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2024.12.23
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『昭和街場のはやり歌』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。
『テネシー・ワルツ』『カチューシャ』『何日君再来』『イムジン河』など、古すぎてカラオケでもリクエストしにくいが・・・それが団塊世代の歌なのかな。




前田和男著、 彩流社、2023年刊

<「BOOK」データベース>より
「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!

<読む前の大使寸評>
『テネシー・ワルツ』『カチューシャ』『何日君再来』『イムジン河』など、古すぎてカラオケでもリクエストしにくいが・・・それが団塊世代の歌なのかな。

<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>

rakuten 昭和街場のはやり歌


まず私が好きな歌手でもあるテレサ・テンのヒット曲から、見てみましょう。
p212~216
<第15話 時代を超えて的にも味方にも愛されたラブソング「何日君再来」>
■数奇な運命に翻弄された謎と矛盾に満ちた唄
 戦後日本のつまづきは、半島と大陸における歴史的負債を清算しないままの再出発だったことにある。戦前につくられた歌謡曲のほとんどはその紛れもなき物証でしかない。ところが、そのなかに日本と近隣諸国との関係を修復するどころか、彼らの政治体制を揺るがしかねない歌がある。

「歌は世につれ、夜は歌につれ」といわれる。たしかに前段はそうかもしれないが、後段はどうだろうか。世につれた歌が「はやり歌」になることはままあるが、歌につれて世の中が変わるなんてことはそうはない。あったとしても、そのほとんどは「はやり歌」から現実の風俗やファッションが生まれる程度の話であって、「時の政治」を変える歌などめったにない。

 わが70余年の人生をふりかえってみて、〝めったにない事例〟として、すぐに思い浮かぶのは、PPM(ピーター・ポール&マリー)の「花はどこへ行った」、ボブ・ディランの「風に吹かれて」、サイモンとガーファンクルの「明日に架ける橋」、そしてビートルズの「ヘイジュード」である。

 前2曲は1960年代にアメリカ発の公民権運動とベトナム反戦運動を世界の若者たちのあいだに伝播・浸透させた。「明日に架ける橋」はアレサ・フランクリンのカバー曲が南アフリカのアパルトヘイト撤廃運動のシンボルソングとなり、「ヘイジュード」は、1968年の〝プラハの春〟がソ連軍の侵攻で踏みにじられたときに、チェコの国民的歌姫マルタ・クショバが歌詞を「抵抗歌」に変えて歌い継がれ、ソ連崩壊を受けて、1990年にようやく当地に無血の〝ビロード革命〟をもたらした。そして、そのいずれのエピソードも、私の記憶に、同時代者として印象深く刻みこまれている。

 そうそう、もうひとつ私自身の身近に事例があった。世界でベトナム反戦運動が盛り上がった最中、日本は新宿の西口広場に出現した「フォークゲリラ」である。当時は参加者の一人として、束の間、反戦の歌声が時代を変えるのではないかと思ったものだったが、なんのことはない、数年で泡沫の夢と消えてしまった。

 しかし、そんな昔の記憶をひきよせているうちに、それらの楽曲よりも、はるかに数奇かつダイナミックに「時代と政治」を動かした歌を失念していたことに気づかされた。
 それは「何日君再来」である。

 ♪忘れられない あのおもがけよ
 ♪ああいとし君 いつまたあえる
 ♪何日君再来(フォーリン・チュン・ツァイライ)

 戦前、日中戦争の最中の1938(昭和18)年に、上海国立音楽専科学校生だった劉雪庵が作詞・作曲、翌年に抗日運動に挺身する青年を主人公にした映画の主題歌につかわれて中国人たちの間で人気を博すいっぽう、不倶戴天の敵である当地の日本人向けにもカバーされ、やがて〝内地〟にもちこまれて空前のヒットとなった楽曲である。

 出生からしてすでに謎と矛盾に満ちたこの歌は、その後、驚くべき有為転変を繰り返して「時代の歌」となっていくのだが、本稿では、その数奇な運命にわが体験を重ねながら、検証をこころみる。

■「何日君再来」の「君」とは?
 日中戦争の最中に謎めいた生を享けた「何日君再来」だが、戦後しばらくは、私たち〝戦争を知らない世代〟にとっては、親や祖父母たちのために時たまテレビの「懐メロ番組」から流される歌でしかなかった。そして、戦前を知る人もふくめて日本人の口の端にこの歌がのぼることも、ほとんどなかった。

 そんな中で、同時代者でもない戦後生まれの私がこの歌に出会ったのは、祖母の影響であった。「何日君再来」を日本人として初めて「いつの日君くるや」のタイトルでカバー、中国戦線の日本軍兵士をこの歌で慰問して爆発的ヒットをもたらしたとされるのは、渡辺はま子である。横浜の生まれ育ちが自慢の祖母は、その渡辺はま子が横浜の「浜」から芸名をとったことに加え、横浜高等女学校(現・横浜学園高校)の後輩でもあることから大のファンだった。テレビの懐メロ番組に渡辺はま子が出演すると、きまって彼女との因縁を繰り返し孫の私と妹に聞かせる。おかげで、私は「何日君再来」はもちろん、彼女の持ち歌である「支那の夜」「夜来香」などの〝支那物〟を今もそらんじることができる。

 しかし、それは私にとってけっして喜ばしいことではない。
 祖母は明治の生まれにしては近代的な教養の持ち主ではあったが、折に触れて、中国人と朝鮮人を〝放送禁止のヘイト用語〟をもって悪しざまに侮蔑。その一方で一人息子であった私の父親が職業軍人としていかに優秀だったかを語る。事実のほどは定かではないが、天皇から「恩賜の銀時計」をもらったというのが祖母の昔語りの白眉で、そのBGMに欠かせないのが愛唱歌の「何日君再来」だった。

 しかし、私が高校に進学、祖母のくびきから離れて日本の戦中の歴史を知るようになってからは、私は祖母の昔語りをこう解釈して、もはや受け容れることはできなくなった。祖母にとって「何日君再来」の「君」とは、中国をふくむアジアに「王道楽土」をもたらす「盟主たる日本」であり、自慢の一人息子はその先兵として勲功をたてる、そんな時代が「再来」してほしいが今や詮ない夢になってしまったという無念を、この歌に仮託していたのかもしれない、と。

 だからといって、祖母が特殊かつ例外的日本人だったわけではなく、程度の差はあれそうした思いを戦前生まれの日本人の多くは「何日君再来」に仮託していたはずである。そして、それに対して〝戦争を知らない世代〟が違和感をもつのもまた当然であると、その時の私は思っていた。

 ところが20年ほどして、それが一面的かつ平板な理解にすぎないと思い知らされる事件が起きた。中国人蔑視を内包していると思われた「何日君再来」が、中国の人々の間でリバイバルしているという報道が伝わってきたのである。
 それは、1977年に三度目の復活を果たした鄧小平が改革開放政策を打ち出してから2、3年後のことだった。当時の資料をあたっていると、折しも来日中の華国鋒首相の関連ネタで、「なぜか戦前の日本の歌が流行」の三段見出しをつけた以下の囲み記事に行き当たり、往時に引き戻された。

「華国鋒中国首相の訪問で日本中が湧きたっているが、中国主要都市の若者の間ではなぜかいま、日本軍占領時代に流行した歌『』(中国名『何日君再来』)が爆発的人気を呼んでいる。ホテルの服務員は仕事をしながら口ずさみ、地方の幼稚園では日本人参観団を歓迎するのに、教師がこれを歌い、生徒が男女一組になって曲に合わせてダンスする光景もあるほど」(毎日新聞、1980年5月29日夕刊)
 文章からも記者の驚きが伝わってくるが、当時の日本人も私も、これには大いに驚かされた。そして、改革開放政策によって中国の人々は戦前の日本の歌を愛唱できるほど自由になりつつあるのかと歓迎する一方で、これで「何日君再来」がもつ反中的な含意がいくらかは免罪されるかもしれないと安堵を覚えたものだった。
(中略)

 もう一つ私たち日本人を驚かせたのは、かつての「亡国の歌」を40年ぶりによみがえらせたのがテレサ・テンだったことで。マスコミ報道によると、香港でコピーされたこの曲のカセットテープが出回っていてひっぱりだこなのだという。すでにテレサハ、台湾の人気アイドル歌手から香港やシンガポールやマレーシアなどの中華文化圏で「アジアの歌姫」として活躍、5年前の1975年には日本に上陸、2作目の「空港」が大ヒットして第16回日本レコード大賞新人賞を受賞、テレビの歌番組にも出ずっぱりで、ラブソングを得意とする人気スター歌手の仲間入りを果たしていた。
 そのテレサが日中間のいわくつきの懐メロをわざわざカバーするとは、たとえれば山口百恵が戦前の軍国歌謡を愛唱するようなもので、一部の音楽業界通にはその背景は知られていたようだが、私たち一般の日本人からするとミスマッチ以外の何物でもなかった。

 さらに私たちを驚かせたのは、テレサがリバイバルさせた元「亡国の歌」がますます流行をみせ、中国のトップリーダーに、「小鄧が老鄧にかわって天下を制した」と嘆かせたというエピソードがまことしやかに伝わってきたことだ。「小鄧」とは鄧麗君が中華名のテレサ・テン、老鄧とは十数億の民を擁する大国の最高指導者・鄧小平である。

 一アイドル歌手の人気が近代史に名を留める大政治家のそれを凌駕したとは驚きだったが、それはとんでもない危うさをはらんでいた。案の定、「小鄧」ことテレサ・テンがリバイバルさせた「何日君再来」は2年ほどで、当局から精神を汚染させる「黄色歌謡」の一曲として禁歌の指定をうけた。先の毎日新聞の記事に紹介されていた中国政府の懸念の論評が現実となったのである。


You Tubeの テレサ・テン/ 何日君再来 が、ええでぇ♪





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Last updated  2024.12.23 00:08:06
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