パリ協定とは温室効果ガス排出量下げることを掲げている。
世界各国で異常気象による自然災害が年々増加し自分たちの生活を脅かし始めており、要因は地球温暖化による気候変動だと言われています。
パリ協定とは2020年以降の世界の気候変動対策に関し、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された「京都議定書(先進国の温室効果ガス排出量90年比5%減少)」の後継となる国際的な枠組みです。
パリ協定の目標は、 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃〜1.5℃の間に抑える努力をすことです。
そのためには、できるかぎり早く温室効果ガス排出量(二酸化炭素の排出量)を下げ、森林などによる吸収量のバランスをとる。
出典:国土交通省資料より
2020年パリ協定に向け「住宅の断熱性能の義務化」を2012年から準備。
もともと、パリ協定に向けて、国土交通省では「新築住宅における省エネ性能の向上」を掲げていました。
そして、2020年のパリ協定に向け、新築住宅の省エネルギー基準への適合を義務化に向けて準備していました。
中小工務店・大工の施工技術向上や伝統的木造住宅の位置付け等の配慮、 実施のための環境整備に取り組んでいました。
「新築住宅における省エネ基準適合の義務化」で削減されるエネルギーは冷暖房のみで「省エネ基準」は新たな「断熱基準」という意味と同じことです
ネット・ゼロ・エネルギー・ ハウス(ZEH)とは?
この2020年のパリ協定に向け、新たな取り組みの1つとして、ZEH(ゼッチ)Net Zero Energy House(ネットゼロエネルギーハウス)も住宅産業界への一つの目玉でもありました。
ライフサイクルカーボンマイナス住宅(LCCM)、低 炭素認定住宅などの省エネルギー・省CO2のモデル的な住宅への支援を行 うことになっていたようです。
ハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の 半数以上をZEHにすることになっていたんです。
日本の家庭部門の温暖化対策(気候変動対策)の3割は、新築住宅の省エネ基準(断熱基準)義務化で、、ZEHなどの推奨基準住宅の標準化が中心的な気候変動対策となっていました。
これらは、2012年から「2020年までに新築住宅は段階的に省エネルギー基準」への適合を義務化することを目標に段階的に実施してきた政策のはずでした。
そして、2020年以降は平成28年基準を下回る断熱性能の住宅は市場から排除される予定となっていました。
パリ協定に向けた「住宅の断熱性能の最低基準の義務化」の白紙化。
ところが、2018年12月3日、COP24にて「住宅の脱炭素のためのESG投資促進」とは真逆の政策が国土交通省から提示されました。
その後、2020年から義務化が予定されていた「住宅の断熱性能の最低基準の義務化」を事実上白紙化する案が提示され了承されることになってしまいました。
内容的には、大きくわければ二つあるようで、その理由として、
?@体制が整わない。
?A義務化は市場に混乱を引き起こす。
?B建築主に効率性の低い投資である。
?C住まい方でエネルギー消費量は変わる。
?D省エネに習熟していない事業者が多い。
?Eデザインに制限がかかり建築家がやりにくい。
などだそうです。
出典:国土交通省資料より
?@?Aは何のために2012年から準備していたのか。
国土交通省は何のために準備していたのか意味不明です。
決定しない屁理屈にちがいありません。
?B?Cは施主への思いやるための屁理屈のようです。
「?B建築主に効率性の低い投資である。」って、これ以外の投資で、断熱性能を上げる投資以外でもっと高いものはあるのでしょうか。
仮に、グラスファイバーの性能を16kgから24kgにしたところで、断熱材の材料費の差は、建物全体にすれば微々たる価格です。
天井・床下の断熱材を増やすことは、省エネを達成するためには必然なことです。
窓にしても、ほとんどが複層窓があたりまえの昨今なので、既に実現しているとも言えます。
「?C住まい方でエネルギー消費量は変わる。」といっても、住む限りは、寒い地域では暖房費用の節約になり、逆に暑い地域はエアコンの利きが格段によくなり、確実に断熱費用は回収できるにちがいありません。
?D?Eは設計する人や大工さんを侮辱する屁理屈のようです。
今時グラスウールの施工し方を知らない大工さんが居るとは思えません。正しい施工をするしないは、志質によるものです。
特に在来工法の住宅は、計算せずとも、建築基準法で施工方法が定められており、詳細に計算する必要はありません。
断熱についても、住宅ローンの指定する断熱性能に適合させるために細かく決められていることから、特に障壁になるとは思えません。
さらに、断熱を知らない、勉強していない建築士の方がいるとは思えません。いたとしたら論外です。
もし、神社仏閣など古来からの建築や、沖縄などの暑い地域を意図するならば、除外すれば良いだけです。
2020年に義務化される予定だった省エネ基準を満たす断熱材はどのくらいだったのか?!
平成25年基準の4級地の東京を例にしてみると、Q値2.7で、2020年に義務化される予定だった省エネ基準では、6地域で目標Q値は2.7を上回れば基準をクリアだそうです。
実際、改正される予定だった省エネルギー基準を達成するために最低限必要なグラスウールの厚みはどれくらいかと言えばつぎのとおりです。
・天井に高性能グラスウール16k→155mm
・壁に高性能グラスウール 6k→85mm
・床に高性能グラスウール 24k→80mm
・窓の仕様 アルミサッシ・ペアガラス
この4ポイントをクリアーすれば、Q値2.7、、2020年に予定だった省エネ基準UA値0.87をクリアするそうです。
ちなみに、世界と比較した場合日本の基準は、相手にされないほどの低さだそうです。
そんな基準を少しだけ上回ったからといって”とても「省エネで暖かい家」とは言えないのは当然のようです。
よって、仮に2020の改正される予定だった省エネルギー基準になったとしても、たいして性能UPしたとは言えないのではないでしょうか。
出典:国土交通省資料より
建築業界の大手を優遇する国土交通省の住宅行政。
今回の2020年のパリ協定に向けた、「住宅の断熱性能の最低基準の義務化」を白紙化したのか、色々理由は掲げているが、素人目からは、あまりにもハウスメーカーサイドに立った省エネ基準だったのではないかと思います。
その1つとして、家全体を含めた省エネルギー基準を作ったことによる、施工のポイントが不明確なこと。
これは、多くの中小工務店や個人の大工さんなど、年齢や規模がマチマチなのに、いざ計算して合格すれば補助金の対象や認定書など、手間暇があまりに多く困難であることが原因のような気がします。
言い換えれは、建築基準法やローン借入時の施工基準などのように施工方法を明確にすればよかったのではないかと思います。
肝心の建物本体の基本性能だけではなく、日射の省エネ、設備による省エネ計算など、国土交通省、大手ゼネコンやハウスメーカーそして、大学教授などの机上での省エネ計算に頼りすぎではないかと思います。
建物の断熱「外皮性能」に目標を置き実現すればよかったのに、現場で実現できること、そして住宅に住む施主、家族のことをないがしろしすきだ結果だと思います。
今回、「住宅の断熱性能の最低基準の義務化」が白紙化されたことにより、かつて世界から「うさぎ小屋」と言われた日本の住宅が、今後は何と言われるんでしょうか。