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2021.06.26
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『日々翻訳ざんげ』という文庫本を待つこと50日ほどでゲットしたのです。
ジョン・ル・カレの逆鱗に触れたというエピソードは如何なるものか?
このところ翻訳に関する本を読んできたが・・・翻訳家の苦労話が興味深いのです。


【日々翻訳ざんげ】


田口俊樹著、本の雑誌社、2021年刊

<出版社>より
本書はローレンス・ブロックの〈マット・スカダー・シリーズ〉をはじめ、2002年度「このミス」第1位のボストン・テラン『神は銃弾』、エルモア・レナード、トム・ロブ・スミス、ドン・ウィンズロウなど、ミステリーを中心に200冊近い訳書を刊行してきた名翻訳家が、自身が手掛けてきた訳書を再読し、翻訳家デビューのいきさつから、誤訳の数々、マイクル・Z・リューインとのメール交流、ジョン・ル・カレの逆鱗に触れた英文、レイモンド・チャンドラー「待っている」新訳での「大発見」まで、それぞれの訳書にまつわるエピソードと時々の翻訳事情で40年に及ぶ翻訳稼業を振り返る回顧録です。

<読む前の大使寸評>
ジョン・ル・カレの逆鱗に触れたというエピソードは如何なるものか?
このところ翻訳に関する本を読んできたが・・・翻訳家の苦労話が興味深いのです。

<図書館予約:(4/26予約、副本1、予約6)>

rakuten 日々翻訳ざんげ


ジョン・ル・カレの逆鱗に触れたあたりを、見てみましょう。
p110~115
<第12回 ジョン・ル・カレ『パナマの仕立屋』の巻>
 本書の舞台はパナマ。主人公は首都パナマ・シティで<ペンデル&ブレイスウェイト>という仕立屋を営むハリー・ペンデル。そのペンデルには秘密がある。というか、自分から秘密をつくっている。

 でっち上げた履歴を自分から客に吹聴しているのだ。ブレイスウェイトというのあ、今は亡き仕立ての師匠で、そのブレイスウェイトの弟子となり、ロンドンで修業したことになっているのだあが、ブレイスウェイトなどという人物はそもそも実在しない。前科を隠し、さらに仕立屋として箔をつけるために、そんな嘘をついているのだ。その嘘がひとりの客によって暴かれる。

 オスナードというその客の正体はイギリスのスパイ。パナマ大統領のスーツの仕立てを請け負い、エイ府関係者の知人も多いペンデルを情報屋にしいようと、接近してきたのだ。当時、パナマは運河の管理がアメリカからパナマ政府へ移譲される大きな節目を迎えており、それには大きな利権がからむ。そのためイギリスもスパイを送り込んできたわけだが、このペンデルという男には、経歴詐欺からもわかるとおり、虚言癖があった。

 それに加えて、オスナードに気に入れられたいという思いも働き、いつしか彼は根も葉もない情報をでっち上げるようになる。その偽情報がオスナードにそのまま信じられ、それがどんどんふくらみ、取り返しがつかなくなるほど大きくなり、最後にはとんでもない悲喜劇が生まれる。

 まさに瓢箪から駒というお話で、いかにもイギリスらしいブラックユーモア満載の傑作スパイスリラーだ。ジョン・ブアマン監督、ピアース・ブロスナン主演で映画にもなった(邦題は本書の原題でもある『テイラー・オブ・パナマ』)。

 本書を訳した頃、私は天狗になっていたとは思わないが、振り返ってみると、少なくとも自信過剰にはなっていた。どんな作家でもどんな作品でも自分なりに満足のいく翻訳がちゃちゃっとできる。まあ、そんな自信だ。それが本書を読むなりあっけなく崩壊した。一読しただけでは理解できないところだらけだったのだ。白状すると、話の結末さえよくわからなかった。

 ル・カレ作品はそれまで長らく故村上博基訳で早川書房から上梓されていた。それが本書で集英社に変わったのだが、あとから編集者に話を聞くと、やはり集英社も最初は村上氏に翻訳を依頼したそうだ。が、断られた。また聞きになるが、そのとき村上氏は、自分にはもうル・カレを訳す体力がないと言われたそうだ。

 ことほどさようにル・カレ作品が難物であることは初めからわかっていた。実際、ル・カレの代表作とされる、いわゆるスマイリー三部作は翻訳を読んでもよくわからなかった。だから本書の原著を一読後、さらに白状すると、一度は断ろうかと思った。すみません、私には無理です。体力的にというよりそもそも能力的に、と正直に明かして。

 一方、私のささやかな翻訳者魂も疼いた。ル・カレのような大作家を訳せるチャンスなどというのはそうそう舞い込むものではない。それにピンチヒッターながら、一番手に指名してくれた集英社の編集者の期待にも応えたい。そんな気持ちもあった。で、えいやと引き受けたのだった。

 予想をはるかに超える難行だった、と言えれば、ま、話として平仄(ひょうそく)が合うのだが、実のところ、翻訳に苦労したことは記憶から飛んでしまっている。今、原著を引っぱり出して見てみると、付箋をを貼った箇所が数十個所もあり、あちこちに鉛筆書きのメモもある。なのに、記憶が飛んでいるのにはわけがある。そうした苦労の果てのちょっとした出来事の記憶のほうがはるかに鮮明だからだ。

 恥を言わねば理(ことわり)は聞こえず、なんてことわざもあるので、今回もまた失敗談をば。
 へろへろになりながらも、なんとか最後まで訳しおえたときには、気分がむちゃくちゃ高揚していた。その勢いのまま、私は著者に問い合わせてくれるよう、疑問点をすべて書き出したメールの転送を編集者に頼んだ。ついでに、よせばいいのに、あなたのすばらしい作品を光栄だとかなんとか、昂ぶる思いも包み隠さず素直に書き添えた。
(中略)

 仲介の労を取ってくれた版元も日本のエージェントも、ま、とりあえず一流(自称です)翻訳家の書いた英文ということでチェックをしなかったらしい。その結果、私の拙い英文がそのままル・カレ大先生の目に触れ、さらには逆鱗にも触れることになったのだ。

 私が編集者から聞かされたのは、私のメールに大先生がなんだか機嫌を損ねられた、ということだったが、想像するに、こんな子供が書いたみたいな下手くそな英文しか書けないやつに翻訳を任せていいのか! とル・カレ先生は思われたのだろう。ちょっと気むずかしい人だということは知っていたのだが、さて、どうしたものか。

 編集者、エージェント、私の三人でダメージコントロール会議と相成った。私としてはまさに穴があったらはいりたい思いで、ひたすら小さくなっていた。私の書いた拙い英文そのものはもう手元に残っていないが、ひとつ今でも覚えている文字どおりの拙文がある。「あなたの英語を訳すのはとてもむずかしい」という一文。もちろん、むずかしいけれど、実に訳し甲斐があるすばらしい文章だ、みたいな文がそのあとに続くのだが、英単語を思いつくまま、it is hard to translate your prose...みたいな文を私は書いた。こういう場合、hardという単語はあまりいい意味には伝わらない。マイナスのイメージが強い。

 これはあとからイギリス人の翻訳家に教わって、なるほどと思ったのだが、こういうときににはhardではなく、challengingだ。言われてみると、なるほどと思うけれど、こういうことばが私のような日英翻訳劣等生にはすんなりと出てこない。

 もうひとつ憶えているのh、エージェントの方の対応の手ぎわのよさだ。ル・カレ御大宛てに私の代わりに詫びと弁解の手紙を書いてくださったのだが、いやあ、感心しました。餅は餅屋とはいうものの、こういう人をエージェントのプロというんだろうな、なんて思ったものだ。そう言えば、こういう手紙は直筆がいいと提案され、言われるままに英文を手書きしたのも覚えている。


ル・カレの作品で、以前に手を出した『The Constant Gardener』を付けておきます。
もちろん読破できず、途中で投げ出した原著でおます。

【The Constant Gardener】
蜂

ジョン・ル・カレ著、POCKET BOOKS、2001年刊

<商品説明>より
イギリス人外交官ジャスティン・クウェイルの趣味はガーデニング。自己流のフリージア栽培に凝り、暇さえあれば、ナイロビにある自宅の庭園で過ごしている。それに、かなり年下の魅力的な妻、テッサを溺愛する夫でもある。一方、テッサはジャスティンとは正反対。社会改革を熱烈に望み、「この世で一番珍しいもの、つまり正義を信じる弁護士」として働いている。その活躍ぶりは、「アフリカ貧者のダイアナ妃」の異名をとるほどだ。しかしそのテッサが、こっそり訪れていた人里離れたケニアのトゥルカナ湖で、死体となって発見される。衣服をはぎ取られ、レイプされて。旅の同行者である、コンゴ系ベルギー人のハンサムな医師、アーノルド・ブルームの姿は消えていた。と同時に、クウェイルの、のんびりした生活も消し去られたのである。


<読む前の大使寸評>
映画『ナイロビの蜂』の原作The Constant Gardenerということで、借りたが・・・
読破はいつになるやら?

Amazon The Constant Gardener





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Last updated  2021.06.26 00:12:29
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