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2020.10.16

放射性トリチウムの除去技術－工業規模で可能か

テーマ：気になる技術動向(1281)

カテゴリ： Technology

核分裂で中性子の飛び交う原子炉内部では、冷却水中の水素（H）の一部が重水素（D）や3重水素（T）トリチウムに変換されてしまいます。自然界特に海水等にもDもTも存在しますが、その量は多寡が知れていますし、トリチウム（T）は放射性元素なのです。

経済産業省と東電はトリチウム水の処分を検討していて、その有力な手法がトリチウム水を海水で薄めて海に放出する案だが、福島県産の海産物への風評被害などは避けがたいとの見方が多く、今もって根強い反対意見も多い様です。
HTOであればH2O に比べ分子量が10%大きく、その希釈や拡散の数値シミュレーション結果も公表されていませんので、言葉だけで信用することは出来ないのでしょう！

処で、トリチウム含有量を低減する技術がロシアのロスアトム社は、日本政府、東電の研究委託を受け、水とトリチウムの分離技術の開発を行っていて、4年前の2016年に報告書を提出されています。
これが実用化されれば、福島原発の収束作業は一段と進むことになりますが、実験室レベルの除去技術をどの様に工業的規模にスケールアップ出来るかが鍵となりそうです。

東京電力福島第1原子力発電所の敷地内にたまり続けるトリチウム水の処分について、トリチウムを分離し量を大きく減らしてから海洋に放出する手法を電力中央研究所が「飲料水レベルまでトリチウムを減らして風評被害の回避出来る」と提唱している。

福島第1原発の壊れた原子炉に今も注入され続けている冷却水は、放射性物質に触れて汚染される。多核種除去装置（ALPS）で浄化して放射性物質の大半を取り除くが、除去が難しい放射性物質のトリチウムを含む水（ALPS処理水とも呼ぶ）が大量に残る。

東京電力は、トリチウム水を敷地内のタンクに貯蔵して来たが、タンクが1000基近くに達し敷地内では貯蔵しきれなくなりつつあり、廃炉作業への障害にもなりかねないことから、経済産業省と東電はトリチウム水の処分を検討している。その有力な手法がトリチウム水を海水で薄めて海に放出する案だ。
しかし経産省が4月に開いた地元の意見を聞く会合で、水産業や林業などの関係者から海洋放出に強く反対する声が出ており地域の合意はできていない。

提唱されている手法は、トリチウムを含む水分子と通常の水分子では蒸発量が極僅かに違う性質を利用、蒸留を繰り返すことで、トリチウム濃度をWHOの飲料水ガイドラインの1リットル当たり1万ベクレル以下にし、飲料水と同等の安全性が確保できると言う。

福島第1のタンクに貯蔵されているトリチウムの総量は約860兆ベクレル。東電は今後30年かけてトリチウム水を希釈し放出する案を経産省資源エネルギー庁の小委員会に示している。この案通りに全トリチウムを海洋に流すと、その量は年間27兆ベクレルに達し、これは福島第1の保安規定で定められた年間22兆ベクレルを上回る。

経産省は、放出されたトリチウムが海洋環境に悪影響を及ぼし、海産物を食べた人の健康に問題が生じたりすることは無いと主張し、トリチウムは原発から通常排出される冷却水に含まれており、健康へのリスクはないとの見方が専門家の間でも大勢を占める。

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