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2023.06.21
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『言葉の周圏分布考』という本を、待つこと10ヶ月ほどでゲットしたのです。
テレビ番組『探偵!ナイトスクープ』を通じて著者・松本修さんが敢行した“方言の全国市町村アンケート”が気宇壮大ですごいのです。




松本修著、集英社インターナショナル、2022年刊

<「BOOK」データベース>より
テレビ番組『探偵!ナイトスクープ』で「全国アホ・バカ分布図」を完成させた著者が敢行した、方言の全国市町村アンケート。膨大な回答を基に作成した圧巻の五十数枚のカラー方言分布図で、懐かしい言葉に楽しく再会!分布図は文献にない言葉の歴史解明にも力を発揮。『源氏物語』に登場する「戻る」の謎を解く壮大な知の旅に誘います。また分布図には、京都を中心に見事な多重の円が現れました。日本語の「周圏分布」についても、深く論じます。

<読む前の大使寸評>
テレビ番組『探偵!ナイトスクープ』を通じて著者・松本修さんが敢行した“方言の全国市町村アンケート”が気宇壮大ですごいのです。

<図書館予約考:(8/15予約、副本1、予約16)>

rakuten 言葉の周圏分布考

分布図
「全国アホ・バカ分布図」

まず「はじめに」を、見てみましょう。
p3~7
<はじめに>
 日本語。私たちが使っているこの言葉は、長い年月、二重の意味で日本を旅してきました。
 徳川前期の俳人・松尾芭蕉(1644~94)が『おくのほそ道』(1702刊)の冒頭で、時について、旅になぞらえてこう綴っているのを、私たちは知っています。

 月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた“旅”人なり。

 つまり月日とは、永遠の時を行き過ぎる客であり、去来する年もまた旅人であると・・・。であるならば、時を生きる言葉もまた歴史の旅人であったと言うべきでしょう。
 しかしその言葉の旅には、ただ時を流れゆく旅とまったく別に、さらにもうひとつ、驚くべき旅が重なっていました。日本語は、都(みやこ)で日々新たな生まれては、地方に向けて、地を這うような、まったく違う旅をもまた続けていたのです。

 都で栄えた新しい日本語の語彙や文法事象は、やがて都を出で発って地方へと歩みを進め、峠を越え川を遡って諸国の町々に、さらにそこを拠点に、辺境の村々まで旅しました。
 古くから、政治・文化の中心であった日本の首都は、主に畿内のエリアで変遷しました。その中で九重(ここのえ)に花ぞ匂える京は、西暦794年もの長きにわたって首都の地位にあり、威光に満ちた日本文化の発信センターでした。もちろん、言葉においてもこの地位は変わらず、京は、新しい日本語を生み出す聖地だったのです。現在の日本の言葉、そして方言の多くは京で育まれ、地を這う旅を四周に続けた結果として存在しているのです。

 私たちのテレビ番組『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送テレビ)で「アホ・バカ」の謎を解明するため、私が方言学を学んだ師は、当時、おおさか大学教授だった徳川宗賢先生(1930~99)でした。徳川幕府八代将軍、徳川吉宗に繋がるお方で、「殿」と見まがう風格のある先生でいらっさいました。

 京の都で生まれた言葉は、マスコミも教育制度もなかった昔、人から人へ「口伝て」で全国に広まりました。徳川先生にお会いした当時、先生のご研究では、言葉が都から地方に向けて伝播する速さは、定規で測った直線距離で、1年間に930メートルという計算でした。年速は1キロ弱。長い年月の間に政治や交通などさまざまに変化・進展があったにもかかわらず、言葉の旅の年速は1キロ弱であっただろうというのです。

 方言学の泰斗・井上史雄先生(1942~)に、『日本語は年速1キロで動く』(2003)という著作があります。主として現代を生きる若者らの「新方言」が広がる速度を考察した研究ですが、そこでも「大きな傾向として、年速1キロ弱というのを手がかりにしてよさそうである」と結論されています。
 都の言葉は地方に向けて、東西南北同じような速度で広まりました。その結果、京の古語が、日本の東西に「周圏」(周りに圏をなす)分布をする跡を残したのです。

 たとえば京から現代の首都・東京のある武蔵国までは、直線距離で360キロばかりです。この地に辿り着くために京を旅立った言葉は、およそ400年もの年月をかける、遥かな旅をゆかねばなりませんでした。つまり、これは記憶すべき重要なポイントですが、関東の言葉は、室町後期から徳川前期にかけての京の古語をベースに成立しているのです。

 東北の北部や九州の西南部は、京から600~800キロも離れているため、ここまで辿り着くには、さらに長い年月がかかりました。本土両端のこれらの地域には、700~800年も前かもしれぬ、さらに古い京の言葉が残されることになりました。

 ただ北海道は、この言葉の旅にはあまり縁がありません。西南部の渡島半島など一部を除き、北海道は近世までアイヌ人の地、すなわち蝦夷地であり、和人が大量に入植した歴史は明治以降と、きわめて新しいからです。

 また、琉球列島についても、言葉の旅の仕方は、本土とは異なります。古代より、本土の人々が九州南部から舟に乗って移住するという形で和語を運びました。1500年以上前から和人がこの南の島々に移り住み、1429年に琉球王国が建設されると、本土と隔絶された国家として、独自の歴史を歩みました。
 その結果、琉球王国が支配した沖縄県と鹿児島県の奄美地方とは、日本語の祖先を豊かに残す、奇跡の地となったのです。

 ところで「日本」という国号が公的に定まったのは、飛鳥浄御原令の施行(689)以来と言われます。それまでは「ヤマト」と名乗っていました。これは千数百年の時を経て、現代でも琉球の人々が本土の人を「ヤマトゥンチュ」と呼ぶのに反映されています。

 私はこの本で、日本の魅力ある言葉たちが、どんな風に生まれ、どのくらいの歳月をかけて日本列島を旅したかを、できるだけわかりやすく、かつ楽しく解き明かそうと試みます。





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Last updated  2023.06.21 00:16:59
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