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2019年12月14日

病院の受難続く(十二月十一日)




 病院内のネットワークにハッカーが侵入してウィルスを植えつけた結果、ネットワークに接続された機器はほぼすべて使用不能になりパソコンも電源すら入れられなくなったらしい。その結果、四手されていた手術はすべて延期、緊急性の高いものは、中欧ボヘミア地方の他の病院に移送していた。当然診察も薬の販売も停止となり病院まで来た人が、検診ために仕事休んだんだけどなんて愚痴をこぼしている人もいた。

 病院側ではハッカーの侵入を防ぐために三重の対策をしていたというけれども、あっさりと侵入を許しチェコでも初めて聞くような事態が発生したのである。問題はネットワークの利便性を重視するあまり、そのリスクを軽視し過ぎたことにあるなんて、言ってみたくなるけど、診察や処方箋の出ている薬の販売まで停止しなければならないほどに、ネットワークに依存した病院の在り方自体にありそうである。
 さすがに入院患者は他の病院に引き受けてもらうというわけにも、ケアを停止するというわけにもいかなかったようで、昔ながらのやり方で面倒を見たらしい。ならば、診察だって薬の販売だってやってやれないことはなかろう。記録を紙の上に残しておけばいいのだし、病院のネットワークにつながっていないパソコンの一台ぐらいはあってもおかしくないと思うのだけど。苦情の受付や問い合わせには、昔ながらの電話で対応して、必要事項は紙に書き込んで処理していたのだから、診察もやれよと思った人もいそうである。

 病院の関係者の話では、診察用の機械の中には、単独で診察に使うだけだったら使える状態だったものもあるという。ただそれで獲得できたデータを病院内のネットワークでコンピューターに送ったり、他の病院に送ることができなくなっていたのだとか。他の病院にデータを送るとウィルスまで一緒について行って、そっちでもシステムがダウンする恐れがあるからできてもやらないとも付け加えていた。
 近年のIT技術の進歩であれこれ便利になったのだろうけれども、その便利さが脆弱なものであることもまた確かである。病院などの大きなものではなく、個人のことを考えても、スマホ一台あれば何でもできるということは、それが駄目になったら何もできなくなるということである。古いタイプ人間なので、一つのものに頼り切るのは不安で保険をかけたくなる。だから財布を落としても問題ないように、持ち歩く財布には最低限必要な額しか入れてないし、カード類も入れないようにしている。落としたことないから、その用心が役に立ったことはないのだけど。

 チェコの公立の病院って、最近もどこかの地方の病院で、患者をたらいまわしにしたというので非難されて、院長が解任されたところがあったし、何年か前の急患でやってきた患者を放置して治療しなかったという事件が発覚して非難を浴びているところもある。プラハの大病院では機材や消耗品の購入に関して業者からわいろを受け取っていたというので関係者が逮捕されている。社会民主党のソボトカ内閣で厚生大臣を務めていた人物も、オストラバの病院に院長時代の高額の機械の購入を決定した際に必要上の高額で契約したということで疑惑をもたれていたなあ。
 医師会なんかは、医者の給料が安すぎるのがよくないというのだろうけど、一面の真実ではある。チェコを離れてドイツやオーストリアで就業する医師の多くが、報酬の低さを理由として挙げている。優秀な医者たちが国を出て行ったことで空洞化が起こっていると考えてもよさそうだ。その結果、機材やシステムを納入する業者と癒着する医師が増えて、ハッカーに侵入されるようなシステムで病院が運営されることになったわけだ。

 ところで、以前日本の雑誌だったか、本だったか、ネット上の記事だったか忘れたけれども、ハッカーなんて古い言葉はもう使わないんだなんてのを読んだことがある。じゃあ何と呼ぶのかというのは覚えていないし、気に入らなかったのは覚えているけど、チェコ語では今でもハッカー、音的には「ヘックル」に近いかな、と呼んでいるので、ここでもハッカーという言葉を使った。
 佐藤史生の『ワン・ゼロ』で、主人公のうちの一人が学校のコンピューターに侵入して出席簿の改ざんをしているのを読んだときには、ちょっとあこがれたけど、そのときも今もどうすればそんなことができるのか全く理解できない。コンピューターはある程度はつかえているけど、使いこなすというところまでは来ていないのだよなあ。スマホ? そんなもん要らん。
2019年12月12日24時。












タグ: 病院
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