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2012.04.21
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カテゴリ: 作品集
「一杯のカクテルが人の人生を変えることがある。」というのは、とある小説の冒頭の文だが、「一冊の本」が人の人生を変えることもあるのだろう。

 私は小5の頃に、たった一人で無人島に漂着した経験がある。頼るべきものもなく、毎日が死ぬか生きるかのサバイバル生活を送った。強烈な体験だった。きっかけは、担任の「面白いよ」という一言と、私の前に差し出された一冊の本だった。それは、ポプラ社の少年少女文学館シリーズ「ロビンソン漂流記(デフォー作)」といって、その本のずっしりとした重みは今でも思い出すことができる。本の扉を開いた姿は、両手を開いているよう。それは「読んでください」と求める本の心だ。私は扉の中に入り、その見たこともない世界を楽しんだ。そこでは、私は私でなく船乗りのロビンソン・クルーソーという人物として人生を送ったが、生きるための知恵、行動力、忍耐、これらは同時に私自身の感覚として残った。冒険を終え、本の扉を閉じると不思議な昂揚感があった。本を閉じた姿は、合掌した形に似ている。それは「いい本をありがとう」と感謝する少年の気持ちだったのかも。
           ◇   ◇   ◇
 読書の意義というと、あまりに教養的な響きがあるが、一度きりの人生において自分以外の人生を追体験できるというのは、読書の持つひとつの醍醐味である。私たちが生まれるずっと以前の歴史やその時代の匂いや風を肌で感じ取り、人類の積み重ねの一端にふれることで、「これから私たちはどう生きるのか」という問題について思いを巡らすきっかけにもなる。その過程で作者や主人公に感情移入し、自分の問題として考えを深めることで、人生や人間にたいして今まで気づかなかったことに、気づけるのだということを、私は本に教わった。
 それからは、次々と本の扉を開けては、物語の世界を堪能した。意図せず読書は生活の一部となっていた。また、自発的な読書は、強制される勉強とは違って、いつでも、どこでも、好きなときに、好きなものを、好きな分量だけ読める楽しさがあった。中学時代は、学校での休み時間に、信号を待ちながら、電車やバスの中で、朝のトイレや風呂の中、布団の中で、江戸川乱歩、コナン・ドイル、星新一、宗田理、マイクル・クライトンを筆頭にその他様々な本を読み耽った。今でもそうだが、カバンやポケットの中には常に本があった。教員のすすめで読書記録をつけ始めたのもこの頃からで、それは書名、作家名、出版社、ページ数、読了日だけを記した簡単なものであるが、読書意欲を高めるには十分な効果があった。高校時代には、色々な本を読んで影響を受けてはその作家の講演会や地方の文学館に足を運んだり、書店や古本屋を探しては本を買い漁った。本屋の匂いは、時には便意をもたらしたりもしたが(失礼)、その場所に留まらせることを躊躇させなかった。また、本が背中(背表紙)を向けて並んでいるのは、「私を探して下さい、私を読んで下さい」と主張しているようで、それでも背中を向けている謙虚さが健気で良い。進路講習のときには「本が読めるような仕事をしたい」と発言し、周囲をあきれさせた。
 大学に入ってからは、担任のすすめで読書日記をつけ始めた。(こう振り返ってみると、教員の一言で方向が示されてきたことが多い。)「基礎は必ずや読書になければならない」とは、読書家として知られるサミュエル・ジョンソン博士の言葉だが、その通りだとしても、記憶とは頼りないもので、せっかく身につけたと思ったこともすぐに忘れてしまう。ところが、読書日記をつけ、どこでも心に響いた箇所を引用して、折に触れて読み返したりすると、記憶への定着率がはるかによくなるし、その本への理解も深まる。ついでに、その本と出会った状況などを書き込んでおくと、健忘録にもなる。現に、いま2000年春から2012年明けまで12年分の「読書日記」を読み返しているところだが、読書したときの印象がさまざまとよみがえってくるのを感じる。
          ◇   ◇   ◇
 さて、ある読書家の論によると「人は自分の本棚の本のような人生を送る」らしいが、得てして私は、教職についた。「本が読めるような仕事」としてはうってつけかも知れないな、と今は考えている。一を教えるには十を準備しなければならない。本はいつの時代も知識の宝庫で、学問の基本は読書だ。したがって自然と読書量は増えたが、学生時代からの読書習慣に助けられ、授業研究はいつでも楽しい。また生徒たちにとって、私は一時の師匠に過ぎないが、生徒が本と出会うことができたら、一生の師匠に出会ったことになる。それで、生徒たちにも「本は読まなければならない」と強要するのではなく、常に「読書は楽しい」というシンプルな事実を伝えるという姿勢で、読書指導を行ってきた。授業前の出席をとる時には、生徒たちに現在読んでいる本を掲げながら返事をさせる。これでお互いが、世界一短い読書紹介をすることになる。また、課題を終えたり時間の余裕が出来た際には、許可を与えて本を読んでも良いことにしている。昼休みには、当番制で生徒たちと一緒に図書室を運営している。書棚には、私が今まで読んできた本や、読書活動を通じて知り合った方々からの寄贈本も少なくない。ひとつの例として、教員となって始めた読書ブログで知り合った日本の青年からの手紙を一部紹介したい。

 <・・・本を選ぶにあたって「個人的な読書体験の押し売り」をするつもりはなかったのですが、今の僕の蔵書量では、その域を脱するのはいささか難しかったようです。が、選別を進める内に、「それでいいのではないか」と思うようになりました。好きな本を人に薦めてしまうのは、読書好きの性ですものね。僕は、「先生」という職業をとても尊敬しています。根気のない自分には決して出来ないと思うので。中でも張さんのように、学生が自分の道を拓く手助けを積極的に行う方には、強い尊敬の念を抱いています。今回贈った本たちが、その「手助けの手助け」になってくれたら嬉しいです。それでは、これからもお互い、よい読書を。学生の皆さんにもそうお伝えください。〉

 こうして振り返ってみると、読書によって私という人間が作られてきたのだな、ということを改めて強く感じる。本との出会いがなければ、今の自分はいなかっただろう。私にとって本を読むことは、呼吸をすること、すなわち「生きること」。これまで千数百冊の本を読んできたが、この世界には、まだ読まぬ本のいかに多いことか。これからも人類が生み出した本という優れた文化を味わい、人生をさらに豊かなものにしたいものだ。

※雑誌「イオ」5月号にエッセイとして掲載されました。





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最終更新日  2012.04.21 12:02:33
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