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2021.08.08
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『ストーカーとの七00日戦争』という本を、手にしたのです。おお 内澤旬子の作品は『漂うままに島に着き』など、わりと読んでいるのだが・・・
その内澤さんの恋人がストーカーに豹変したってか、興味深いのである。





内澤旬子著、文芸春秋、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
ネットで知り合った男性との交際から8カ月ーありふれた別れ話から、恋人はストーカーに豹変した。誰にでも起こり得る、SNS時代のストーカー犯罪の実体験がここに。

<読む前の大使寸評>
内澤旬子の作品は『漂うままに島に着き』など、わりと読んでいるのだが・・・
その内澤さんの恋人がストーカーに豹変したってか、興味深いのである。

rakuten ストーカーとの七00日戦争


冒頭の語り口を、見てみましょう。
p8~11
<Ⅰ部-1 別れ話>
 やっぱり警察に相談しておこうか。ただの痴話喧嘩でしょ、と冷笑されてどうせ相手にしてくれないのだろうけど。

 事件は、ごく普通の、ありふれた話から始まる。交際していた男と別れようとした。それだけだ。ただちょっとだけ、先を急いでしまった。私は嫌だとなったら急に手のひらを返したようになってしまい、話をするのも厭わしくなる性分なので。まさかそれが大惨事を招くことになるとは、当時は思いもしなかった。

 2016年4月初旬。家に遊びに行きたいという交際相手Aの要求を、忙しいからと拒否したところ、電話が鳴りやまなくなった。

 私は2014年に東京から小豆島に移住した。たまに東京の出版社との打ち合わせに出る以外は、小豆島の海が見える家で、まっ白いヤギ、カヨと暮らしている。カヨが出産したため、息子のタメという真っ黒い子ヤギも加わったばかり。ヤギの世話の合間に東京の出版社に原稿やイラストを送り、狩猟免許を取得し、小豆島の猪や鹿などの獣害について取材していた。

 都内の高額家賃から解放され、瀬戸内海の鮮やかな青い海を毎日眺めながら、広い家で仕事をする。ヤギの世話や家の手入れなどが忙しく、のんびりというわけにはいかんかったが、楽しく山海を駆けまわっていた。その日は島からフェリーに乗って1時間、対岸の街、高松の銃砲店に来ていた。

 Aとはインターネットを通じて知り合い、8ヶ月ほど交際していた。彼は香川県下に居住していて、私が高松に行くときに会うことが多かった。

 打ち合わせ中だから後にしてくれと何度メッセージを出しても、まったく聞かない。とにかく声が聴きたい、とにかく声をと、メッセージをよこし、電話を掛け続けてきた。

 この男、交際を始めてからというもの、私の言うことを絶対に聞き容れようとしなかった。
「お前はなんでも自分が正しいと思っている」というのが口癖。激しい口論になるのが面倒で、相手の言い分を仕方なく通すことも多くなり、沈黙してしまうことも増えた。すっかり嫌気がさして、どうやって距離をとって別れにもっていくかを考えていた時期ではあった。

 しかしこれまで、私の仕事や日常に支障をきたすほどのことをしてきたことは、さすがになかった。結局用事を終えた私が根負けして電話に出るまで、電話の呼び出し音は(〇)三時間ほど全く止まらなかった。

 そもそも仕事がうまくいかないだとか、鬱病の診断を受けたとかで、二月の1ヵ月間はAからの連絡もおとんどない状態。このままこれで自然消滅すると思っていたら、三月に入ってから元気を盛り返し、誘われて何度か会った。するとAは急に前向きになって小豆島で音楽フェスをやりたいと言い出した。資金も人間力もないまま、しかも鬱病だと自称する男が、どうやって音楽祭のプロモートなどという交渉力が大いに問われる仕事ができるのか。

 地元住民や役場との交渉、ボランティアスタッフ集めや資金集めをあてにされるのは目に見えている。巻き込まれたくない。やるなら高松でやれば。もうこの男を島に呼ぶのはやめよう。そう決めた矢先に、急に家に来たいと言ってきたのだ。彼なりに何かを察知したのだろうか。 

 しかし家に来るのを断っただけで、まさかこんな嫌がらせに発展するとは思わなかった。なんだかとっても面倒なことになりそうな予感がする。「うんざり」に加えてこれまでに感じたことのない「恐怖」がドッと募る。時間をかけて距離をとって、最終的には対面で話して理解・同意を得て、円満に別れようと計画していたけれど、一刻も早く関わりを断ちたくなり、電話でそのまま別れを告げた。

「無理だわ。私、電話をやめてっていうのにやめないで掛けつづけてくるのひとは、無理。お付き合いできない。もう終りにしましょう」
「え、なに、これで終りってこと? ちょっと待てよ」
 もちろんAは納得がいかず、関係を続けたいと言い募る。こちらとしてはなぜ別れたいのかを説明して納得してもらうしかない。けれどもやっぱり会うのは怖い。Aと高松で会うことは、Aの車に乗って移動することを意味する。私は小豆島以外での運転経験がほとんどなく、高松市街地での運転は難しい。

 それにもし運転が上達したとしても、フェリーに車を乗せるとなると往復で1万円近くかかってしまうため、よほどのことがない限り、高松での移動は徒歩かレンタル自転車となる。自転車で移動しにくい距離の施設に用事がある場合、バスやタクシーを利用するのだが、居合わせた男性が帰り際に、フェリー乗り場まで車で送りましょうと申し出てくださることも多い。ところが、ご好意に甘えて助手席に乗ったというだけで自分に好意があると勘違いされるアクシデントが続いた。

 これまで車移動中心の地方に住んだことがないので、どうもこの兼ね合いが分からない。怖い。Aの車の助手席に乗ることで、私はまだAに好意を持っていると、受け取られるのではないか。それがなくても、別れ話がこじれて激高される可能性もゼロではないのだから、密室となり、どこへ連れていかれるのか分からない車への同乗は、避けたいところだ。メッセンジャーというフェイスブックのメッセージ機能を使って説得することにした。これまでも連絡に使っていたものだ。





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Last updated  2021.08.08 20:47:11
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