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2023.09.26
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『内モンゴル紛争』という新書を、手にしたのです。
著者は内モンゴル出身のモンゴル人で、静岡大学の教授とことであるが・・・
内モンゴルで起きたジェノサイドを告発してやまないのです。




楊海英著、筑摩書房、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
2020年夏、中国政府は内モンゴルの公教育からモンゴル語を排し、中国語を母語として押しつける決定を下した。なぜ中国は民族同化政策を採ろうとするのか。それを理解するにはユーラシア史の中でモンゴルを見る地政学的視点が必要だ。遊牧民の世界、チンギス・ハーンのモンゴル時代、イスラームとの関係、近代国家形成・民族自決問題、日本による植民地化、ソ連・中国による分断などのモンゴルの歴史の要所を明快に解説。そこから現在の内モンゴルにおける紛争の深層を照射する。

<読む前の大使寸評>
著者は内モンゴル出身のモンゴル人で、静岡大学の教授とことであるが・・・
内モンゴルで起きたジェノサイドを告発してやまないのです。

rakuten 内モンゴル紛争



「第4章 言語の民族問題」でモンゴル人が使うキリル文字が述べられているので、見てみましょう。また、中華の過酷な同化政策が語られています。
p114~118
<社会主義制度下の言語問題>
 中国政府は2020年6月末、あたかもモンゴル語教育に安楽死を命じるような政策を公表した。このような政治的目的を帯びた秘密の公文書は、特別なルートで内モンゴル自治区に届けられた。公文書は、それに不満を抱くモンゴル人幹部たちの手で外の世界に漏洩された。

 政府公文書は、2020年秋の新学期から、小・中・高校におけるモンゴル語教育を停止するという内容である。具体的には小学校では「道徳」の科目の授業を中国語で行い、中学以上では「モンゴル語」以外をすべて中国語に切り替える。モンゴル語による理数系の授業がすべて停止を命じられ、代わりに中国語の使用が決定された。小学校でも三年生からモンゴル語だけでなく、中国語と英語の併用は以前から導入されてきたが、実質上は中国語一辺倒である。

 中国政府の口実もまた傲慢であった。中国語をマスターすれば、将来の進学と就職に有利だと政府は公的なメディアを動員して宣伝する。いわく、モンゴル語は先進的な科学技術や中国流の思想道徳を教えるのに不向きで、「優れた言語」である中国語こそがIT時代に相応しいという。同時に裏では「モンゴル語は立ち遅れた少数者の言語で、近代化に不向きだ」と中国人幹部たちは説得して回っていた。

 最初は大勢のモンゴル人教師が失職の危機感から抵抗を始めたが、次第に民族文化そのものが消されるという同化政策に対する怒りが拡大していったのである。自治区最西端では、ソメナという若いモンゴル人の女性公務員が自殺でもって抗議した。中央部のエレーンホト市でも、ウラーンというモンゴル人女性校長が自らの命を絶って政府の命令に抵抗した、それでも、中国政府は弾圧を緩めなかった。解放軍と警察を動員して学校を閉鎖したうえで、中に閉じ込めた児童らに対し、予定通りに中国語教育を強行している。

 ここで、筆者が提唱する民族地政学の中でも、特に重要な成分である民族言語、具体的にはモンゴル語・モンゴル文字の使用状況について、振り返ってみる必要があろう。
 モンゴル人は統一国家こそ建立できなかったものの、せめて言語の統一性を維持しよう、と1949年以降も努力してきた。内モンゴル自治区の指導者ウラーンフーは1954年に、言語学者で、満州国時代に教育を受けたエルゲニトクトホとガワーらの知識人を動員して『モンゴルの歴史と言語』という雑誌を創刊させた。

 国立のモンゴル語研究所の研究者たちは、近代化時代のモンゴル語の役割についても、熱心に議論した。新しい概念を言い表すのに、「一に発掘、二に創造、三は借用」との三原則を設けた。
 それは、まずは豊富な古典から発掘するが、限界があれば、創造する。それでも、新語彙にならない場合は、ロシア語などヨーロッパ系の言語から借りる、との原則であった。モンゴル人はユーラシアの民族であり、中国語よりもヨーロッパ系の言語が発音しやすいからである。
(中略)
 言語の面での統一はまた広く実践されていた。それは、1957年まで、内モンゴル自治区と新疆ウイグル自治区でもキリル文字が使われていたということである。モンゴル人民共和国はソ連一辺倒の政策を採り、次第に伝統的なモンゴル文字を使わなくなって、ロシアのキリル文字に切り替えていた。キリル文字の方が、社会主義ソ連型近代化のシンボルだったからである。
 中国もソ連を「革命の師」、モンゴル人民共和国を「社会主義の先輩」として仰いでいたので、キリル文字が教育の現場で用いられるのに最初は反対しなかったのである。要するに、中国とソ連、それにモンゴル人民共和国のモンゴル人は共にキリル文字による表記を共有していたのである。当時、中央ユーラシアのチュルク系諸民族もソ連邦に編入されていたので、彼らもまたキリル文字による教育を受けていたのである。

 1950年代後半から中ソが反目し合うようになると、中国は域内のモンゴル人とウイグル人のキリル文字使用を禁止し、促進派を粛清した。それ以降、中国・内モンゴル自治区は伝統的な縦書きのウイグル文字を守り続け、中国政府も奨励していた。筆者の親の世代の多くがキリル文字で読み書きができたので、子どもの頃から羨望の的であったのを覚えている。


『内モンゴル紛争』2 :モンゴル族の悲哀
『内モンゴル紛争』1 :無策の21世紀の民族問題





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Last updated  2023.09.26 00:05:58
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