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2021.10.07
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カテゴリ: カテゴリ未分類
図書館で『橋本治と内田樹』という本を、手にしたのです。
めくってみると、お二人が対談を楽しんでいる様子が見えてくるのです。





橋本治×内田樹著、筑摩書房、2008年刊

<「BOOK」データベース>
日本に「よきもの」をもたらす、この柔軟な知性。注目の対談集。

<読む前の大使寸評>
めくってみると、お二人が対談を楽しんでいる様子が見えてくるのです。

rakuten 橋本治と内田樹


#8で「橋本治と内田樹の違い」が語られているあたりを、見てみましょう。
p242~246
<「橋本治」と「内田樹」の違い>
橋本: そもそも私は、前近代の泰平の町人の子どもで、「物心ついたら玄関の前を掃除していなくてはいけないみたい」なものだから・・・。

内田: 僕の場合はどちらかというと、士族的エートスといいますか、上昇志向がわりと強い家風だったから。庄内藩で、明治以降は冷や飯食らいですから、「薩長藩閥が独占してきたポジションを奪還する」というルサンチマンの絡んだ東北的上昇志向ってありますでしょう。親たちがそれで苦労したんだから、親よりも高い学歴を身につけて、親よりも高い社会的地位につけ、と。そういうプレッシャーがずっとかけられてましたね。

橋本: 上昇志向がないんですよね、俺は。さっきの官討ではないですけれど、不自然に上がってしまうと、自分の身が危うくなるなという、生命本能のような危機感があるんですよ。だから今この瞬間、偉くなりそうかもしれないと思って、そういう風潮があると、ぶっ壊してしまうんですね、自分で。だから何年かに一度『アストロモモンガ』みたいなことをしないと(笑)気がすまない。

内田: 僕はこともと第一志望東大法学部だったんですよ。でも、受験の直前にやめたんです。これではいけないと、ふっと思ったんですね。法学部を出て、警察官僚とか検察官とかになったら、なんかすごく将来の日本に禍根をもたらすことになる気がして。

 そのまま僕が官僚になったりしてたら、たぶん強権的で、陰謀好きな、かなり厭味な役人になっていたかもしれないと思うんです。受験の前に、そういうのはやっぱりよくないんじゃないかなと思って。フランス文学なんて実用性ぜんぜんないし、出ても食えないじゃないですか。でも、その食えないところにずれていくことで自分の本態的な有害性みたいなものは抑制できるんじゃないかなって。

 橋本さんはどちらかというと、世の中に、いかに「善きもの」を積み増していくか、という発想法をされてれでしょう。僕はそうじゃなくて、いかにして自分のもたらす害毒を最小化するかを考えてきたんじゃないかと思うんです。だって、ひどい人間ですから。邪悪さ、攻撃性、残忍さについては、自慢じゃないけど、まず人にまける気しないですから。

橋本: 一皮剥けば私だって全部持っていますよ(笑)。

内田: いや、僕はもう前面に出ていたから(笑)。なんとかこれは少し控えた方がいいなと思って。でも、「善いこと」をしようとすると、たぶんろくなことしない。自分に大義名分があると、いきなり態度でかくなる男ですから(笑)。だから、それよりもとにかく「悪いこと」するのを自制しようと、その点では、僕も「引き算」の人間なんです。

橋本: 私は初めに引き算があって、足し算を覚えたみたいなところもあるから、蓄積しないんですよね。業績として蓄積されないで、経験として自分の中に蓄積してしまうという性質の人だから。経験だけ蓄積されると自分は偉くなれないから好都合なんですよ。えらくなってしまうと経験が使えなくなるというのがあって。

 つまり現場に置いておくと有能だけれど、管理職としては向かないという性質ってあるじゃないですか。そうするとその人は常に現場に居られるようにいろいろおとあがくわけですよ。
 もう十年前だけれど、十年前が一番最近かな。『源氏物語』をやったときの「偉くならない方法」というのが・・・。

内田: 「偉くならない方法」ってあるんですか(笑)。

橋本: 『源氏物語』をやってるときに、なんか周囲の風当たりが微妙に変わってきたんですよ。俺は偉い人になっているのかもしれないみたいなのがあって、これはまずいことになったと思って金髪にしたんですよ(笑)。

内田: はあー、それでなんですか(笑)。

橋本: 十年前に、40過ぎて金髪にしている人なんて、まずいなかったし、その歳で金髪にするなんて考えられないようなことだったので、これをやってしまえば馬鹿だと思われるだろうと思って。

内田: あのですね。僕が仏文科に行ったのは、駒場の時の成績でフランス語が一番悪かったからなんです。これは絶対に仏文科に行っても劣等生になるしかない。そこで劣等生として、せめて卒業するまでにフランス語をなんとかわかるようになる、というあたりを達成目標にしておけばいいやと思って。30人からいる同期生の中でも僕は一番できない学生でした。だから、その後、フランス文学の業界に入っても、「」というポジションをずっとキープしてました。なるべく日の当たらない所にいようと思って。

橋本: それはつまり、内田さんは自分の能力にすごく自信があるということでしょう?

内田: 何か、みんなを死ぬほど怒らせるようなことをしでかすだろうなということについては、すごく自信がありました。

橋本: フランス語の成績が悪いのだから、入ってしまえば伸びるだろうという考え方ができるということは、自分の潜在能力に自信があるということじゃないですか? だって俺なんかそんな選択できないですよ。ずうずうしいまでに自分の能力に自信がないですよ!

内田: 「ずうずうしいまでに」って、そういう使い方するかなあ(笑)。

橋本: だって、自信がない、自信がないと言ったって、お前はどんだけのことをやったのかということがあるじゃないですか。それであっても、自信がないんですよ、根本のところで。つまり、能力というのがいかなるものであるかという基準が分からない。外側の基準とは違うところで能力を作ってしまっているから、「」という、つねに疑心暗鬼みたいなところで、能力を叩いて固めてという、そういう不思議なことをやっているんですよ。だから、ずうずうしいまでに能力がないんですよね。

内田: 僕はずうずうしいまでに世間の評価を気にしないんです。原稿依頼がなくても、本が売れなくても、全然気にしたことないです。95年頃から、もう原稿依頼が2年に1件くらいしかなkったですけれど、どうして、俺んとこに仕事の依頼が来ないのか、理由がわからなかった。世間の諸君は何考えてんだろうって(笑)。

橋本: 世間が本を読まないと言われていた時代だから。

内田: 世間ばかりか、業界内部的にも全然駄目で(笑)。何をやっても何の反応もなかったし、誰も評価してくれないんですけど、そんなこと全然気にならなかった。

橋本: それはもしかして、世代交代の時期だったんじゃないですか? 一時代前の人が編集長としてまだいて、その人たちが管理職で上の方に上がってしまって、下の方にいた若いのがきて、これがいいという切り替え時だったのでは?


『橋本治と内田樹』4 :『桃尻語訳 枕草子』
『橋本治と内田樹』3 :橋本流「タイトル論」
『橋本治と内田樹』2 :フリーターの実態
『橋本治と内田樹』1 :翻訳の誤訳





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Last updated  2021.10.07 00:48:33
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