2006年03月11日
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伊集院 静著  『潮流』  1997 (株)講談社  p.186

この物語の主人公健一は、日本で生まれてはいるが両親が韓国人であり、国籍は韓国だ。
そう、在日韓国人なのである。
在日韓国人は日本の歴史の中で、差別により虐げられてきた歴史を持っている。
だからこの言葉は日本人の同朋意識に向けてのものだ。

「同朋意識の根にあるのは差別だよ。差別、差別と口にする奴に限って、誰より他人を差別しているもんさ。」

同胞という言葉を調べてみると
(1) 祖国を同じくする者同士。同じ国民。同じ民族。
(2) 同じ母から生まれた兄弟姉妹。はらから。

こうして調べてみるまでも無いのかもしれないけど、「同胞」という集団はア・プリオリなものである。
ぼくらは同胞を選ぶことができない。
その代わり、「場所」「言語」「文化」を共有する結束力の強い集団だ。
特に日本で考えてみると、交通手段の発達により、その境界性は弱まったが、あいかわらず海に囲われており「場所」の持つ特性は強い。
また、「日本語」を話すのも日本人だけだし、「日本文化」も世界的に見るとユニークだ。
だから日本における同朋意識というものは世界的に見ても強い方だとは思う。

この同胞意識は国と民族と家族のどれでも使えるのであるが、さまざまな集団への帰属意識と同じようなものと考えることができる。
すなわち、宗教や卒業大学、会社など、大小さまざまな集団に対しても同朋意識に近い仲間意識は生じる。
現代ではIT技術の進歩により、「場所」「言語」「文化」のうち「場所」と「文化」については比較的縛りが弱くなってきていると思う。
「場所」については言うまでも無い。
「文化」というのは「価値観」へと還元され、おなじ価値観を共有する集団へと細分化されていく。


現在自動翻訳機なるものもあることはある。
しかし、中国語版を使ったことがあるのであるが、かなり怪しい。
知り合いの中国人に大笑いされてしまった。
これから技術が進んでいって、翻訳機もマシになっていくとは思われるけど、限界はあるだろう。
とてもニュアンスまで伝えることなどできないとぼくは思う。


ただし、ここで言ったように、「文化」が「価値観」へ還元され、それを拠所として作られた新たな集団においては、高性能の翻訳機でもかなり厚い交信が可能となる。
「場所」「言語」に縛られない、新しい文化的価値を共有する新たな同胞の誕生である。
そうなれば新たな差別が生まれることになる。
その新しい同朋意識を解体するにはどうすればいいのか。
「場所」「言語」に縛られないということは、同胞の帰属する集団に実際的シンボルがないということだ。
したがって、その境界性は比較的弱い。
場合によっては求心性のみ存在し、境界性は存在しない集団もあるかもしれない。
そうなると複数集団への帰属が比較的容易となる。
逆に言えば、複数集団への帰属により、リジッドな境界は消滅する。
そこにこそグローバリゼーションへ向けた脱国家のヒントがあるのだと思う。





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最終更新日  2012年04月10日 08時37分13秒
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