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2024.05.24
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カテゴリ: アート
京都市美術館では「村上隆もののけ京都」という企画展が催されているが、これは興味深いのです。


・・・ということで、2012年11月29日 「村上隆の原点」 を復刻して読み直してみましょう。まあ村上隆の予習とでも申しましょうか♪
*********************************************************
今では超ビジネス書を発刊するなど、ブイブイ言わせている村上隆の原点までさかのぼってみたい・・・・
ということで、「リトルボーイ」という本を借りたのです。
リトルボーイといえば、広島に落とした原爆の愛称であるが・・・今のアメリカ市民は知っていたか、知らなかったか?

大使幼少の頃、原子力と言えば、鉄腕アトムとかゴジラを連想するように、割と肯定的なイメージもあるが・・・・これがCIAの刷り込みと言えば、当らずとも遠からずという裏事情もあったようです。
(あかん、書評の観点がずれてゆくがな)



ゴジラ

本書は、ニューヨーク市内各所で開催されたリトルボーイ展に際して出版されたという曰くがあるが、村上隆のアメリカに対する強烈なコンプレックスが見られるわけで・・・反米の大使の胸に響くわけです(笑)
ともあれ、スーパーフラットとは何だ?という問いに答える本ということでしょうか♪


【リトルボーイ】
リトル
村上 隆(編集) 、ジャパン・ソサエティー イェール大学出版、2005年刊

<「MARC」データベース>より
2005年にニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで行われたリトルボーイ展のカタログ。アニメ、だめ、かわいい、マニア、おたく、少女、ゆるキャラ等をキーワードに、村上隆、岡田斗司夫、椹木野衣らが執筆。

<大使寸評>
本書は、ニューヨーク市内各所で開催されたリトルボーイ展に際して出版されたという曰くがあるが、村上隆のアメリカに対する強烈なコンプレックスが見られるわけで・・・反米の大使の胸に響くわけです(笑) 
ともあれ、スーパーフラットとは何だ?という問いに答える本ということでしょうか♪

Amazon リトルボーイ


この本から一部紹介します。

<Superflatプロジェクト発動:村上隆>p153~155
「Superflat」
 この呼び名はLAのギャラリスト二人が、私の絵画作品のセールストークに使っていた表現が起源だ。「superflatでsuperクオリティー、そしてsuperにクリーンなこのペインティングはいかがでしょうか?」という具合の売り文句。日本の車や電化製品を讃える表現と変わらぬ所に本質的な日本文化の特性を知った気がした。そしてその表面を乗り越えなければ「文化」そのものになり得ない、故にその売り文句を超えていくという批評的な観点から、superflatを冠としたプロジェクトをスタートさせた。

「SuperFlat宣言」
日本は世界の未来かもしれない。
そして日本のいまはsuper flat。
 社会も風俗も芸術も文化も、すべて超2次元的、この感覚は日本の歴史の水面下を澱みなく流れ続け、とくに美術にわかりやすく顕在化してきた。現在では、強力なインターナショナル言語となった日本のスーパーエンタテイメント、ゲームとアニメにとくに濃密に存在している。そのフィーリングを説明すると、例えば、コンピューターのデスクトップ上でグラフィックを制作する際の、いくつもに分かれたレイヤーを一つの絵に結合する瞬間がある。けっして分かりやすい例えではないが、そのフィーリングに、私は肉体的感覚に近いリアリティーを感じてしまうのだ。この本で日本のハイもロウもすべてフラットに並んでいるのは、そのフィーリングを伝えるためでもある。POP、ERO POP、OTAKU、HIS-ISM、そして、そんな日本文化の表層下に流れる「レイヤーの結合」の瞬間を体験してほしい。

私達のリアリティーはどこにあるのか。
 この本は「super flat」を、自分達の、つまり日本文化を潜在的に構築してきた、そしして、今もしつづけている大きな感性であり、世界観として捉え直し、過去から現在、そして未来へとつながるオリジナルなコンセプトとして、展示していくためのものである。近代以降、日本が西洋化されていく過程で、この「super flat」的感性はどのように姿を変え、いまに到っているのか。そこをきっちり見据えることから、いまの我々のスタンスも、見えてくるに違いない。
 その意味で、ここには現在進行形の日本のリアルが詰まっている。私達の生きてゆくコンセプト探しの答えが見つかるかもしれない。西洋化されてしまった日本人のオリジナルコンセプト、「super flat」。



<東京ポップの逆襲:松井みどり>p226~227
 スーパーフラット理論の出発点は、『広告批評』誌1999年4月号のために村上が企画した「東京ポップ」特集にあり、ここで日本のポストモダンの文化状況に対する村上のスタンスが詳らかにされた。同誌に発表された村上のテキスト「拝啓 君は生きている―TOKYO POP宣言」は、世紀末東京の大衆文化生産にひそむカオスと幼稚性から日本独自の芸術表現を形成しようと目論む村上の見事なまでに一貫した戦略を表している。

 まず、村上は、日本文化がアメリカとの植民地関係に縛られているとの歴史観に基き、「戦後の日本はアメリカによって生かされ培養されてきた。無意味こそが人間の生きる姿。だから、何も考えずに生きろ、と教育された」と言う。そして、日本で精神的内容を持たない物質主義が膨張した原因を文化の対米依存性に見いだし、この環境こそが、個人や組織の成熟を妨げていると考える。と同時に、近年アメリカが徐々に日本を縛る手綱を緩めている状況下、日本の文化生産は行き先不明の状況に陥っているのだが、にもかかわらず方向性を失った文化的生産に酔いしれる日本社会は真のヒエラルキーを欠き、超富裕階級の台頭は妨げられ、専門水準の形成が遅れ、幼稚な社会構造から脱却できないでいる。これが村上の現状認識だ。
 日本文化の「マイナー」な―つまり、本流ではなく、瑣末で、幼稚で、貧相な―特質を認識する村上は、明らかに欠点と思われる要素に、新しい創造の契機を探り当てたのである。

 一見ネガティブに見えるこの3点、1)子供的価値観、2)豊かさのレベルなき社会、3)アマチュアリズム。しかしこの3点がアドバンス〔有利〕となって、いま新しい創造の世界を作り始めている。

 こうした「マイナー」の条件を逆説的に運動の中心に据えて企画された「ポップ」は、あの輝かしいアメリカのポップ・アートとは似つかない。そのかわりに、村上流ポップは現代東京の異種混合のリアリティーに根ざしており、東京の偽物性をユニークな特質として、また文化占領の歴史的産物として甘受するのである。「TOKYO POP宣言」執筆に加えて、村上は「東京で活躍しながら、西洋的な価値観の軸に乗せてインターナショナリズムを持ち得る、と思わせた10人のアーティスト」を東京ポップの作家として紹介し、軋轢の強い文化的影響を乗り越えて創出された美術表現のハイブリッド性をむしろ誇示するのだ。




第五福竜丸とヤノベケンジ
椹木野衣
・日本のサブカルチャーは原点であるゴジラや、宇宙戦艦ヤマトの放射能除去装置など、核と放射能と被爆の歴史である。鉄腕アトムや仮面ライダー、ドラえもんなどは原子力の平和利用。

・放射能に対してはサブカルチャーの蓄積から免疫があった。地震の問題は実は大きな問題で、今一分後に大地震が起こるかもしれない。世界に原発が増え続け、世界各地で地震の多発期に入ったと思われる今、我々は震災の事後にいて、それに対応するばかりではなくて、これから起こる更なる災害に対する想像力を持たなければならない。

・(ヤノベのサン・チャイルドに対して)震災後を見すえて作品を作るのはまだ早いのではないか。今サバイバルの方がリバイバルより必要な状況に帰っているのではないか。

二人の対話は、阪神・淡路大震災、オウム真理教、東海村臨界事故、さらには戦後のアメリカから日本への原発の輸入の構造にも及び、現在まだわれわれが渦中にある東日本大震災以後にいたる状況を、ヤノベの表現活動の軌跡と重ねて考えさせられる内容だった。



「村上隆の原点」





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Last updated  2024.05.24 00:02:31
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