間違いありません。

 しかし宇宙全体から見れば、太陽系など実にちっぽけな存在です。ボイジャーが懸命に脱出を試みている敷地は、銀河系のごく一部にすぎません。銀河系の中心部から遠く離れた郊外にある新興住宅地のようなものだと思えばいいでしょう。

 太陽系が銀河系の中心部から離れていることは、夜空を見上げればわかります。もっとも、いまは都会の電気が明るいのでなかなかはっきりとは見られないかもしれませんが、そこに「天の川」が流れていることはご存知ですよね?

 七夕に織姫と彦星が出会うという伝説が有名ですが、あの天の川こおが銀河系にほかなりません。そのため、銀河系は「天の川銀河」とも呼ばれます。

 では、この銀河系はどんな形をしているのでしょうか。自分たちのいる銀河系は全体像望遠鏡で見ることはできませんが、さまざまな観測結果から、そこでは多くの星が円盤状に渦を巻いていることがあわかっています。上から見ると、中心に棒状の部分があり、その両端から「渦状腕」と呼ばれるアームが外側に向かってグルグルと延びている。

 何も資料を見ないで「銀河系の絵を描きなさい」といわれたら、蚊取り線香のような渦巻きを描いてしまう人が多いだろうと思いますが、そうではありません。



 この円盤状銀河は、横から見ると薄っぺらいのですが(といっても厚さは1500光年もありますが)、まん中は目玉焼きの黄身のように膨らんでおり、「バルジ」という呼び名で外側の部分と区別されています。もし地球がこのバルジの中にあるなら、夜空に天の川はないでしょう。周囲の360度すべてにびっしりと星が見えるはずなので、天の川ではなく「天の海」と呼ばれていたかもしれません。

 しかし実際には、地球の夜空には川のように星が並んでいる部分と、あまり星が見えない部分があります。川のように見えるのは、銀河系の薄い円盤を横から見ているから。星の少ない部分は、円盤の「上」と「下」なのです。地球のある太陽系が、バルジという「人口過密都市」から遠く離れた郊外にあることは間違いありません。

 では、先ほど「新興住宅地」と呼んだのはどういう意味でしょうか。
 銀河系は現在の姿で完成したわけではなく、全体の重力で近くの銀河を飲み込みながら生長を続けています。それは、私たちの銀河系だけではありません。時間が経つほど大きくなるのは、宇宙に存在する銀河に共通の特徴です。
(中略)

 実際、銀河系の渦状腕の先を観察すると、外の星たちが吸い込まれて細長い列をつくっているのがわかります。かつては太陽系にも、そんな時期があったに違いありません。そんなわけですから、外側にある星ほど銀河系の「新参者」ということになります。だから郊外にある太陽系は新興住宅地のようなものなのです。たしかに46億年といわれる太陽の年齢は長いと感じますが、銀河系のいちばん古い星は約130億歳のおじいさんたちと見積もられていて、太陽はまだ若造だということです。

<銀河の中心に存在するブラックホール>
 銀河系が周囲の星を吸い込むほどの重力を持っているとなると、私たちの太陽系も中心に引き寄せられて、いずれバルジの中に入るのではないかと思う人もいるでしょう。(その場合、地球がバルジに近づくにつれて天の川次第に幅を広げてゆき、やがて「海」のように全点を覆い尽くすことになります)

 しかし残念ながらそうはなりません。太陽系のみならず、銀河系の星はぐるぐると回転しているので、惑星が太陽に近づいていかないのと同じように、中心部分に近づくことはないのです。
(中略)

 たしかに、バルジは密度も高く、星と星との距離が近いので、そこに行けばいまよりも夜空の星が大きく見えるかもしれません。その意味では、都会のように華やかな場所ではあります。
 でも、その中心に何があるのかを知ると、あまり近寄りたいとは思わない人が多いのではないでしょうか。銀河系の中心には、あのブラックホールがあるからです。

 それは、私たちの銀河系だけではありません。天の川銀河と同じ渦巻き型の銀河は、いずれもその中心に巨大なブラックホールがあると考えられています。渦巻き型の銀河は宇宙ではありふれた存在ですが、それと同様、ブラックホールも実にありふれた天体なのです。



以前に読んだ『巨大ブラックホールの謎』を付けておきます。

【巨大ブラックホールの謎】


本間希樹著、講談社、2017年刊

<「BOOK」データベース>より
 200年以上前にその存在が予言されながら、いまだ多くの謎に包まれており、厳密にはその存在すら確認されていない。一般相対性理論による理論的裏付けから1世紀、「ブラックホール」という命名から半世紀、人類はついに「黒い穴」を直接見る力を手に入れようとしている。最新望遠鏡が解き明かす、巨大ブラックホールの謎を第一人者が解説する。
【目次】
第1章 ブラックホールとは何か?/第2章 銀河の中心に潜む巨大な穴/第3章 200年前の驚くべき予言/第4章 巨大ブラックホール発見前夜/第5章 新しい目で宇宙を見るー電波天文学の誕生/第6章 ブラックホールの三種の神器/第7章 宇宙は巨大ブラックホールの動物園/第8章 巨大ブラックホールを探せ!/第9章 進む理解と深まる謎/第10章 いよいよ見える巨大ブラックホール

<読む前の大使寸評>
昨今の報道によれば、世界中の望遠鏡が組んでブラックホールの画像を捉えたようで、謎はかなり狭まったようですね♪
なお、著者は国際研究チームの日本側のチームリーダーを務めたとのことです。

<図書館予約:(5/18予約、6/22受取)>

rakuten 巨大ブラックホールの謎

NASAの想像図

『巨大ブラックホールの謎』6





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Last updated  2021.06.17 06:23:39
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