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2024.12.02
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カテゴリ: メディア
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
内田

最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、西加奈子さんは♪で区別します。今回表示分は*)

*兵庫県知事選とメディアの役割
*自由の森学園創立40周年記念講演「教育と自由」
・「パンとサーカス」解説
・共感ベース社会の陥穽
・死ぬってどういうことですか?
・2024年度寺子屋ゼミのテーマは

・『本の本』あとがき
・「宗教の本領」とは何か?
・『街場の米中論』を読んで
・月刊日本インタビュー「ウクライナとパレスチナ」
・高校生に言いたかったこと
・宮﨑駿『君たちはどう生きるか』を観て
・平川克美『「答えは出さない」という見識』(夜間飛行)書評
・「怪物」公式パンフレット解説
・白井さんと話したこと
・3.11から学ぶこと
・韓国の地方移住者たちに話したこと

・ウクライナ危機と反抗
・「生きづらさについて考える」単行本あとがき
・「街場の米中論」まえがき
・図書館の戦い
・村上文学の意義について

・安倍政治を総括する
・選挙と公約
・無作法と批評性
・徒然草 訳者あとがき
・勇気について
・病と癒しの物語『鬼滅の刃』の構造分析
・「アウトサイダー」についての個人的な思い出とささやかな感想
・コロナ後の世界 
・格差について
・『コロナ後の世界』まえがき
・紀伊田辺聖地巡礼の旅
・成長と統治コスト
・『日本習合論』中国語版序文
・日本のイデオクラシー
・後手に回る政治
・倉吉の汽水空港でこんな話をした。

(目次全文は ここ )

(その71):『兵庫県知事選とメディアの役割』を追記



2024-11-27 兵庫県知事選とメディアの役割 より
 兵庫県知事選挙は過去に見たことのない展開になった。
 斎藤前知事は、公人としての資質に関わる内部告発があった時に「犯人捜し」を強行して、内部告発者を懲戒処分にしたことが公益通報者保護法違反である疑いを持たれた。百条委員会でも前知事は「処分は適切だった」と譲らず、道義的責任も法的責任も拒否した。その結果、県議会の全会一致の不信任を受けて失職した。その前知事が出直し選挙で圧勝した。

 県議会と対立して失職に追い込まれたが、「県議会と知事と、どちらの言い分が正しいか」という選択を有権者に求めて再選を果たした県知事は過去にも存在した。だが、今回は事情が違う。問われたのは議会と知事の政策上の対立ではなく、斎藤氏個人の資質問題だったからである。だが、公人として適性を欠いているという理由で不信任を突きつけられた前知事はこれを「大胆な県政改革をめざした知事が、守旧派県議会と既存メディアに敵視された」という政治的なストーリーに作り替えて、有権者の支持を集めることに成功した。

 シリアスな問題は「斎藤支持」を掲げた別の立候補者が登場して、百条委員長の県議自宅前で脅迫行為を行ったり、街宣で虚偽の情報を繰り返すという仕方で結果的に前知事の当選をアシストしたことである。おそらくこの候補者は訴追されることになると思うが、公選法の「穴」を利用した、前代未聞の不祥事という他ない。
 斎藤支持者たちはしばしばメディアの取材に「新聞テレビでは前知事に非があるという情報ばかり流れていたが、ネットではそれとは反対のことが言われていたので、そちらを信じた」と述べている。

 ここまでのメディア不信を招いたのはもちろんメディアの側の責任である。これまで筋目の通った、信頼性の高い報道を発信し続けていれば、これほど多くの市民が「メディア不信」を口にするはずがない。
 もちろんネットで配信される情報は「玉石混淆(多くが石)」であり、真偽の判定には高いリテラシーが求められる。だが、そのような批評的知性が必要だという社会的合意も、それを育てる仕組みも現代日本にはない。(AERA、11月20日)


高いリテラシーを持つ内田先生のやや穏当な発言であるが・・・
この問題は兵庫県民たる我が身に関係する切実な問題であるが、斎藤知事が再登板した当日(11/20)には以下のように思ったのです。


ところで、斎藤新知事が19日の初登庁に際して「ワンチームで、謙虚に」と、クレバーな発言があったが・・・どうしても胡散臭いのである。
公選法の不備をつくようなSNS重視の戦略と、県民に分断を持ち込んだ自己中心には驚くのです。
今後ものっけから百条委員会とのヤリトリが予定されていて・・・罪は深いのではないか?
また、にわかに斎藤氏を応援した県民の反応の幼稚さ?も想定外であったし、普段からSNSには近付かない私に落ち度があったのか?




2024-10-11 自由の森学園創立40周年記念講演「教育と自由」 より
 僕は長く神戸女学院大学というところの教師をしておりました。神戸女学院は中学から大学まである女子校ですが、ここも卒業生たちの愛校心に驚かされました。ほんとうに小さい学校なのですが、歴史が長いので同窓会員が3万人ぐらいいます。この3万人の方たちが学校のあり方に大きな影響力を発揮している。
 僕は同窓生が母校の教学や経営に関して発言することは決して悪いことだとは思わないんです。むしろ好ましく思っていました。というのは、同窓生は「母校が変わらないこと」を願うからです。自分が卒業した学校がそのあとどんどん変わって、キャンパスが移転し、カリキュラムが変わり、卒業した学科や学部がなくなる...ということを同窓生は望まない。学校経営者はビジネスマン的なセンスに従って、そういうふうに「時流に合わせる」ことをしたがるんですけれど、同窓会の人たちは変化に抵抗するんです。そりゃそうですよね。自分が卒業した学部学科がなくなるということは、「あなたが受けた教育は意味がなかった。もう時代遅れなんだ」と卒業生に向かって宣告するに等しいわけですからね。卒業生に対して「あなた方が受けた教育はもう社会的有用性を失った」と告げることは、教育機関としては本来恥ずべきことだと思うんですよね。たしかに学科・学部を廃止したり新設したりということは避けられないことではあると思うんですけれど、それに対して学校側はある種の「疚しさ」を感ずべきだと思うんです。
 学校というのは宇沢弘文先生が言うところの「社会的共通資本」の一つです。「社会共通資本」というのは、集団が存続していくために絶対に必要なもので、これは専門家によって専門的知見に基づいて、安定的に管理・運営されなければならない。大気、土壌、海洋、河川、湖沼、森林とかいう自然環境。それから社会的インフラ。上下水道、交通網、通信網、電気ガス。これらも安定的に管理されなければいけない。そしてもう一つ、司法、行政、医療、教育といったシステムですね。これらもまた集団が存続していくためになくてはならないものです。社会的共通資本は急激に変化してはいけないんです。もちろん変化はするんですけれども、ゆっくりとしか変化しない。
 政治や経済は急激に変化するものです。政治や経済は「複雑系」ですから仕方がありません。「複雑系」というのは、わずかな入力変化によって劇的な出力変化が生じるシステムのことです。「北京で蝶が羽ばたくとカリフォルニアでハリケーンが起きる」という喩えがよく使われますけれど、わずかな入力変化が劇的な出力変化になる。だから政治や経済はおもしろいわけです。みんな夢中になる。個人のコミットメントによって、場合によっては状況や市場が一変することがあるんですから楽しくないはずはない。政治や経済は「そういうもの」なんです。それを楽しむ人たちは楽しめばいい。
 けれども、それ以外の人間の営みは必ずしも政治や経済と同じような複雑系ではないし、複雑系であってはならない。わずかな入力変化によって劇的にシステムが変わってしまっては困るものが僕たちの周りには多々あるわけですよね。行政とか司法とか医療とか教育はそういうものです。政権交代したから司法判断が変わるとか、株価が下がったので教育カリキュラムが変わるとか、そういうことがあっては困る。極端な話、革命が起きても、戦争が始まっても、水道からは水が出るし、地下鉄は時間通り来るということが望ましいんです。ほかのセクターではあってもいいことがあってはならないという分野があるんです。



以降の全文は 内田先生かく語りき62 による。





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Last updated  2024.12.02 14:23:39
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