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2023.08.22
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『本の夢 本のちから』という本を、手にしたのです。
おお、SFにまみれた椎名ワールドが見えるではないか♪



椎名誠著、新日本出版社、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
世界はまだまだでっかく面白い。本から湧き出す夢とちから!魅惑の椎名ワールドを楽しもう!
【目次】
1 めざすむこうは笑い雲(ウィルスから宇宙へ/辺境地帯の現場読み ほか)/2 旅の空ー星の下で食べる(ドロリ目談義/信じようが信じまいが ほか)/3 惑星の丸かじり(ガリバーの悩み、ゴジラの反省/ヘビ食い ほか)/4 沢山のロビンソン(明るいインド/素晴らしいぐにゃぐにゃ風景 ほか)

<読む前の大使寸評>
おお、SFにまみれた椎名ワールドが見えるではないか♪

rakuten 本の夢 本のちから



「Ⅳ 沢山のロビンソン」に極限の旅が語られているので、見てみましょう。
p216~218
<素晴らしい苦痛、極限の旅>
 1984年の冬と翌年の夏、3ヵ月かけてシベリアを横断した。同じ場所で冬はマイナス59度、夏はプラス35度という極端な温度差の世界を歩いた。井上靖著の『おろしや国酔夢譚』(文藝春秋)のテレビドキュメンタリー化に伴う仕事だった。

 放映時間5時間にわたるシベリア横断のドキュメンタリーは、大黒屋光太夫という日本人の船乗りとその17人の仲間たちの10年間にわたるシベリア流浪の足跡を丹念に追っていく、というものだった。

 17人の日本人は天明2年(1782年)に伊勢の白子を船出して、そのままアリューシャン列島のアムチトカという島に流され、カムチャッカを経てシベリアへ渡り、そこを横断している。その間に次々と飢えや凍傷で仲間たちは死に、あるいはロシアに帰化し、10年後に日本に帰ってきたのはわずか3人だった。

 この男たちの跡を追う3ヵ月がかりの旅はまず彼らが最初に漂着したアムチトカという島からはじまった。この島でぼくは人間の強さとか“慟哭”というすさまじい心の中の問題の片鱗にすこしだけ触れることができたかもしれない、と思った。

 アムチトカというのはとにかくすさまじい島だった。アリューシャンの荒波と北からの烈風に絶えずさらされているので、島にはエンピツより太い木は1本も生えていないのだ。

『おろしや国酔夢譚』の原本は『北嵯聞略』(吉川弘文館)で、それは日本に帰国した大黒屋光太夫が語った、10年間の漂流体験聞き書きの書である。そこには、アムチトカのことがこんなふうに書かれている。
「此島の人は皆穴居也。さて此処にて菜の如きものを与ふ。後に見れば海辺の石上に生きる草の葉を煎じたるなり、兎角する内に日もたけ空腹になりける故、口を指さし腹をたたきて見せれば、一尺計なる魚を草につつみて潮蒸にしたるを、説いたのごときぜんにすゑ、何やらん白酒のごとき汁を木の鉢にもり、木のさじを添て与へける。此魚はスタチキイとてあいなめの類なり。知るはサラナといふ。即ち、黒百合の根を水にて煮、つきただらし、水にてゆるめたるものなり」

 17人の日本人船乗りたちはこの島に4年間いた。その間、かれらの常食というのは、このあいなめの塩蒸しと黒百合の根の汁だった。あとはわずかな貝やウニのたぐいで、この北の果ての荒涼とした孤島ではほかの食べ物を手に入れることができないのである。
 4年のあいだにこの島で飢えや寒さで8人の仲間が死んでいる。
 大黒屋光太夫らが漂着した当時、この地の果ての句会のような島に、『北嵯聞略』の表現でいうと獣か鬼かと思われるような恰好をした現地人が住んでいた。そしていま200年後に訪れたこの島はアメリカの水爆実験の島として鳥のほかは住む動物もいない風の叫ぶ島だった。ぼくはここで7人の男たちとてんと張り5日間ほど滞在した。そして日本人漂流者が住んでいたとみられる海岸や丘を歩いた。

 5月というのにいたるところに雪が残り、1日中烈風が吹きすさぶこの島はまさに死の島だった。ここに、日本人があいなめと黒百合の汁を食って4年間も暮らしていた、という事実は、現場を歩いてみるとまさに重い迫力をもって我々の体にのしかかってきた。


『本の夢 本のちから』4 :ドロリ目談義
『本の夢 本のちから』3 :ロバやヤクとの旅
『本の夢 本のちから』2 :辺境地帯の現場読み
『本の夢 本のちから』1 :SFとの関わり





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Last updated  2023.08.22 02:31:57
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