さて、去年の四月に前任のテョク氏が辞任し、新たにクレムリーク氏が就任したばかりの運輸大臣だが、バビシュ首相がゼマン大統領に解任を求め即座に解任されることが決まった。文化大臣のときの大騒ぎとは大違いである。また一人、政権交代もないのに運輸大臣が内閣を去ることになった。クレムリーク氏は、1993年以来28年目で18人目の運輸大臣だから、この大臣は内閣の中でも重要なポストでありながら入れ替わりが異常なまでにひんぱんなのだ。
前任のテョク氏は、ソボトカ内閣の前任者の後を受けて就任し、下院の総選挙を経てバビシュ政権が誕生してからも運輸大臣を務め、任期は合計で四年半ほどになる。この数字はチェコ共和国が成立して以来最長のもので、クレムリーク氏が九ヶ月ほどで解任されたのと比べると対象的である。ただ、このクレムリーク氏以外にも、内閣が倒れ新たな内閣が組織できなかったときに大統領の指名で成立する暫定内閣の大臣を除いても、何人か一年未満で退任した運輸大臣は存在するようだ。
先週、この件が明らかになったときにはバビシュ首相も苦言を呈していたのだが、一気に解任に踏み切るような様子は見られなかったのだが、週明けの月曜日20日に解任したことを発表した。うちのはこれについて、IT技術者たちが、Eショップぐらい片手間にできるからボランティアで作成するなんてことを言い出したのが原因じゃないかと言っていた。これは準備したのはテョク氏の時代だけれども、ダイヤ改正で新たに運行を担当し始めた私鉄が問題を起こし続けていたのに対して、反応が遅かったのも評価を下げたのかもしれない。
とまれ、2018年にバビシュ政権が発足して以来、すでに10人近い閣僚がその座を去っている。バビシュ首相はしばしば自らの内閣のことを自画自賛するのだが、そこまで称揚されるべき内閣なら、その閣僚達も賞賛されるべき業績を上げているはずだから、解任されることはないと思うのだけど。手前味噌、自画自賛、自分のことは棚に上げるというのが政治家にとっては不可欠な資質であるのはチェコも日本と変わらない。
クレムリーク氏の後任には、最近産業大臣に就任したばかりのハブリーチェク市が兼任でつくことになった。暫定や臨時ではなく、二つの大臣を正式に兼ねるようだ。それが可能なのがチェコだと言えばそれまでだが、バビシュ首相はこれを奇禍に二つの省を合弁することを考えていると言う。ハブリーチェク氏に兼任させる理由と同様、二つの省は管轄する分野が隣接していて一部重なっているのが合併して経済省を設置しようという理由になっている。
当然、この考えには野党だけでなく連立与党の社会民主党も反対の声を上げている。重要で職掌も大きく官僚の数も多い、この二つの省を合併するのも、一人の大臣が担当するのも無理だというのだが、これも額面どおりには受け取れない。大臣のポストが一つ減るのが、政治家にとって最大の問題であるのは間違いない。ただでさえANOの登場で非政治家の大臣の数が増えているのである。
誰が運輸大臣になろうと、1990年代以来続いた市民民主党と社会民主党を中心とした政治のクライアント主義によって作り出された運輸省の利権を解体するのは至難の業に違いない。高速道路の建設費用を1キロあたりの平均値にすると、ドイツよりもはるかに高くつくなんてことは普通に考えたらありえないと思うのだけど、変わらない現実である。
2020年1月21日24時。
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