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2021年01月10日

足らざるは病床のみにあらず(正月七日)




 こんな状況なので、病院側が限界まで配置転換をして、武漢風邪患者受け入れ用の病床を増やしたが、満杯になりつつあり、軍が準備している野戦入院病院の稼動も近いと言われている。それでどの病院にどれだけ空き病床があるかの情報を集約して、入院が必要な患者が出た場合に、どの病院に運ぶかを指示する管制システムのようなものも導入されているらしい。

 ここまでが前提。年末だったか年始だったか正確には覚えていないのだが、オストラバから衝撃的なニュースが飛び込んできた。モラビアシレジア地方では、医療システム以上に火葬のシステムが破綻しつつあり、地方内の火葬場で順番待ちの遺体の数が増えすぎて、遺体を安置する場所が足りなくなりつつあるというのである。
 考えてみれば、患者の数が増えれば医療機関の負担が増えるのだから、死亡者の数が増えれば葬儀関係の負担が増えるのは当然である。医療機関もそうだが、普段はある程度の余力を持って運用されていて多少の数の増加には対応できても、今回の激増ともいえる事態には対応できないのだろう。今年の9月から11月の死亡者の総数は、ここ10年、20年で最高を示した月と比べても、倍以上の数を示しているのである。火葬場の処理能力がパンクを起こしても不思議はない。
 とりあえず、ハマーチェク内相が数十体の遺体を南モラビアの火葬場に移送して処理させることにして、モラビアシレジア地方の火葬場から遺体の収められた棺があふれ出す事態だけは防がれたが、処理能力の限界に近づきつつあるのはモラビアシレジア地方だけではなく、チェコ全体で火葬場が遺体であふれそうになっているらしい。それで、ハマーチェク氏は入院用の病床と同様に、どこの火葬場にまだ余力があるかをまとめて、遺体搬送のための管制システムが必要だと語っていた。

 一番の問題はニュースで取り上げられるような形で、モラビアシレジア地方の知事が訴えるまで何の対処もされていなかったことで、発表前に報告を上げていなかったとは思えないことを考えると、ハマーチェク氏も含めて政府の怠慢を責められてもしかたあるまい。火葬場の状況がどうなろうと、ニュースで注目を集めるまでは、選挙での得票にはつながらないから後回しにされたわけである。

 もう一つ気になるのは、葬儀会社の人が、問題の原因は火葬場の処理能力にあるのではなく、火葬に際してさまざまな無駄な義務が課されていることにあると批判していたことだ。その人の話によると、現場を知らない官僚どもが頭の中だけでルールを作るからこんなことになるのだというのだけど、具体的にどんな決まりが火葬場の状況を逼迫させているのかはわからなかった。遺体を運ぶ際には必ず二台の車で動かなければならないことになっているというのは聞き取れたのだけど、それが火葬待ちの遺体が増えているのとどう関係があるのかわからなかった。
 考えられるとすれば、火葬場本来の能力を無視して一日に火葬できる数を制限していることだろうか。ただ、それなら管制システムなど導入しなくても、非常事態宣言下の政府の権限で制限を外すぐらいのことはできそうである。

 日本だと火葬の後に遺族が骨上げを行なって骨壷に収める儀式があるから、他の火葬場に移されるのに反対するだろうけど、チェコではそこまでこだわらないのだろうか。移送の対象になる遺体は、遺族のいない人のものが優先されるのかもしれない。とまれ医療だけでなく、葬儀のシステムまで破綻寸前と言えば、チェコの状況がいかに危機的かわかってもらえるだろう。
2021年1月8日23時









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