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2021.12.21
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カテゴリ: カテゴリ未分類
図書館で『人間であることをやめるな』という本を、手にしたのです。
今年亡くなった半藤さんであるが、司馬遼さんの後を継ぐ人との感があるので・・・チョイスしたのです。







半藤一利著、中央公論新社、2009年刊


<出版社>より
いまの日本は「天上大風」、すなわち、ものすごい勢いで荒々しく吹きまくる嵐のまっ只中にある。解決する道はなかなかみつからない。中国がどうの北朝鮮がどうのということではなく、日本国そのものが大転換期、解体しつつある、先行きは不安ばかり、といってもいい。そうした「行き止まり」のときに、日本人は、とくに若い人たちは、どう生きたらいいのか。
そうなんです。明日に光明をもてない、「行き止まり」であればあるほど、物事をきちんと考え、真面目に、自分のなすべきことを困りつつウンウンと唸ってやりつづけながら、君たちは人間であることをやめないで生きなさい、と。

<読む前の大使寸評>
今年亡くなった半藤さんであるが、司馬遼さんの後を継ぐ人との感があるので・・・チョイスしたのです。

rakuten 人間であることをやめるな


日露戦争が語られているので、見てみましょう。
p104~109
<国力を使い果たした日露戦争、近代日本の岐路>
 この日清~日露戦争の時期に、東洋経済は創設され、出発したわけです。そして『東洋経済新報』という名前が語るように、経済を中心に日本の国を考える、もっと言えばジャーナリズムとして、「われわれはこの国の歩みにたいして、もう少しきちんとした目をむけなきゃいけないぞ」という、思いが込められていたのではないでしょうか。

 このころすでに東洋経済には、植松考昭とか三浦テツ太郎といった、非常に開明的な意見を発表する方々がいて、日露戦争後の日本の国とまともに向き合っていた。 
 その日露戦争後の日本はどうなってしまったか。じつはここがいちばん大事なところです。

 日本は戦争に勝ったのですが、後でまた申し上げますが、この戦争で多くの人間を亡くし、国力のぎりぎり全部を投げ出し、使いきってしまった。当時のお金で二十億円近くという莫大な戦費を使ったが、半分ぐらいは外債・借金だった。国際的・外交的には、アメリカ大統領の仲介によって、きちっとした形で勝利を確定したことは確かなんですが、ほんとうはもう、これ以上戦争が」続けられないところで、やっとこさっとこ戦争を終結した・・・と言うのが現実だったわけですね。

 ですからほんとおうはそのときに、そうした現実を国民に知らしめるべきだった。じつはこの戦争は、これこれしかじか、全力を挙げて勝ち、国際的にはいちおう勝利という形で確定したのだけれども、もう国力に余裕はない、われわれとしては、これからもういっぺんきちっとした形で国家というもの、及び世界というものを考えなきゃならないのだ・・・というふうに、当時の指導者が、国民に徹底的に知らせればよかったとわたくしは思うのですが、知らせなかった。

 日本の近代史を見ると、少なくとも日露戦争が終わるまでは、みなさんがお読みになっている『坂の上の雲』の時代であって、一つの大きな理想を求めて、日本人がみな心を一つにして、ほんとうに一生懸命になって働いて戦った時代であった。そのことは確かなんですが、戦争に勝った後、きちんとした戦争の現実、日本の国力の現実を国民に教えないで、「勝った勝った」「カッタカッタ」と、さながらに華やかな下駄の音のようなことばかり言って、日本人は有頂天になってしまった。昔風の言葉でいえば夜郎自大的な考えかたになっていった。

 ここに近代日本の栄光と悲惨があるわけで、栄光といえば確かに非常な栄光だったが、じつはその後の始末をきちっとしなかった。そのために悲惨が始まったと、わたくしは見るわけです。

 つまり日露戦争後に、日本のリーダーは国民に、これからどういう国であるべきかという、国家ビジョン、国家戦略、国家像をはっきりと示さなかった。ただ、世界の五大強国の一つ、ロシアを破って、われわれは世界の五大強国の仲間入りした、ものすごい強国になったんだ・・・という形で国民は指導されたわけです。
 これにたいして、東洋経済はそのころから、「これではいけないんじゃないか」と考えはじめたと思います。

 つまり、日露戦争が終わった時点でほんとうは、もう一度国力をよく考えたうえで、日本は謙虚な国家、貿易中心の世界にやさしい国家であるべきだ、というイメージを持った人たちもたくさんいたと思います。事実、日本の今後を考えた場合に、「大日本主義」で行くべきか「小日本主義」で行くべきかという議論が、必ずしもなかったわけではなく、かなりの識者の間には論ぜられていた。追い追い申し上げるとおり、東洋経済はその大きな一角だったのです。

 しかしその一方では、「いや、日本の国家はますます強くしなきゃならない」という、国家像を描いた人たちもいたわけです。
 それは、ひとつには、なんといってもロシア(まだ帝政ロシアですが)という国の存在です。日露戦争で勝ったとはいえ、その後も含めて現実は厳しいものだった。なるほど、ご存じのように日本海海戦において、日本の海軍は、ロシアの東洋・アジアいた艦隊、遠くヨーロッパカラヤッテキタバルチック艦隊も併せて、数の上では日本の倍に達する艦隊を、ほとんど全滅させた大戦果を上げたわけですが、ただ陸軍の方は必ずしもそうではなかった。

 陸軍は奉天会戦でいちおうロシアの陸軍を打ち破ったことになっていますが、ロシアは初めから、日本軍を、補給の届かないもっと奥地に引き入れて、そこで決戦に及ぶ戦略を練っていた。だからハルビンまで下がっていたわけです。つまりロシア陸軍は五十万もの大軍がなお健在だった。

 一方、日本の方は、奉天の会戦が終わったときに、もうほとうに国力にありったけを尽くして、ぎりぎりになっていた。十万の軍隊もいないぐらいで、とくに、大尉・中尉・少尉クラスの前線の指揮官のほとんどが、戦死ないしはケガをしていて、後に引き込まざるをえない。弾丸もほとんどなくなっている。これ以上戦争は続けられないという状況だった。

 それで、ロシアがもういっぺん復讐戦にでてくるのを非常に恐れていた。当時の流行り言葉に、ロシアを恐れる「恐露病」というのがあって、夏目漱石の小説(『それから』)のなかにも、「あいつは恐露病にかかっているから、だらしないんだ」というように出ています。


(〇)





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Last updated  2021.12.21 00:16:20
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