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2022.12.12
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『フィールド言語学者、巣ごもる』という本を、手にしたのです。
言語学者による言語学エッセイってか、面白そうである。
でも、覗いてみると文中に難読漢字がいっぱいで・・・この見せびらかしはいただけないでぇ。




吉岡乾著、創元社、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
著者は、大阪の国立民族学博物館に勤務するフィールド言語学者。パキスタンとインドの山奥で話者人口の少ない言語を調査しているが、2002年は世界規模の新型コロナウイルス感染症蔓延でフィールドに出られなくなり、長らく「巣ごもり」することとなった。本書は、著者がそのような生活のなかで、日常に溢れる様々な事柄を言語学者目線で眺めて考えたことを綴った言語学エッセイ。世界の多種多様な言語の例を用いながら、言語の世界の豊かさを描き出す。

<読む前の大使寸評>
言語学者による言語学エッセイってか、面白そうである。
でも、覗いてみると文中に難読漢字がいっぱいで・・・この見せびらかしはいただけないでぇ。

rakuten フィールド言語学者、巣ごもる


先ず「まえがき」の冒頭部分を、見てみましょう。
p2~5
<まえがき>
 日常には言語が溢れている。言語が溢れていないところは、人間のいないところだけだ。
 言語学者は言語を食い物にしている。言葉を選ばなければ。だがしかし、その事実を改めて大っぴらにしてしまうと、「危機言語が消滅したら、言語多様性が失われたら、マズいよね!」などと言語学者が幾ら声高に、意識高そうに訴えたところで、「我々の餌がなくなりそうだから、皆も気を付けて!」に聞こえてしまって白々しく響きそうだから、言葉遣いには気を配らなければならない。開けっ広げにそんな言いかたをするのは止そう。ちなみにここでの「我々」は聞き手(あなた)を包括していない。聞き手(あなた)を除外した集合である。

 もとい、言語学者は言葉に意識を向けがちである。〇っか(なまじっか)言語について考える思考基盤の知識を身に纏ってしまっているため、意図的にその意欲を封じ込めない限り、不図(ふと)した瞬間、耳目に触れた言葉を、言語学的に矯めつ眇(すが)めつ愛で始めてしまったりするのが、言語学者の多数派である。僕はそう信じている。怠惰な生活態度に定評のありそうな僕ですらそうなんだもの、他の研究者たちはもっと熱心に物思いに耽(ふけ)っているに違いあるまい。

 言語学メガネを着用すると、日常の暮らしの中に、隠された一面が伏流のように存在しているのが、さもAR(拡張現実)かの如くに見えるのだ。

 本書は、フィールド言語学者である僕が、高尚さのかけらもなしに、そんなふうに言語学目線で漫(そぞ)ろに思った日々のアレコレを詰め込んだ一冊となっている。フィールド研究者を謳(うた)っていながら、世界規模の新型コロナウイルス感染症蔓延でフィールドに出られなくなり、テレワークも推奨されて、2020年の春以降は長らく「巣ごもり」をすることとなった。
 そしてそんな妙な事態になったものだから、時間の余裕ができるのかもなどと勘違いして、筆のまにまに書き出したのである。

 言語学は誤解されることの多い学問である。
 小中高では学ぶ機会が与えられないし、大学に入ったからと言って全員が必須教養として学んだりはしない。けれども名前は素直に「言語についての学」なので、日々言語活動をしていて、言語に関して思うところのある市井の人々は、自分の持つ言語に対する様々な悩みや願いや一家言を、この学問こそが解決してくれるに相違あるまいと信じてしまいがちなのではないだろうか。

 学習している言語が巧く話せるようにならないんだけど、何とかして欲しい。
 コンビニや飲食店の店員が間違った言葉遣いをするのが許せない。
 日本語とタミル語とは元々同じだったのだ。(断言)
 「ひょんなことから」の「ひょん」の語源を、言語学者は教えてくれるだろう。
 日本語は世界一難しいんですってね。
 言語学者は何ヶ国語もべらべら喋る人種。
 この漢字の由来を知りたいんだけど。
 詩作をしているので、語彙力を伸ばす方法を知りたい。
 然々云々(しかじかうんぬん)エトセトラエトセトラなどなど。
 言語学は、言語に関する現象なら何でも扱い得る。暴食にして雑食、悪食だって厭わないかもしれない。

 だが、それは言語学を総覧すればの話であって、個々の言語学者が八面六臂に言語周りの森羅万象をスーパーコンピュータ宛(さなが)らに分析して結論付ける魔法使いだという意味ではない。広大な言語学畑のどこでどんな農作物が育っているかを、総覧できる者なんてのも存在しない。
 自分の専門界隈と、関心の届いた範囲しか知らないのは、言語学に限らず、どんな学術分野でも、非学術分野でも同じ話だ。言語学者だけが際立って高い知能を持っている生物だなんてことはないのだから、当然だろう。

 だけど、教科書や入門書といったものは、言っては何だが、堅苦しい。「言語学入門!」みたいな看板を掲げられてしまうと、今風に言う敷居が高い感じがして、尻込みしてしまうのではないか。一歩踏み込んだが最後、言語学徒にならなければならない圧力が待ち構えているかも知れない恐ろしさが、「入門書」にはある。怪しげな洋館に肝試しに入ったら、途端に入口の扉が固く閉ざされて帰れなくなってしまうかも、といった、ありきたりホラー展開を予期して忌避してしまうのも無理はない。

 そこで、だ。
 このようにことあらば脱線し、あれよあれよと無駄話をする、微熱に浮かされたようにだらっとした語り口のエッセイで、こっそり言語学についての話をする書籍があっても良いのではないかと思う。心への負担が少ない、魘(うな)されない「隠れ入門書」である。読者諸氏の心的負担軽減のための便宜として、各節を(客観性の乏しい)小難しさ度に準じて並べてある。「読みながら慣れていってね」という構成だ。

 いや、片鱗を見せるばかりで、体系的には教えてくれないから、門前までしか案内しないでいてくれているとも言える。おお、自画自賛だが、何て親切なんだろう。


 ウーム、難読漢字がいっぱいでんな。
 それから、著者のシニカルで衒学的な語り口が面白いではないか♪





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Last updated  2022.12.12 00:08:21
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