チェコの地方公共団体の首長は直接選挙ではなく、議会に議席を得た政党間の連立交渉で、過半数を確保した側が与党となって、与党の議員の中から選ばれる。だから、選挙で勝って第一党になっても知事や、市町村長を輩出できず、野党の立場に落ちてしまうこともある。その場合、議員になっても国政の大臣に当たるような要職につくこともできなくなる。
国政の場合には大統領が組閣指名件を持っているので、大抵は下院の第一党の党首が首相に指名されて組閣することになるのだが、地方政府の場合には指名権を持つ人がいないので、第二党以下か連立を組んで第一党を排除する形で連立与党を形成することも多い。というか、バビシュ氏のANO党の台頭以来、第一党となったANOを排除した連立が成立する例が増えている。また地方では、個人的な人間関係による連立なんてこともあるので、国政レベルではありえないような組み合わせの連立が成立することもある。
その最初の投票が行われた前日の火曜日だったか、当日の水曜日だったかは記憶が定かではないのだが、チェコテレビで各党の党首を集めた討論会のようなものが放送された。それまでは、毎日地方ごとにその地方で候補者を立てている政党、グループの地方代表を集めて、政策を論じる討論会が行われてきて、最後の最後に中央の政党の党首を集めたという経緯のようだが、大失敗だった。
それまでの地方代表の討論会は、出席者の大半が司会役を務めたチェコテレビのアナウンサーの質問に素直に答えていて、質問とは関係のない話を始めたり、他の人が回答しているところに口を挟むような人はほとんどおらず、大きな混乱もなく進行したという印象(ちゃんと見ていないので印象でしかないけれども)だったのだが、党首の討論会はひどかった。
まず、司会者の質問に直接答える党首がほとんどいなかった。手前味噌、我田引水の連続で、司会者が質問に直接答えるように何度も繰り返さなければならなかった。他の党の回答しているところに茶々を入れたり、発言を被せたりするのも多く、正直まともに聞いていられなかった。一番ひどかったのがANO代表のバビシュ首相だったのだけど、他の党首たちも多かれ少なかれ似たようなことはしていた。仮に自分が有権者だったとしたら、この討論会で投票する党を決めるのは不可能に近い。どれも選びようがないのだ。
それぞれの党首の振る舞いのひどさに程度の差はあったとはいえ、五十歩百歩だったし、バビシュ氏は反バビシュの陰謀があることを叫び、野党側は大声で反バビシュを叫んでいて、あまり具体的な話は出ていなかった。いや出たのかもしれないけれども、ほとんど印象に残らなかったというのが正しい。
所属政党を問わず、すべての人が主張していたのは、地方議会と上院とはいえ、民主主義のためには重要な選挙だから、棄権せずに投票してほしいということだった。たださえ投票率の低い、大抵は30パーセントちょっとにおわる地方議会選挙なので、今回の武漢風邪騒ぎで棄権者が増えたら、EU議会並の20パーセント台になるのではないかという恐れがあったのである。投票率が下がることで不利になると予想される党も、こぞって投票を呼び掛けていたのは、民主主義を標榜する以上は当然のことというべきか、みな楽天的だというべきか。
昨日から始まった選挙は意外と投票率が高くなり、最終的には35パーセントを越えて40パーセントに近づいた。これは地方議会の選挙としては過去二番目に高い数字だという。結果についてはまた明日である。
2020年10月4日22時。
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