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2024.11.02
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『動物たちの生きる知恵』という本がええわけで・・・
以下のとおり復刻して読み直してみようと、思い立ったのです♪

*********************************************************
図書館で『動物たちの生きる知恵』という本を手にしたのです。
動物たちと先端技術との関係を物理学、工学のセンスで説いているのです。
これが大使のツボを突くわけで・・・・ええでぇ♪



動物たち

ヘルムート トリフッチ著、工作舎、1995年刊

<「BOOK」データベース>より
ダム作りの名人ビーバー、空調システムつきの砦を築くシロアリ、ロータリーエンジンの考案者バクテリアなど、進化の過程を経てエコロジカルな生態を育んできた動物たちと先端技術との関係を明快に解く。

<大使寸評>
動物たちと先端技術との関係を物理学、工学のセンスで説いているのです。
これが大使のツボを突くわけで・・・・ええでぇ♪

Amazon 動物たちの生きる知恵


体の丈夫さには、最先端の工学的知見が反映されています。
(最先端の工学的技術は、体の丈夫さを追っているというべきか)
p54~58
<体の丈夫さ>
 木の幹も草の葉も、外力を受けたときの強さは、ヤング率(E)と慣性モーメント(I)
をかけ合わせた値の大小で決まります。弾性が小さいほど、そして材質が中心にまとまっていないほど、曲げにくくて強い。自然界にはそんな構造がふんだんにあります。とりわけ、重さを支える部分は、できるだけ慣性モーメントの大きい構造になっている。

 植物の茎がたいてい中空なのは、材料を節約するとおともに、曲げに強くするためです。植物では花の根元、イネやムギの茎、タケなどがそうだし、動物ならたとえば鳥が、中空のパイプ構造を骨や羽軸につかっている。ほかにも数えきれないほどの例があります。もうひとくふうして、ところどころにリング状の節をつけ、パイプ構造の強さをぐっと上げているのがタケやヤナギの茎。

 天然ガスや原油を運ぶパイプラインは、よく針金をらせん状に巻いて補強してあります。自然界でも、珪藻の体とか、昆虫の気管、植物の導管がそんな形をしている。こうすると圧縮や引っ張りに強くなるのです。山岳地や極地近くの、暴風にさらされたり大雪をかぶったりする場所の木には、幹の繊維がらせん状にねじれたものがあって、ときには繊維の向きが鉛直方向から30度もずれています。これも外力に抵抗する戦略のひとつ。

 たとえば熱帯のフタバガキ科の巨木が、柔らかい沼地の上で体を支えるために、地上数メートルあたりから地面へ向け、四方へテントのように張っている板根がそのひとつ。周辺もT字形に広げ、慣性モーメントを大きくして折れにくくしているのです。植物たちはそれぞれ伝家の宝刀を抜き、できるだけ高い場所に葉を茂らせて太陽の光をいっぱいに浴びようと競い合っているのです。

 見かけが板のような、あるいはお椀のような構造も、くふうしだいで強くなる。表面を波形にした昆虫の羽は、なかなか変形しません。トンボの羽がしっかりしているのは、ひだ構造だから。バッタの羽も似ていて、扇のようにたためます。ヤシやシュロの広い葉も同じ。軟体動物の殻にも、強度を上げるくふうの歴史がきざまれています。貝殻の表面をよく見ると畝のように波うっていますがこれでぐんと強くなるのです。


流体力学に出てくる摩擦とかレイノルズ数が、動物たちの形を決めたようです。
p79~82
<摩擦とのたたかい>
 水中を泳ぐ、地面を走る、空を飛ぶ・・・そういうときはいつも、摩擦力とのたたかいになります。まわりから水や空気の分子がぶつかってきて、動きにブレーキをかけるからです。水や空気のような物質を流体といいます。流体の中ではたらく物理法則は流体力学という学問で扱いますが、生き物たちは、なるたけ速く、省エネで動こうとして、流体力学を完璧なまでマスターしました。魚雷そっくりな魚の体つき、紡錘形の鳥の体、ヒョウやチータのスマートな体形は、その成果なのです。

 動物が流体の中を動くとき、流体の分子が通り過ぎてゆく速さは、体表面に接したごく薄い層(境界層)の中でがくんと変わります。体そのものの上では、分子は表面にぴたりとくっついているので速さはゼロ。表面から離れるほど速さは増して、数分の1ミリも離れてしまえばもう最高の速さになる。

 体表面のそばほど流れが遅くなるのは、分子どうしに引き合う力がはたらくからで、これが摩擦力を生むのです。流体の粘性が大きいほど、分子の引合いが強く、境界層は厚くなる。体が流体から受ける抵抗の大きさは、まず第一に、この境界層がどんな状態にあるかで決まります。境界層の中で流体の分子が体の表面に平行にすーっと流れている、そういう流れを層流といいます。いっぽう、分子がてんでんばらばらに動き、ミクロな渦がたくさん発生しているなら乱流です。乱流の中では分子どうしがぶつかり合って、運動エネルギーが熱に変わってしまう。だから乱流ができると、こういうエネルギー損失のせいで、動きにブレーキがかかるのです。

 境界層が層流になるか乱流になるかを決める要因は、三つあります。表面の広さ・形と、流体の粘度、流れの速さです。形がまったく同じ(相似形)でも、サイズがちがえば物体のまわりの流れは変わります。流れのようすを表す便利な量に「レイノルズ数」というものがあって、レイノルズ数が同じなら、流れはだいたい似ていると考えてよろしい。レイノルズ数は、流体に接した物体の長さと、流体の密度、流れの速さ、以上三つをかけ合せ、それを流体の粘度で割った値です。

 たとえば体長10センチの魚が秒速10センチで水中を泳ぐとき、レイノルズ数はおよそ1万になります。体長が2センチの小魚なら、秒速50センチで泳ぐときにレイノルズ数がやはり1万で、体のまわりにできる流れの状況はさっきとだいたい同じ。あるいは、体長10センチの小鳥が秒速1.4メートルで飛ぶときと、トンボが秒速15メートルで飛ぶときで、レイノルズ数はほぼ同じになる。体形がひどくちがう動物どうしだと、レイノルズ数だけで比べるのはあまり正確とはいえませんが。

レイノルズ数

 レイノルズ数が小さいほど境界層は層流になりやすいのですが、表面がどんなになめらかでも、レイノルズ数が300万を越せば必ず乱流ができて、エネルギーの損失が生まれます。物体が動くとき、いくら以上のレイノルズ数から乱流になるかは、表面付近にできる圧力分布のパターンと、物体のこまかい形で変わり、表面にエッジや突起があれば乱流ができやすい。反対に、レイノルズ数がうんと小さくて100を切ると、こんどは流体の粘性がきいてきて摩擦抵抗はまた大きくなります。

 魚を例に、動く物体が流れからどんな抵抗を受けるか考えてみましょう。前進するときは水をかき分けるので、頭の部分に水の圧力抵抗がかかります。二つ目に、体の側面を流れる水が、境界層で摩擦抵抗をかけてきます。そしてもうひとつ、しっぽの先端で合流する水が渦巻きをつくって、このときエネルギーが消費されますが、そのエネルギーはもともと魚の運動エネルギーだったものですから、これもやはり抵抗になります。

 まず、エネルギーの損失をなるべくおさえるのに、魚の頭は小さいほうがよろしい。頭の先から胴体のいちばん太いところまでに圧力を少しずつ分散させ、乱流を発生しにくくするのです。さらに、渦巻きができないように、体の表面に凸凹やエッジをつくらない。こういう面倒な要求をすべて満たすのが、魚雷に似た流線形だというわけで、多くの動物たち、とりわけ魚は、じつにきれいな流線形をしています。

マグロ



p10~11
<はじめに>
 生物のしくみは、未来の科学技術につながるヒントをたくさん秘めています。光エネルギーを変換する光合成のしくみだけではありません。葉の蒸散作用は、太陽の熱エネルギーを力学エネルギーに変換します。熱帯ではマングローブの木々が、吸水と蒸散を巧みに組み合わせて、海水を真水に変えています。こうしたしくみは人工技術にも応用できるでしょう。

 いまの科学界は、核の脅威から自国を守るという大義名分のもと、原子力に大金と先端技術を惜しみなくつぎこむくせに、クリーンな太陽エネルギーには目もくれない。じつにもったいない話です。原子力発電をもっと推進しようという声も、大いに疑問のあるところ。原子力は予想外に高くつくし、事故の恐れも大きく、放射性廃棄物は次世代のツケに回ります。それに原子力技術は、自然界のエネルギー利用方法とまっこうから対立するものです。有害な廃棄物など出さずに、無尽蔵のエネルギーを惜しみ惜しみ出し入れするのが、自然界のやり方、本来のやり方なのですから。

 それができるエネルギー源は、太陽光しかありません。地面の1メートル四方に降りそそぐ太陽エネルギーは、昼夜・晴雨・季節の平均で、熱帯の森や砂漠なら250から300ワット、日本だと約150ワット、ヨーロッパ中部でも100ワットを超します。1キロ四方の地面があれば、そうとうな規模の太陽光発電所ができる。植物は太陽光のせいぜい2パーセントしか化学エネルギーに変換できないけれど、育つにはそれで十分。なのに人類はまだ、エネルギー需要を太陽光でまかなう技術をもっていません。

 発電に利用できる不毛の土地や水面はいくらもあるのに、植物を見ならって太陽エネルギーを物質に変えるのはまだまだむずかしいのです。太陽エネルギーの大規模な利用をはばむ要因はいくつかありますが、少数の研究者では太刀打ちできないさまざまな問題を解決しなければいけないこと、長い時間をかけて地道な研究を積み重ねなければいけないことが、大きな壁でしょう。今までの経歴を投げうってでも人類に奉仕したい、そんな気かまえの研究者を集めた専門の研究所ができ、大型予算を回してもいいという世論の盛り上がりができさえすれば、突破口は開けるはずです。

 原子力開発は、戦争と軍事問題の追い風を受けて進みました。エネルギーの枯渇が見えてきた今こそ、太陽エネルギー利用を真剣に考えるべきだし、必ずうまくいくと私は確信します。じじつ自然界は今から何十億年も前、エネルギーの枯渇に直面して光合成のしくみをあみだし、危機をみごとに乗り越えたのですから。


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■2016.03.02XML
『動物たちの生きる知恵』3
https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201603020001/
『動物たちの生きる知恵』1
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