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2024.01.23
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『満州国グランドホテル』という本を待つこと1ヶ月ほどでゲットしたのです。
手に取ると、けっこう分厚い本であるが・・・全部読むわけでもないので、まあいいとしよう。




平山周吉著、芸術新聞社、2022年刊

<「BOOK」データベース>より
「二キ三スケ」(東条英機、星野直樹、松岡洋右、岸信介、鮎川義介)だけで満洲は語れない。「一ヒコ一サク」(甘粕正彦、河本大作)が隠然たる影響力を行使する。再チャレンジ、前歴ロンダリングも許される自由の天地。「五族協和」の理想を信じた人たちの生と死。既存の満洲国イメージをくつがえす、満洲の土を踏んだ日本人の奇妙にして、真剣なる「昭和史」物語。

<読む前の大使寸評>
手に取ると、けっこう分厚い本であるが・・・全部読むわけでもないので、まあいいとしよう。

<図書館予約:(12/20予約、1/20受取)>

rakuten 満州国グランドホテル


著者・平山周吉さんの「小津安二郎」が大佛次郎賞を受賞したが、この際同氏の「満州国グランドホテル」が気になるのです。
勝手ですが、村上春樹の名が見られるあたりから、見てみましょう。
p379~382
<第27回 「事件記者」島田一男と「ねじまき鳥」村上春樹の「国境線へ行く」>
「新聞のハルピン特派員だった私にとって、昭和14年は実に憂鬱な年であった。満州事変以来、幾度か戦闘に従軍し、いつでもノウノウと戦勝の美酒に酔っていたのだが、その年初めて負け戦のみじめさを嫌というほど味わされたのだ。ノモンハン事件である。
 5月11日、日ソ両軍が蒙古の大草原で激突した。翌日、私はハイラルに飛んで、機械化部隊の榊原兵団に従軍して第一線に出ていたのだが、これは惨憺たる戦いであった。火炎放射器の猛攻を受けた戦車の中には、焼き鳥のようにクルクルッと丸まった友軍兵士の死体が転がっていた。ピアノ線と称する新式の鉄条網には、無数に日本兵の戦死体がぶら下がっている。完敗だった。私は、敗残部隊とともに、リュックも、水筒も捨て、蹌踉としてハイラルへ逃げ帰らねばならなかった」

 かつてNHKで「事件記者」という長寿番組があった。昭和30年代の人気ドラマで、警視庁詰めの記者たちの群像ドラマである。私が記憶しているのは記者たちが夜な夜な集まる小料理屋「ひさご」のシーンだけしかない。
 ドラマの影響で新聞記者となった人は多く、その中には池上彰もいた。その「事件記者」の作者が推理小説作家の島田一男である。島田が戦前の記者時代を回想した『中国大陸横断 満州日報時代の思い出』の中に、上記のノモンハン従軍の一節が出てくる。

 島田は満州事変の年に満州日報に入社した。24歳だった。「学校ルンペンの私も、新聞社の空気が性に合ったのか、終戦で会社がつぶれるまでの十余年間を勤続することが出来た。この間の記者歴も、半分は社会部記者で、半分は従軍記者であり、陸海軍の報道班員であった」と自筆年譜に記している。ノモンハン事件は思い出したくなかったのか、『中国大陸横断』での記述はこれだけである。

 その代わりというわけではないだろうが、昭和10年(1935)に満州国と外蒙政府との間で行われた国境会議の取材余話を書いている。ノモンハン事件は草原地帯の国境線不確定が原因で起こった、日満両軍とソ連・外蒙古軍との間の戦争だった。
「いうなれば、昭和十年から二、三年間は、張鼓峰・ノモンハンの大噴火を控えての鳴動期であり、延々6千キロにわたる国境線は、重っ苦しい戦雲に包まれていたのであった」。

 島田はソ連との国境・満州里への出張を命じられる。「満州里といえば満州国北西の国境の町だ。私のいた大連からは、満鉄自慢の特急と万国寝台列車(ワゴン・リー)を乗り継いでも丸二昼夜はかかる」。相棒はいつもの山口晴康写真部長だった。

「八時を過ぎると、武装した国境の町は、真夜中のように静かになる。この不気味な静寂は、陸の国境を持っていない日本にいては、ちょっと想像もつかないだろう。静かだが決して眠ってはいない。スパイが、密輸業者が、新しい天地を求める脱出者が、目を血走らせて、越境の機会を狙っている。そして、トンガリ軍帽のソ連兵と戦闘帽の満軍兵士とはたがいに越境者を警戒して、闇の中で銃を構えているのだ。
 どこからか、哀情切々たる蒙古の古い民謡が、むせぶように流れて来た。唄っているのは[国境会議の満州国側]代表の一人、興安北省省長の凌ショウ氏だった。浅酌低唱開かれぬ会談の無聊を自ら慰めているのか、丸い童顔の凌ショウ氏は壁にもたれて片膝を立て静かに眼を閉じて唄い続けていた・・・」

 何日待っても会議は一向に始まらなかった。ソ連側の焦らし作戦らしい。代表の凌霄からは、自分が護照(身分証明の公文書)を書いてやるから、ダライ湖、ボイル湖を観光してくるといい、と親切な申し出があった。「行こう。・・・外蒙国境を走る・・・、ちょいとハッタリをきかすと、きわ物のいい読み物が出来るぜ」と即決した。島田と山口は凌ショウから、「ゴシャゴシャと漢字と蒙古字を書き並べ、大きな判を、ベタベタといくつも押した黄色い唐紙の護照」をもらった。代表のもうひとり下村信貞参事官は蒙古旅行の経験があり、細々と注意をしてくれる。
「第一に、飲用水を充分に用意して行くこと・・・、蒙古では、水は金よりも貴いのだから、ちょいと飲ましてもらうというわけにはいかない。次に食料・・・。パンをたっぷり持って行くこと。普通の食パンは固くなるから、ロシア式の黒パンがいいだろう。それから、毛布を一人あて三、四まい・・・。沙漠の夜は、ものすごく冷える・・・。最後にだな、蒙古女にはくれぐれも気をつけること・・・。蒙古梅毒はおっかねエぞ。こんなものをしょわされたら、一生台なしだ。護照がモノをいうんだよ。それにね、どういうもンか、蒙古人は日本人が好きなんだ。女がね、勇敢な日本人のタネをくれと押しかけてくる。やに下がっていると、大事なものがとろけちゃうぞ」

 下村参事官の注意を拳拳服膺して、車で出発である。運転手は満州里ホテル(ロシア家屋を改造した日本式旅館)のロシア人客引きグリコフが引き受けてくれた。車はというと、「馬に乗れない満州国皇帝陛下が、閲兵する時に使うような四角ばった黒塗りのオープン・カー」で、車体はロールス・ロイスだが、エンジンは不明、タイヤは継ぎだらけというシロモノである。それでもバルガ大草原を快調に進んだ。
「突然、ダダダダッ・・・、静まり返った空気をひき裂いて、銃声が響いた。四、五十メートル前方から、弾着の土煙が、シュシュシュッと、稲妻形にのびて来る。キューンとグリコフが急カーブを切った。おんボロ自動車が、尻を跳ね上げて突っ走る。幸い、銃声は続かなかった」

 軽機関銃を射ってきたのは外蒙古の国境警備兵だった。射たれた場所は国境の西方、つまり外蒙でなのだから、射たれて当たり前だった。国境といっても、広い野っ原に標識一つあるわけでない。外蒙兵も本気では射たなかったろう。「放牧の羊や馬は、悠々と満州外蒙両国の草を食っている。これじゃ、越境した、侵入したといって、ことごとに騒ぎ立て、銃砲をぶっ放し、国境紛争だ・・・といきり立つ方が、無理なんじゃあるまいか、わたしはそんな気持がしてきたのだった」

 島田のこの感想はノモンハン事件以前に持ったのか、以後だったのか。いずれにしても、ノモンハン事件の無益を暗に批判している。





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Last updated  2024.01.23 00:13:02
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