竜巻、もしくはカタカナでトルネードというと、アメリカのイメージが強いけれども、チェコでもごくたまに発生する。その大半は小さなもので被害もなくニュースにならないまま終るのだが、ごくごくまれに被害が出て驚きと共にニュースになることがある。こちらに来てからで記憶に残っているのは、確か2004年にオロモウツの近くの町、リトベルで発生したものである。
モラバ川の支流の上で発生した竜巻が、リトベルの町の外側をかすめるように移動し、ちょうど進路上にビール工場があったため、設備に大きな被害を出した。それ以外にも十軒ほどの民家が屋根を飛ばされるなどの被害を受けていた。
壊滅的な被害を受けたのは、南からフルシュキ、モラフスカー・ノバー・ベス、ミクルチツェ、ルジツェの四つの村で、ブジェツラフとホドニーンの一部にも大きな被害を与えた。合わせて1500軒以上の建物が何らかの被害を受け、そのうちの200軒ほどは、改修も不能ということで解体されることになった。被害総額は150億コルナに上ると推計されていた。建物の被害の様子はチェコ語のウィキペディアの このページ である程度見ることができる。人的被害のほうも、亡くなった人こそ6人だったが、負傷者は数知れず、中には足の切断を余儀なくされるなど、人生に関わるような大怪我を負った人も少なくなかった。
確か、当日から消防や警察だけではなく、軍隊も派遣されて救助活動が始まり、翌日からは復旧に向けた瓦礫の排除なども始まっていた。こういうときに、チェコ人の二面性が端的に現れるのだけど、まずいい面から言うと、夏休みに入りかけた時期だったこともあって、チェコ各地から沢山のボランティアが集って、復旧作業に協力していたし、お金や支援物資を現地に送ることで支援しようとする人たちも多かった。また、コロナで制限が多い中、各地でチャリティーのためのコンサートも開催されていた。
悪い面としては、詐欺師めいた連中が出没したことで、どこかの村の村長が、ボランティアのふりをして村に入り、多額の謝礼を要求するような連中がいたと憤慨していた。それから、救援、復旧活動の指揮を取る南モラビア地方当局の要請を無視して、車で直接現地に乗りつけ交通渋滞を引き起こして活動の邪魔をしたボランティアも、人の話しを聞かないという意味でこちらに入るか。救援物資にしても、数は十分にあるから送らないでくれと名指しした物を送りつける人がいたらしいし。一番ひどかったのは、夏のくそ暑い中、人口が100人程度の村に、竜巻の被害で電気もガスも水道も止まっているところに、1万個のヨーグルトが送りつけられたという話で、ニュースのレポーターが切実な声で、ヨーグルトだけはこれ以上送らないでくれと繰り返していた。それも含めて在庫処分と勘違いしている人がいるんじゃないかという印象を持った。
政治家の動きについては云々してもしかたあるまい。政府側も野党側もあれこれやっていたけれども、実際に現地の役に立つかどうかよりも、近づく選挙に向けてのパフォーマンスにしか見えないものが多かった。キリスト教民主同盟のマリアン・ユレチカ氏が、自分の農場で使っているトラクターを、必要なら貸し出すとSNSで発信していたのは面白いと思ったが、実際に貸し出されたのかも、どのぐらい役に立ったのかも知らない。
2022年1月4日
タグ: 災害
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