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2022.12.12
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『フィールド言語学者、巣ごもる』という本を、手にしたのです。
言語学者による言語学エッセイってか、面白そうである。
でも、覗いてみると文中に難読漢字がいっぱいで・・・この見せびらかしはいただけないでぇ。




吉岡乾著、創元社、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
著者は、大阪の国立民族学博物館に勤務するフィールド言語学者。パキスタンとインドの山奥で話者人口の少ない言語を調査しているが、2002年は世界規模の新型コロナウイルス感染症蔓延でフィールドに出られなくなり、長らく「巣ごもり」することとなった。本書は、著者がそのような生活のなかで、日常に溢れる様々な事柄を言語学者目線で眺めて考えたことを綴った言語学エッセイ。世界の多種多様な言語の例を用いながら、言語の世界の豊かさを描き出す。

<読む前の大使寸評>
言語学者による言語学エッセイってか、面白そうである。
でも、覗いてみると文中に難読漢字がいっぱいで・・・この見せびらかしはいただけないでぇ。

rakuten フィールド言語学者、巣ごもる


第Ⅰ章で「人種のルツボのような北マケドニア」が語られているので、見てみましょう。
p70~73
<言葉とアイデンティティ>
 言葉を社会的な自己の得体への確信、即ちアイデンティティの要とするという発想は、日本ではやや直感的ではない話かも知れない。だが、多言語社会においてはしばしば、自分の立ち位置を定めるために、どの言語を用いるかを選択することが大きく関わる。

 本来、言語と民族とは一対一で対応しない。言語は貸し借りができる点で、民族性とは異なるからである。例えば日本生まれ日本育ちで両親が日本人である僕が、努力の末に日本語以外の言語を話すようになるかも知れない。日本語を忘れるわけではないが、日々の生活をすべてブルシャスキー語で賄うかも知れない。では僕はその時、(民族としての)日本人から、ブルシャスキー語を民族語とする民族であるブルショ人に変貌を遂げるのだろうか。

 そんなことはなかろう。
 だから、ある言語を話すことと、ある民族に属することとは必ずしも一致しない。けれども、時と場合によって、民族性の論拠に使用言語を持ち出すことはある。

 北マケドニアで話される、インド・ヨーロッパ語族スラヴ語派のマケドニア語と言う言語がある。この言語は、今でこそ落ち着いてそう呼ばれているが、紆余曲折があった。歴史的に来たマケドニアの地が、色々な国に属していた過去があるため、国としての独立も認めたくなかった周辺国に、客観的に言えば、虐められた感じになっていたのだ。
 ブルガリアはこの言語をブルガリア語の一方言に過ぎないと訴えたし、旧ユーゴスラヴィアも、セルボ・クロアチア語(セルビア語とクロアチア語とボスニア語とを同一視した言語)の一方言に過ぎないとし、だから「正しい」セルボ・クロアチア語を学ぶように嗾(けしか)けた。ギリシャはギリシャで、古くアレクサンドロス三世などといったマケドニア人が話していた。ギリシャ語派の古代マケドニア語があり、現マケドニア地域で話される現代ギリシャ語まけどにあ方言もあるので、それ以外に「マケドニア語」を認めないと言い出した。
 注目したいのはブルガリアの訴えで、方言とはいえブルガリア語を話しているんだから、北マケドニアはブルガリアに属すべきだという含意がそこにはある。

 今や、マケドニア人という言葉は三つの異なる集団を示している。①古代マケドニア人も、②ギリシャ北部のギリシャ系のマケドニア人も、③マケドニア語を話すスラヴ系マケドニア人も、マケドニア人なのだ。この③は、言語によって線引きした民族認定だ。

 ロマ、ドマと自称するような、定住したり流浪したりするユーラシア西部に広く散り散りに分布している民族、いわゆる「ジプシー」は、その実、多様な民族が混在してしまっているし、ロマに語やドマリ語、ロマブレン語といった民族語も、もう話さないメンバーも多い。そんな彼らは、最早言語だけにアイデンティティを求めることは少なくなっているだろうけれど、ロマニ語にはこんな、言語に内包された社会的価値を口伝する素敵な諺がある。
 Amari chib si amari zor 「我々の言語は我々の力」
(中略)
 思えば、生まれ育った関東でも、大学などで色々な出身の者が集まっている際に、不思議と関西出自の人たちは自分の方言を使い続けているのが窺(うかが)えた。東北の人や九州の人や、房総の人も北関東の人も、たまたま知り合いの全てが地元方言を習得していなかっただけという可能性もワンチャンあるが、小中高の国語の授業で習ってきて、全国放送のNHKアナウンサーが口にしている「標準語」を用いているのとは打って変わって関西人たちは、狷介不羈(けんかいふき)に「ちゃうやろ」「どないやねん」「しばくで」みたいな言葉を使っていたのだった。あまり憶えてはいないけれども、「標準語」とは違ったことが多い。

 関西方言の力が強いからなのか、関西人が強いからからなのかは知らないが。そしてそれは強さなのか、協調性のなさなのかも分からないが。本気で関西を日本の中心だと信じているだけの可能性だってあるんじゃないか。知らんけど。

おお 「知らんけど」で終わるところが、いかにも言語学者やないけ♪

この本も 言語・方言のインデックス に収めておくものとします。

『フィールド言語学者、巣ごもる』2 :「語学挫折法」なるもの
『フィールド言語学者、巣ごもる』1 :「まえがき」の冒頭部分





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Last updated  2022.12.12 14:54:07
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