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2021.09.10
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『圏外編集者』という本を、手にしたのです。
ニッチな編集的(偏執的?)視点が、みうらじゅん並みで、ええでぇ。






都築響一著、朝日出版社、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
珍スポット、独居老人、地方発ラッパー…無名の天才を発見し伝えつづける編集者の、本作りの裏側を初めて知る。

<読む前の大使寸評>
ニッチな編集的(偏執的?)視点が、みうらじゅん並みで、ええでぇ。

rakuten 圏外編集者


「あとがき」のような辺りを、見てみましょう。
p251~254
<むすびにかえて>
 数年前から日本のヒップホップの取材を続けて、夜中の2時、3時のライブハウスが満員だったりして、そのエネルギーになによりびっくりしたのは、ひと握りのマニアだけではなくて、これだけ多くの人間の支持を受けてるんだという現実だった。

 でも、そういう音楽はオリコン・チャートには絶対に入ってこない。売上ベスト10はずっとAKB48とEXILEとジャニーズばかりだし。テレビの音楽番組にっもけっして登場しない。業界が聞かせたい、買わせたい音楽と、僕らが欲しい音楽がもう、決定的にずれてしまっている現実を、そのとき深く実感した。

 それは音楽業界にかぎったことではなくて、美術でも建築でもファッションでもまったく同じだと思うし、メディアの担い手である編集者のなかにも、そのズレに苦しんでいるひとは少なくないはずだ。

 一緒に飲んでいて、たとえば「安藤忠雄も終わったよね」なんて言ってる建築雑誌の編集者が、じゃあ自分の雑誌で『さよなら安藤忠雄特集』をやるかといえば、それは絶対にしない。ハイファッションなんて買えもしない編集者が、誌面では「上質なものと暮らす喜び」なんて記事を作っている。そうやって自分を偽って、それで年収1億円とかならいいけれど、たいていの編集部はつねに薄給&超長時間労働だ。時給に換算したら、コンビニでバイトしてるほうがいいくらいだったりする。
(中略)

「今シーズンのパリコレのトレンドは?」とか、「今年の流行色は?」とか気にしている人間は、まだいるのだろうか。ごく一部の評論家以外に。新しい服もあるし、古い服もある。高い服も、安い服もある。いろんな時代感覚の、いろんなレベルの服をあわせて、つまり自分なりにリミックスして着るのが、いまのお洒落の基本的な感覚だろう。今シーズンの、このデザイナーの、これくらいの値段の服!という気合いが見え見えの着こなしって、だれが見ても痛々しい。「流行なんて特に気にしてません」という雰囲気を醸し出すほうが、かえってオシャレに見えたりする。

 音楽のことを考えてみてほしい。昔はその時代、その世代に流行があった。パンクとか、ニューロマンティックとか、テクノとか。「それ聴いてないとダサい」という流行の音楽ジャンルが。
 でも、いまの音楽シーンにはそれほど決定的な流行って、ひとつもない。むしろノイズから歌謡曲まで、なるべく幅広い音楽を自分流に混ぜ合わせて聴いているほうが、はるかに音楽好きとされている。

 現代美術だって同じことだ。もの派があって、ニューペインティングがあって、シミュレーッショニズムがあって・・・で、いま「なにイズム」がトレンディだか、知っていますか? そんなの、ないから。

 この時代を決定づけるのはなにかというと、それは僕らがすでに「トレンドのない時代」に突入しているのではないかということ。たぶん、現代史上で初めて。

 かつては情報格差というものがあった。ふつうのひとには手に入れられない最新情報を、パリコレやニューヨークのクラブや、ロンドンの美術館で入手できる専門家がいて、それを一般人に広めることで「専門家」という商売が成り立ってきた。パリコレのトレンドが東京のメーカーに吸収されるまでに1年、東京から地方の店に広まるまでまた1年、そんなタイムラグが長いあいだ存在していたおかげで。

 インターネットがすべてを変えてしまった。アーティストとリスナーがSNSで直接つながれて、世界のどこでも同時に画像や動画や音源が共有でき、参加もできて。ワンクリックで日本中どこでもAmazonの箱が届いて。そこにはもはや「東京」と「地方」のタイムラグも、「専門家」と「一般人」のタイムラグも存在しない。

 そういう時代に僕らはもう、メディアにトレンドを教えてもらう必用はない。メディアが特権的に情報を収集して、「流行」として発信できる時代がとおくに終わってしまっていることを、既存のメディアの人間がいちばんわかっていないのかもしれない。

 いちばん大切なことに、いちばん目をつぶろうとするテレビ局。エコと言いながら、いまだに何百万部という印刷部門を競う大新聞。意地悪の黒い塊のような週刊誌・・・トレンディだったはずのメディアが、いちばんトレンドから遅れてしまっている皮肉な現実。

 これまで40年近く編集者として生きてきて、物理的にはいまがいちばん大変な時期ではあるけれど、編集という仕事のおもしろさから言えば、いまがいちばんスリリングな時期でもある。もうすぐ60歳になるというタイミングで、ぎりぎりそのスリルに間に合ったことが、僕にはすごくうれしい。

ウーム インターネットが紙の本の印刷・編集を一変させたようですね。でも、そのおかげで編集の本質がより際立ってきたわけだ。

『圏外編集者』3 :印刷・出版の技術革新
『圏外編集者』2 :初めての単行本
『圏外編集者』1 :「はじめに」





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Last updated  2021.09.10 01:03:49
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