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2022.01.09
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『文学界(2021年10月号)』という雑誌を、手にしたのです。
表紙に出ているように『失われた時を求めて』が語られているので、これがゲットする決め手となりました。




雑誌、文藝春秋、2021年刊

<出版社>より
【リレーエッセイ】「『失われた時を求めて』と日常」
いつか読みたいと思いながら、その長大さに尻込みする人が多い20世紀文学の高峰を、これまで読み通したことがなかった14人が一人一巻ずつリレー形式で読む前代未聞の試み。プルーストを読む経験は作家たちの日常をどのように変えるのか?
【創作】磯﨑憲一郎「日本蒙昧前史 第二部」
魔術的に語られる、生真面目な外務大臣とパンダ飼育係の物語

<読む前の大使寸評>
表紙に出ているように『失われた時を求めて』が語られているので、これがゲットする決め手となりました。

rakuten 文学界(2021年10月号)

『失われた時を求めて』の第1巻『スワン家のほうへ』のエッセイから、見てみましょう。
p70~72
<失われた時は求めない:藤野可織>
 分厚い本は苦手だ。終盤になって、いや中盤ですでに「あれ? これ誰やっけ?」と思わずにいられたためしがない。あるいは「ん? そんなことあったっけ?」。嫁が読むほど、すでに読んだページの厚みがそのまま私の失われた時となっていく。

 物語の中で登場人物と生きたはずだったのに、いろいろな記憶があやふやだ。しかし、しかたがない。現実でだって、私はだいたいいつもそうではないか。私は失われた時は求めない。記憶は検索できない。なにかが失われたままでも、突き進むしかない。

 『失われた時を求めて』の主人公は「私」で、名前は書かれていない。まさか名前がないわけではないと思うが、名前がないといえばメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』、名前をつけてもらえなかったクリーチャーが自分をつくったフランケンシュタイン博士を追い求めるみたいに、幼い主人公もまたお母さんが大好きで大好きで、ひとりで寝室においやられるのが悲しくてしかたがない、もうとにかくおかあさんにそばにいてほしいということが長々と書かれていて磯部涼『令和元年のテロリズム』とモーリーン・キャラハン『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』を読み終えてもまだぜんぜんそこから脱出できない。

 『失われた時を求めて』はほとんどのページに註がつけられている。挿絵ではなく、図番までついている。私たち読者がプルーストの意図を見誤らないように、無知のせいでこの小説を味わい尽くせないなどということがないようにと実に懇切丁寧だ。これらの注釈はこの本にとって有益だし私が見境なく貼る付箋も無害だが、人につけられる注釈や付箋は愛するためだけのものではなくて殺すためのものにもなるなあと本を傍に積むとただでさえ暗い手元がまsます暗くなる。

 明るくてちょっといいカフェで氷室冴子『新版 いっぱしの女』。この作家が男性だったら、男性作家だったら言われなかったはずのこと、されなかったはずのことを知って怒りと悔しさで手が震える。この作家がやっとのことで出会った「セクシャル・ハラアスメント」という言葉を、お前は、お前は知らんだろ! と糾弾するつもりでリュックからプルーストをつかみ出すと、「私」はいくつだかわからないけど幼い子どもではなくなっていて、お母さんにすすめられてマドレーヌと紅茶を口にしたら、『美味しんぼ』のワンシーンみたいに背景に稲妻が走っているところだった。

 ああこれがあの有名な・・・と思う。私は『失われた時を求めて』についてはなにも知らなかったが、「なんかわからんけどマドレーヌを食べた瞬間、前にマドレーヌを食べた時の記憶が電撃的によみがえって、それに付随する記憶が次々と立ち現れるらしい」ということだけは小耳にはさんだことがある。
(中略)

 ときどきうっかりして、「私」に名前がなかったことを忘れてしまう。フランソワーズという名前がよく出てくるので、うとうとしながら読んでいるとそれが彼の名前かと思うことが二度ほどあるが、さすがに一瞬で我に返る。フランソワーズは祖母やレオニ叔母の世話をしていた女中さんの名前だ。

 しかし、状況はずいぶん厳しくなってきている。副題にもなっているスワン氏をはじめとして、「私」の親族とさまざまな人々との交際が語られるが、新しい名前が出てくるたびに私は不安におびえる。これはほんとに今はじめて出てきた名前だろうか? 記憶は検索できないが、電子書籍だったら検索できるのだろうか? 映画を見ているときも、私はこうだ。登場人物が一人増えるたびに、彼らのおでこに名前と登場回数が明記されたらいいのになと思う。


ところで、3年前の図書館放出で入手した『文学界(2019年1月号)』が興味深いので、ときどき再読しております。
『文学界(2019年1月号)』4 :多和田葉子と温又柔との対談





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Last updated  2022.01.09 00:01:01
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