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2021.10.09
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カテゴリ: 歴史
図書館で『陳舜臣対談集「歴史に未来を観る」』という本を、手にしたのです。
穏やかな風貌の陳さんが説くリベラルで聡明な語り口が、好きなんですよ。それに神戸っ子だし♪






陳舜臣著、集英社、2004年刊

<amazon>より
国際的な視野で文明を考える陳舜臣氏の対談。
世界史的な大きな流れの中で、一人一人の日本人は、いま現在をどう生きたらいいのだろうか? 陳舜臣氏が司馬遼太郎氏、桑原武夫氏、ドナルド・キーン氏、山折哲雄氏らと国際的視野で語る対談集。

<読む前の大使寸評>
穏やかな風貌の陳さんが説くリベラルで聡明な語り口が、好きなんですよ。それに神戸っ子だし♪

amazon 陳舜臣対談集「歴史に未来を観る」



対訳語について語られているあたりを、見てみましょう。対談者は司馬遼太郎さんです。
p145~148
<日本人と国際化>
司馬: 先日、これはべつに英語の専門家でもない市民だけど、おもしろい造語で日本人の国際化の問題を話していた。
 トランスネーション。これは辞書にはない。その人、そういう人がたくさん出てくればいいというんです。

 トランスだから、あっちからこっちへ、あるいは逆に。つまり行ったり来たりやね、意識の上でのことです。頭の中でスイッチのきりかえができる精神のことやな。中国の文化や他の国の文化、日本の文化と、むりなくスイッチ転換もしくは翻訳ができて、少しもその行き来に違和感がない、というような。陳さんはトランスネーションです。

陳: ただね、私は日本人そのものも、トランスネーションだったと思うんです。明治までは中国語でものを書いていたでしょう。漢文でものを書き、漢詩を作る、全く違う言葉ですよ。発音しないけれども、読んでいるわけやからね。受け入れているんです。だから、日本の近代化が早かった一つの理由は、それだと思う。

司馬: 中江兆民が明治7,8年ごろ、フランスからルソーの思想をもって帰ってきた。それで翻訳するのに、あの人は漢文のできた人だけれど、もう一度漢文塾に通って中国の古い漢文、哲学用語のふんだんに使われている古典を勉強し直したんです。というのは、明治7,8年の日本語の状況ではまだヨーロッパの哲学・思想を翻訳することは困難だった。

 ただ中国の古典の中にそれに対応するものがある。そこで、もっと的確な言葉はないか、というようなことで勉強し直し、有名な『民約訳解』(明治15年)を書いた。あれは翻訳じゃなくて、兆民がかみくだいて、兆民の文章にしたものです。だから、そこに非常におもしろいトランスネーションがある。

陳: リライトしたもんやね。漢文・漢語の知識を十分に生かしています。対訳ということで言えば、明示初年、物理は究理学だったが、野菜のキュウリと間違えるというんで物理にしたとか。経済学だって理財学、慶応の経済もだいぶ後まで理財科って言ってたねえ。

司馬: 経済といえば、幕末の坂本龍馬は経済のことを射利、と言っていた。明治初年にはすでに経済という対訳ができており、井上馨なんかはしきりに使っていた。それを、、江藤新平は長州人嫌いだったものだから、いじめてね。おまえ、経済っていう意味知ってるか、とかみついている。井上が、それは経世済民だと答えると、江藤がお前のような男に経世済民の精神があるかとやりかえす。そのぐらい、ヨーロッパ語が波のように入って、対応した漢語が古い意味を引きずっているため、混乱と思い違いがいっぱいあったと思うな。

陳: それで、中国は日本が英語とかヨーロッパ語から翻訳した言葉を全部入れてるわけですよ。だから、もとは中国かも知れないけども、日本からの輸入です。共和国というのでも、「共和」というような言葉は昔から中国にあるわけです。
 周の時代に共国の伯爵の和という人が、人びとに推されて国王のかわりに治めたという、そういう意味なんです。それをリパブリックに当てたのは日本で、これを中国が逆輸入した。

司馬: 明治期、日本から中国は何千という対訳語を受け入れている。法律、軍隊、幼稚園、図書館・・・。ともかく日本は中国にお返しした。恩返ししたわけです。これも一種のトランスネーションですね。


『歴史に未来を観る』1 :モンゴルの世界制覇(with奈良本達也)





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Last updated  2021.10.09 09:24:36
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