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2025.09.08
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『映画の中にある如く』という本を、手にしたのです。
著者は1944年生まれなので戦中派というより戦後派であるが・・・
古い映画に関する蘊蓄はあきらかに戦中派のようで、興味深いのである。

*********************************************************



川本三郎著、キネマ旬報社、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
映画の中には音楽が流れ文学が在り女優が輝き列車が走り人が生きている。映画を見ればわかることがたくさんある。

<読む前の大使寸評>
著者は1944年生まれなので戦中派というより戦後派であるが・・・
古い映画に関する蘊蓄はあきらかに戦中派のようで、興味深いのである。

rakuten 映画の中にある如く


「第2章 音楽が流れる場所」で古いドイツ映画『橋』が語られているあたりを、見てみましょう。
p101~103
<「ヒトラーの忘れもの」の地雷のこと>
 少年たちが浜辺に埋められた無数の地雷を手探りで撤去してゆく。いつ爆発するか分からない。死と隣り合わせの作業が、まるでシジュフォスの試練のように続いてゆく。
 デンマークの監督、マーチン・サントフリート(脚本も)の「ヒトラーの忘れもの」(15年)は、息詰まるような緊張感がただごとではない。

 実話だという。第二次世界大戦下、デンマークを占領したナチス・ドイツは連合軍の上陸を阻止するために海岸線に膨大な数の地雷を埋めた。戦争が終わって、地雷を撤去しなければならないが、デンマークはイギリスの提案で、その危険きわまりない作業にドイツ軍の捕虜を当たらせることにする。

 ドイツ兵が狩り出される。まだ頬の紅い少年兵が多い。彼らは地雷撤去の技術も知らない。爆発したら、それで終わり。震えながら地雷を探る。当然、次々に犠牲者が出る。「家に帰りたい」「お母さん」と言って死んでいく少年兵たちが痛ましい。

 戦争末期、敗色濃いドイツでは、兵力が足りなくなり、十代の少年たちを戦場に送り出すようになった。
 それで思い出すのは、私などの世代では、高校生の時に見たドイツ映画、ベルンハルト・ヴィッキ監督の「橋」(59年)。

 1945年の4月。中部ドイツの小さな町に連合軍の戦車隊が接近してくる。町の十代の高校生7人が、町はずれにある小さな橋を守備することになる。指揮官は賞ねんたちを安全な任務につかせたつもりだったが、アメリカ軍はその橋にやって来る。退却すればいいものを少年たちは必死になって戦う。そして一人を残し、次々に芯でいく。
 最後、生き残った少年が「家に帰ろう、家に帰ろう」と狂ったように言いながら友人の遺体を引きずってゆくところで終わる。

 戦闘が始まるまでは賞ねんたちは意気軒昂だった。敵をやっつけると意気ごんでいた。しかし、いざ戦闘が始まると、その激しさ、むごたらしさを前に恐怖する。はじめて戦争の現実を思い知らされる。
 戦場は、母親のいる温かい家庭の対極にある。「家へ帰ろう、家へ帰ろう」と言って去ってゆく「橋」の少年は「ヒトラーの忘れもの」の「家へ帰りたい」と泣く少年たちの姿と重なり合う。

 ナチスがあまりの絶対悪だったために戦後、ドイツは自分たちも被害者だったとは言いにくくなってしまったが、1945年2月のドレスデン爆撃では一般市民を主に十三万余の犠牲者を出した。当時、ドレスデンで捕虜になっていたカート・ヴォネガットはその悲惨な体験から、のちに『スローターハウス5』(早川書房)を書く。
 戦後のドイツは無残だった。2015年に出版された歴史家、イアン・ブルマの『廃墟の零年1945』(白水社)によれば、いたるところで女性がレイプの犠牲になったという。とくにソ連軍がひどかった。スターリンは、地と炎の数千マイルを行進した兵士たちには「女と少し楽しむ」資格があると言い放った。

 捕虜を使役することは厳密にいえば国際法に違反するが、戦勝国が無理を通してドイツの少年兵を地雷撤去に当たらせたのだろう。ナチスの被害者がこんどは加害者になる。憎しみの連鎖だった。
「ヒトラーの忘れもの」はデンマークとドイツの共同製作という。そこに救いがある。





『映画の中にある如く』2 :零戦が語られている  
『映画の中にある如く』1 :〈海ゆかば〉のこと





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Last updated  2025.09.08 01:25:21
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