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2022.04.29
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カテゴリ: 歴史
図書館で『日本人が知るべき東アジアの地政学』という本を、手にしたのです。
露・中・北朝鮮のパワーアップに曝される昨今ですが・・・この際、アジアの地政学を学んでみようと思うのです。




茂木誠著、悟空出版、2019年刊

<出版社>より
米中覇権争いが本格化する中、日本は中国、韓国、北朝鮮とどう対峙すればよいのか。日々のニュースだけでは、国際情勢の本質が見えてこない。国家の行動や国民性は、地理や歴史の制約を大いに受ける。今こそ、欧米のエリート層が国際教養として学ぶ『地政学(地理+歴史+イデオロギー)』を武器に、日本の国益を考えよう!

<読む前の大使寸評>
露・中・北朝鮮のパワーアップに曝される昨今ですが・・・この際、アジアの地政学を学んでみようと思うのです。

rakuten 日本人が知るべき東アジアの地政学



「第4章 中国の戦略」で中国のシーパワーが語れているので、見てみましょう。
p161~166
<ランドパワー帝国はシーパワーに変身できるか?>
 中国は二千年にわたって東アジア最大のランドパワー帝国として君臨し、朝鮮と東南アジア諸国を臣下として冊封してきました。唯一、シーパワーの日本だけが冊封体制から離脱し、台湾もまた島国だったため、中華帝国の支配を免れてきました。台湾が中国領となるのは、17世紀の清朝になってからです。

 19世紀以降、産業革命で近代兵器を装備した英国・フランス・ロシア・日本が相次いで中国に派兵し、国内では内戦が続くという「屈辱の百年」を迎えます。帝国は崩壊し、その廃墟の中から立ち上がった共産党が、初めはソ連型統制経済で失敗したものの、試行錯誤の末に、一党独裁を維持したまま米国型市場経済を導入するという、まったく新しいシステムを構築しました。

 米中の接近はその反動として中ソ対立を激化させ、冷戦期の中国は常に北方の脅威であるソ連から身を守るため、またチベット・ウイグルなど国内少数民族の分離運動を抑え込むために、核戦力と陸軍の増強に努め、海軍育成は後回しにされました。

 それでも1970年代の鄧小平時代に、「中国海軍の父」とされる劉華清司令が将来を見据えて、列島戦概念を提唱しました。現在の中国海軍の増強とその動きは、基本的に劉華清プランに従ったものなのです。
 ・第一列島戦・・・日本列島・沖縄・フィリピンを結ぶ線。
          この手前の東シナ海・南シナ海を2010年代までに確保する。
 ・第二列島戦・・・小笠原・グアム・ニューギニアを結ぶ線。
          この手前のフィリピン海を2020年代までに確保する。

 ソ連崩壊で北の脅威から解放され、21世紀の中国は、米国に次ぐ世界第二位の経済大国にのし上がりました。その結果、彼らはシーパワー大国になるという野心を隠さなくなったのです。現状では中国海軍は、西太平洋で圧倒的なパワーを保つ米軍や、これと共同作戦を行う日本の海上自衛隊のはるか後塵を拝しています。また、米国の同盟国に囲まれて海へのアクセスが制限されていることにも強い不満を感じています。

 この現状を打破し、韓国や沖縄、佐世保や横須賀の米海軍をグアムまで撤収させ、日本には平和憲法を厳守させて自衛隊の手足を縛っておき、中国海軍が西太平洋・インド洋地域の海上覇権を握る――これが習近平の唱える「中国の夢」であり、「一帯一路」計画なのです。

 歴史上、ランドパワー帝国として君臨してきた中国が、シーパワー化しようとしたことが過去に二度ありました。明の永楽帝の時と、清朝末期の李鴻章の改革の時です。

 14世紀、モンゴル人による征服王朝・元の支配を脱し、明を建国した洪武帝は、朱子学的農本主義を採用し、モンゴル残存勢力との戦いに全力を傾けました。対モンゴル戦争に勝利し、北方の脅威から解放された三代永楽帝は、中国の歴代皇帝で初めて海に関心を向け、側近の鄭和を艦隊司令官として、「南海遠征」を命じます。

 この「鄭和の南海遠征」とは、どんなものだったのかを説明しましょう。
 まず鄭和です。この人は漢民族ではありません。アラブ系と思われるイスラム教徒で、祖父の代から元に仕え、雲南地方の地方長官を務めていた家系です。世界帝国モンゴルはグローバリスト政権であり、高級官僚には「色目人」と呼ばれる西アジア出身者が多く採用されていました。
 中華ナショナリズムの明は、モンゴルからの独立戦争の過程で色目人を殺戮し、鄭和の一家も全滅しました。少年だった鄭和は、去勢されて宦官として明の後宮に入り、その才覚を認めた永楽帝に重用されるようになったのです。

 「南海」とは南シナ海からインド洋までを意味します。そもそも「南海遠征」という発想は、ランドパワーの漢民族からは出てきません。この地域の情報や航海技術は、鄭和がイスラム教徒のネットワークから入手したものでしょう。
 次に「遠征」の意味です。この言葉からはペリーが日本に対して行ったような砲艦外交をイメージしますが、実態はまったく違います。

 「鄭和艦隊」は巨大な商船隊であり、船底には陶磁器、その上には絹織物を満載して、東南アジア・インドの各港を訪問するのです。いわば移動見本市です。これらの産物を現地人に見せ、明の皇帝に朝貢するよう促すのです。「〇」と誘うのです。日本の足利義満にも同じ要求をし、義光はこれに便乗して永楽帝に朝貢し「日本国王」に冊封されました。唐の時代、白村江の戦いを機に朝貢しなくなった日本を八百年ぶりに朝貢させたことは、明の威信を高めるのに効果的でした。

 民がやったことは、習近平の中国が「一帯一路」構想を打ち出し、ユーラシア諸国の港湾・鉄道・パイプラインなどインフラ開発のためにチャイナ・マネーをバラまいていることとオーバーラップします。

 鄭和の南海遠征も、基本はバラマキです。というよりも、中華帝国の冊封自体が歴史的にバラマキそのものです。属国が書状を持ってやってきて、頭を下げて貢ぎ物を献上してきたら、中華帝国の皇帝は、その何倍もの下賜品を与えることで、自らの威光を維持してきたのです。

 つまり、帝国の威光が世界に広がれば広がるほど、バラマキを続けざるを得なくなり、中華帝国の財政は悪化します。結局のところ、朱子学的な「華夷秩序」という政治の理論が、経済的合理性を上回ってしまうことを意味します。言い方を変えれば、中華帝国の威光をカネで手に入れているにすぎません。

 手を広げきった明は、当然のごとく財政難を招きます。永楽帝が没すると南海遠征は中止され、三年に一度の朝貢使が五年、十年に一度になり、公的な貿易の規模が縮小していきます。すると今度は密貿易の増加を招き、武装商人が東シナ海を跋扈します。これが倭寇(後期倭寇)です。

 対モンゴル人政策も同じことで、馬を貢がせ、その数倍の絹織物を下賜することで、平和を保とうとしました(絹馬貿易)。しかし財政難からこれも制限され、絹を求めるモンゴル人が再び北辺を侵略する結果を招きました。明はひたすら万里の長城を巨大化して立てこもり、兵力の大半を頂上防衛にあてたため倭寇の取り締まりもままならず、秀吉の朝鮮出兵で援軍を送ったため財政危機を招き、増税が農民反乱を引き起こし、別の北方民族(女真=満州人)の侵攻を招いて、滅亡してしまうわけです。





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Last updated  2022.04.29 00:09:49
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