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2021.07.25
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カテゴリ: メディア
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
内田

最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、印鑰さんは@、櫻井さんは*、西加奈子さんは♪で区別します)

・紀伊田辺聖地巡礼の旅
・成長と統治コスト
・『日本習合論』中国語版序文
・日本のイデオクラシー
・後手に回る政治
・倉吉の汽水空港でこんな話をした。

・アメリカ大統領選を総括する
・アメリカの新しい論調から「ベーシックインカムについて」
・韓流ドラマとコミュニケーション・プラットフォーム
・文化日報への寄稿「パンデミックとその後の世界」
・反知性主義者たちの肖像
・『沈黙する知性』韓国語版序文
・書評・食いつめものブルース 山田泰司
・書評・白井聡「武器としての「資本論」
・『街場の親子論』のためのまえがき
・パンデミックをめぐるインタビュー
・ホ・ヨンソン『海女たち』書評

・『山本太郎から見える日本』から
・『人口減社会の未来学』から
・「サル化する世界」についてのインタビュー
・映画『Workers被災地に起つ』神戸・元町映画館でのアフタートーク
・週刊金曜日インタビュー

・『Give democracy a chance』2
・『Give democracy a chance』1
・沈黙する知性
・China Scare
・[週刊ポスト」問題について
・『低移民率を誇る「トランピアンの極楽」日本の瀕死』
・『ネット右翼とは何か』書評
・『最終講義』韓国語版あとがき
・『「そのうちなんとかなるだろう」あとがき』
・『参院選にあたって』
・『廃仏毀釈について』
・『論理は跳躍する』
・『「おじさん」的思考』韓国語版序文
・『市民講座』韓国語版のための序文
・空虚感を抱えたイエスマン
・大阪万博という幻想
・外国語学習について
・大学院の変容・貧乏シフト
・『知日』明治維新特集のアンケートへの回答
・カジノについて
・中国の若者たちよ、マルクスを読もう
・『街場の憂国論』文庫版のためのあとがき
・直言3月号「韓国の教育と日本のメディア」
・人口減社会に向けて
・時間意識と知性
・Madness of the King
・吉本隆明1967
・大学教育は生き延びられるのか?
・こちらは「サンデー毎日」没原稿
・奉祝「エイリアン・コヴェナント」封切り
・米朝戦争のあと(2件)
・気まずい共存について

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内田先生かく語りき8 目次

(目次全文は ここ )

(その36):『紀伊田辺聖地巡礼の旅』を追記



2021/07/23 紀伊田辺聖地巡礼の旅 より
 宗教学者で僧侶の釈徹宗先生と「聖地巡礼」の旅を続けている。
 もう十年以上前に、神戸女学院大学で「現代霊性論」という授業をしたのがきっかけである。宗教についてのさまざまなトピックを二人で掛け合いで論じた。学期の終わりに、授業で言及された仏閣仏像の現物を学生に見せようということになって、釈先生の解説を伺いながら、東寺の立体曼荼羅や三十三間堂の千手観音などを拝観してから南禅寺前で湯豆腐を頂いた。先達に導かれて聖地を巡歴することの楽しさをこの時に知って、そこから「聖地巡礼」のシリーズ企画が始まった。

 大阪上町大地、奈良の三輪、京都紫野、熊野古道、長崎隠れキリシタンの旅、対馬と続き、今回はご縁があって紀伊田辺を訪れた。
 この地の真言宗高山寺は合気道開祖植芝盛平翁のお墓がある「合気道家の聖地」である。すぐ近くには南方熊楠のお墓がある。田辺の生んだ三大偉人(もう一人は弁慶)のうち二人が一つのお寺の中に並んでいるのである。よほど引きの強い聖地に違いない。

 お墓参りをしてから、ご住職から開山由来を伺うと、ここは高野山から龍神山を経由して、神島(かしま)に至る「龍脈」のキーポイントだそうである。伝承では、龍神山から天狗が神島へ飛来する途中で、高山寺の松の木で休憩するという。
 墓参の翌日は船から上陸禁止の神島を眺めた。島には熊楠が守った貴重な植物相が保存されている。昭和天皇が熊楠の案内で粘菌を見るために訪れたことで知られている。かつてこの島に営巣していた鵜の群れは、島を追われた時、まっすぐ高山寺の松の木に向かったそうである。空中にも「龍脈」が通っているのかも知れない。

 ひさしぶりに俗塵を離れて、聖地の霊威に打たれてきた。今の日本では、ときどき浮世離れしないと身体が持たない。





2021/06/10 成長と統治コスト より
 こうやって学生たちの日常生活を猜疑心の強い親に監視させるという仕組みを作ったのが「学費値上げ」だったのです。そして、この政策はみごとに功を奏して、学生運動は一気に火が消えたようになりました。もちろん、他にもさまざまな歴史的理由があったわけですけれど、一番効いたのは「学費値上げ」でした。

 警察であれ公安であれ、公的機関を使って過激派学生を管理しようとしても、コストがかかり過ぎる。何十万もの過激派学生を監視するだけの人的リソースなんか政府にはありません。だから、親に子どもを監視させるという「隣組」システムを導入した。これが日本人のメンタリティにジャストフィットして、おかげで学生運動の鎮圧に成功した。

 今は国立大学の入学金は282,000円、授業料が年間535,800円です。入学金と半期授業料だけで55万円を用意しなければなりません。50年前の55倍です。僕の時だと、ほとんどの受験生はお年玉を貯めた「豚の貯金箱」を叩き割れば1万円くらいは出せた。いま合格発表時に55万円の現金を持っている受験生はまずいないでしょう。だから、進学先の決定は「金主」である親に一任するしかない。

 進学先の決定権が自分にないというのは大きいことです。「苦学」できる環境なら、親が「そんなことを学んで何になる!」と激怒するような専門分野を選んでも、「自分で学費出すから、好きにさせてよ」と言えた。でも、もうそれが言えなくなった。それによって「不本意入学」する学生が激増した。自分には興味がないけれど、親が「そこじゃないと金を出さない」と言うのでやむなく進学したという領域で学生が知的ブレークスルーを遂げるということはまったく期待できません。それどころか、子どもたちは「自分の進路選択が正しく、親の判断は間違っていた」ということを証明するために親に「金をドブに捨てた」と後悔させるように無意識的にふるまうようになる。

 つまらなそうな顔で通学し、最低限の勉強しかせず、最低の成績で卒業する。でも、それは「無意識的に」していることですから止めようがない。実際には驚くほど多くの大学生がそうふるまっている。ほんとうにもったいないことだと思います。それくらいだったら、本人が「やりたい」ということをさせておけばよいと思うんですけれどね。

 とにかく授業料値上げによって、日本の高校生は進路決定権を失い、大学生は「苦学」という選択肢を奪われました。たしかにそれによって大学生は自由度と覇気を失い、学生運動は一気に下火になり、大学はたいへん管理し易い場所になりました。でも、それによって同時に日本の学術的な生産力は深い傷を負ったのでした。



(以降、全文は 内田先生かく語りき(その32) による)





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Last updated  2021.07.25 01:00:07
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