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2020年07月06日

危険国チェコ(七月三日)





 チェコの人たちは、此れまで何度も書いてきたけれども、借金をしてまで出かけるという人がいるほど、ちょっと大げさに言うと、夏のバカンスに命をかけている。行き先は、寒冷な内陸国チェコの人にとってのあこがれである暖かい海のあるところで、伝統的に旧ユーゴスラビアのアドリア海沿岸に出かける人が多い。西側に出られなかった共産党政権の時代はブルガリアやルーマニアの黒海沿岸、海じゃないけどハンガリーのバラトン湖なんかも人気だったという。
 ベルリンの壁崩壊後は、イタリアやギリシャなどに出かける人も増え、経済的に豊かになった最近は、エジプトの紅海沿岸やインドネシアなどの遠方まで出かける人もいる。ただ武漢風邪に蹂躙された今年の夏は、遠方に出かけるのはほぼ不可能になっている。ということでチェコ政府にとって一番重要だったのは、クロアチアまで規制なしで出かけられるようにすることだった。

 それで観光立国であるイタリアやギリシャが国境を開いて入国の制限を撤廃するといっているのをよそ目に、クロアチアと積極的な交渉を続けていた。一時はプラハからクロアチアの観光地へ直行便を飛ばすなんてアイデアも出ていた。ただ、チェコ人はクロアチアに行くのに飛行機は使わないのである。節約のために自家用車に、ビールなどの必要物資を積んで、自ら運転して出かけるのが典型的なチェコのバカンスのスタイルである。国によってはそんなチェコ人に対して肉の持ち込み制限を課しているところもあったと記憶する。
 チェコから車でクロアチアまで行くためにはスロベニアを通過する必要がある。それで規制緩和が始まったころから、クロアチアだけでなく、スロベニアも感染の状況が安定しているからチェコ人が出かけても問題ないだろうなんてことが主張されていた。正直、他の国との違いはよくわからなかったので、何としてもこの二カ国には行けるようにする必要があるのだろうという印象を受けた。

 それで、交渉の甲斐あってスロベニアを経てクロアチアまで、無制限に行けるようになっていたのだが、もちろんスロベニアを目的地とする人もいるのだろうけど、本格的なバカンスシーズンが始まってすぐの今日、スロベニアがチェコ人の入国を制限することを発表した。スロベニア政府が定めた入国規制に関する基準があるようで、カルビナーを中心に集団感染が発生して、感染者の数が再び急速に増え続けているチェコはその規準を越えてしまったらしいのである。
 その結果、スロベニアに入国する際に、あれこれ書類を提示する必要が出てきて、場合によっては二週間の隔離生活を強いられることになるようだ。行き先がクロアチアの場合には、クロアチアの宿泊施設の予約証明があれば、スロベニア国内でどこにも立ち寄らないことを条件に通過が認められるのかな。

 この手の規制というものは、上で決定されても現場でどのように運用されるかはわからない部分があるので、旅行会社などでは情報収集に追われているようである。チェコテレビのニュースでも、オーストリアとスロベニアの国境の様子を中継していたが、規制が発表された段階で、また適用前だったため特に変わったところはなかった。バビシュ首相のところにスロベニアの首相から直接電話がかかってきた様子も流された。
 チェコ政府は、集団感染が何箇所か起こっているだけで、無軌道な感染の拡大は起こっていないから危険性はないと主張するのだろうけど、外から感染者の数字を見て判断するなら、危険だと考えても仕方がないとは思う。感染の拡大初期にリトベルなどが閉鎖されたのと同様に、カルビナー地区、場合によってはシレジアモラビア地方全域を閉鎖するという強硬手段でも取っていればまた与える印象は変わったのだろうけど、他が規制の全面解除に向かう中、一地方だけ閉鎖なんてことになったら、住民の反発はとんでもないものになるだろうし、踏み切れるものでもなかったのだろう。

 今後、スロベニアに追随してチェコを危険国指定して入国制限を課す国も出てきそうだし、今年の夏は、一度は覚悟したように、国外への旅行は全面的に停止して国内旅行の需要を掘り起こすことを考えたほうが、国内の観光業を支援するという意味でもいいと思うんだけどねえ。国内の感染状況を見ていると、感染者数が増えている割には重症者や入院者の数は増えていないから、そこまで警戒する必要はないという厚生省の判断は間違っていないとも思う。こちらの願いは、今後第二波とやらが発生して感染が拡大しても、再度の厳しい規制が導入されないことである。
2020年7月4日12時。






A34 地球の歩き方 クロアチア スロヴェニア 2019~2020










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