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2023.03.12
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場』という本を、待つこと5ヶ月ほどでゲットしたのです。
 御年61歳の特ダネ狙いの著者が決死の覚悟でかましたドキュメンタリーとあれば・・・読むしかないで。




宮嶋茂樹著、文藝春秋、2022年刊

<「BOOK」データベース>より
2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻。不肖・宮嶋は還暦過ぎの老体にムチ打って「ワシが行かんと誰が行く?」と最後の戦場を目指す。3月12日にキーウ入りして以来、4月17日に出国するまで各地で取材。そして5月、ふたたびウクライナへ。戦火の下、不肖・宮嶋が見た「戦場の真実」とは?

<読む前の大使寸評>
御年61歳の特ダネ狙いの著者が決死の覚悟でかましたドキュメンタリーとあれば・・・読むしかないで。

<図書館予約:(10/09予約、副本1、予約12)>

rakuten ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場


「第5章 最前線イルピンへ」でイルピン取材の続きを、見てみましょう。
p109~113
<イルピンなのか?>
 森の中を進むこと5キロ。急に目の前が開けた。穴だらけの道路標識や破壊された焦点の看板からイルピンの文字が読める。デニスにも念を押す。
「イルピンなのか?」
「ああ、自分の目で確かめてみろ」 
 霧に霞む通りに見えるのは迷彩服姿の軍人や顔まですかっりフルフェイスのマスクで覆った特殊部隊ルックの一団ばかりで一種異様な活気に溢れていた。

 やっと、やっとたどり着いた最前線の町である。何から撮ればええんや。とりあえず目の前にあるものはみんな撮っておくことや。電池が尽きるまで。ここまでのイライラを吹き飛ばすようにかたっぱしに撮り始めた。

「町の中心部はこっちだ」
 あきれたようにこちらを見ていたデニスが首をしゃくる。ここまでの一本道がさらに北に伸びてい・・・ない。なんや、これ? 霧モヤの天候もあいまって一種異次元の世界が目の前に広がっていた。
「ここがそうやったんや」
 目の前にあったというか、なかったというか、ニュース映像で観たイルピン川と橋であった。

 ここがウクライナ軍がロシア軍の首都への侵攻を遅らせるために自ら爆破したイルピン橋があったとこなのである。そのためイルピンから避難してくる市民は敵弾の下細いはしけを渡るしかなく、その地獄絵図は世界中に配信されていた。

 それが今も目の前に広がっていたのである。
 さらに今も、その細いはしけを渡って市民が避難し続けているのである。負傷者が担架で運ばれ続けているのである。
  不肖・宮嶋、こんな稼業を40年続けてきたのである。その間自らが踏んだ修羅場の数を自慢する趣味は持ち合わせていないが、そのどれよりもカオスなのである。しいて挙げるなら東日本大震災直後に目のあたりにした大型船が山を登り船やバスが屋根の上に鎮座する超現実的な光景ぐらいである。

 次々に運ばれてくる担架や負傷者に向けてシャッターを切り続ける。
 担架を担ぐ救急隊員の視線や罵声が突き刺さる。
「のけ! こら! 邪魔なんじゃ!」
「何やっとんじゃー!」
「そのクソカメラごと川にたたきおとすぞ!」

 人一人満足に通れないはしけやなかったら、ほんまに突きおとされかねない。違う。活気に溢れていたのではなかった、ここにいる皆が殺気立ち、それがこちらにむけられていたのである。

 くどいようやがこんな稼業を40年である。いろんな状況下で我々は顰蹙を買ってきた。しかし今日ほど言葉がマジに聞こえたことはなかった。今ほど視線が痛い時はなかった。二重にした防弾チョッキも彼らの視線は防いでくれなかった。

<罵詈雑言>
 なにを撮っても問題ないだろうとタカをくくっていたのかデニスまで首をひっこめている。逃げるようにはしけを渡り町の方向に向かう。橋の下を進むうちに暗さに目が慣れてきた。そこには雨を避け、キーウへの脱出の機会を待つ避難民に加え、最前線から交代でここまで撤収してきたのか迷彩服の群衆がうごめいていた。

 この顔で外国人と分かり、肩から下げていた道具でこちらの稼業が知れるや再び非難の視線と罵詈雑言を浴びせられた。ここが暗い分、目がぎらつき、さらに怖い。この人数である。様々な部隊が混在しているのであろう。中には高級将校もいるのであろうが部隊が違えば指揮系統もかわり統率もきいかないのであろう。

 中にはきれいなクィーンズ・イングリッシュの発音まで聞こえる。その内容は四文字言葉のとてもきれいとは言えんものだったが。あの一団は外人部隊、おそらく義勇兵。絶対にレンズを向けてはいけない方々であろう。これはいくら無神経な不肖・宮嶋もたまらんと橋からはずれ街へ向かおうとして、すぐ止めた。
(いかん、土の地面や・・・)あの悪運強かったロバート・キャパですら何十人もの将兵が通ったあとに地雷を踏んで命を落としたのである。


『ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場』1 :最前線への取材ルート





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Last updated  2023.03.12 00:02:12
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