とまれ、この町の議会の選挙結果は以下の通り。議員定数は33人。
クラドノのための選択 13
市民民主党 7
クラドノ人たち 5
ANO 4
共産党 2
オカムラ党 2
第一党になった「クラドノのための選択」と第三党の「クラドノ人たち」の二つのグループは、一見地元の政党とは関係のない人たちが組織した地域政党のように見えるが、話はそんなに簡単ではない。 選挙結果 を見ると、キリスト教民主同盟、TOP09、市長連合の名前が存在しないから、プラハ(後述)と同じように、どちらかのグループは、この三党の連合体である可能性がある。既存の政党が忌避されている傾向に気づいて党名隠しに走ったと考えるのは穿ちすぎだろうか。海賊党もないからこれもどちらかに加わっている可能性が高い。
さて、この結果から考えると、第一党の名簿第一位であるボルフ氏が市長となり、他の政党と連立して市政府を構成することになるのが普通なのだが、ここクラドノでは、第二党の市民民主党が主導して、クラドノのための選択を排除した連立が成立した。第一党が連立から除外されるのは珍しいことではないのだけれども、クラドノの場合には、連立を組んだ相手が、正確には相手の一つが、物議を醸した。
市民民主党は、クラドノ人たち、ANOに加えて、オカムラ党とも連立することにしたのである。市民民主党とクラドノ人たち、ANOの三党の合計議席数は16で、過半数にぎりぎりで届いていない。そこでオカムラ党の2議席を加えて過半数を獲得することにしたようだ。これに対しては市民民主党の中央の党指導部から強く批判されていた。
クラドノの市民民主党の市長候補のイラーネク氏は、党籍を離脱することで党首の批判に答えるとともに、共産党とオカムラ党のどちらかを選ばなければならず、比較的ましなほうとの連立を選んだに過ぎないと釈明していた。そこまでして市長になりたかったのかと言うべきなのか、そこまでしてクラドノのための選択から市長が出るのを阻止したかったのかと言うべきなのかはわからない。また、中央の政治と違って地方の政治では所属政党の主義主張の違いを超えた関係があるのだから、それを知らない中央の指導者にあれこれ言われても困るみたいなことも言っていたかな。
クラドノのための選択の市長候補のボルフ氏はANOとの連立を考えていたと発言しているから、市民民主党としては市政府で野党に落ちるのを嫌がっての挙だったのかもしれない。とまれ、中央主導で地方組織の問題のありすぎるボス政治家を排除することで、解党寸前まで落ち込んだ党勢を盛り返してきた市民民主党の指導部にとっては困った事態である。
オカムラ党はプラハやプラハ周辺では、それほど支持を伸ばせていないのだが、中央ボヘミア地方では唯一クラドノでだけ議席を獲得できたらしい。それはクラドノという町の特殊性なのか、クラドノのオカムラ党の党員が、比較的穏当で有能であることを知られていたからなのか(本当に有能かどうかは知らない)。オカムラ党はほかの町では連立与党に加われないだろうから、クラドノがオカムラ党が地方政治で使えるかどうかの唯一の試験場だということになる。
かつて、同じように心配されていた海賊党が、地方政治の舞台で予想をはるかに超えて使えることを見せ付けた結果、国政選挙でも躍進を遂げたのと同じ道を行けるのか、緑の党のように国政と同様に地方政治にも混乱をもたらすだけにおわって将来議席を失うことになるのか、ここが分かれ道である。後者になる可能性が高いとは思うけれども、市民民主党が共産党ではなくオカムラ党を選んだことを考えるとクラドノではうまくやるかもしれない。中央の党首がその地方の努力と成果をぶち壊すというシナリオもありそうである。
あれ、何でクラドノなんて行ったこともなければ、関心もない町についての話でこんなに長くなってしまったんだろう。仕方がないのでここでおしまいにして、次はプラハとブルノの話である。
2018年10月12日17時15分。
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