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2022.09.25
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『文学界(2022年6月号)』という雑誌を、手にしたのです。
表紙に出ているようにインタビュー、シンポジウム、座談会、対談など気になる作家のオンパレードで・・・、これがゲットする決め手となりました。




雑誌、文藝春秋、2022年刊

<出版社>より
(インタビュー)
川上弘美  循環する小説たち

(座談会)
大澤真幸×川添愛×三宅陽一郎×山本貴光×吉川浩満
私たちはAIを信頼できるか

(シンポジウム)
アーサー・ビナード×関口涼子×多和田葉子×李琴峰
移動するアイデンティティ

<読む前の大使寸評>
表紙に出ているようにインタビュー、シンポジウム、座談会、対談など気になる作家のオンパレードで・・・、これがゲットする決め手となりました。

rakuten 文学界(2022年6月号)


シンポジウム「移動するアイデンティティ」が興味深いので、見てみましょう。
p173~176
■母語に逃げられてしまう
司会  次にご紹介する関口涼子さんも詩人です。今はフランスに在住し、フランス語で、日本語で、じつに多くの翻訳のお仕事を手掛けられています。
 吉増剛造さんとの対話集『機―ともに震える言葉』や、フランスから東日本大震災を論じた『カタストロス前夜―パリで3.11を経験すること』を始め、さまざまな冒険的試みで注目を集めてきました。

関口  よろしくお願いします。私も「詩人」というご紹介を受けて、やはりちょっと空々しいというか、こそばゆくなってしまうところがありました(笑)。私は、日本語とフランス語を創作言語として使い始めて20年以上になりますが、創作において、私と二言語との関係は、常に一つだけでした。

 つまり、自作をフランス語から日本語へ自己翻訳をする時には、同時に二言語での創作は行わない。同じように、二言語創作をしている時には、自己翻訳はしない。そうした関係性で安定していました。それに対して、他者の作品の翻訳においては、比較的自由に二言語間行き来していたように思います。

 自分を規定する前提として、作家というよりはまず翻訳家であり、こうしたバランスの上で二言語を行き来する運動の中に私のアイデンティティがあると考えてきました。
(中略)

■カテゴライズのはらむ暴力性
司会  最後にご紹介する李琴峰さんは2021年に芥川賞を受賞され、最近受賞第一作となる新作『生を祝う』を出されたばかりです。台湾ご出身なので母語は中国語ですが、小説は日本語で書かれています。自作を中国語に訳されてもいます。

李琴峰  四人の中で、年齢も活動歴も一番ひよっこの李琴峰です。よろしくお願いします。

 これまで日本語で六冊の小説を書いてきましたが、言語や国籍の問題、あるいはレズビアンやバイセクシャルやトランスジェンダーにまつわることなど、いわゆるマイノリティ属性からくるトラウマとか、生きづらさみたいなものを主に扱ってきました。

 でも最近、そういった問題意識を突き詰めていくと「人間をカテゴライズすることの暴力性」に帰結するのではないか、と感じています。私たちは、街を歩いていると「あの人は男だろう/女だろう」「この顔立ちだから〇〇人だろう」といった具合に、無意識に人をカテゴライズしています。

 おそらく人間は、そうしたプロセスから生きている限り逃れられないし、むしろ世界を認識するためには必要不可欠なものでもある。けれども一方で、それはとんでもない暴力性をはらんでもいます。
 自分の経験でいうと、私がかつてSNSに書き込んだ日本の政権を批判する発言が、芥川賞を受賞して社会的認知度が上がったことにより掘り返され、「李琴峰は反日だ」「台湾人のくせに反日とはどういうことだ。本当は韓国人ではないのか」などと散々書かれました。自分が理解できないものをすぐにカテゴライズして誹謗中傷するのは、愚かなことです。

 だからといってカテゴリーを完全に撤廃してしまっていいのかというと、なかなか難しい問題です。先ほど多和田さんのお話にもありましたが、「トランスジェンダー」などのアイデンティティを表す言葉が、権利促進運動や解放運動に寄与してきた側面があるからです。

 小説を書く時に、そうした言語を使った方がいいのか、使わない方がいいのか。もちろん創作者の自由ですが、どちらがより誠実なのかは、すごく悩ましい。
(中略)
 その当事者にとって、自身のアイデンティティを表すための重要な言語をあえて避けるのには、どういう意図があるのか? しかし一方で、多和田さんがおっしゃった「どうしてもこの言葉は使えない」という状態も分かります。

 例えば芥川賞をいただいた『彼岸花が咲く島』の中では、沖縄の琉球諸島の一番台湾に近い島、与那国をモデルにしながら「琉球」「沖縄」といった言葉を出しませんでした。あくまでも小説としてファンタジー風に仕立てる、という意図があったからですが、沖縄出身者、琉球出身者が読んだ時にどう感じるのかすごく不安なところでした。

 創作をすること自体が一種の暴力性を帯びていて、ともすると他者を消費したり収奪したりに繋がりかねない。こうした矛盾については、いつも堂々巡りをしていますし、おそらく永遠に答えが出ない問題なのかもしれません。



■李琴峰


■関口涼子
 詩人・翻訳家。1970年、東京都生まれ。パリを拠点として日本語とフランス語で著作活動を行う。12年にはフランス政府から芸術文化勲章シュバリエを授与される。多和田葉子、杉浦日向子など日本の小説、コミックのフランス語訳も数多く手がけている。





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Last updated  2022.09.25 00:30:16
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