デフレの正体 0
原発 0
体罰 0
糖質制限食 0
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私:中東では米国のシリア爆撃でシリア問題が大きくなっていて、トランプ米大統領が昨年12月、エルサレムをイスラエルの首都と宣言したパレスチナ問題がかすんだ感じだ。 A氏:しかし、今年5月には米大使館を商業都市テルアビブからエルサレムに移転する計画だ。 パレスチナ自治区ガザ地区の人々は3月30日、地区とイスラエルとの境界付近で、パレスチナ難民の帰還を求める大規模デモを始めた。 イスラエルの占領に抗議しながら行進する平和的なデモだったが、参加者の中には石を投げたり、タイヤに火を付けたりした人もいた。 この「原始的な武器」にイスラエル軍は催涙ガスや実弾で返してきて、死者は15人、負傷者は1400人を超えた。 私:デモはイスラエル建国に伴ってパレスチナ人約70万人が難民になった「ナクバ」(大破局)70周年の5月15日まで、毎週金曜日に6週間続き、米大使館が移転されるのはその前日の同14日。 しかし、アラブ諸国やアラブの人々が、共に闘ってくれるかどうか、現実は厳しい。 2012年と14年、イスラエルがガザを大規模に攻撃し、2千人以上が死亡したが、アラブ諸国はイスラエルの暴力を止められなかった。 米政権の一方的な「首都宣言」にアラブ諸国は一斉に非難の声明を上げ、宣言の撤回を求める国連決議でアラブ諸国は賛成に回ったが、米国の外交官の追放や国交断絶といった強硬手段には踏み出せていない。 A氏:かって、パレスチナの占領をめぐりアラブ諸国はイスラエルと4次にわたる中東戦争で対決。 パレスチナ問題はアラブが団結できるテーマだった。 イスラム教徒にとってサウジアラビアのメッカ、メディナに次ぐ聖地エルサレムをイスラエルの首都とする米政権の決定は、アラブにとってのど元に刃物を突きつけられたに等しい。 しかし、アラブの反発は予想以上に弱い。 私:「アラブの春」の挫折に伴う混乱で、中東の相関図は、ほどきようもないほど複雑化していて、中東の覇権を争うサウジとイランは、イエメンで「代理戦争」を起こし、対イランで利害の一致するサウジとイスラエルは対立よりも協力を模索している。 シリア内戦は終わる気配がなく、リビアは今も政府が分裂している。 そして、各地で吹き荒れた過激派組織「イスラム国(IS)」の恐怖支配と殺戮。 各国は自国の安定と権益を確保するのに精いっぱいで、米国とイスラエルはそんなアラブの無力感を見透かしている。 翁長忠雄氏は、「アラブの若者の怒りと絶望がマグマのようにたまっている。国際社会がそれを放置したままでは、若者は過激な思想にしか希望を見いだせなくなる。トランプ氏が『テロとの戦い』の先頭に立つつもりなら、アラブの切実な訴えに真摯に向き合ってほしい」という。 今回の米国のシリアへのミサイル攻撃で、ロシアも中東問題に深くからんできて、中東問題はますます複雑化してきたね。
2018.04.16
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私:今週の読書欄でたまたま、地方経済に関係する表題のもの、2冊があったのでとりあげよう。 『復興の空間経済学』の副題は、「人口減少時代の地域再生」で、藤田昌久氏、浜口伸明氏、亀山嘉大氏の共著。 もう一つの『福岡市が地方最強の都市になった理由』は木下斉〈著〉のビジネス書。 『復興の空間経済学』の導入部には、「津浪後の復興は目覚ましく、たちどころに失われた戸数、人口の満たされてしまう状態にある」という「引用」があるが、「引用元」は1933年に起きた昭和三陸地震の10年後に、地理学者が書いた本の一節という。 東日本大震災後に見てきた光景とは、随分違う。 本書はこの対照をもたらした要素として、人口の動き――被災地域だけでなく、日本全体の人口の増減や分布の変化に着目。 かつての津波被害のときは、日本の人口は増え続けており、豊かな漁場といった資源の希少性は高まる一方で、それゆえ「三陸沿岸部には、復興を自然に成し遂げる条件があった」という。 では、日本全体が人口減少に転じたいま、復興のあり方はどのような影響を受けるのか、何に注意すべきなのか。 本書は、「空間経済学」を用いて、その分析を試みていると評者の石川尚文氏はいう。 A氏:「空間経済学」とは、難しそうだね。 「空間経済学」は、都市や産業の集積がどのように生まれるのか、といった「地理的空間における経済学の一般理論を目指す」分野とされ、共著者の一人、藤田昌久氏は、この領域を切り開いてきた第一人者。 極めて抽象度の高い理論が、被災地の複雑な現状にどこまで適用できるのか。 ハードルの高いテーマを前に、論の運びがやや錯綜している印象も受けると評者は言う。 だが、人や産業を吸引する「集積力」と、反対に流出を招く「分散力」による論点の整理や、人口が増えるときと減るときの都市の盛衰は、単純に逆の過程をたどるわけではないといった指摘は、腑に落ちるところが多く、現状の厳しさを描きつつも、理論的にあり得る復興の糸口を探る視点も貫かれているという。 私:それに対して『福岡市が地方最強の都市になった理由』のほうは具体的だね。 「地方消滅」の次は「地方創生」が流行語となっているが、その中で福岡市の存在感が急上昇中。 2016年に政令指定都市の人口で、神戸市を抜いて5位にランクインし、人口増加率では東京をしのいで1位、人口増加数も2位の川崎市に大差をつけて1位。 しかも10代、20代の若者人口数が多い……と、記録ラッシュ。 A氏:躍進の理由を、著者は「都市経営」というビジネスの視点で読み解く。 福岡の優位性は、学校数が多く、まちのど真ん中に空港があり、有名企業とともに、新規起業家が集積し、市域がコンパクトで職住接近可能……というもので、それらが雇用と人口増につながり、正の循環を描く。 しかし、福岡市は高度成長時代に独自の「常識破り」を行った。 すなわち、行政ではなく民間主導で、工場誘致から早々と撤退し、開発抑制を徹底、といった「打ち手」だ。 そこには、水不足で工場誘致も市街地拡大もできなかったという、都市としてのハンディキャップがあった。 会社も都市も弱みを乗り越える時に、生き残りの知恵がつく。 私:「お金がない」「時代が悪い」と思うなら、むしろ今こそチャンスを手にしている、と考えるべきなのだと評者のジャーナリスト・清野由美氏はいう。 それにしても東京集中はますます進み、「地方創生」のスローガンはどうなったのかね。 税金を投じているのだから経過報告がほしいね。
2018.04.15
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私:高齢者は「65歳」から、という線引きの見直し論が出ているとして、朝日新聞は、3氏にインタビューしている。 1人目の秋山弘子氏は、「生涯現役」の意欲を活かせということで、調査データから男女ともにおおむね70代半ばまではひとり暮らしができるくらい健康、ということがわかったという。 身体機能や認知機能も若返っていて、東京都健康長寿医療センターの調査によれば、老化に関する指標である通常時の歩行速度を1992年と2002年で比較すると、男女とも11歳若返っていた。 日本老年学会が昨年、「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」にすべきだと提言したのも、こうしたデータの裏付けがあったから。 A氏:定年や公的年金の支給開始の年齢を75歳に引き上げるべきだ、という意見もあるが、秋山氏は、高齢者は個人差が大きいから反対だという。 70歳でマラソンを完走する人もいれば、自宅の郵便受けまで歩くのがやっとの人もいて、年齢で線引きして定義すること自体、あまり適当ではないという。 かつては余生だった定年後の考え方が団塊の世代あたりから65歳は「セカンドライフの出発点」という考えに変わってきて、日本の高齢者は支えられる側よりも支える側にありたい、と願っている人が多いという意欲を生かさぬ手はないと、秋山氏はいう。 定年後は健康で仕事の能力もあるのに、行くところがなく、家でテレビばかりみている人が多かったので、徒歩や自転車で行ける距離で農業や学童保育といった就労機会をつくり、働き方もその人の体力や自由な時間にあわせるという、生涯現役促進地域連携事業と名付けられたこの手法には政府の予算がつくようになり、いまは29自治体に広がっている。 働けば、身体を動かし、頭も使うほか、人とのつながりもでき、健康寿命を延ばす特効薬といえる。 今後も減っていく生産年齢人口を補うための最適解は生涯全員参加型の社会をつくることで、それは、高齢者や女性だけでなく、病気や障害、介護など様々な問題を抱えている人たちが無理なく生涯、働ける柔軟な社会だと、秋山氏はいう。 私:秋山氏の考えのベースにあるのは、「生涯現役」発想だが、これと正反対の考えのベースを持つのが2人目の「70歳まで働く人生、幸せか」という森永卓郎氏だね。 これは、労働は「苦役」だという欧米型発想だね。 俺の若いときに、知り合いの外国人が、定年は40才くらいがいいと言っていて、ビックリして理由を聞いたら、40才で定年になって年金がもらえるなら後は、十分に好きなことができるからだという。 「労働」の語源から考えると、まずラテン語系の laborには古代の奴隷制を連想させる苦役のイメージが色濃く付きまとっていて、堪え忍ぶ苦しい仕事の意味合いが強く、労使関係、労働運動、革命運動等の文脈における「労働」は基本的に labor 。 ちなみにドイツ語の Arbeit の語源的意味も 「辛苦」、「困苦」であり、フランス語の travail にいたっては「責苦」、「拷問」という恐ろしい意味が語源にあり、この系列では、働くことは「苦」。 定年でその「苦」から解放されるというわけだ。 A氏:森永氏は、安倍政権の成長戦略は、年をとっても働け、ということにつき、「1億総活躍社会」は、経済成長のための国家総動員体制だという。 70歳まで働いたほうが成長率が上がるというのは経済学的には正しいが、問題は、そういう社会が望ましいのかということだと、森永氏はいう。 「経済成長こそすべての目標だ」というのは、考え直す時期に来ており、絶対的貧困はなくさなければならないが、高齢まで働き続けて、必要以上に経済を成長させても、幸せな社会にはならないという。 これまで通り働くのは65歳までにして、そこから好きなことをするという社会のほうがいいし、減ったとはいえ年金があれば、あまりお金にならない仕事でも食べていける。 みんな年をとったらアーティストになればいい、そのほうが楽しいし、社会として健全だという。 私:森永氏自身、65歳になる前から、将来やりたいと思うことは全部始めていて、歌手も、役者も、カメラマンも、落語家も、おもちゃ屋もやってみたし、博物館もオープンさせた。 金にはならないが、すごく楽しいという。 高齢者の基準を決めるには、まずどういう人生が幸福かという根本的な議論をすべきで、政府が勝手に決めていいものではないと森永氏は指摘する。 今、「人生100年時代の国家戦略」などいう言葉があるが、森永氏の言うように福利厚生財政の検討を中心にしてもらい、経済成長のための「生涯現役」戦略は考えものだね。
2018.04.14
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私:株価の乱高下を説明しようとするのはばかげたことだが今回は、何が起きているのかかなり明快で、トランプ氏が脅しの通りに高関税をかけ、他国から報復を招くのではないか、と投資家が思うたびに、株価が急落し、単なる芝居だと判断すると株価は回復する。 市場は貿易戦争をいやがるのだとクルーグマン氏はいう。 A氏:クルーグマン氏は、やる気があるのかないのか分からない中国との対決について、具体的に見ていこうという。 ある意味、中国は実際に世界経済における厄介な存在で、特に知的財産権の国際ルールをあざけるように、適切な対価を払わず外国の技術を奪ってきた。 公平を期すなら、トランプ政権の高官は確かに時折、強硬姿勢の理由として知的財産権の問題を挙げている。 だが、中国に技術の対価を支払わせるのが目的ならば、米国は具体的な要求を示し、中国にそれをのませるための戦略をとるはずだ。 私:しかし、トランプ氏が本当に気に入らないのは、中国の政策的な罪状ではなく、対米貿易黒字のようで、その額は年に5000億ドルにも上ると繰り返し述べている(実際には3400億ドル弱だが、どうせ誰も知らないだろ、というわけだとクルーグマン氏は指摘する)。 この貿易黒字は中国が米国から毎年5000億ドルを勝ち取っている、要するに盗んでいるということだ、とトランプ氏は主張している。 しかし、総じて米国の貿易赤字は、外国人から呼び込む対内投資の方が、米国人が他国に行う対外投資よりも多い、という事実を別の側面から見たもので、貿易政策は何の関係もない。 そしてクルーグマン氏の知る限り、トランプ政権では誰一人理解していないように思われる紛れもない事実があり、それは、中国はもはや大幅な貿易黒字を抱えていない、ということ。 A氏:今から10年前、中国の経常収支の黒字(サービス貿易や対外投資の所得も含めた総合的な基準)は、GDPの「9%超」と非常に大きな数字だったが、2017年には、それがわずか「1.4%」となり、これは大した数字ではない。 対して、米国の経常収支の赤字は対GDP比で「2.4%」と少し大きいが、2000年代半ばの不均衡に比べれば大幅に是正されてもいる。 私:しかしそれなら、なぜ、米国と中国の「二国間」貿易はそれほど不均衡なのか? 答えは一種の統計上の錯覚、という面が大きいく、中国は巨大な加工貿易国だということ、 日本や韓国などの国から輸入した部品を組み立て、米国市場向けの消費者製品を製造する。 米国が中国から輸入する物の多くが、本当は別の国で作られている。 グローバルなサプライ・チェーンだね。 だから、例えば、日本の部品メーカーの中国からの収入(中国では支出)が中国の対米黒字の陰にかくれている。 実のところ、中国が対米黒字を削減するためにできることがあるのかさえ、明らかではなく、そのためには、サプライ・チェーンをなくし、中国経済をまるっきり別物へと変えなければならないだろう。 今の世界経済のほとんどを機能停止にするような全面的な貿易戦争を起こさない限り、そんなことは実現しないとてクルーグマン氏は指摘する。 A氏:トランプ氏自身は大規模な反グローバル化など平気かもしれないが、これまで見てきた通り、彼の愛する株式市場はいやがっている。 企業は、固い絆で結びついた世界経済がこのまま続くという前提のもとで多額の投資を行っており、貿易戦争が起きれば、その投資の多くが座礁資産化する。 日本経済も大変なことになる。 それから米国の農業生産の輸出割合は大きく、穀類では3分の2近くを占めているから、貿易戦争はトランプ支持層の住む農村部のほとんども荒廃させるだろう。 私:ある日、トランプ氏が貿易について強気な発言をしたかと思えば、株価が下がって、慌てて彼の顧問たちが貿易戦争は実際には起こらないと言い、そうなるとトランプ氏は自分が弱腰に見えるのではと心配になり、もっとたくさんの脅し文句をツイッターでつぶやく、という繰り返し。 グルーグマン氏は、これを「振り回しの術と呼ぼうではないか」という。 米中の貿易戦争は、株式市場が嫌っているだけでなく、日本経済も含め世界が大きな経済不況に陥ることを多くの経済専門家が指摘しているね。
2018.04.13
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私:筆者は、なぜ、「企業や地方自治体の不祥事」で当たり前になされる対処が「国政の不祥事」ではなされないのか。 なぜ、米国の政治スキャンダルでしばしば採られる対処が、日本では検討さえされないのか。 という疑念を問題にしている。 A氏:もし、日本の上場企業で大きな不祥事が持ち上がれば、第三者委員会を設け、デジタル・フォレンジック(電子鑑識)の最新技術を駆使して関係社員のパソコンやメールの履歴を調べ、プロの外部弁護士が関係者の事情聴取を重ね、報告書をまとめ、それを公表する。 もし、問題が見つかれば、会社自身が現旧の経営陣の責任を追及し、それが手ぬるければ株主が代表訴訟を起こす。 自治体でも同様で住民訴訟が威力を発揮し、元社長や元首長が巨額の賠償金を払うのに四苦八苦する事例は今や珍しくない。 これらは当局による捜査・訴追とは目的が異なり、別途、並行して進められる。 ところが、国政では、そうした事例はほとんどない。 私:もし、米国で大統領やその周辺の関与が疑われるような犯罪容疑が持ち上がれば、たいてい独立性の高い特別検察官が任命され、政府高官に非行があれば、その省庁の監察総監(インスペクター・ゼネラル、IG)が強大な権限を使って調査する。 議会に付属する独立の調査機関、政府監査院(GAO)も事実関係を吟味し、施策の効果やその適否も含め外部評価、改善策の選択肢を示す。 ところが、日本には特別検察官も監察総監もGAOもない。 昨夏に国連腐敗防止条約に参加したことで、日本も「独立性を付与された腐敗行為防止機関」の設置を義務づけられたが、閣僚ら特別職国家公務員については未設置。 A氏:これに対し、奥山俊宏氏は次のように9つのパッケージ提案をしている。 (1)捜索・差し押さえや証人尋問の権限を持つ監察総監(日本版IG)の全省庁への設置 (2)国会付属の政府監査院(日本版GAO)の創設 (3)特別検察官の制度化 (4)独立性のある腐敗捜査機関の創設 (5)政府や政治家への働きかけをめぐる資金の流れを透明化するロビーイング規正法の制定 (6)請願手続き法の制定と電子請願の制度化 (7)納税者代表訴訟(住民訴訟の国政版)の制度化 (8)公益法人通報者保護法の拡充 (9)公用メールの全部保存など公文書管理の徹底 私:この30年、日本の上場企業ではガバナンス(統治)、コンプライアンス規範順守)が格段に進歩してきた。 米国はさらに先行する。 奥山氏は、「パッケージとして上記の9項目を実現しなければ、日本の政府は、国際社会からも民間からも後れをとった、規律のない恥ずかしい組織になり果ててしまう。それを私は恐れる」という。 今、毎日のようにマスコミで報じられる森友学園、加計学園、自衛隊と集中的に続く国政の不祥事。 その解明がきちんとできないのをみると、日本の国政の遅れをつくづく感じるね。
2018.04.12
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私:2050年を見据えたエネルギー戦略を議論していた経産省の有識者会合「エネルギー情勢懇談会」が10日、原子力発電の「依存度低減」と太陽光発電などの再生可能エネルギーの「主力電源化」という二つの柱を打ち出した提言をまとめた。 提言では、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえ、「原発」は依存度を「可能な限り低減する」としつつ、脱炭素社会を実現するための「選択肢」と位置づけ、人材や技術の強化に「直ちに着手」するとしており、「脱原発」の道は取らない姿勢を打ち出している。 A氏:一方、「再生エネ」は「経済的に自立し脱炭素化した主力電源化」を目指すとし、発電した電気を蓄電池に「貯める」仕組みを整え、「火力発電」を伴わなくてもすむようにし、1キロワット時当たり95円(経産省試算)のコストを、10・1円以上とされる「原発」並みに下げることを目指し、「固定価格買い取り制度」がなくても成り立つようにするというが、実現には一段の技術革新が必要となる。 私:提言をまとめた「エネルギー情勢懇談会」の10日の会合でも、最後まで意見がぶつかり合ったのは「原発」の扱いだった。 昨年8月からの議論を踏まえ、提言は「原発」について「依存度低減」と明記する一方、「脱炭素化の選択肢」としたが、「依存度低減」といっても、どの程度減らすかなどの数値は示しておらず、将来の新増設の余地は残している。 また、一部メーカーが開発を進める新たな「小型原子炉」などを念頭に「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求」との文言も入り、「原発」を将来にわたって維持しようという姿勢がにじむという。 世論調査で「原発」再稼働への反対意見が賛成を大きく上回る中、経産省は基本計画の中に「原発」の新増設を後押しする文言の明記は見送る方向。 一方で、長期的には「原発」が必要との文言を明記したい考え。 提言が「原発」について「脱炭素化の選択肢」とのお墨付きを与えたことで、基本計画にも長期的な原発の重要性を明記しやすくなった。 A氏:「主力電源化」を目指す「再生エネ」は、世界的に価格低下が著しい。 「再生エネ」は、日本でも12年に始まった固定価格買い取り制度で導入量が増え、電源構成に占める割合は約15%と、30年度に22~24%にするとの目標に近づき、独り立ちして、安定供給を担う主役になれる状況が見えてきた。 天候次第で変動が大きい太陽光や風力は、余った電気を使う「蓄電池」や「水素・メタン発電」などと組み合わせて普及させる。 電力の需給バランスを調整する火力依存から脱するためだ。 ただ、現状では、「蓄電池」や「水素発電」などは割高で、相当な技術革新が進まなければ、ほかの電源に太刀打ちできなく、技術革新が遅れ、「再生エネ」のコスト引き下げが進まなければ、「より割安」などとして「原発」を推進する口実にされるおそれもあるという。 私:しかし、ブログ「『原発は安い』、崩れた神話」でとりあげたように、「原発の発電コスト」は、廃棄物処理コストなどを含め、本当に安いのか、きちんとした計算がほしいね。
2018.04.11
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私:3氏のうち、五百旗頭真氏のインタビューがまとまった内容になっているので、これをとりあげよう。 五百旗頭氏は、自衛隊は米国の翼の下にあった冷戦期とは異なり、本当に危ない事態に自前で対応しなければならない時代になったと指摘している。 一方で、日本は少子高齢化で人材の獲得競争が強まり、自衛官のなり手の減少や質の低下が懸念されている。 五百旗頭氏の防衛大学校の校長時代に行った改革のポイントは、優秀な人材を確保するための入試改革と、入学した学生を伸ばすカリキュラムや動機づけの強化だったという。 A氏:勉強の点数に限らない全人間的要素をみる、総合選抜入試を開始し、諸外国と戦略対話ができるような人材育成のため、人文社会系にも博士課程を作り、世界の主要な文化圏の教授陣をそろえ、士官学校交流を広げるなど、将来、幹部自衛官となって異文化社会で活動する素養を身につける体制を整え、遅ればせながら、学生の枠も増やしているという。 私:自衛隊は日本社会における最大の実力組織で、それだけに、国民に選ばれた政府に自衛隊が服する文民統制(シビリアンコントロール)が極めて重要。 槇智雄・初代校長は「服従の誇り」という言葉を防大生に示し、それは外からの強制ではなく、自ら進んで民主政府に従う、それは誇りに足ることだと、「シビリアンコントロール」の内面化を説いていた。 今度の「日報」問題は、底辺にその「自ら進んで民主政府に従う、それは誇りに足る」という意識が欠如しているね。 大臣に言われて、「日報」が「発見」され、「日報」が地下にある自然物の発掘のような感覚で扱われ、大臣の強い要求でないと出てこない。 地下に埋めたのは自然物でなく、隊員が意図的に埋めて隠したものでゲームではないのだか、「発見」はおかしいね。 「シビリアンコントロール」は内面化していないで崩壊している。 それなのに、大臣は、強制して要求したら「日報」が「発見」されたからシビリアンコントロール」がされていると弁明する有様。 A氏:五百旗頭氏は、今では、戦前の2・26事件のようなことは問題外だが、小さな不服従は、すべての官僚機構と同様にあり得るし、日本の役所における文書管理の実際は、恣意的な処分・消去を許しており、先進国の中で恥ずべきものだと指摘。 役所の通弊ではあっても、自衛隊は最高の実力組織だけに、不服従や隠蔽は深刻な問題となり得るという。 私:その点、昨年の南スーダンや今回のイラクの「日報」隠しなどの問題発覚は、残念な出来事で、ルールの未整備が深刻だと、五百旗頭氏は指摘する。 自衛隊の外国での行動を記す「日報」は、部隊の安全や国際関係上、ただちに公開すべきものではないが、正々堂々とそう言えずに存在しないといい、消去すら行うのは大問題。 公職にある者は、国民の信頼を回復するためにも、しっかりと記録を残し、一定期間を過ぎれば国民に公開すべきだという。 それは民主主義社会の基本であり、自衛隊員も同じで、現在の危機は、ルール確立の好機ではないかと五百旗頭氏は指摘する。 自衛隊のガバナンスに対する緊張感の弱さは、軍事活動の弱さにつながる。 米軍の傘の下にあり、実戦経験がないことが、緊張感の弱さにつながっているのかね。 憲法に「国防軍」と明記して解決するような問題はないようだ。
2018.04.10
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私:評者は、世界で一番読まれている本は聖書だろうとして、本書は、古代オリエント世界で栄えた都市を旅しながら、歴史が聖書にどのような影響を与えたかを記した一般向けの啓蒙書で、少しでも聖書に興味がある人には、ぜひとも読んで欲しいユニークな1冊だと紹介している。 A氏:著者の旅は、フェニキア人の都市「ビュブロス」から始まる。 バイブルの語源となった町で、その北方の大交易都市「ウガリト」の主神エルは、旧約聖書に登場する神ヤハウェのモデルになったという説もあるが、もしそうなら、世界を席巻した「セム的一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)」は、この港湾都市で生まれたことになる。 私:破壊と邪悪のシンボルであり続けた「バビロン」は、「エルサレム」が破壊されユダヤの人々が「バビロン」に捕囚民として連行されたので、「バビロン」が憎悪の対象となる。 しかし、旧約聖書が文書の体裁をとり始めたのは「バビロン」の町においてのことだった。 捕囚はペルシャの「キュロス大王」によって終わりを告げ、預言者「イザヤ」は「キュロス」を「メシア(救い主)」として歓迎。 ここから「メシア」を待望する観念が生まれ、「イエス」に結びついていく。 「アレクサンドリア」で聖書は「ヘブライ語」から「ギリシア語」に訳され「七十人訳聖書」と称されるが、訳で様々な問題が生じた。 すなわち、「モーゼ」の渡った「葦の海」が「紅海」、「イザヤ書」の「若い女性」が「処女」と訳された。 A氏:キリスト教の根幹を成す「処女降誕」は誤訳から生まれたのかも知れないというのは興味ある指摘だね。 私:「クムランの洞窟」で発見された死海写本は聖書本文の変遷を実証。 旅の最後は「ローマ」で、旧約、新約聖書の正典化の作業は、実に4世紀末まで続いた。 このように、聖書を中心に古代に栄えた都市を旅する紀行書は確かに、興味を引き、少しでも聖書に興味がある人には、ぜひとも読んで欲しいユニークな1冊といえそうだね。
2018.04.09
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私:朝日新聞は、今週から書評などの「読書」特集を日曜から土曜に変更。 今週、興味があったのは次の2点。 まず、最初に「ブラック労働」を扱った著書「ブラック企業」から始まり「ブラク企業2」「ブラックバイトにだまされるな」「ブラック職場 過ちはなぜ繰り返されるのか」と続く全5冊を「ひもとく」欄でとりあげている。 もう一点は、書評欄の中で小さく扱われている「ビジネス書」コーナーでとりあげている松田真一氏〈著〉『経営継承の鎖 「歴代成長」企業のDNAを探る』(評者・ジャーナリスト勝見明氏)だね。 A氏:このブログでも5年前に今野晴貴氏の「ブラック企業・日本を食いつぶす妖怪」で、とりあげているが、その後も「ブラック労働」が絶えないね。 労働弁護士・嶋崎量氏は、近年、働き始めて数年のうちに、「長時間労働」や「パワハラ」等の劣悪な職場環境が原因で、精神疾患発症や自死にまで至ってしまう案件にたくさん接してきたという。 今野晴貴氏は、5年前の著書「ブラック企業」で、若者を使い捨てにする「ブラック企業」を告発し、大きな社会問題となり、使い潰されるのは労働者の自己責任ではなく企業側の責任であること、若者個人に牙をむくだけでなく社会全体に被害が及ぶ問題だと指摘。 この著書では、「ブラック企業」に入らないための見分け方に終始せず、社会全体が「ブラック企業」撲滅に取り組む必要があることや、若者自身が職場を変えていく力を持つことの重要性を説いている。 A氏:その後、奨学金制度改善に取り組んできた大内裕和氏が「ブラックバイト」という言葉を編み出す。 大学教員の大内氏は、親元からの資金援助に頼れない学生が、学生生活継続のためにアルバイトに縛られ、学業に支障をきたす様子に向き合って「ブラックバイトに騙されるな!」を書いた。 そして、「ブラックバイト」に慣らされた学生は企業の労働の歪みに気付かなくなることから、「ブラックバイト」が「ブラック企業」と連動した、社会全体の問題であることもあぶり出した。 私:嶋崎量氏は、法律知識だけでは若者に抵抗する力は身につかず、「労働法の権利行使は、『社会人としてのマナー』」だ」と考えることを薦め、自分を責めず、早めに専門家に相談することも強調して欲しいという。 「労働者が抵抗力をつける」ことの重要性と困難さを指摘し、抵抗するために「労働組合」の存在を強調。 残念ながら、現在は若者の間で「労働組合」に対する認知度が高くはないが、ワークルール教育の進展により、労働組合の認知度も人気も上がるはずだと期待しているという。 雇い主に勇気を持って抵抗できる若者が増えれば、変わるのはその職場にとどまらない。 職場で抵抗する力を身につけた若者は、いまある不正への対処も含め、主体的な振る舞いが期待できる。職場で抵抗する力は、社会全体の活力や財産にもなると確信すると嶋崎量氏はいう。 A氏:ビジネス書の『経営継承の鎖 「歴代成長」企業のDNAを探る』 は、テーマがガラリと変わり経営者の問題だね。 日本の大企業57社について、過去30年間の社長在職期ごとの盛衰に焦点を当てた初の調査に野村総合研究所の上席コンサルタント・松田真一氏が挑んだ。 私:その結果、継承の成功実績の高いトヨタ自動車、ブリジストン、三菱電機、アサヒグループの4社が浮上。 この4社と他社の比較から、ある経営慣習が継承後の経営に影響を及ぼす次のような「因縁の鎖」が判明。 社長在職中、役員が入れ替わる慣習がある企業は、経営判断の経験値が社長だけに溜まって「経験値格差」が生まれ、継承後に衰退を招く。 カリスマ社長であるほどこの傾向は強く、反対に経営陣維持の慣習がある企業は経験値が経営陣に蓄積され、後継世代に引き継がれ成長を続ける。 社長ではなく、経営陣に着目した背景には、米国で2000年以降、「リーダーシップ」の定義が個人の「統率力」から、個人間の「結束力」へと進化してきたこともあるようだ。 米国でもこの間、経営陣維持へと移行し始めた。 社長の統率力より経営陣の結束力。 「後継者を『個人』ではなく『チーム』で選ぶ必要がある」との提言は新鮮だと評者は言う。 ところで、ISO9001の品質マネジメントシステムには、トップの「リーダーシップ」を強調しているが、その参考になるだろうね。
2018.04.08
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私:喜多元宏氏は、日本では、「MBA」に対する間違い、勘違いがあまりにも多いという。 どの雑誌や新聞も「MBA」を「経営学修士」と訳しているが、その概念や学位の表記(マスター・オブ・ビジネス・アドミニストレーション)からして、「経営管理学修士」とすべきという。 さらに最も重要で、知らない方が多いのは、「MBA」の品質の違いで、その品質を担保するために、第三者機関による認証制度(アクレディテーション)があること。 A氏:英国では「QAA」、さらに国際的には米国の「AACSB」などの認証機関が、「MBA」プログラムの認証を行っている。 「MBA」が取得できるとうたっていても、この第三者品質保証がなければ、国際的には通用しない。 私:ところが、日本の大学でAACSBなどの品質保証を受け、認証されているのは、慶應義塾大学、名古屋商科大学、立命館アジア太平洋大学、国際大学の4校のみ。 文科省は「MBA」の認定機関ではないので、文科省認定の専門職大学院のうち、「ビジネス・MOT(技術経営)」分野の30校は国際認証機関の認定なしである。 入学した後にそれを知り、「国際的に通用しない『MBA』で、金と時間をむだにした」とショックを受ける人も少なくなく、国内で「MBA」を取得したが、国際認証機関の認定がないことが後からわかり、海外の大学院に留学し直した、というケースもあるという。 A氏:アジアでも中国は20校以上が取得し、韓国、シンガポールの代表的な学校は当然のごとく取得している。 日本ではこの実態がほとんど知られていないが、他のアジア諸国はどんどん先へと進んでゆき、「MBA」に関しては、日本はガラパゴスであり、後進国。 最近では「なんちゃって『MBA』」という言葉もあるようだという。 私:結果を出すことが宿命のビジネスの世界で、その先頭に立つ者として、実績を上げることが当然な「MBA」ホルダーに実力が伴わなければ、日本企業はますます衰退すると喜多元宏氏は指摘する。 まずは「MBA」とは何か、ということから理解する必要があり、世界どころか、アジアでも通用しない制度を野放しにしていては、日本の高等教育は危うい。 「MBA」の応募者もよく情報を得て勉強をしておく必要があり、これはまさしく、自己責任だと喜多元宏氏はいう。 この記事で、俺もMBAの国際認定制度を知ったね。 この認証制度で認定されているのは中国は20校なのに、日本は4校のみとはね。 高等教育無償化などという以前の問題だね。
2018.04.07
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私:非暴力を貫き、黒人差別や貧困の解決、反戦を訴え、ノーベル平和賞も受けた公民権停止の指導者・キング牧師が、暗殺されてから4日で50年。 50年前に比べ、高卒以上の学歴を持つ黒人の割合は増え、白人との差は大幅に縮まった。 黒人の投票率はオバマ氏が候補になった2008、12年の大統領選で、白人を上回った。 A氏:だが、差別や格差は根強く、失業率は白人4・3%に対し、黒人は8・4%。 貧困率も白人8・8%に対し、黒人は22・0%と大幅に高い(いずれも16年)。 貧困は犯罪に結びつきやすいとされ、逮捕・収監されている黒人男性の割合は白人男性の7倍近く、白人が住む地域に黒人が不動産を買うのは今も難しい。 私:昨年8月、バージニア州シャーロッツビルで、白人至上主義団体が南部連合・リー将軍の銅像撤去に反対する集会を開いた。 それに抗議する住民に白人団体側の男が車で突っ込み、弁護士補助職員(当時32歳)が死亡したが、この時、トランプ氏は「両者に非がある」と述べ、白人至上主義者を明確に非難しなかった。 こうしたトランプ氏を称賛する白人至上主義者らの動きが活発化している。 米国では心の奥底に差別意識が残っていても、それを表に出すのはタブーだったが、行進に参加したミネソタ州の白人男性ジェフ・バートネン氏(69)は、トランプ大統領の誕生による変化を「差別はいけないことという心のタガが、はずれつつある気がする」と語る。 A氏:昨年10月、東部ペンシルベニア州ピッツバーグのダスティン・ギブソン氏(29)は、アパート前の街路樹で異変に気付き、近づいてみると、黒いUSBコードで作った「縛り首の縄」がぶら下がっていた。 ロープの端を輪状にした「縛り首の縄」は、米南部の黒人にとって、白人による黒人リンチの象徴。 南北戦争後、黒人への激しい迫害は続き、当時、「人種の秩序」を乱したとして黒人は拷問され、木や電柱につるされて見せしめにされ、使われたのが「縛り首の縄」だった。 「これは殺しの脅迫だ。差別や弾圧で押し戻されてきた象徴だ」とギブソン氏は言う。 警察とFBIに通報したが、犯人はいまだ分からない。 私:デニソン大学のジャック・シュラー准教授によると、「縛り首の縄」による脅しは17年に全米で急増。 報道されたものだけでも昨年3月以降、30件以上確認でき、今月4日もメリーランド州の高校で南軍旗と「縛り首の縄」が見つかった。 昨年6月にはワシントンにあるキング牧師の記念碑近くや国立アフリカン・アメリカン歴史文化博物館にも「縛り首の縄」が置かれた。 シュラー准教授は「歴史や深い意味が分からなくても冗談ではすまされない。権力にある人間、トランプ大統領と支持者たちが、ヘイトクライムに走ることを助長している」と指摘する。 A氏:トランプ氏は3日、「我々キはング牧師の生涯の使命に目を向け、差別や非人間性、我々を分断しようとするものを非難しなければならない」との声明を発表し、国民の統合や正義の実現を訴えた。 しかし、ギャラップ社の先月の調査では、人種問題を深刻な問題と答えた人は、10年の13%から37%に高まっているという。 私:トランプ氏の声明は、何か白々しく感ずるね。
2018.04.06
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私:英国でロシアの元スパイと娘の暗殺未遂事件が起き、英政府は旧ソ連で開発された猛毒の神経剤ノビチョクが犯行に使われた可能性が高いと発表。 「ロシアに責任がある可能性が極めて高く、それ以外に信頼できる説明は見当たらない」。 西側に情報を流す二重スパイだった男性は国家反逆罪で服役していたが、スパイ交換で釈放されて英国に移り住んでいたのに、裏切り者を消すことで、新たな裏切りを起きないようにする見せしめかと推理される。 A氏:12年前に、ロンドンのホテルで、反体制派に転じたロシア連邦保安局(FSB)の元中佐がポロニウムという放射性物質で殺されたという、似たような事件があった。 一昨年、英国の独立調査委員会はFSBの指示による犯行とし、プーチン大統領の関与をほのめかす報告書を発表したが、「明確な証拠は何もない」とロシアは反発し、西側の陰謀説を唱える。 前回も今回も、同じパターン。 私:ここで、筆者の稲垣康介氏は、ロシアの国家的な関わりとして、視点をソチ冬季五輪で明るみに出た国家ぐるみのドーピング違反に視点を移す。 このドーピング違反でロシアは組織ぐるみの薬物使用と隠蔽工作を展開。 夜中にロシア選手の検体を検査所の壁の穴を通してFSB関係者に渡し、密封した容器を開けて検体を入れ替えるなどの秘密工作を繰り返し、身の危険を感じて米国に逃げた元検査所長の証言は詳細だったが、ロシアはこの元検査所長に責任を押しつけ、国家の関与を認めようとはしない。 A氏:IOCのバッハ会長は「五輪とスポーツに対する前代未聞の攻撃があった」と強い表現を使ったが、平昌冬季五輪での制裁は、実は甘く、ロシア・オリンピック委員会に資格停止処分を科した一方、IOCが「潔白」と認めた選手は参加を認めた。 大会中、2人が陽性反応を示したにもかかわらず、大会閉幕から間もなく、ロシア・オリンピック委員会の資格停止をすんなり解除した。 私:IOCの弱腰に映る判断の背景に、スポーツ大国ロシアを孤立させて東西冷戦期のように分断される状況を避けたい思惑を感じると稲垣氏はいう。 近年、スポーツの国際大会招致に熱心だったロシアへのスポーツ界の依存症ものぞく。 6月にロシアで開幕するサッカーのワールドカップを控える国際サッカー連盟も、ロシアのドーピング違反への対応は鈍い。 IOCは、ロシア政府系の天然ガス大手「ガスプロム」と最高位スポンサー契約を結んでいて、欧州の名だたるビッグクラブが競う欧州チャンピオンリーグも、「ガスプロム」が大会スポンサーに名を連ねていて、サッカー界のロシアマネーへの依存度は増している。 A氏:「ガスプロム」の影響力はサッカー界にとどまらない。 今回の元スパイの暗殺未遂事件を受け、英政府はロシアの外交官23人を追放。 欧州の多くや米国なども同調し、ロシア外交官の国外追放は150人を超した。 一見、一枚岩にみえるが、経済の側面からのぞくと、違った風景が広がる。 ロシアから欧州諸国に天然ガスを送る「ノルド・ストリーム」の増設計画が進んでいる。 バルト海を通る全長約1200キロのパイプラインを「ガスプロム」の子会社が手がけていて、天然ガスはドイツを経由し、欧州各国に輸出される。 EU28カ国の天然ガスの輸入に占めるロシアのシェアは4割近いとされる。 ロシアからの供給が止まれば、困る国は多く、つい先日、ドイツが開発計画を承認したように、ロシア包囲網の足並みはそろわない。 私:「国際的な秩序、ルールを破れば代償が伴うはずなのに、制裁が骨抜きにされていくような事例が目につく。スポーツも社会を映す鏡で例外ではいられない。尊ぶべきフェアプレーの精神が、軽んじられていく」と稲垣氏は嘆いている。 IOCは、真夏開催の東京五輪など、アメリカマネーにも弱いのだろうから、五輪を通じカネがスポーツ界に与える影響は大きいね。
2018.04.05
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私:米調査機関ピュー・リサーチ・センターの2017年の調査によると、米国民が最も頻繁にニュースを知る手段として、地方テレビ局(37%)はニュースサイト(33%)やケーブルテレビ局(28%)で、新聞(18%)より優位に立つ。 米国の地方局では、主要局制作のドラマやバラエティー番組の合間に、30分程度の地域密着型のニュースを放送することが多く、メッセージはこうした番組の枠内で読まれている。 A氏:3月上旬のCNNによると、米国の地方テレビ193局を保有する巨大メディア企業「シンクレア」は各局に対し、メッセージをコマーシャルではなくニュース番組の時間内に読み上げるよう指示。 内容は、表向きはフェイクニュース批判だが、実際には主要メディアと対立するトランプ大統領の言い分に同調しているとの見方が大半。 「シンクレア」は「一言一句変えてはならない」と念も押し、アナウンサーの一人は「メッセージの読み上げを強いられる戦争捕虜になったようだった」と話し、「現場の士気はがた落ち」などとの声もあった。 ソーシャルメディアで「全体主義的なプロパガンダだ」などと批判が噴出。 「シンクレア」は「メッセージはニュースへの市民の不信感に応えたもの。公正で客観的な報道を推進する取り組みが攻撃されるのは皮肉」と反論。 だが、その表現は、「一部のメディアは、虚偽の記事を点検もせずに流している」「民主主義にとって極めて危険だ」というように、トランプ米大統領による主要メディア攻撃に酷似。 私:問題は、批判が本来のフェイクニュースに向けられたものではなく、トランプ氏が気に入らず、「フェイクニュース」とこき下ろすCNNなどの主要メディアに向けられていると見られることだ。 米国では放送局の「公平原則」の義務が1987年に廃止され、「シンクレア」は保守的な立場で知られる。 トランプ氏はツイッターで「フェイクニュースのテレビ局が『シンクレア』を偏っていると批判するのには笑ってしまう。『シンクレア』はCNNやNBCよりも断然優れている」「病的で偏向したフェイクニュースを発信する(主要メディアの)ネットワークは、『シンクレア』の放送網の競争力や報道の質におびえているのだ」と「シンクレア」を擁護した。 米メディアによると、「シンクレア」は大統領選の際は民主党候補に批判的な報道をしていた。 傘下の局には、保守派論客のコメントや、イスラム教徒への反感をあおるようなテロ情報など、保守派に歓迎される内容の素材が「絶対放送」の指示で送られるという。 地方ニュースとのかかわりが薄い内容で、現場には戸惑いが大きいという。 A氏:こうした統制は今後も強まりそうで、トランプ政権は1社が保有できるテレビ局数の規制を緩和。 90年代以降に買収を重ねて拡大した「シンクレア」は昨年、約40の地方テレビ局を保有する別の企業を買収すると発表し、政府が審査中。 買収が認められればニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスの地方局も同社傘下に入り、全米の7割の世帯に放送が届くようになる。 私:米国のマスコミはフェイクニュースの氾濫になるのだろうか。
2018.04.04
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私:安倍首相の財務省ぎらいはよく知られていて、象徴的だったのは消費増税の2回の延期のとき。 決定前に、財務官僚たちが官邸に通いつめ「予定どおり実行すべきです」と熱心に進言すると、首相の機嫌は悪くなったという。 A氏:税率8%への増税の際、財務省から「景気は悪くならない」と説明を受けていた安倍首相は、実際はそうではなかったと快く思っておらず、財務官僚は増税や赤字削減ばかりに熱心で、政権安定や支持率維持に配慮が足りないという不満もあったのだろう。 私:過日、参院予算委員会で、そんな首相の気持ちを忖度したような自民党議員の和田政宗議員の質問があった。 和田議員は、財務省陰謀論を掲げ、太田充理財局長に対し、「(あなたは)民主党政権で首相秘書官を務め増税派だから、アベノミクスをつぶすため、安倍政権をおとしめるために意図的に変な答弁をしているのではないか」と質問。 これには太田局長が憤然とし、「いくら何でも」と3回繰り返して否定し、さすがにやりすぎだと思ったか、後で自民党の申し入れでこの質問は後日、議事録から削除された。 俺もこのシーンはテレビでみたが、太田局長が頭にきているのは画面で表情や動作でありありとわかったね。 A氏:筆者の原真人氏は、「欧米諸国では近年さまざまな予算改革が実施されている。主要国最悪の借金大国である日本もそこから学び、採り入れるべきものはあるかもしれない。とはいえ、いまのような『財務省悪玉論』に乗って同省の権限を弱めることを目的に機構改革に乗り出すのでは、いかにも危うい」という。 私:財政当局とはいわば「宴会幹事」のようなもので、出席者たちがみな泥酔してしまっても、ひとり冷静に勘定を終え、会費を徴収しなくてはならない。 無粋で、嫌われ者になったとしても、欠かせない大切な役回りなのだという。 かつて、自民党税制調査会のドンと呼ばれた故山中貞則氏は会が紛糾すると、「黙れ」と制して幹部たちに「ここにいる大蔵省(現財務省)主税局の諸君の話も聞きたまえ。聞かずに決めたら、国を誤るぞ」と諭したという。 改ざん問題の余波で、来年10月予定の消費増税の実施が難しくなったとの見方も出ている。 財務省にお灸をすえたいと思うあまり、世論がそんなムードに乗ってしまえば、まさに国を誤り、消費増税は財務省のためでなく、国民生活の安定のために欠かせないもので、冷静な世論が求められると原真人氏はいう。 官邸主導強化で、官僚が萎縮しているという。 安倍政権は、来年10月予定の消費増税の実施に踏み切るだろうか、あやしくなってきたね。 来年10月予定の消費増税の公約を無視して消費増税延期の「新しい約束」があり、そのために、解散総選挙をまた行うかもしれない。
2018.04.03
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私:森鴎外が自らのドイツの留学時の経験を重ねたとされる小説「舞姫」の小説に、「欧羅巴(ヨーロッパ)の新大都の中央に立てり」と出てくるブランデンブルク門のそばにある信号機(アンペル)には「アンペルマン」と呼ばれる愛らしいキャラクターが使われている。 帽子をかぶったやや太めの男性が今にも歩き出しそうにつま先をあげる緑の「進め」と思い切り両手を広げた赤の「止まれ」。 「ベルリンの壁」のできた1961年、旧東独の交通局に勤めていた交通心理学者カール・ペグラウ氏がデザインし、当時、帽子姿が金持ちや資本主義のイメージで受け止められないか心配したという。 A氏:工業デザイナー、マルコス・ヘックハウゼン氏(56)は学生時代、東ベルリンで見た「アンペルマン」をよく覚えていて、冷戦の末期、西ベルリンから1日ビザで訪れた東側は薄暗く、すべてが灰色に見えた。 その街で見たひときわ目立つ緑と赤の信号機「アンペルマン」はユーモアにあふれ、がんじがらめの東の体制とは異質な印象を受けたという。 その後、イタリアで経験を積み、95年にベルリンに戻った彼は、90年のドイツ統一後、西側の信号機に置き換えられ、「アンペルマン」は粗大ゴミとして放置されたを見て衝撃を受ける。 「アンペルマン」は、魅力的なデザインで、太めのキャラクターは西側の信号機より識別しやすいのにである。 私:ヘックハウゼン氏は、処分される「アンペルマン信号機」を無料で譲ってもらい、星形の壁掛けランプを製作し、96年に売り出すと3カ月で約300個売れた。 緑色のランプの周りには、東側にいた人へのエールを込めて英語で「キープ・オン・ウォーキング(歩き続けよう)」と書いた。 初めは統一を喜んだ旧東独の人々は、2級市民の扱いを受けて、その後、後悔の念を抱く人もいたという。 ヘックハウゼン氏は、ランプ製作をきっかけに「アンペルマン」の生みの親であるペグラウ氏とも知り合い、信号機以外の商標権を取得。 芸術家や行政を巻き込んで「アンペルマン信号機」の復活運動にも乗り出し、ベルリン市は05年、「アンペルマン」を公式に採用。 いまでは市内の信号機の9割を占め、優れた西側の製品が統一後の街を席巻するなか、東側の製品のなかで過去の遺物にならずに使われ続け、統一ベルリンのシンボルへと生まれ変わった。 A氏:数奇な運命をたどった「アンペルマンの信号機」は今月中旬、鴎外の縁で日本にやってくる。 「アンペルマン」発祥の地で鴎外が住んでいたベルリン・ミッテ区の交流使節団が鴎外記念館のある東京都文京区に「平和の使者」として贈ることになったからだ。 私:「ベルリンの壁」崩壊から28年たった今年2月、壁が存在した期間より崩壊後の方が長くなったが、東西の格差はなお残り、不安と不満につけ込んだポピュリズムがはびこる。 筆者の石合力氏は、「『心の壁』が築かれつつあるのではないか。分断と統一を見つめてきた『アンペルマン』。岐路に立つドイツの行く末に、何色の信号をともすのだろうか」という。 現地の感覚からは、経済好調のドイツに格差による拡大しつつある分断があるのだろうか。
2018.04.02
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私:福島第一原発事故後の規制強化で、再稼働のため巨額の安全対策費がかかるようになり、電力11社で計4兆円以上の安全対策費を投じる見通しで、採算が合う原発は早く再稼働させて発電したいが、規制委の審査が長期化し、電力業界の思うように再稼働が進まない。 実際、17年までに再稼働した原発は5基。 さらに、16年の電力小売り全面自由化で、大手電力はそれまでの地域独占が崩れ、業界を超えた価格競争にさらされている。 かかった費用をすべて電気料金に上乗せできる「総括原価方式」は事実上なくなり、原発の安全対策費がかさんだからといって電気料金を上げ続けられない。 電力自由化が進展し、原子力事業特有のリスクが様々あり、政府に原発支援策を求める大手電力幹部からは悲鳴が上がり、このままでは原発は立ちゆかないという。 A氏:中部電浜岡原発(静岡県御前崎市)は発生が予期されている東海地震の震源域にある。 08年12月、中部電の三田敏雄社長(当時)が静岡県庁庁を訪れ、浜岡1、2号機を廃炉にする大きな決断の意向を伝え、記者会見で「経済性は乏しいと考えた」と説明した。 中部電の試算では、耐震基準をクリアできるよう1、2号機を改修すると計3千億円かかるので、ならば廃炉にし一時的に赤字になっても、6号機を新設したほうが経済的に有利と判断したもの。 私:00年代には、原発の安全性を高めると割に合わないことが分かっていたが、それでも電力業界は、原発を火力や水力に比べて「安い電気」だと原発への理解を高める「神話」を守るために言い続けた。 「3・11」後、福島第一原発を除き9基の廃炉が決まり、耐震性などを考えれば原発は割高になることを示している。 A氏: もともと、電力自由化の流れを電力業界は「原発と相性が悪い」と自由化に抵抗していた。 政権に復帰した自民党に原発推進を期待したが、原発と電力業界への批判は強く、電事連関係者は「原発再稼働と引き換えに自由化を差し出した」と振り返る。 平成に入った90年代に、国際競争をしている産業から見ると日本の電気代は高く、産業界を中心に電気料金の値下げ圧力が強まり、95年、31年ぶりに電気事業法を改正し、電力卸売りを自由化し、00年には小売りの部分自由化に踏み切った。 だが、経産省が06年に「原子力立国計画」をまとめた後、電力自由化は停滞し、計画の冒頭で「原子力政策は、市場に委ねるだけで推進できるものではない」と自由化の進展にくぎを刺した。 私:かさむコストと自由化による競争が、原発の壁になっているのは日本だけではない。 「電力自由化先進国」の英国では、温室効果ガス削減のため、政府が原発支援策を始め、仏電力公社(EDF)などが原発を建設しているが、稼働後は35年間、発電電力1メガワット時あたり92・50ポンドの価格が保証され、電力市場への卸売価格がこれを下回れば、差額を政府が支払う仕組み。 ただ、足元の電力卸売りの平均価格は50ポンド台後半で、英エネルギー・コンサルト機関「E3G」のトム・バーク会長は「新たな原発が稼働すれば、電気料金はより割高になるだろう」とみる。 A氏:日立製作所が英国で進める原発事業も支援策の対象。 日英両政府は昨年末、官民合わせて総額約3兆円を投融資する資金枠組みに大筋合意。 これだけの手厚い支援は、安倍政権が原発輸出を成長戦略の柱にすえているからで、経産省は「先進国で原発が成立するかしないかの試金石」として交渉に深く関与する。 私:原発建設について大手銀行幹部は「リターンがリスクに見合わない」という。 巨大リスクを引き受けてまで原発を支える主体は見当たらず、政府が描く原発戦略は崩れかけているという。 わがブログでは、2012年度の大佛次郎論壇賞の「原発のコスト」を「原発のコスト・エネルギー転換への視点」でとりあげたが、ここでの著者の計算では他の発電より、原発コストが一番高い。 この著書にあるように、経産省は、稼働コスト以外に、補助金コスト、廃棄物処理コスト、廃炉コスト、リスクコストなど、1つの原子炉の一生の標準コスト(ライフィサイクルコスト)をきちんと計算すべきだね。
2018.04.01
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私:マクロン仏大統領とトランプ米大統領の友好関係などあり得ないというが、2人は、常に対話しているという。 トランプ氏はマクロン氏の労働市場改革を見守り、祝意を伝えるために電話している。 トランプ政権が初めて国賓として迎えるのは、4月にワシントンを訪れる予定のマクロン氏で、「偉大なやつ」への特別な敬意がこめられている。 フランスの大統領は、トランプ氏にとっての欧州の一番の味方であり、そしておそらく、それ以上の存在だろうという。 トランプ氏とマクロン氏の関係は、大西洋両岸を結ぶ唯一のちょうつがいであり、きしみはない。 A氏:2人の共通点は、両者とも突然頭角を現し、旧態依然とした政治に対する嫌悪の波に乗って、それぞれの国で最高の職責まで上り詰めたという点だ。 やり方は違っても、ともに歴史の偶然の産物で、時代の流れに乗じて権力の座へと押し上げられ、崩壊を待ち望む願望が、2人の破壊者を生み出した。 マクロン氏は、前任者が敬遠したドゴール主義の華やかさを復活させ、昨年、大統領選での自らの勝利を祝い、ルーブル宮殿前広場で国民に向けて演説し、ベルサイユ宮殿でプーチン大統領を迎えた。 「フランスを再び偉大に」のようだ。 私:トランプ氏は確かに、フランスが強硬に主張していた通り、鉄鋼とアルミ製品への関税措置の適用対象からEUを除外した。 しかし、次に来るのは、イランに関する最悪の事態、つまり、トランプ氏が5月12日に制裁解除に応じず、イラン核合意を破棄する決定を行うことをマクロン氏が防ぐことができなければ、その時はすべてが白紙に戻る。 フランスは合意を守る決意を固めている。 合意が崩壊すれば、イスラム教のシーア派とスンニ派の中東での対決は悪化し、イランは躍起になって核爆弾を手に入れようとするだろうし、サウジアラビアもそれほど後れを取らないだろう。 核不拡散条約(NPT)はほころび、意味を持たない状態になってしまう恐れがある。 さらに、トランプ氏が次期国務長官に指名したポンペオ氏は、イラン政策ではタカ派だし、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の後任となるボルトン氏は、核合意を破棄してイランの体制崩壊を望んでいて、イラン政策の愚行を阻止するマクロン氏の、そして欧州の挑戦は厳しさを増している。 北朝鮮の核問題どころではないね。 A氏:マクロン氏はまた、トランプ氏がもたらした、民族主義的ナショナリストの偏見、プーチン氏や中国の習近平国家主席による権威主義の強化、法の支配の侵食、貿易戦争、外交の軍事化、EUの弱体化といった破壊性の防波堤でもある。 私:偉大さを取り戻すというマクロン氏の考えは、フランスの理想と一致しているが、トランプ氏の考えには、米国の理想への裏切りがあり、そこに2人の違いがあり、多くのことが2人の友好関係の行方にかかっていると、ロジャー・コーエン氏は論評している。 どうも、最近、また、元ロシアスパイの殺人未遂をめぐり、外交官の国外追放など、国際関係に不穏な動きが出たりして、中朝の友好関係復活の北朝鮮問題は、影がうすくなっているね。
2018.03.31
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私:「朝日」の3月2日付朝刊1面トップで、財務省が森友学園との国有地取引の際に作成した決裁文書が書き換えられているという疑惑を報じ、これ以降、新聞各紙は「『朝日』の報道によると」という表現を使いながら、この問題を報じた。 池上氏は、ライバル紙が報じた特ダネを、報じた社の名前を出して引用するのは、潔いことだと評価している。 A氏:3月12日になって財務省は文書の書き換えを認めたが、翌13日の朝刊各紙の1面の表現は「改ざん」と「書き換え」に分かれた。 「朝日」、「毎日」、「東京」の見出しは「改ざん」 これに対し「日経」、「産経」も見出しは「書き換え」。 「読売」の見出しは巧妙で、「森友文書15ページ分削除」となっていて、見出しでは「書き換え」とも「改ざん」とも書いていないが、本文を読むと「書き換え」の表現が使われているので、「書き換え」派だね。 各社の政府に対する姿勢がどうなのか鮮明に出ているね。 しかし、「産経」は、13日の見出しは「書き換え」だが、他紙の社説に当たる「主張」欄で、「都合の悪いことを隠すため、公文書をこっそりと書き換えるのは『改竄』というべきである」と書いていて、「改竄」にはルビが振ってある。 その後、「産経」は14日付朝刊で、記事の表記が「改竄」に統一。 私:「書き換え」なのか、「改ざん」なのかという点で読ませる記事は「毎日」の14日付朝刊の解説記事」だということで、池上氏は、下記のように引用している。 《「改ざん」の意味について、どの国語辞書も〈字句を書き直す〉という基本の意味に、▽多く不当に改める場合に用いられる(広辞苑)▽普通、悪用する場合にいう(大辞林)▽多く自分の都合のいいように直す意(日本国語大辞典)――と否定的な説明を補う》 《改ざんの「ざん(竄)」は「穴」と「鼠」が合わさった字(会意文字)だ。大修館書店の「大漢語林」によると〈ねずみ(鼠)が穴にかくれるさまから、一般に、かくれるの意味を表す〉とある。漢和辞典編集者の円満字二郎氏は「竄はもともとは『字句を直す』という中立的な意味だったが『ねずみが巣穴に隠れる』ところから生まれた漢字であり、中国の歴史書にも『こそこそ勝手に字句を直す』というニュアンスで使われているのが目立つ」と話す。実際、竄匿(ざんとく)や竄悪(ざんあく)など否定的な熟語が多い》 A氏:一方、「読売」と「日経」は、その後も「書き換え」を使ってきた。 ところが、3月26日の参院予算委員会で、安倍首相が〈今回の書き換えについて、「『改ざん』という指摘を受けてもやむを得ないのではないか」と答弁したら、翌27日付の朝刊1面で「読売」は「改ざん」、「日経」も朝刊2面で、「改ざん」となる。 私:この「書き換え」か改ざん」かの問題について、池上氏は最後に「新聞社としての独自の判断をせずに財務省の発表通り『書き換え』と書き続け、安倍首相が認めた途端に『改ざん』と“書き直す”。新聞社として恥ずかしくはないですか」と「読売」、「日経」を厳しく批判している。
2018.03.30
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私:小熊氏が、最近の沖縄を訪ねて感じるのは、沖縄のなかの那覇周辺域と名護市辺野古に代表される地域格差だという。 人口の半数が集中する那覇周辺域は、外国人観光客がめだち、有効求人倍率も高く、県の観光客数は昨年にハワイを抜き、米軍基地の返還跡地にできたショッピングセンターもにぎわっていて、種々の問題もあるにせよ、基地返還の経済効果を実感できる状況。 一方、米軍基地の建設が行われている名護市辺野古はこれと違い、活気があるとはいえない集落に、政府が県を通さず、交付金を直接に市や集落に交付して、立てた新しく立派な公共施設が立つ。 この2月、この名護市で、自民党と公明党が支援した新市長が、基地反対の前市長を破って当選し、当選後に新市長は、リゾートホテルの誘致や漁港の整備、各種補助金などの「御支援」の要望書を政府に提出。 小熊氏は、基地を歓迎する人はいないが、地域振興のために「迷惑施設」を受け入れる。これまでくり返されてきた図式だと指摘する。 「御支援」の要望書を政府に提出に対し、政府の経済官僚は「まずは自分たちで汗をかいてみる、自助努力でどこまでできるかやってみる。そんな当たり前の精神が欠けていると言わざるをえないです」とため息をついたという。 A氏:ここで、小熊氏は、こうした手法は本当に地域振興に役立つのか、「原発」に視点を変えているね。 柏崎刈羽「原発」の経済効果の調査報道によると、「原発」が地域経済に貢献するというのは「神話」だったという。 柏崎市の産業別市内総生産額、小売業販売額、民間従業者数などを分析すると、確かに「原発」の建設工事が行われていた1978年から97年に、それらの指標は伸びていたが、その伸び方は、県内で柏崎市と規模が近い市とほぼ同等。 柏崎市の指標が伸びていたのは、「原発」の誘致よりも、日本経済全体が上げ潮だった影響が大きく、柏崎市長を3期務めた西川正純氏は、このデータをみて「『原発』がない他の市と同じ歩みになるなんて」と絶句したという。 私:唯一、建設業だけは市内総生産額が顕著に伸びていたが、「原発」建設が終わるとその効果も消え、建設終了後の柏崎市は、人口減少が他市より激しく、一時的に増えた交付金や税金で建てた施設の維持管理で、財政が厳しくなっている。 よくあるハコモノの弊害だね。 ところが、柏崎商工会議所に属する100社を調査したところ、「原発」再稼働を願う回答が66社にのぼったが、柏崎市には「原発」と無関係な業種が多く、「原発」停止で売り上げが1割以上減ったのは7社だけ。 再稼働でどの業種が活性化するのか尋ねたところ、「飲み屋」という回答が最多で、再稼働の経済効果を具体的に示せる企業は少なかった。 なお、東電幹部は、「原発」が停止している方が、安全対策や維持管理の工事が多いため、再稼働すれば「原発」作業員が減ると認めている。 実際に柏崎の作業員は、全基停止していた2015年度の方が、稼働していた06年度より2割以上多い。 「原発」が止まると作業員が減り、地域にお金が落ちないというのは誤解。 A氏:なぜ、こうした根拠のない「神話」が流布したのか。 この調査報道を行った新潟日報の前田氏は、これまでのメディアの報道姿勢を批判していて、「原発」停止の影響を報じるとき、メディアは「原発」関連の仕事を受注する企業や繁華街の飲食店など、影響がありそうな会社を選んで取材しがちで、これが、「原発」停止の影響を過大に語るコメントが多い背景だった。 私:しかし、小熊氏は、無根拠な「神話」が生まれた最大の要因はメディアではなく、メディアは、すでに流布していたイメージに束縛され、先入観に沿って取材していただけで、最大の要因は、事態の変化を直視できない「心の弱さ」だと指摘する。 人間は、「あの星が出ていた時は町が栄えていた」ということを、「あの星が出れば町が栄える」と混同してしまいがちで、「原発」と経済に、実はさほど関係はなく、ただ、日本経済が上げ潮だった時期と、「原発」が建設されていた時期が重なっていたため、経済成長のシンボルになったにすぎないという。 本当の原因を直視して解決に努力するより、他の理由に責任転嫁した方が楽だから、経済が停滞し、社会が変化しているとき、人は「心の弱さ」から「神話」に逃避しやすいという。 だがそれは、状況から目をそらし、自ら努力する姿勢を奪ってしまう。 先に上げた、沖縄県名護の新市長の補助金の要望書のようにーーー。 私:「原発」に限っても、世界の変化に対する日本の停滞は著しい。 世界の風力発電設備容量は15年に「原発」を抜き、太陽光も「原発」に迫っている。 発電コストも大幅に下がり、日本が原発輸出を試みている英国でも、風力の方が新型原発より4割近くも安く、中国など他国が再生可能エネルギーに大幅に投資を増やすなか、日本の遅れが目立つ。 今月で「福島第一原発事故」から7年。 その間に世界は変わった。 各種の「神話」から脱し、問題に正面から向きあうときだと小熊氏は指摘する。 昨年11月には、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の説明会に、業者が謝礼を約束して学生を動員していたことが発覚。 「安全神話」をつくろうとする姿勢は続いている。
2018.03.29
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私:自民党憲法改正推進本部(以下、本部)が「改憲4項目」の方向性をとりまとめ、25日の党大会で報告された。 4項目ごとにまとめてみよう。 (1)9条 安倍首相がもっともはっきりと考えを打ち出したのが、9条への自衛隊明記論。 「自衛隊が違憲かもしれないなどの議論が生まれる余地をなくすべきだ」「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」 しかし、これは結党以来の党内議論の核心である「2項削除」に真っ向から反する。 2項は戦力不保持と交戦権の否認を定めており、これが自衛隊の活動範囲を不当に狭めていると考えられてきたからだ。 A氏:石破氏は「国防軍を保持する」と2項を全面改正した2012年の党改憲草案を取り上げ「遊びや冗談でつくったのではない」と批判。 執行部は3月15日、これらを分類した条文7案を提示。 大きく分けると(1)2項削除、(2)2項維持・自衛隊明記、(3)2項維持・自衛「権」明記――の3案で、執行部は(2)案を落としどころとする考えだった。 いろいろ意見が出て、執行部が最後に示したのは、(2)案と(3)案を折衷した妥協のたまもので、集団的自衛権の行使拡大も読み取れる内容で、安倍首相の9条2項と併記することの矛盾がより大きくなっている。 これはすでに、2つのブログ「自衛隊を明記するとは」、と「9条の持論、披露する前に」で、専門家の意見にふれているね。 (2)緊急事態条項 私:法律と同じ効力を持つ政令を国会の手続きをへず内閣の判断で定められるようにするなど、緊急事態条項の柱として、国会議員の任期延長特例とともに12年の自民改憲草案に盛り込まれた。 昨年7月5日に具体案の検討に入ると、国家緊急権は欠かせないとの意見が相次いだ。 石破氏は「政府が機能せず、憲法秩序が機能しないときにどうするか。緊急事態条項はまさしく立憲主義を守るために必要だ」と主張。 A氏:執行部は、国家緊急権の乱用のおそれを指摘する資料を用意して議員任期延長を先行させようとしたが、党内では、国家緊急権を盛り込んだ12年の改憲草案へのこだわりが強く、執行部は条文化に応じざるを得なくなった。 執行部は3月7日、大規模災害時に限って緊急政令の制定を認める案を提示し、本部長一任をとりつけたが、自然災害だけでなく有事や内乱などへの対応も含めるべきだといった不満はなおくすぶっている。 (3)教育 私:安倍首相がメッセージで、9条とともに具体的に挙げた「教育」。 日本維新の会の看板政策「幼児・高等教育の無償化」を念頭に改憲への協力を得る思惑もあったが、昨年8月1日の全体会合でその芽は早々に摘み取られた。 議員らが消極的だったのは、4兆円超とされる財源確保が難しいことと民主党政権が実施した高校無償化を「ばらまき」と批判してきた経緯もあった。 本部は最終的に「無償」の文言明記は見送り、維新への配慮を示すため、教育を受ける権利を定めた26条に「各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保」するとの教育環境整備の努力規定を新設することで決着。 (4)合区解消 A氏:4項目の中で最も早くまとまったのが、「参院選の合区解消」。 参院選の合区で、国会議員が選出されない県が出ないようにする案だね。 昨年7月26日の全体会合で、3年ごとの改選で各都道府県から1人以上の参院議員を選ぶ規定を47条に盛り込む方向性で一致。 執行部は11月16日に47条とそれに伴う92条の改正で条文案をつくる方針を示し、大筋了承された。 私:こうした改正は、14条の「法の下の平等」を損なわせかねなく、人口の少ない地域の選挙で強い自民に有利に働く内容でもあり、他党から「党利党略」との声が上がっている。 安倍首相のいう改憲は、問題は特に9条で、条文レベルになると問題が多く、前途多難だね。 ましてや、国民投票となると、国民の理解を得られる内容になるのだろうか。
2018.03.27
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私:シュライヒャー氏はOECD教育・スキル局長。 経済協力開発機構(OECD)の国際的な学習到達度調査(PISA)は日本を始め、各国の教育政策に大きな影響を与えてきたが、統括するアンドレアス・シュライヒャーOECD教育・スキル局長の来日を機に、調査の意義とこれからの目標を朝日新聞でインタビューしている。 PISAが2000年に始まって20年近くになるが、各国に一番大きい影響を与えたのは、教育についての考え方や視点を広げたことだという。 カリキュラムに縛られず、考え方や理解力を調べようとしたPISAは、コンピテンシー(能力や特性)の概念を導入した調査で、現在は多くの国がこの概念を使っている。 15年には、「チームとして問題を解決する能力」を調べた。 18年にはグロバリゼーションが進むなか、最も必要な能力の一つだとして、考えている異なる視点から世界を見る能力の「グローバル・コンピテンス」を調べようとした。 日本はこの調査の参加見送りを決めたが、PISAに参加する国は毎回増え、18年は80超の国と地域が受ける予定だが、昨年12月までに「グローバル・コンピテンス」の調査に参加を表明したのは28カ国だけ。 A氏:不参加の国の多くは、自国の生徒が十分に能力を備えていないことを知っているものの、それを明らかにしたくないのだが、日本については明確な説明を受けておらず、参加しないのは政治的判断ではないかと思うとシュライヒャー氏はいう。 PISAで測れるのは教育の一部で、学校では多くのことを浅く教えるが、生徒にとって本当に必要な能力を育てることにはつながらないので、個々の樹木だけでなく、森を見てもらおうという試みで、新たに、「エデュケーション2030」により、より広い枠組みを構築しようとしているという。 多くの国は(1)新しいことを創造する力、(2)緊張やジレンマを調整する力、(3)対人関係を活用して自己の能力を引き出す力の三つの能力を重要とみていて、文化を超えても、教育の目的で一致するところはかなりあるという。 私:日本の教育については、シュライヒャー氏は06年に日本で講演した時、教える内容を減らし、成績が下がったと「ゆとり教育は失敗だった」と聞かされたが、PISAの結果を分析すると、正解が複数ある問題に対応する力が最も伸びていたのは日本。 知識で12ポイント下がることと、創造的なスキルで4ポイント上がることはどちらが大事だと思うかと指摘する。 社会は性急な判断をしたくなるが、教育への投資効果は時間が経たないと表れないことが多いという。 20年度から日本は新しい学習指導要領が始まり、教える内容が増えるが、指導要領の改訂は「エデュケーション2030」の概念の多くを体現していると思うとシュライヒャー氏はいう。 PISAの最も興味深い結果は、教える量と、教育の結果の質の間に相関関係がないことで、フィンランドは日本の授業時間の約半分だが、教育の成果は、ほぼ似ていて、大切なのは教育課程の深さだといい、教える内容を増やすことは誰でもできるが、難しいのは厳選することだという。 A氏:ところで、PISAは実施を重ねるに連れて参加国が増え、影響力も高まっているが、一方、「一つの調査に注目しすぎだ」と懐疑的な意見も出ているという。 「一つの尺度で測ることは、教育の多様性を失わせ、危険だ」とか、協同問題解決能力の調査について測定のために調査問題が単純化されていて、PISAの本質を知り、その影響をコントロールする必要があるという意見もある。 PISAの普及に伴い、共通のテストを使って生徒や学校をランク付けする国が増えていることに懸念を表明し、「常にテストが続くことで教師の自主性を奪い、子どもに悪影響を与え、教育を貧しくさせている」と厳しく批判する動きもある。 私:OECDが好奇心や協調性まで調べようとすることに、世界の研究者から疑問の声が上がっていて、日本でも「グローバル・コンピテンス調査」への不参加を機にOECDの教育事業全体の妥当性を検証する時期にきているのではないかという意見も出ているという。 日本も「ゆとり教育」がPISAに振り回された苦い経験を反省すべきだね。
2018.03.26
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私:著者は40年生まれで、経済学者・社会活動家にして、2006年、グラミン銀行と共にノーベル平和賞受賞。 ムハマド・ユヌス氏はグラミン銀行の創設者で、同銀行は貧困層向けに事業資金を低利で融資し、生活の質の向上を促す活動を行っている。 ところで、評者は、2008年のリーマン・ショック以降、先進国の中央銀行は市場に大量のマネーを注入してきて、10年後の現在、世界経済は好調さを取り戻しているが、これは、超金融緩和策が生んだ新たな資産バブルで、資本主義の問題がひとまずごまかされた結果のように評者には見えるという。 A氏:富の格差は再び激しくなり、昨年発表された推計では、世界の上位8人が持つ富は、下位半分(36億人)の富と同額になった。 私:貧困問題に長く取り組んできたムハマド・ユヌス氏は、本書で強い懸念を表している。 「富が集中する世界は、政治権力が一部の者に支配され、その少数者の利益のために利用される世界でもある」という。 それは環境の破壊にもつながり得る。 しかし、彼は意外に楽観的で、「極端な富の集中は、人類にもともと備わった不変の運命などではない。人間が作り出したものなのだから、人間の努力で解決できる」し、「若者はシステムの欠陥にはっきりと気づいている」のだという。 第一の課題として「利己心は資本主義的人間の一番の美徳」という考え方や、「利己的であることが奨励される経済と社会と政治のシステム」を変えるべきだと主張。 なぜなら、現実の人間には「利己心と無私の心の両方が備わっている」からで、ユヌス氏のソーシャルビジネス(貧困や環境など人類の問題を解決することに力を注ぐ無配当の会社)が世界各地で成功した背景にも、無私の心を持つ多くの人々の協力があったという。 A氏:従来の利己心に動かされたビジネスと、無私の心に動かされたソーシャルビジネスのふたつを若い世代に教え、どちらの道を歩みたいか、人生のどこかで同時にやってみてはどうか、と考えさせれば、社会は変化していくという。 私:「このまま環境や健康、子どもたちの未来を犠牲にして、お金と権力を執拗に追い求めるのか」と問いかけるユヌス氏の言葉は重いと評者はいう。 それが、資本主義の次にくる世界なのだろうか。 「書評:ケイト・ラワース〈著〉『ドーナツ経済学が世界を救う 人類と地球のためのパラダイムシフト』」のブログでふれたように、下記の「資本主義の崩壊・知的街道」を連想するね。 「資本主義の終焉と歴史の危機」、「低成長経済 時間かせぎの資本主義、限界に」、「社会主義崩壊後の世界 新自由主義に壊されるもの」、「日銀の超金融緩和 成長の「その次」の価値観」
2018.03.25
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私:朝日新聞は2日に渡り、「護憲VS.改憲」のテーマで6氏にインタビューしている。 まず、1人目の駒大教授の山崎望氏は、「多数決主義が国民を分断」として、最終的に多数決で決めたとしても、少数派を束ねられなかったことへの反省や決定へのためらいがないところに民主主義はなく、今の改憲論には、自由主義や民主主義の基盤を崩す私権制限の議論も入っていて、果たして国民一人ひとりがこうした議論を必要とする機運が高まっているかと疑問視。 それなのに、多数決をふりかざして合法的に改憲したとしても、国民の分断を深める民主主義の「危機」としか言いようがないという。 だから、山崎教授は、今、改憲は危険だと考えていて、それは「国民に信を問う」という言葉に代表される、民主主義を多数決主義と短絡した議論が幅をきかせているからだという。 A氏:山崎教授は、9条改憲の理由として、憲法学者が自衛隊は違憲だと言うから、と語られているが、裏を返すと、差し迫った必要性がないことを証明しており、東アジアの安全保障環境の変化に、緊急の対応が必要と考えるならば、ハードルが高い憲法改正ではなく、個別の法律で速やかに行えばいいという。 私:二人目のジャーナリスト・編集者の松竹伸幸氏は、護憲派だが、改憲が0点で護憲が100点とは思っておらず、45点と55点ぐらい。 1960年代から(非武装中立を唱えていた)社会党支持層でさえ自衛隊は必要と考える人の方が多くいた。 結局、安全保障をだれもまじめに考えてこなかったことが問題なので、護憲派は考えないことが誇りで、改憲派も米国の抑止力に頼っていればよいという立場で無思考。 A氏:安倍首相の加憲論が支持を得そうで焦ったのか、護憲派の中で安全保障を議論する機運が後退したが、護憲論が原理主義化してはいけないという。 護憲、改憲の両極の間をくみ取り、その議論を必要なのは、紋切り型の護憲論と改憲論の間の豊かなグラデーションを反映した議論だと、松竹氏はいう。 私:3人目の山元一慶大教授は、憲法学界で半数ほどの学者が「自衛隊違憲論」を主張するなかで、自衛隊の存在そのものの合憲・違憲論争に終止符を打ちたいという安倍首相らの問題意識は理解できるという。 ただ、9条改正には、ある種の覚悟を持って向き合わなければならないという。 そのために、戦力保持や交戦権を認めない9条2項が戦後日本で果たしてきた役割と意義を再確認すべきで、保守派は2項を「国辱的規定」とする見方から脱却して、9条で得られた平和と繁栄を再確認し、「そこからどうするべきか」を考える必要があるという。 A氏:ただ、戦前の日本の評価と絡む9条には歴史的因縁があり、国民投票で単純に賛否を問うのも難しいので、いずれ乗り越える必要はあるが、9条から憲法改正に取り組むことは、練習もせずに3回転ジャンプに挑むのと同じで非常に危ないことに見え、「まず9条」は尚早で危ないという。 それより、みんなから「いいね」と言われる環境権や教育無償化から始め、「憲法改正には良い面がある」という経験値を高めていくことが理想的だと山元教授はいう。 私:4人目は中西寛京大教授で、憲法9条を改正すること自体には賛成で、本来なら、日本が講和条約を結んで、国連に加盟した1950年代に変えておくべきだったという。 ただ、いま進んでいる9条改正論は問題だという。 政府は、9条で自衛権の行使は否定されておらず、自衛隊は合憲という立場を一貫してとってきており、憲法学者の間に自衛隊違憲論があるという理由で、従来の政府の解釈をそのまま確認するかたちで条文を改正するのは、合理性があるとは言いにくいという。 1項、2項を残したまま、自衛隊を併記するのは、政治的には通りやすいだろうが、論理的整合性に乏しい。 自衛隊の存在や自衛権を明記するのなら、2項を変更し、「戦力を保持しない」ことと、自衛権を担保する実力組織が矛盾しないことをはっきり表現すべきだという。 自民党の石破氏と同意見だね。 A氏:政府は、安全保障や国防政策をなんら変更するものではないと説明するだろうが、諸外国がその説明を素直に受け入れるとは考えにくいと中西教授はいう。 大きな政治的コストを払って改正する以上、何らかの政策変更の意図があると考えるのが自然で、特に中国や韓国は強く反発する可能性があり国際的に不信感招くだけと指摘する。 しかも、憲法の条文を改正しなければ対応できない事態は、ほとんどないと中西教授はいう。 現に安倍政権は、憲法解釈の変更という先例もつくり、法整備や解釈変更で対応できるのなら、あえて憲法の条文に手をつける必要性は高くないという。 従来の解釈の確認にすぎない改正を、衆参両院の3分の2が確保できそうだからやろうというのは、国内的に納得されず、国際的にも不信感を招くだけだと中西教授は指摘する。 私:5人目は中西岳志東工大教授で、安倍首相は憲法9条に自衛隊を明記した3項を加える改正案を唱えているが、反対だという。 集団的自衛権を認める解釈改憲を追認し、自衛権の範囲をなし崩し的に拡大しているという。 これでは憲法の空洞化で、そうではなく、やってはいけないことを明文化し、自衛権の行使に歯止めをかける「立憲的改憲」が必要だと中西教授は考えているという。 日本国憲法は英米の流れをくんで短い憲法なので行間に不文律が多く存在しているので、これはやってはいけないという憲法学者ら多くの人たちの解釈の体系を含んでいる。 9条も条文だけ見れば自衛権の範囲を明文化しておらず、穴だらけ。 しかし、従来、解釈の体系で安定させ、歯止めをかけてきた。 戦後の保守政治家は、解釈の体系を使いこなしてきて、アメリカからベトナム戦争で自衛隊の派遣を求められても、「9条があるから行けません」と主権を行使してきた。 A氏:しかし、現政権は、集団的自衛権を認める解釈改憲を行って「最後のとりで」を崩した。 「保守」を名乗りながら先人らが共有してきた慣習を破ることをためらわず、憲法でも「書かれていないことはやっていい」とばかりに、内閣法制局長官に自分の意をくんでくれる人を任命して解釈を変えた。 これは憲法の短さの悪用。 それに対抗するために、不文律を一つ一つ明文化して、自衛権の範囲をはっきり整理するべきだと、中西教授はいう。 また、9条の空洞化も進んでいて、国民の不安と立憲的な改憲の必要性とをどう調整するか。立憲主義が乗り越えねばならない大きな課題だという。 私:最後の6人目は批評家の東浩紀氏で、この国では、まるで神学論争のように長く護憲対改憲というイデオロギー対立が続いてきて、いつも最も激しく対立するのが9条であり続けていたので、これを打破しようと、2012年に若手の学者や官僚らと新憲法の草案を作り、発表。 日本国憲法の9条にあたる部分では、「国際紛争を解決する手段としては、武力の行使は放棄する」「国の交戦権は認めない」としたうえで、「自然災害と人的災害に対して」「自衛ならびに相互援助する権利を有する」として、「前条の目的を達するため、自衛隊を設立する」という条文にした。 しかし、東氏は憲法改正論者だが、決して、安倍首相や自民党が考えているような、国家主義的で、外交・安全保障政策的に対米従属を強めていこうとする姿勢に賛成していないという。 A氏:明治憲法も日本国憲法も、国民がみんなで一から議論して作り上げたものだとはいえず、明治憲法は、ヨーロッパにあったものをモデルにして急いで作ったものだし、また、日本国憲法に占領軍の意向が強く入っているのも事実。 その意味で、日本人は自分たちで統治のルールを作るという経験が少なく、自ら考え、議論をすることで、国民が憲法の意味をより理解でき、より有効に政府の暴走をおさえる法典になるはずだと東氏はいう。 自ら考え、議論をすることで、国民が憲法の意味をより理解でき、より有効に政府の暴走をおさえる法典になるはずだという。 私:安倍首相の9条の2項を残したままの改憲は前途多難のようだね。
2018.03.24
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私:「日本史」は「明治維新」で確立されたようだ。 江戸時代までは、歴史を学ぶといっても、知識人ですら、平家物語などを読むのがせいぜいで、幕末に読まれた頼山陽の「日本外史」にしても、武家名を冠した「新田氏前・正・後記」「足利氏正・後記」などの形で、時に思い入れを込めた叙述が続くという。 A氏:「歴史学」は今、過去の史料を評価・検証することで歴史的事実を追求する学問と定義される。 こうした「歴史学」が誕生したのは19世紀で、ドイツの歴史学者レオポルド・ランケらが、史料の相互比較などによってその信用性を確かめ、史料から判断できる以上のことは言及しないという「実証主義」を唱えてからのこと。 私:日本では「明治維新」以降、お雇い外国人が工学、医学など様々な学問を体系ごと日本に移植し、「歴史学」も例外ではない。 1887年、帝国大学文科大学に史学科が創設されると、ランケの弟子のルートビッヒ・リースが招かれたが、講義したのは西欧史だったが、89年にはリースの意見などを取り入れながら、「国史(日本史)」学科が誕生。 日本の近代歴史学の普及に大きな役割を果たしたのが、長崎県出身の黒板勝美氏(1874~1946)だ。 黒板氏は1908年の『国史の研究』初版で、日本史の時代区分を氏族制度時代、律令制度時代、鎌倉武家時代、京都武家時代などと定義する。 だが、13年の再訂版では、現在の鎌倉時代末期以降に、公家中興時代(31年の三訂版では皇家中興時代)という新しい時代を設定。 早大の廣木尚助教(日本近代史)は「当時から武家は主権者でなかったとすることで、万世一系の天皇が維新以前から一貫して国民を統治してきたという歴史を叙述しようとした」として、「江戸時代、人々は地域を治めた『藩』の単位で物事を考えていたが、日清・日露の両戦争を体験し、天皇陛下のため、皆が一身を奉じて尽くすべきだという『国民』意識が醸成された。黒板氏の『歴史学』はそれを後押しした」とみる。 A氏:黒板氏はまた、日本支配下にあった朝鮮の歴史をまとめた「朝鮮史」(38年刊行終了)や「朝鮮半島史」の編修と、朝鮮の古跡の調査・保存に情熱を注いだ。 黒板氏は、中国・漢が朝鮮半島北部に楽浪郡を建設したことで、押し出された人々が日本にやってきたと考えていた。 早大の李成市教授(朝鮮古代史)は、黒板氏は、「実証主義」を奉じる一方、日韓併合に根拠を与え、総督府の人脈を使って総督府博物館の建設に関わり、現地の「国民教化」を図り、黒板氏の「歴史学」は国民国家を作る装置だったという。 私:李教授によると、内外で「万民平等な国民の形成」を後押しする黒板氏の認識は当時としては珍しいものだったが、それは、欧米と伍する国家を創出するための国策ともいえたが、民族同化などの大きな犠牲を生み、そこに近代日本の二律背反があるとみる。 「明治維新」によってできた「日本史」も、「実証主義」よりも国策の制約は避けられなかったようだ。
2018.03.23
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私:「日本青年会議所(日本JC)」は、1951年に「青年の力を結集して大衆社会への奉仕を行う」という米国発の青年会議所活動に触発されて創立され、商工会議所の青年部とは無関係。 全国に約700ある地域別の「JC」を「総合調整」する組織として「日本JC」があり、役員らは全国からの出向者で、どの「JC」も、入会資格は20~40歳の男女で、会員は約3万6千人(2018年1月現在)いる。 企業の代表者や役員が7割を占め、2代目や3代目が多いのも特徴。 A氏:その「日本JC」が問題になったのは、「右翼」を連想させる「宇予(うよ)くん」の名前で、ツイッター上に不適切な投稿をしたとして謝罪したことだ。 「日本JC」がウェブサイトに「お詫び」を載せたのは2月28日。 「改憲」を進める部署の担当者が「宇予くん」名で中国や韓国を名指しし「バカ二国」と述べたり、「憲法を変えたくないと言ってるヤツはバカ」などと中傷したりしたのが不適切だったと謝罪。 「議論の活性化を意図するあまり、誤った稚拙な手法」をとったと釈明。 私:ふだんは地域でイベントや選挙の際の公開討論会を企画したり、ボランティア活動をしたりする「JC」が多いためか、地元活動を重視する政治家とのつながりが生まれやすく、選挙に出る人も多い。 麻生太郎財務相はかつて「日本JC」の会頭を務めた。 今、文部省で問題になっている前川喜平・前文部科学事務次官の中学校での講演について、文科省にしつこく照会していた自民党の池田佳隆衆院議員も06年の会頭。 池田氏は当時、国会に参考人として出席し、教育基本法改正を訴えたこともある。 A氏:当時から、教育の政治介入の癖はあったのかね。 私:「日本JC」が「改憲」に取り組むようになったのは、05年に軍隊の保持などを盛り込んだ「改憲草案」を作ったのが発端。 05年の会頭だった高竹和明氏(52)は「憲法を自分たちの手で作り出すことで、過去の歴史はすべて誤りだったという『自虐史観』を打破したいと考えた」という。 昨年4月には全都道府県で憲法に関する「全国一斉! 国民討議会」を開催し、18年度の事業計画にも「改憲を推進する教育事業の企画・実施」を盛り込んでいる。 A氏:「日本JC」の動向に詳しい佐賀香織・法大特任研究員(政治学)は「行動方針が時流に流されやすいという特徴がある」と指摘。 行革が政治のテーマになると、街づくりや地方自治が主要課題になり、阪神大震災が起きると「復興支援」に注力し、00年代からは改憲や領土意識の醸成、道徳教育などを視野に入れ始める。 「日本JC」の定款には「本会は、これを特定の政党のために利用しない」とあるが、「安倍政権が掲げる改憲に『貢献したい』という意識が強いのを感じる」といい、また、「中央も地方も役員が1年で入れ替わるルールがあり、コンプライアンス(法令・社会規範の順守)機能が定着しにくいことも、今回のような配慮に欠けた投稿を許すことにつながったのではないか」とも佐賀氏は言う。 改憲をめぐり、何か、日本会議の青年部のようになりつつあるのかね。
2018.03.22
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私:昨日、50歳代の大学職員と雑談をする機会があったが、最近の大学生が読書をしないということを話していた。 漫画や雑誌も読まず、情報は手っ取り早くスマホなど、SNSで得ていて、それだけだという。 深く考えるということがないという。 そして、文章をあまり書かないし、書いてもLINE的文書で短く、主語がないという。 本も買わずに図書館で借りるようにするので、自宅の書棚に本は少ないという。 そうしたら、朝日新聞の19日の「教育欄」と20日の「社説」に「大学生の読書離れ」に関する記事が載っていたのに気がついた。 A氏:19日の「大学生の読書離れ、止められる?」の記事によると、国公私立大の約1万人を対象にした昨秋の調査では、1日の読書時間が「ゼロ」の学生が過半数を占めたとあるね。 そこで、昨年4月、国学院大が図書館のある建物内に、ずっと座っていたくなるような居心地のいいスペースとして、「みちのきち」を設けた。 「みちのきち」という名称は、「未知のことを既知に変える基地」という意味を込めている。 このスペースのベンチに座ると、本棚が目隠しになり、外を歩く人とも視線が合わず、じっくり読書ができるというわけだ。 私:「本でできた大学」を称する同大だが、2016年度に学生が1年間に読む本の冊数を調査したところ、平均7冊にとどまっていた。 そこで、同年度から、「『みちのきち』プロジェクト」を開始し、「学生の読書離れ」に歯止めをかけようと、17年度の目標に「年間20冊」、21年度は「年間50冊」を掲げた。 だが、昨年11月の学生への調査では、「最近1年間に読んだ本の冊数」は「1~10冊」が4割を占め、目標達成にはほど遠い。 A氏:同図書館長を務める石井研士副学長は、「読書に力を入れる小学校も増えてきているが、受験勉強で読書をする習慣が途絶え、大学生になっても、その習慣が戻っていない」と指摘し、「本を読むと、一つのまとまった世界を体験できるという良さがある。学生時代に、1冊の本から世界が広がる経験をしてほしい」と期待する。 私:全国大学生活協同組合連合会が17年10~11月、大学生協を通じて、全国の国公私立30大学の学部学生約1万人から得た回答によると、1日の読書時間が「0」の割合は53・1%で、前年より4・0ポイント増加。 調査を始めた04年以降、5割を超えたのは初めてで、1カ月の「書籍費」は自宅生が1340円、下宿生が1510円で、どちらも1970年以降、最も低かった。 読書時間が減った一方、1日のスマホ利用時間は、前年から15・8分増え、177・3分(男子174・4分、女子180・8分)になった。 A氏:しかし、同志社大学学習支援・教育開発センターの浜島幸司准教授が調査を分析したところ、「読書時間の減少にスマホの直接的な強い効果はみられない」という結果が出た。 読書時間「ゼロ」が増えた背景には、入学前に読書習慣がない学生が多いことに加え、入学後も読まない学生が増えていることがあり、浜島准教授は「読書習慣を身につけさせる施策(実践)が必要だ」と指摘。 私:20日の「大学生と読書」と題した「社説」でも大学生協の1日の読書時間が「0」の割合は53・1%を引用している。 しかし、本離れは若者に限った話ではなく、「無読層」はすべての世代で増加傾向にあるとしている。 ネットの普及や書店の減少で、本に接する機会は確実に減っていて、背伸びしてでも知識を得ようとする「教養主義」は、過去のものとなって久しいという。 A氏:文藝春秋3月号の「総力特集 日本の教育を建て直せ」で、作家で、数学者の藤原正彦氏は「小学生に英語を教えて国滅ぶ・一に国語、二に国語、三、四がなくて、五に算数!」と題して寄稿しているが、その中で、バブル崩壊後、明るい将来の見えない状況がもう20年以上も続いていると指摘している。 そして、最大の原因は、政治家、官僚、財界人といった国を動かす立場のリーダー層の「教養」が不十分だと指摘しているね。 そして、「教養」を身につける方法は、ただ、一つ、「読書」だと藤原氏はいう。 私:ところで、「社説」は、 学生は就職活動でアピールできる即戦力の技能を磨くことに追われ、読書を「割に合わない」と考えても不思議はなく、そして肝心の本にしても、出版界の苦境を反映してか、粗製乱造ぶりが目につくという。 だが嘆いていても仕方ない。 情報を受け取る方法は時代によって違うことを、まず確認するところから始めようというという。 まとめサイトで手っ取り早く情報を集めるのとは違った「本」ならではの魅力や、多様な世界観に触れる楽しさを、できるだけたくさんの若者に知ってもらいたいという。 読書の楽しみを教え、伝えるのは大人の役割。 例えば始業前の「朝の読書」の試みは、中学校では全国の8割以上が実施しているが、高校になると半数以下に減ってしまう。 読書量は高校までの習慣に関係すると言われている。 本との出会いを増やす方法のひとつとして、もっと活用できるのではないかと提案している。 いろいろな試みが必要で、そうでないと藤原氏が警告しているように、「無教養人」の増加で、日本の劣化が始まりつつあるようだ。 森友学園をめぐる「公文書かいざん」問題は、その氷山の一角かもしれない。
2018.03.21
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私:日銀の黒田総裁が就任して20日で丸5年。 19日公表の資金循環統計(速報)では、日銀の国債保有残高は昨年末時点で前年比6・8%増の449兆円(時価ベース)。 緩和開始前の2012年末の3・9倍で、保有割合は国債全体の41・1%に達した。 A氏:巨額の国債買い入れで金利は0.795%から0.045%と下がり、円安・株高で企業収益も増えたが、国債の取引量は大幅に減少。 年金や保険は資金運用が難しくなり、収益悪化で金融機関はリストラや手数料値上げを迫られている状態。 8~9日の金融政策決定会合で出た政策委員の「主な意見」では、「低金利が長期化すれば金融仲介が停滞するリスクがある」「副作用も考慮しながら適切な政策運営の検討が必要」などの政策修正を示唆した発言が相次いだという。 私:BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「一番の副作用は利払い負担の減少で『財政悪化』を許し、円安・株高による慢心で成長戦略も遅れたことだ」と言う。 年6兆円のペースで買う上場投資信託(ETF)の保有残高は緩和開始前の12倍に増え、日銀が投信保有を通じて実質的な大株主となった企業も多い。 A氏:5年間で138兆円から479兆円と大量供給されたお金は、成長戦略にではなく、不動産投資などに偏って流れ込み、局所的なバブルを誘発。 第一生命経済研究所の熊野英生氏は「緩和が長引くほど副作用が膨らみ、将来に禍根を残すようなバブルが生まれる可能性も出てくる」と指摘する。 私:黒田総裁は「現時点で行き過ぎはみられない」と繰り返すが、2%アップの物価目標の達成前に副作用が強まれば、日銀は難局に立たされる。 国会で、森友学園問題の公文書改ざん問題でもめている間も、金融緩和で、カネは貯まり続けているが、この重要な議論は抜けているね。 黒田総裁再任後の5年の政策運営は、副作用の抑制もにらんだ難しいかじ取りを迫られると予測される。
2018.03.20
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私:経済学部に入ってきた学生は、抽象的な理論、数式、統計など、これらが現実とどう関わるのかと迷う。 著者のケイト・ラワース氏も、オックスフォード大学で経済学を学び始めたとき、まさにこうした状況に直面。 結局、著者は経済学を離れて国連とNGOで開発途上国の問題に携わるが、改めて経済学の影響力の大きさに気づき、研究者としてオックスフォードに戻り、そこでの思考の成果が、本書だという。 この本は経済学的思考の特徴と、それとは対比的な著者の思想を、より多くの読者に直感的に伝えるため、簡明なイメージ図を多用。 A氏:「ドーナツ」がそのイメージ図の一つだね。 私:「ドーナツ」は、著者の思想の核心を示す。 「ドーナツ」の「外円」は、経済活動がこれ以上拡大すると、自然や生態系を破壊してしまう点で、経済活動の上限を示す。 「ドーナツ」の「内円」は、それ以下に経済が縮小すると窮乏問題に直面することを示す。 A氏:誰にとっても公正で持続可能な経済は、二つの円に挟まれた領域だというわけだね。 私:これは、我々が求めるべきは、貧困問題と環境問題を同時解決する経済システムであることを示している。 それには経済学に、全体性と人間性の重視、機械的均衡論からダイナミックな複雑性への移行、分配と環境再生の重視、そして成長依存からの脱却が求められると、著者は説く。 A氏:評者は、「本書は、出来上がった理論を現実に応用するのではなく、現実問題から出発し、課題に挑む中で新しい理論創造が始まることを教えてくれ、著者の試みが経済学をさらに魅力的にし、『冷静な頭脳と温かい心』をもつ未来の学生を惹きつけることを期待したい」と言う。 私:学生をひきつけるだけでなくこのブログの以下の「資本主義の崩壊・知的街道」という末期論に対抗して、「ドーナツ」型の次の世界経済の姿を具体的に示してもらいたいものだね。 「資本主義の終焉と歴史の危機」、「低成長経済 時間かせぎの資本主義、限界に」、「社会主義崩壊後の世界 新自由主義に壊されるもの」、「日銀の超金融緩和 成長の「その次」の価値観」
2018.03.19
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私:トヨタ自動車元社長、豊田達郎氏が、2017年12月30日、88歳で、肺炎により死去された。 現名誉会長で兄の豊田章一郎氏(93)の後任として社長を務めた。 早くから目立った兄の陰に隠れがちだったが、社長交代を発表した1992年の会見では「豊田姓だから選ばれた、という気はない。同族企業と批判されるのは心外」と話した。 A氏:80年代、トヨタが米GMと現地に設けた合弁生産の会社NUMMI(ヌーミー)の初代トップを務め、米国への輸出攻勢が招いた貿易摩擦を和らげるため、「トヨタ生産方式」を米国の現地のNUMMI(ヌーミー)の工場に移植したので、有名だね。 このNUMMIの工場は、カリフォルニアにあり、フリモント工場と呼ばれ、GMの工場としてはあまり生産性がよくなく閉鎖していたものを「トヨタ生産方式」導入で、再開したもの。 君のこのブログでも、「トヨタ生産方式」が、GMに導入されていく過程などをとりあげた、「NUMMI知的街道」がここ数年で下のようにできているね。 「論争 若者論」、「GMの言い分・何が巨大組織を追いつめたのか」、「新幹線お掃除の天使たち・『世界一の現場力』はどう生まれか?」、「職場砂漠・働きすぎの時代の悲劇」、教育・訓練とTWI とホーソン実験、フリモント工場は閉鎖か 私:豊田達郎氏は、NUMMI社長として、米国人従業員との融和に心を砕き、昼食は社員食堂でとり、通勤は自ら運転した。 専用の駐車場ではなく、従業員と同じ場所にとめて社屋まで歩いた。 実は、GM時代は、食堂もマネージャーと労働者は別だったのが、壁は取り払われ、食堂のテーブルは大きな丸いテーブルにした。 だから、英語が流暢な豊田社長は、自らトレーを持って、一般作業者と同じテーブルで食事をする。 これは、GM時代と比較すると、画期的なことだね。 これが、一事が万事で、現場に「トヨタ生産方式」が導入される。。 A氏:まず、作業者に自主性を持たせ、問題があると、ラインを止める権限を与えたね。 Bad News first (悪いニュースを先に)の考えの徹底だね。 人はとかく、悪いニュースは隠したがって、問題を悪化させる。 GM時代に問題があっては勝手にラインを止めたら即解雇だ。 GM時代は「カイゼン」などによる作業方法の変更は、専門の技術スタッフしかできず、現場職長は決められた作業方法を監視するだけだったのを、職長に改善を考えるように義務づけるね。 皆、「トヨタ生産方式」の基本だね。 私:この結果、GMの工場の作業員が1台のクルマを組み立てるのに平均で35時間かかるのに、「トヨタ生産方式」が定着したNUMMIでは20時間しか必要としなかったという。 また、GM時代に出勤率が75%台だったというのが、95%台になる。 私:1990年頃だと思うが、俺はアメリカの産業教育大会の視察団に参加して、米国に行ったことがある。 当時は、日本の製造業は米国を制覇していたね。 日本視察団が参加した大会では、米国企業のいろいろな成功例を分科会で発表していた。 俺はその中で特に気になっていたNUMMIのフリモント工場の画期的な生産性向上を果した発表をしていた分科会で話を聞く機会を得た。 「トヨタ生産方式」を導入し、すでに10年位たっていたね。 1986年頃には、すでに、GM時代と車種が違うのだが、ほとんど同じ設備と労働者で、5割近い生産性向上を達成したとしてしたということで有名になっていたね。 A氏:君がその分科会で聞いたというのは、その成功発表分科会かね。 私:成功したことは、すでに日本でも有名になっていたので、俺は米国人の生の声を聞きたかったのでその分科会を選んだんだね。 同時通訳はつかなかったが、すでに内容的には知っているし、説明に使うプロジェクターなどで活字で分かるので、英語は大体は分かった。 発表は白人のインテリが中心に行うから、英語もオーソドックスだしね。 ところが、通訳なしで問題が起きた。 現場の黒人職長が発表したんだが、この英語がまったく分からない。 黒人訛りの英語なのだろうね。 ところが、その英語の中で、はっきり意味の分かった英語があった。 それは I was a number in GM. Now I am an employee. という言葉だね。 訳すと、「俺はGM時代は『数』だった。今は俺は『従業員(人間)』だ」 ということかね。 幸い、カセットテープに録音していたので、ホテルに帰って同時通訳の人に聞いてもらい英文にしてもらうように依頼した。 ところが、この同時通訳の人は、黒人訛りに悩まされ、3回もテープを聞き返したという。 そしてようやく英文にしてくれたよ。 A氏:「トヨタ生産方式」で、今までが他人が決めた作業方法を守るだけだった現場に自主的な「カイゼン」が始まる。 要するに、職場に働く人の頭と手足が一体になる。 私:しかし、「トヨタ生産方式」の中心は、トヨタのオリジナルが多いが、その根底にある提案制度や「カイゼン」による従業員の参加意識の向上思想は、実は、敗戦直後、フォードに自動車の技術を学びに行った2人のトヨタマンが、フォードから持ち帰った思想だね。 それが「カイゼン」として日本で花が開く。 その基本思想が米国にまたもどったというのは、皮肉だね。 A氏:だが、その「カイゼン」が、「失われた20年」で日本の職場で消えて「長時間労働」「ブラック企業」などが問題化しだしたね。 私:民間だけでなく、「森友学園」問題をめぐる「文書かいざん」問題をブログ「公文書改ざん、行政の責任は 憲法と公文書運用の視点から再考」でふれたが、官僚がムダな文書づくりをしており「カイゼン」と個人の「自主性」が必要だね。 A氏:豊田達郎氏の米国の地元に溶け込んだNUMMIの体験は、その後のトヨタの世界展開に生かされた。 私:トランプ政権下の米国は保護主義に再び傾き、トヨタは難しいかじ取りを迫られているが、1日のお別れの会で、「トヨタを米国の人々に愛される会社にする夢をおじは見ていた」と豊田章男社長(61)は故人をしのび、「夢は現実になった」と締めくくったという。
2018.03.18
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私:13日のブログ「鉄鋼の街、労働者票を争奪 米ペンシルベニア州・下院補選」で、13日に投開票がある11月の米連邦議会中間選挙の行方を占う東部ペンシルベニア州の下院第18選挙区の補欠選挙をとりあげた。 ところが、14日になっても、マスコミ報道をさがしたが、開票結果が報道されていない。 新聞の夕刊にも載っていない。 A氏:載ったのは14日朝刊だね。 結果は、民主党が共和党をわずかに上回ったとある。 詳しい開票結果は、民主の元連邦検事コナー・ラム氏(33)が11万3111票(得票率49・8%)、共和の州議会議員リック・サコーン氏(60)が11万2532票(同49・6%)で、わずか「579票差」で、民主党ラム氏は14日未明に勝利宣言したとある。 私:興味があったのは、「票差」だ。 毎日新聞のほうは、米主要メディアによると、得票数はラム氏11万3813票に対しサコーン氏11万3186票でわずか「627票差」で、得票率では49.8%対49.6%だとある。 朝日、日経は「579票差」、毎日は「627票差」。 いかに接戦で、当落がなかなかわからなかったかが分かるね。 A氏:この僅差のため、まだ当落は正式には未確定で、米メディアによると約4千票の不在者投票について、再集計するという。 私:14日のロイターでは、民主党のコナー・ラム候補が勝利を宣言したが、大接戦の展開で正式な勝者は未定の状態が続いていると報じている。 さらに、ロイターでは、同州の当局者によると、当選者が確定するのは早くても今月26日になる見通しで、最終的な開票結果は数週間後に判明するとみられ、不在者投票や投票資格未確認の有権者による暫定票の集計は今週終盤に始まり、米軍の投票は来週開票される見通しと詳しく報じているが、日本の新聞はそこまでふれていないようだ。 A氏:「票差」が僅差なので、26日の最終結果で、逆転するかもしれない。 しかし、「サコーン氏は簡単に勝てる」と言い放っていたトランプ大統領と与党・共和党にとっては、すでに「事実上の敗北」と言えるね。 しかも、トランプ大統領の熱狂的な支持層である白人労働者が多いラストベルトの一角での選挙だ。 この共和党のペンシルベニア州の補欠選挙での苦戦は、11月の議会選への「トランプ旋風」の影響力に限界があることを露呈した。 私:11月の米連邦議会中間選挙に向かって、トランプ大統領は、危機感をもって必死に内外に挽回の手をいろいろ打つだろうね。
2018.03.17
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私:森友学園に絡む「公文書の改ざん」で、国会に「改ざん文書」を出した政府、書き換えた官僚。 行政の責任とは何かをこの欄で、憲法と「公文書」運用の視点から再考している。 日本国憲法の第66条第3項では、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」とある。 政府が国会に「改ざん文書」を出す異常事態を受け、行政府の「責任」に改めて関心が集まっていることになるね。 A氏:官僚制など統治機構に詳しい憲法学者の毛利透・京大教授は「統治機構に関する憲法規定に照らしたとき最大の問題は、政府が『改ざん資料』を国会に出したことだ」とし、「憲法第66条第3項の意味は、内閣は行政権のトップとして、各省庁で行われている全ての行政行為について、国会に対して説明する責任を負っている」と解説。 さらに、「国会への説明責任を内閣が負い、信任が得られなければ辞任し、議院内閣制を採用している諸国では、この基本的な仕組みは変わらず、そして、国税庁長官は内閣の一員ではない」という。 私:毛利教授は、「今回起きたのは、内閣の責任を追及していた国会に『偽りの情報』が提供される事態だ。国会で『ウソ』が語られ、それを『隠すウソ』が重ねられたと見られます。国会の追及権限がないがしろにされ、本来なら追及されるはずだった責任が追及されなかった恐れがある。実際に森友問題は一時、沈静化していた」という。 それを朝日新聞が、今年になって「公文書かいざん」でスクープして再燃したね。 官僚組織の末端が問題を起こした場合、内閣が国会への責任を負う規定なので、所管省庁で起きたことなら大臣は言い訳できないと毛利教授は指摘。 A氏:責任ある行政というものがなぜ不可欠なのかというと、「行政権を握るのは常に一部の人間だからです。だからこそ、その監督が重要になる」「昨秋の衆院選の段階では事実が隠されていた。その重大さも考えるべきだ」という。 私:一方、「公文書管理」の歴史に詳しい瀬畑源・長野県短期大学准教授は、「文書がない、処分してしまった、ということはこれまでにも繰り返しあった。だが、今回のような『決裁文書』の改ざんは、官僚自らが、自分たちの仕事を否定したことを意味する」と指摘。 瀬畑教授は、官僚制と「公文書」の関係は深く、日本では明治維新以降、官僚制度の整備に伴って行政は文書に基づくようになっていき、とりわけ行政の意思決定の記録である「決裁文書」は、「官僚からすれば、自分たちの仕事の存立基盤。それは戦前から今まで一貫している」と説明。 A氏:戦前と戦後で変わったのが、「公文書」が「誰のために書かれているのか」という点点で、戦前の大日本帝国憲法では、公務員は天皇の官吏と位置づけられ、「公文書」は、天皇に説明するためのものという性格が強かった。 戦後の日本国憲法下では、公務員は「全体の奉仕者」になり、「公文書」も、「国民に対する説明責任」を果たすためのものに変わっていった。 国民主権だからね。 私:その理念は、2001年施行の「情報公開法」と11年施行の「公文書管理法」の整備によってようやく制度化された。 「公文書管理法」1条は、ブログ「『ゆがんだ不動産取引』『不敗神話終わりの鐘』… 海外で森友問題詳報」の最後で全文掲載したね。 すなわち、1条では「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにする」と、「公文書」の存在意義を明文化し、さらに、原案には無かった「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」という文言も超党派の議員らによって加えられた。 A氏:瀬畑教授は「今だけではなく、将来の国民にも責任を持つ。『公文書管理』の理念の発展は、行政の説明責任の発展をも意味してきた。だが今回の「改ざん」で、ほかに「改ざん」とはないと言えるのかという疑問が生まれ、根幹が揺らいでしまった」と話す。 私:まさに、この前、ブログ「『ゆがんだ不動産取引』『不敗神話終わりの鐘』… 海外で森友問題詳報」の最後にで書いたように、今年、明治維新150年を迎え、近代国家を目指し、民主国家に成長してきた日本が、150年目に汚点を残す事態に陥るとはね。 自民党の岸田政調会長が嘆いていたように、発展途上国なみになってしまったね。
2018.03.17
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私:神里達博教授は、森友学園との国有地取引に関する決裁文書の事件が明るみに出る寸前に国会を揺るがしていた、「裁量労働制の拡大」の問題について考えたいとしている。 政府は、比較のできない数字を使って国会答弁を続けていたとして、強く非難された。結局、「裁量労働制」の対象拡大は、今回は断念することになった。 A氏:そして3月2日の朝日新聞の報道から、公文書の書き換え問題に社会的な注目が集まっていくわけだが、その2日後、もう一つ重要なニュースが報じられている。 それは、当初政府の答弁では、「裁量労働制」の違法適用の取り締まりの具体例として、不動産大手の野村不動産に対する「特別指導」を挙げていたが、これは、同社の50歳代の男性社員が「過労自殺」し、遺族が労災申請をしたことをきっかけに行われた指導であったことが判明したもの。 私:同社は、全社的に「裁量労働制」を違法に適用し、この男性社員もその中に含まれていたといい、現行制度ですら、働く人を守る上で不備があることが暴露された。 「過労死」という言葉が使われるようになってから、すでに約40年が経つが、依然としてなくならないと神里教授はいう。 その原因を神里教授は、江戸時代からの農業労働をもとに奨励する倫理観が歴史的に日本社会の深いところに浸透したと見ている。 A氏:特定の社会における倫理観は、文化や宗教のみならず、社会経済的な要因など、さまざまな要素から形成されると考えられ、いったん、倫理観が人々に根付くと、社会的な条件が少々変わっても、倫理自体は簡単には変容しない。 日本社会の勤労についての倫理観も、後に工業化の段階に入っても保たれ、現在にまでつながっていると考えられると神里教授は言う。 さらに、神里教授は、問題は、現代の日本が、単に労働時間を長くすれば豊かになるというような段階を、とうに越えてしまっていて、先進国となって久しい今、重要なのは、より付加価値の高いモノやサービスを効率よく生み出すことであって、労働時間をいたずらに長くするのは、当然、経済的にも不合理であると指摘する。 私:それは当然だし、だから、日本社会の勤労についての倫理観も、後に工業化の段階に入っても保たれ、現在にまでつながっていると考えられるなどと呑気に言っておられないね。。 だから、先進国に追いつけと高度成長期が始まる前から、「時間短縮運動(時短運動)」が始まった。 日本は週6日制から、隔週5日制、そして、週5日制と短縮していったね。 俺たちはその変化の真っ只中で働いてきたわけだ。 そして当然、増える仕事量を短時間でこなすために無駄を省き生産性をあげてきた。 今も先進国G7のうち、生産性では日本は最低だというが、それは日本社会の勤労についての倫理観のせいではないね。 ある日本で仕事をしていた人が、ドイツに出向して、驚いたのは、ドイツ人の仕事にムダがなく、効率的だったという。 A氏:「長時間労働」は生産性を無視した労働の結果だね。 「働き方改革」とは、「カイゼン」のプロを育て、「長時間労働」をしているような仕事を分析し、ムダを省き、効率化して生産性をあげ時間を短縮することだね。 私:「長時間労働」は生産性を向上するためのいいネタを提供しているわけだね。 「カイゼン」のプロならすぐに飛びつくネタだね。 ネットで、伊藤忠商事のオフィスワークの時間短縮例が載っていた。 それによると、 「メールの応答も以前は1件読んだ後、別のメールも読んでしばらく考えてから返答していたが、1件ごとに読んだらすぐ返信するように変えた。そうすると相手の返答も早まり、物事が早く進む相乗効果が生まれた。仕事の進め方を見直すことで、感覚値としては「1日8時間かかっていた仕事が6時間でできるようになった」 とある。 これは「トヨタ生産方式」でいうと「1個流し」の「カイゼン」方法のオフィスワークへの応用だね。 神里教授が指摘する日本社会の勤労についての歴史的な倫理観とは無関係だね。
2018.03.16
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私:酒井氏は、国際政治学者だから、海外でのつきあいが多いと思うが、その出発点に、三つの記憶があるという。 「その一」、中学生の頃のことで、深夜放送で、フランスに新婚旅行に行った花嫁がブティックに入ったきり行方不明になって、中東の売春宿に売られてしまう、という「オルレアンの噂」が紹介され、海外ではこんな怖いことが起きる、という内容と、DJの軽妙な語り口のギャップで、鮮明に覚えていること。 A氏:「その二」は、大学を卒業して数年後にシンガポールに初めて行ったときで、ホテルや店でさまざまな民族出自の人々が働くのを見て、直感的に「この人たちが日本で働くようになったら、とても太刀打ちできない」と感じたこと。 すなわち、父祖の地に住んでいない(いつか突然出ていかざるを得ないかもしれない)人々が、自らの知力で道を開き自らの力で稼いでいくパワーに、圧倒されたこと。 私:「その三」は、大学時代のロンドンで、初めての海外旅行で、舞台のお芝居を見に行ったとき、前売り券にトラブルがあって入館できなくなりそうだったのだが、アフリカ系のモギリのおじさんが「いいよ、入って。俺が損するわけじゃないし」と言ったこと。 「その一」と「その二」のエピソードは、海外に出て行くのに臆してもいい出発点で、今、若者が日常的に接している、「海外は怖い」「移民はイヤだ」的情報と、似ている。 なのに、「それでも海外に出て行かなきゃ」となった。なぜだろう?と酒井氏はいう。 そして、その答えは、「その三」のエピソードにあり、人はいろんな祖国から来ていろんな土地でひとりで生きていかなければならないけれども、そこで「国家」だの「企業」だの「誰かの利益」だのを背負う必要がない、という教訓。 A氏:それを教訓と言うべきかどうかはわからないが、誰かに守られてしかるべきだと考えると、「怖い海外」や「移民の到来」に臆することに通ずる。 だが、国の庇護を得られなかったり、戻る祖国がなかったりで、そもそもの出身地ではない場所で生活していかざるを得ない人たちは、個人の能力で自らの人生を切り開いていくしかなく、周りに期待しない分、自由で自立的にもなれる。 「その三」のエピソードがくれたのは、個としての自立。 私:欧州で迫害を受けていたユダヤ人は、「詰めたスーツケースの上に座る」と言われた。 いつでも移動できるように備えていたからで、今、内戦や貧困や迫害で祖国を逃れて、周辺国や先進国に新天地を求める人々が、スーツケースに人生を詰め込んで移動している。 ミャンマーのロヒンギャや、シリア内戦から逃げ出した人々、アフリカからリビア経由で地中海を渡る人々。 なかには、祖国でかなりの地位にいた者や、何不自由ないサラリーマン生活を送っていた者もいる。 だが、何かに属していることで自動的に庇護が与えられることが虚構だとわかった今、そのギャップにへこんで潰れる者もいれば、本人、あるいはその子孫がホスト国や国際機関で大活躍する者もいる。 欧米でスポーツ選手やアーティストとして活躍したり、ひいては市長になったり(ロンドン)、国務長官になったり(米クリントン政権)、成功例は多い。 A氏:現代はグローバル化の時代だ、といってメディアや企業、教育機関が提示するのは、朝ニューヨークのオフィスに出勤して午後ロンドンで国際会議に出、スカイブで香港やドバイのカウンターパートと商談を進める、といったエリートのイメージだ。 私:だが、酒井氏は「だが実際のグローバル化は、もっと足元で起きている。人身売買に遭う危険をすり抜けながら、早口で値切り交渉する訛の強い英語に対抗しながら、君は世界を渡っていく度胸があるか。脅しているのではない。背中を押しているのだ」という。 敗戦後、70年、考えてみれば、平和憲法で平和に過ごし、国、企業、家族など誰かに守られてしかるべきだと自然に考えてきた。年金も健康保険もある。しかし、グローバル化で、それが虚構だとわかったとき、個としての自立ができるだろうか。 考えさせられる。
2018.03.15
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私:今回の森友学園問題で起きた財務省の決裁文書改ざん問題は、世界各国のメディアでも報じられ、この欄でまとめている。 ・英紙タイムズ 13日、「偽造された文書、ゆがんだ不動産取引、自殺、そして子どもたちが戦前の軍国主義を習う国家主義的な幼稚園――。 1年間のスキャンダルの後、疑わしい要素が一つになって、右派の安倍首相を脅かす政治危機となっている」と伝え、森友学園については「戦前の日本で主流だった愛国種と自己犠牲を教える幼稚園」と描写。 ・英紙ガーディアン(電子版) 12日、「夫人が関わった身びいきのスキャンダルで、安倍首相の政治的将来は不確かに」との見出しで報じ、「スキャンダルは、安倍首相の9月の自民党総裁選での3選や、首相続投への望みを傷つけそうだ」と指摘。 ・米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版) 12日、「改ざん文書で日本の安倍首相がまた焦点に」との見出しで、「首相が苦しい立場に置かれた」と報じ、記事では、昭恵夫人の発言とされる部分を削ったと財務省が認めたことについて、「最も劇的な告白」とした。 A氏:フランスのメディアも軒並み報道。 ・フィガロ紙 13日付の紙面で、目を伏せるようにして記者の質問に答える安倍首相の写真を掲載し、「様々な問題を乗り切ってきた安倍首相の不敗神話に対し、『森友問題』が終わりを告げる鐘になるかもしれない」と指摘。 私:「韓国の放送局JTBCの東京特派員」は、米朝首脳会談の開催などと絡めて、「北の非核化をめぐる議論が急進展し、『日本が疎外された』との指摘が国内外から出る中でスキャンダルが重なり、(安倍政権は)内憂外患で窮地に追い込まれた形だ」と伝えた。 ・中国国営新華社通信 13日、「安倍氏が国民に謝罪、各界から強烈な不満」との見出しの記事を配信。 野党が攻勢を強めていることや、安倍氏の退陣を求めるデモが起きたことを詳しく伝えた。 ・中国共産党機関紙・人民日報海外版 13日、外交学院国際研究所の周永生教授の論評を配信し、「事件は、内閣の支持率を下降させ、首相が今後進めようとしている憲法改正などの政策に衝撃を与える可能性が極めて高い」と分析。 たしかに、今日、自民党は憲法改正案の検討を延期したね。 A氏:世界各国のメディアは、安倍首相に関する内容が中心のようで「公文書改ざん」と「公文書管理」の問題は改ざん箇所が多いだけに詳細でないようだ。 ところで、「公文書管理法」の目的(法1条)には次のように定められている。 「この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。」 とある。 私:「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とあるように、「公文書管理は民主主義の根幹」だね。 今年は、明治維新で近代日本を目指して150年。 記念式典が大々的に行われると思ったら、「公文書偽造」の大問題が出た。 民主化への道のりの150年目で健全な民主主義の根幹がゆらぐとは皮肉だね。
2018.03.14
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私:昨日のブログ「地べたを歩き、信頼の基盤築く」では、米国の主要産業の炭鉱がすっかり寂れた「石炭の街」・米東部ウェストバージニア州についてふれたが、今日、13日は米東部のラストベルトの「鉄鋼の街」ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外にあたる連邦下院同州第18選挙区の補欠選挙を行うことが報じられている。 A氏:11月の中間選挙の前哨戦と位置付けられているが、同選挙区は2002年以来、共和党が勝ち続けた牙城で、16年の大統領選でも、トランプ氏は民主党のクリントン氏に20ポイントもの差を開けて大勝。 私:ところが、昨年10月、妊娠中絶反対を掲げていた共和党議員が愛人に中絶を迫っていたことが発覚して辞職に追い込まれ、共和党は逆風を受け、各種世論調査でほぼ横並びの接戦となっている。 このため、共和党候補・リック・サコーン氏(60)陣営はトランプ人気を前面に押し出した。 トランプ氏が10日夜、ピッツバーグ空港近くの演説会場で「ペンシルベニアは米国の独立と自由の象徴だ。もう一つ、鉄鋼だ」と語ると、詰めかけた数千人から大歓声がわき起こった。 さらに、トランプ氏は鉄鋼製品の輸入に25%の関税を課したことを強調し、「鉄鋼が戻ってくる」と訴えた。 選挙戦最後の12日にはトランプ氏の長男ジュニア氏が地元入り。 会場にいた長距離トラック運転手のブランドン・ヒルさんは「増税の民主党では街は復活しない。数字はウソをつかない。トランプ氏は約束を守っている。みんな真実を見始めている」と話す。 A氏:対する民主党も、支持基盤であった労働者票をどれだけトランプ氏から取り戻せるかという課題を突きつけられていて、元連邦検事の民主党候補コナー・ラム氏(33)は6日、同州出身で白人労働者に根強い人気のバイデン元副大統領を応援に呼んだ。 バイデン氏は「私はこの地域の価値観を知っている。誰をも見捨てない姿勢だ。今の政治にあまりに多くの人が置き去りにされている」「ラム氏は重労働、肉体労働の価値を信じている。彼は『組合』という言葉を口にすることを恐れない」と訴えると、労働者たちの歓声が上がった。 私:ラム氏も労働者を集めた会合を重ね、人口1千人ほどの町の会場で「まじめに働けば、尊厳を持ったまま年を重ねられる社会を求めている。年金や社会保障の削減を心配しなくて済む社会だ」と訴え、高齢の労働者の関心事である社会保障を守る姿勢を強調。 腕を組んで聞いていた元炭鉱労働者ポール・ハウザーさん(65)は「トランプは炭鉱の味方を演じているが、あくまで企業側であり、労働者の側ではない。トリックに引っかかった一部の労働者がトランプ支持に流れたが、いずれ戻ってくるはずだ」と語った。 労働者も割れているね。 13日の選挙結果はどうなるだろうか。
2018.03.13
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私:米国では、なぜジャーナリストが人々の不満の標的になるのか、という視点から、興味ある情報を提供している。 様々な分析の中でも「なるほど」と思わせる指摘が「地方メディアの衰退」であるという。 A氏:かつての米国では小さな町にもローカル紙があり、そこで日々、取材し、執筆する記者は住民の顔なじみだった。 しかし、米国の日刊紙の発行部数は10年間で3分の1減り、特にネットに広告を奪われた地方の新聞やラジオ局の苦境が深刻。 私:一方、記者の5人に1人がニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルスを拠点にするといわれるまでメディアの大都市集中が進み、ジャーナリストといえば「遠い場所から高説を垂れるエリート」とみなされかねない、ゆゆしき環境ができつつある。 地方メディアを支援する市民社会の動きが活発になっているのも、そんな危機感が背景にありそうだ。 例えばNGO「リポート・フォー・アメリカ」は地方で働く意思のある若手の記者を募り、地方紙やラジオ局に紹介し、人件費の半額を助成する。 沢田氏は、そのNGOの紹介で記者になる夢をかなえた一人で、米東部ウェストバージニア州の新聞社で1月から働き始めたケイトリン・コイン氏(22)を取材している。 A氏:米東部ウェストバージニア州は、主要産業の炭鉱がすっかり寂れ、医療用ドラッグの過剰摂取問題が深刻で、「石炭復活」を掲げるトランプ氏が今なお絶大な人気を集める。 コイン氏は、開放的でリベラルな風土のカリフォルニアで育って、ウェストバージニアの大学に進学した当初は気風の違いに戸惑ったが、大学新聞で活動するうち、ある発見をした。 それは、ウェストバージニアの人の「国の近代化と経済を支えてきた誇り。なのに誰からも顧みられない不満」。 ウェストバージニアの多くの人の心に沈殿する複雑な思い。 私:コイン氏は、ウェストバージニアに時折やってきて、わずか数人に取材し、「グローバル化に乗り遅れた頑迷な保守」とお定まりの筋書きで記事を書く大手メディアにも違和感を覚えたという。 コイン氏は、「パラシュートジャーナリズムはまねたくない。社会の奥深さを私に教えてくれた人たちに報いたい」として、調査報道でも定評のある地元紙を志望した。 今、週に3日は州都から遠く離れた町村を巡り、出会った人の話に耳を傾ける。 沢田氏は、このことから、自分自身の30年前を思い出し、「地べたを歩け」という先輩の教えはネタ探しのためだけではなく、メディアへの信頼をつなぎとめる基盤を築く営みであると、今さらながらに実感するという。 ネット時代だけに、なおさら現地取材の重要性を感ずるね。
2018.03.12
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私:宮城県石巻市の水産会社「水月堂物産」には、同県大衡村の「トヨタ東日本」の「ものづくり研鑽部」の斎藤敦氏が、毎月1回、生産性を高める「カイゼン」指導に訪れる。 全員で同じ作業にたずさわる「ロット生産方式」を、ひとりがホヤを袋に入れ、別の作業者がそれを受け取って箱に詰めてゆく「一個流し生産方式」に一本化した。 A氏:「一個流し生産方式」は「トヨタ生産方式」のうちの改善手法の1つだね。 斎藤氏は「『ロット生産』は、多くの従業員がかかわって、つくりすぎを招く。『一個流し生産』なら必要な分だけ生産できる」と説明し、「在庫は悪」と言い切り、「一定の在庫は必要で命綱だが、作りすぎは命取りになる。材料の調達で資金繰りも苦しくなる」と解説。 会社は「一個流し方式」に切り替えることで、生産効率が2~3割改善するとみている。 私:水月堂常務の阿部壮達氏は約1年前、従業員の意識を高めて生産性もあげ、売り上げを増やしたいと考えたから「カイゼン」を決意したもの。 被災地の水産加工業の支援に取り組む「みやぎ産業振興機構」(仙台市)を通じて「トヨタ東日本」に支援を求め、昨年秋から今年3月まで計9回の指導を受ける。 トヨタの指導は「5S」から始まる。 「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ」の徹底だね。 「トヨタ生産方式」の教科書通りだね。 水月堂の冷凍庫に長く保管されたままの魚介類は容赦なく捨てる。 半信半疑だった従業員からも「格段に作業がしやすくなった」という声があがり、自発的に取り組む動きも出てきて、阿部常務は手応えを感じているという。 A氏:三陸地方の主力産業である水産加工業は震災の東日本大震災の津波で一時はほぼ壊滅。 事業を再開したものの、失った販路が戻らずに苦労する企業は多い。 インフラの復旧・復興事業はむしろ、水産加工業の人手不足に拍車をかけ、経営難にあえぐ企業にとって生産性の向上は喫緊の課題。 「カイゼン」で知られる「トヨタ生産方式」への期待は大きいという。 私:岩手県宮古市の重茂漁協は、「トヨタ」と一緒に、特産の塩蔵ワカメの袋詰め作業の効率化に取り組み、従来、経験や勘に頼ってきたが、ストップウォッチやメジャーを持ち込んで各工程を調べて手順書を作成し、一人ひとりの習熟度を調べ、グラフにし、袋詰めに便利な専用の器具もつくった。 生産性は5割も高まったという。 A氏:「トヨタ東日本」は、モノづくりを通じた復興支援を掲げ、2013年から東北6県を対象に「カイゼン」指導を続けている。 製造業のほか、農業や水産業にも足を運び、計92社・団体に出向いた。 「トヨタ」が受け取るのは交通費などの実費だけで、震災から7年が近づくいまも、地元企業からの引き合いは絶えず、年々増えているという。 私:こうした取り組みを、「トヨタ」では「相互研鑽」と呼ぶ。 現場で互いに学びあうことで、「カイゼン」意識の定着が期待できるからで、地域の経済の地力が高まり、長い目で見れば自社も恩恵にあずかれるとみているという。 国は「生産性向上革命」などとスローガンだけでなく、具体的に「トヨタ生産方式」の考えを「ものづくり」の「物」だけなく、オフイスワークの「情報づくり」や、サービス業の「サービスづくり」に拡大して、それらの仕事の「カイゼン」プロを育て、これにより、長時間労働をなくし、低いと言われる日本の生産性向上に寄与するように推進してもらいたいものだね。
2018.03.11
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私:ブレイディみかこ氏は、保育士・ライターで、96年から英国在住。 現地の生々しい状況を伝えている。 驚いたことに、英国では、2010年に保守党が政権を握って緊縮路線になって以来、路上生活者の数は69%増になり、昨年の総選挙で、メイ首相は22年までにその数を半減させ、27年にはゼロにすると公約。 だが、福祉予算が削られ続け、悪天候の緊急支援すら民間の善意に頼っている状態で、そんなことができるのだろうかと、みかこ氏はいう。 A氏:先月、国会議事堂の最寄り駅である地下鉄のウェストミンスター駅で、路上生活者の遺体が発見され、亡くなったのはポルトガルからの移民だったと判明し、同国のレベロデソウザ大統領はこの事実を「非人道的」と公に批判。 ロンドンでは、年初の6週間だけで4人の路上生活者が亡くなっていて、その1人となったポルトガル人男性は35歳の元モデルだったという。 私:路上生活者の増加が社会問題になるにつれ、5月にヘンリー王子の挙式が行われるウィンザーでは、路上生活者の取り締まりを強化。 公共スペースに寝具を置く者や物乞い行為に対して100ポンドの罰金を科すと自治体が発表。 ロイヤルウェディングで世界中から観光客や取材陣が集まることを想定しての一掃作戦であるが、これは全国的に物議をかもしたので、さすがに自治体は撤回を余儀なくされた。 ふつうに考えれば、罰金は珍妙な案で、路上生活者をなくしたいのならシェルターを提供した方が早いと、みかこ氏は指摘する。 A氏:メイ首相の路上生活者ゼロ宣言に現実味がまったくないのも、ウィンザーの自治体がシェルターに予算を使えないのも、理由は同じで緊縮で財政支出をカットしているから。 私:ところで、この記事で、興味があったのは、ポルトガルの財政政策だね。 それは、ポルトガルは、緊縮病にかかっていると言われているヨーロッパにあって例外的に大胆な反緊縮の政策を取り、成功している国だからだ。 ユーロ加盟国は、「ギリシャのようになりたくなければ緊縮しなさい」と言われ、多くの政治家や知識人が、愚かにも一国の財政を家庭の財布になぞらえ、「倹約して借金を返済しないと破産します」と財政均衡ファーストのマントラを繰り返してきた。 私:ところが、ギリシャ同様に財政危機に陥ってEUから緊急融資を受けたポルトガルは、15年に社会党政権が発足すると、一転して反緊縮に舵を切り、最低賃金引き上げ、逆進性の高い増税案の破棄、公共部門職員賃金と年金支給額の引き上げなどを行った。 「まやかしの経済」、「すぐ財政破綻してまた救済が必要になる」と緊縮派は激しく批判したが、ポルトガル経済は奇跡の復活を見せた。 内需が拡大し、13四半期連続で堅調な経済成長を遂げ、財政赤字も快調に減らしていて、16年には、単年度の財政赤字額の比率がGDPの2%になり、初めてユーロ導入国に課された財政基準を満たした。 つまり、ポルトガルは、「ドイツとEUが提唱する緊縮をしなくとも経済は好転し借金も返せる」ことを体現する存在になっている。 A氏:これは混迷する欧州に灯った希望の光だが、同時に腹立たしくもなると、みかこ氏は指摘する。 いまだに半数以上の若者が失業し、自殺者が増加したギリシャ、ローンや家賃が払えなくなった人々が続々と住宅退去させられたスペイン、経済不安から極右が台頭しているフランス、そして路上生活者が増え続けている英国は、いったい何のために緊縮財政を続けているのか。 統計上のEU全体の経済は好調でも、各国の問題は深いと、みかこ氏はいう。 3月4日に総選挙のあったイタリアも同様で、「イタリア、ばらまき総選挙 公約合戦に欧州の壁、火種にも」のブログでとりあげているね。 私:今年1月、ポルトガルの経済復興の立役者であるセンテーノ財務相が、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の新議長に就任。 この人事を推したのはドイツだったと言われており、メルケル首相は欧州の緊縮体制が機能していないことをようやく認めたとささやかれているという。 みかこ氏は、「もしそうだとすれば、欧州の長すぎた冬はついに終わるかもしれない。08年の経済危機で始まり、緊縮が悪化させた『失われた10年』の終焉を告げる暖かな春の光を、欧州の地べたは待ちわびている」という。 日本も現在、大幅な赤字財政だが、こないだ入水自殺した西部邁氏は、国家財政は、家計と異質で赤字財政を問題にするのは、愚論だと言っていたね。 日本の来年度の予算案総額が96兆7218億円で、過去最大で、財政赤字は続く。 財政再建をどうみるか。 ポルトガルのように賃金上昇による内需増加がポイントか。 少子高齢化の日本には難しい問題もあるがね。
2018.03.10
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私:昨日は、地方都市に住む知人の葬儀があり、前日に1泊し、午前から出席し、1日かかったので、8日のブログを休むことになった。 1泊したビジネスホテルにあった朝日新聞の朝刊の「社説」で神戸製鋼問題を扱っていたのを読んだので、それをとりあげる。 A氏:神戸製鋼が製品の品質が取引先の求める基準を満たしていないのに、データを書き換えて出荷したという不正行為については、このブログでは知的街道ができているね。 「神戸製鋼、強度改ざん トヨタなど200社に納入 アルミ・銅製品」、「神鋼、品質軽視の体質 強度データ改ざん『暗黙の了解』か、ずさん管理 長期か」、「神鋼『品質より納期』数値改ざん、社内調査を公表・「生煮え」調査、遠い解明 具体性乏しく」、「失敗から学ばない経営」、「JIS法、罰金引き上げ 経産省、上限1億円に データ改ざん受け」、デミングやISO9001の忘却・「大企業の品質偽装はトップの責任」などがあるね。 私:「社説」では川崎博也会長兼社長と副社長1人が4月に辞任し、新体制で再建に取り組むというが、本当にウミを出し切り、体質を一新できるのか、そんな疑問を抱かざるを得ないほど、問題の根は深いとしている。 神戸製鋼の調査報告によると、収益偏重の経営の結果、とにかく受注を増やして売り上げを伸ばす「生産至上主義」が現場に広がり、能力以上に注文を受けた工場では、顧客が求める仕様で安定的に製品をつくることができず、不正に走ったと「社説」は引用している。 事業部門ごとの縦割りが強く、人事交流がほとんどないため、かつて不正に関わった社員が昇進し、数代にわたって不正が引き継がれた例もあり、OB2人を含む役員経験者5人が不正について関与したり黙認したりしており、取締役の間で問題が共有されることはなかった。 驚くべき内容だと「社説」は指摘しているが、まだ全容がわかったわけではないく、一部の工場で70年代に始まった不正がなぜ、グループ会社を含む計23工場に広がったのか、明確な答えは示されていないという。 A氏:「社説」では君が指摘するISO9001認証との関係に全くふれていないね。 私:「社説」では 神鋼以外でも三菱マテリアルや東レ、宇部興産など素材メーカーグループで品質不正が相次いでいて、事情はさまざまだが、収益追求の圧力や人手不足など、現場にひずみをもたらす共通の要因もありそうだとしているが、デミングやISO9001の忘却・でふれているように、共通している重要な点にふれていないね。 それに、おかしいのは、こないだの川重の新幹線台車の亀裂事故は、現実に不合格品が顧客に実害を与えている例だが、神戸製鋼が顧客の要求通りの品質でないのに、合格品としてデータを改ざんして出荷していたが、顧客から実害が発生したというクレームがないことだね。 その点、川重の台車の品質問題と異なる。 これは、顧客の品質要求(顧客の設計要求)が無意味に厳しいことを意味しているのではないかね。 顧客の要求は、顧客の設計部門で決めるが、設計者の能力が低いと「ものづくり」の「工程能力」を無視して不必要な高度の品質の設計をしてメーカーに要求することがある。 「ものづくり」のメーカーのベテランのほうが「工程能力」に詳しいから、そんな工程に無知な設計要求を軽視することがあり、メーカーのベテランは「こんな無意味な設計要求をするとは、『ものづくり』を知らない奴だ」と腹の中で思っていたのだろう。 A氏:神戸製鋼問題の根底は「社説」のいう収益偏重の経営や「生産至上主義」の結果ではないようだね。 「ものづくり」現場のベテランの顧客の設計への反乱だね。 最近、顧客の設計部門の設計がIT化するにつれ、コンピュータが図面をきれいに描く。 そして、設計者は「ものづくり」の現場にいかなくなる。 「ものづくり」の現場の「工程能力」の知識に乏しい設計者の質の低下が問われているケースが多いようだ。 これは、3年前のマンションの杭打ち工事について、ブログ「杭偽装、問われる業界 下請け任せ、不正見逃す」で指摘した通りだ。 新聞記事を書く方も、日本の「品質管理」の現場の状況を正確に理解できる専門性がほしいね。
2018.03.09
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私:昨年11月、全米で地方選挙があった日、バージニア州議会下院選で、民主党のカーター氏ら米最大の社会主義団体「米民主社会主義者(DSA)」のメンバーが、市議などの公職に15人も当選。 大手メディアなどが想定していない事態だった。 選挙中は、共和党候補からは、レーニンやスターリン、毛沢東のイラストとカーター氏の顔写真を並べて「社会主義」と大書したビラが配られるという攻撃を受けた。 だが、得票率にして9ポイント差で、予想外の勝利を決め、「反トランプ政権」の空気が追い風となり、若年層の投票率が上がったことが勝因とみられている。 A氏:カーター氏は「僕の世代にとって社会主義は、労働者が経済の主導権を取り戻すための現実的な選択肢になった」と言う。 米国では1950年代にマッカーシズム(赤狩り)の嵐が吹き荒れて以降、「敵国」の思想である社会主義は米国でタブー視されてきたが、1980年以降に生まれたミレニアル世代の意識は、もはや違う。 昨秋のネット上の調査では、ミレニアル世代の53%が「米経済は自分に不利に動いている」と答え、「社会主義国に住みたい」が「資本主義国に住みたい」を上回った。 米国では、「赤狩り」今は昔「現実的な選択肢に」移っている。 私:今年11月の中間選挙に向け、DSAや、ほかの左派系政治団体が若者からの支持を伸ばしていて、16年の大統領選以降、「中道」路線と「左派」の綱引きが続く民主党の戦略に大きく影響しそう。 10年の中間選挙で、当時のオバマ政権に対抗する保守派の茶会運動(ティーパーティー)が勢いづき、共和党を右傾化させた時とは正反対の動きが進んでいる。 A氏:イギリスでは最大野党・労働党党首・ジェレミー・コービン氏が、反緊縮財政・反戦が信条。 コービン氏は、90年代に労働党を躍進に導いたブレア氏の中道路線「ニューレイバー(新しい労働党)」にことごとく反対し、マルクス主義者と揶揄され、党内主流派からは嘲笑されてきた。 私:それが、15年の党首選で圧勝。 支えたのは若者を中心とした一般党員で、それから2年半たっても、熱狂は冷めるどころか強まる一方。 昨年6月の総選挙では、労働党が終盤に脅威の伸びを見せ、与党・保守党を過半数割れに追い込んだ。 40代以下の全世代で労働党の得票が保守党を上回り、特に18、19歳では労働党への投票が66%で、保守党の19%を大きく引き離した。 オックスフォード辞典は、若者が政治的、社会的に大きな変化を起こしたとして「ユースクエイク」(若者の反乱)を昨年の「今年の言葉」に選んだ。 A氏;英国の大学はほぼ全校が国立で、ブレア政権下の98年に授業料を払う仕組みになり、保守党政権でも上限額の引き上げが続いた。 このため、学生は、生活費なども含め卒業時には5万ポンド(約770万円)の借金を抱えるのが普通。 将来に対する不安や怒りは、緊縮財政で弱者に我慢を強いる政治に向かい、昨年の総選挙では英南東部カンタベリー選挙区にその地殻変動が端的に現れ、労働党のシングルマザー候補が在職30年の保守党ベテラン男性議員を破り、保守党は99年間守ってきた議席を失った。 コービン氏の公約は、新自由主義にくたびれた人たちが待ち望んでいたものだという。 私:コービン氏は昨年9月の労働党大会で、第2次大戦直後に手厚い社会保障政策を実施したアトリー政権の「ゆりかごから墓場まで」に言及し、喝采を浴びた。 コービン氏はポピュリストではなく、40年間同じことを言い続け、彼を必要とする時代が来たのだという。 グローバル資本主義の中心地・米英では、若者がきちんと学び、定職に就き、まともな家に住みたいという当たり前の希望がかなわない「格差の拡大」が背景にあり、彼らは「格差是正」を訴える老政治家にこぞって共鳴し、国政を動かそうとしているようだ。
2018.03.07
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A氏:ケント・ギルバート氏著「儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇」については、ブログ「今年売れた本 世界を柔軟に見つめるために」でふれているね。 刊行時のオビ文に「日本人と彼らは全くの別物です!」と掲げてあり、「日本人、中国人、韓国人のDNAには、大きな違いがあることが判明したそうです」「メディアのなかに、かなりの数の外国工作員が紛れ込んでいます」などと、隣国やメディアへの蔑視をひたすら積もらせることによって「愛国心」を粗造していき、人種差別主義が、通りの下、ではなく、通りの上で大声を発しているという批判もあるね。 この「ニュースQ3」では、このケント・ギルバート氏の本についてくわしく取り上げているね。 私:この「儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇」(講談社)の本は昨年2月に出版され、発行部数は47万部を超え、昨年の新書・ノンフィクション部門で最多の発行部数になり、2月には続編も出た。 初版を見ると、中韓では「儒教精神から道徳心や倫理観が失われ」「自分中心主義が現れて」きたと指摘する一方、「日本人には高い道徳規範である『利他』の精神」があるなどとある。 ネットなどでは当初から「嫌中・嫌韓本だ」との批判が相次ぎ、中国人や韓国人に対して「『禽獣以下』の社会道徳」「自尊心を保つためには、平気で嘘をつく」などの表現があり、差別意識に基づくとの指摘もあった。 複数の講談社社員によると、社内からも疑念の声が上がったという。 A氏:それでも売れたのはなぜか。 都内の大手書店のベテラン店員は「中韓が嫌いな人が買ったというだけでは説明しきれない」とみており、ネットはヘイト発言であふれ、日韓関係もこじれている。 これについて第三者である米国人の意見を知り、考えたいと思った人もいるという。 日中、日韓関係の当事者でない、「第三者」の視点も受けているようだ。 講談社の担当編集者は、東京・新橋の居酒屋で、周りの客が中国人や韓国人への違和感を語っているのを聞き、企画を思いつき、「中韓から日本への観光客が増える中、中韓は日本と『違う』という実感が強いのではないか」と考え、さらに、日本人は白人から言われるのに弱いので、ギルバート氏が言う方が説得力が増すと考え、日本滞在が長いギルバート氏に「彼らと日本人がどう違うか言葉にしてほしい」と依頼したという経緯だという。 私:中韓の国民性に踏み込んで批判する本が多いが、こうした本に詳しいライターの永江朗氏は、どの出版社も「売れるから作るという意識が強いのが特徴だ。『うそは言っていない。一つの見方を提示しているだけ』との意識が著者にも編集者にも根強い」と指摘。 しかし、差別表現に詳しい明戸隆浩・関東学院大非常勤講師(多文化社会論)は、同書を「嫌韓・嫌中本の一つ」と批判し、「日本を持ち上げるだけなら単純なナショナリズムだが、中韓をおとしめることで、自分たちの立ち位置を高めようとしているのが特徴だ。あからさまな攻撃的表現もあるが、一見『上品』に見え、手に取りやすい。それでいて実際には差別意識をあおっているのが問題だ」とみる。 A氏:このような本が売れるのは、中韓から日本への観光客が増える中、彼らの行動に違和感を感ずるのが底辺にあるのかね。 私:それと、日韓の外交問題で、相変わらず、煮え切らない韓国政府の姿勢や、一党独裁の中国の軍事力増強問題や尖閣への艦船の接近などの違和感が底辺にあるのかね。 まぁ、日本には、中韓と大きく異る文化があることは確かだね。
2018.03.06
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A氏:こないだの新幹線「のぞみ34号」の台車で昨年12月11日に破断寸前の亀裂が見つかった問題を扱ったブログ「川重『削りは現場判断』 規定外の作業 のぞみ台車」で、台車の亀裂の原因は、JR西が定めた設計では底面の厚さは8ミリで、加工しても7ミリ以上とされていたが、最も薄い部分は4・7ミリしかなかったこと。 さらに、その4・7ミリしかなかった原因は、川重は台車枠を別の部品と溶接する際、すき間をなくし、がたつきを抑えるよう底部分を薄く削っていたためという。 現場では、「作業仕様書」が貼り出されているため、作業員全員がみることはできたが、実際には「(現場をまとめる)班長の指示」が優先されたという。 A氏:川重の記者会見の説明では、班長の指示に問題がある場合に、それを修正する仕組みは確立できていなかったとあるね。 君は、部下に指示したら、実際に部下がその通りやったのか、確認するのが現場班長の職業的な義務なのではないのか、そして、さらに、肝心の、なぜ、その班長がその義務を怠ったのかの説明がないと指摘していたね。 現場では、「作業仕様書」が貼り出されているため、作業員全員がみることはできたが、実際には「(現場をまとめる)班長の指示」が優先されたとあり、班長の指示に問題がある場合に、それを修正する仕組みは確立できていなかったとも説明しているね。 私:この記者会見での川重の説明は、全く、ピント外れで、記者からもそれを追求する質問が出ないから、当然、新聞記事は表面てきなないようで終わっているね。 君は、多くの大企業・中小企業の工場現場を見ているが、作業者の作業場所に名前は会社により「手順書」とか「標準書」とか異なるが内容的には同じ「作業仕様書」が掲示されているのを見かけたことがあるだろう。 A氏:そうだね。見事にどの企業も同じ「風景」を目撃するね。 1990年代に品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001の認証ブームによって、共通して拡大したものなのかね。 私:そして、さらに共通しているのは、作業者はその掲示された「作業仕様書」を見ないで作業していることだ。 作業者は作業に集中していて、「作業仕様書」など見る余裕などない。 これは、日本だけかと思ったら、2000年にISO9001認証システムの発祥地のイギリスのある自動車部品メーカーを視察で訪れたが、流れ作業で各作業者の前に作業者ごとに「作業仕様書」が掲示されていた。 そして、日本と同じで、作業者は『作業仕様書』を見ないで、作業に集中だ。 国際的な共通現象にまでなっていた。 A氏:川重の記者会見にはその問題は全く話題にも出ず、「班長の指示に問題がある場合に、それを修正する仕組みは確立できていなかった」という見当違いの反省をしているね。 「作業仕様書」は通常、基準となる作業方法を示したものだから、特殊な作業を必要なときは班長が指示するのは当然で、問題ではないね。 私:その点、トヨタにも「作業仕様書」の現場掲示があるが、見方が全く違う。 トヨタは「掲示された『作業仕様書』は、作業者が見るための掲示でなく、その職場の監督者が『作業仕様書』と現実の作業が一致しているかを管理するためにある」としている。 「トヨタ生産方式」レベルに対して、川重の社長や品質保証部の無知がクローズアップしている。 作業者は掲示された「作業仕様書」を見ないで作業している現実に疑問を持っていないレベルだ。 そのレベルの記者会見の内容に対して、追求しない記者の品質管理の無知も同じレベルだね。 A氏:すでに「デミングやISO9001の忘却・」で君がふれた通りだね。 私:川重など重症の企業は再建に時間がかかるだろうね。 なお、これに関連して、トヨタでは「教育」と「訓練」を明確に分けている。 これは、ブログ「「教育」と「訓練」の違い 」 で説明している。 このブログと同じ趣旨のものが数年前の「作業標準書の現場掲示の必要性」にもあるね。
2018.03.05
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私:日本のアニメは世界で人気を集めているが、平成に入って進んだコンテンツ(作品)のネット化で海外勢が覇権を握り、「いい作品」をつくればもうけられる時代ではなくなり、日本経済を牽引するような産業に育てられるか、岐路に立っているという。 A氏:海外では、動画配信サイトを通じて日本のアニメをほぼリアルタイムで見ることができる。 会員数が1億人を超える米ネットフリックスを筆頭に、米アマゾンがシェアを争う。 中国ではアリババやテンセントなどのIT大手が同様のサービスを展開。 私:世界で人気が高い日本のアニメは、ここ数年はバブル状態だったという。 作品数をそろえるために世界の各社が日本アニメを旧作も含めて「爆買い」し、価格が高騰。 日本動画協会によると、2013年に169億円だった海外売り上げは、16年には2・7倍の459億円に増え、過去最高となった。 国内市場は少子高齢化で大きな伸びが期待できず、今後の成長に海外展開は欠かせない。 動画配信はその有力な手段となり、動画配信ビジネスは、日本アニメの競争条件を大きく変え、アニメ配信に力を入れるサイトがあらわれ、国内と同時に海外に作品を送り出せるようになった。 A氏:ところが、「オールジャパン」で日本のアニメを世界に発信するという意気込みで 官民ファンドのクールジャパン機構が10億円出資し、アニメ製作会社や出版社など15社が運営会社の株主に名を連ねた国産」動画配信サイト「DAISUKI」が、ひっそりとサービスを終えた。 日本動画配信権の世界的な獲得競争に資金力で太刀打ちできず、値上がりした日本アニメが、日本の配信サイトの首をしめるという皮肉な結果を招いた。 私:もともと、日本のアニメは、国際的に高い評価を受けてきて、1996年発売のゲームソフト「ポケットモンスター」はアニメ化され、世界でヒット。 01年公開の映画「千と千尋の神隠し」は、アカデミー賞の長編アニメーション賞などを受賞。 米国やフランスで開かれる日本関連のイベントには数十万人のファンが集まり、アニメやゲームの人気キャラクターに扮する参加者でにぎわう。 ただ日本のアニメ業界はこれまで、一定の市場規模がある国内を中心にビジネスをしてきた。 独コンサルティング会社ローランド・ベルガーによると、15年の世界市場における日本由来のコンテンツの売り上げは全体の2・5%。アニメに限っても4・1%にとどまる。 A氏:壁になっているのが、日本特有の枠組み。 90年代半ばから「製作委員会方式」が、作品づくりの主流となり、さまざまな企業が出資することでお金が集まりやすく、リスクを分散でき、それぞれの得意分野を生かして宣伝や販売を展開できる。 しかし、一方で、作品の権利は委員会の共同保有になることから、「多面展開したくても各社の合意が必要で、時間がかかる。1社でも反対すればできない。海外の企業からすると窓口が分かりづらく、柔軟性に欠ける部分があった」と、デジタルハリウッド大の杉山知之学長はそう指摘。 私:昭和では、テレビ番組はテレビで、映画は映画館で、とコンテンツとメディアが一体だったが、ブロードバンドの普及で高速大容量通信が可能になり、スマホやタブレット端末で視聴できるようになった。 国内コンテンツ市場は、CDから動画配信などのネットワーク市場に拡大し、グローバル化が加速。 コンテンツの内容で勝負していた時代から、流通手段や規模が消費者に選ばれるための重要な要素になっていった。 消費者ニーズの大きな変化だね。 A氏:このネット時代の変化に対応して、コンテンツの流通をおさえたのは、海外のプラットフォーム。 米アップルは音楽配信サービス「iTunes」で世界を席巻し、アマゾンは電子書籍の販売で先行。 両社はサービスだけでなく、それを使う端末とあわせて売り、利用者を伸ばした。 プラットフォームは利用者が多ければ多いほど価値が高まり、他社よりも優位になる。 その結果、特定のサービスがシェアを奪う「勝者総取り」が起こりやすい。 私:海外勢がネット市場で覇権を握る状況で、日本のコンテンツ産業は生き残れるのか。 電通コンサルティングの森祐治社長は「良質なコンテンツをつくり、産業として成長するためには、新たなビジネスモデルの確立が急務だ。ネットで配信するだけでなく、玩具やゲームなども同時展開して、もうけていく必要がある」と指摘する。 まさに、消費者ニーズの変化を捉えたグローバルな戦略的対応が要求されるね。
2018.03.04
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私:今月の佐伯氏の「異論のススメ」は、日銀の黒田東彦総裁の続投による「異次元的」な超金融緩和の続行問題にふれている。 アベノミクスは、GDPは40兆円以上増加し、求人倍率は26年ぶりの高水準で、企業業績は好調、株価も上昇、戦後2番目の長期的好景気が続いていて、外国人観光客は急増し、大都市にはホテルが続々建設されている。 表面的にみれば大成功であると佐伯氏はいう。 A氏:しかし、かつてないこれほど大規模な経済政策をうってもこの程度しか経済が浮上しないともいえると佐伯氏はいう。 マネタリーベースを2年で2倍に増やし、マイナス金利まで導入するという超金融緩和を行い、100兆円に及ぶ財政政策をおこなっている。 しかも、国債を買い支えることで、事実上、日銀が政府の財政をファイナンスするという「禁じ手」に近い政策までとっている。 それにもかかわらず、この程度しか経済が浮上しない。 デフレは脱却しつつあるが、当初の2年で2%のインフレ目標はとても達成されず、成長率も期待されたほどではない。 賃金もさして上がっていないし、地方経済も必ずしもよくはなっていない。 佐伯氏は、そもそも今日、経済政策は本当に有効なのだろうか、何かもっと重要なことがその背後にあるのではないのだろうかと疑念を提起している。 私:日銀のいわゆるゼロ金利政策はもう20年ほど続いているが、その間、量的緩和政策もあって、明らかにオカネは市中に流れている。 そして、たとえば、家計の保有する金融資産はこの20年間で1・5倍になり、今日おおよそ1800兆円の資産が積み上げられており、しかも、その約半分が、現金か銀行預金で保有されている。 それは、いかに市中にオカネが流れ込んでも、人々は、それを将来にそなえて貯蓄してしまうので、消費はさして伸びないし、背景に人口減少・高齢化社会の進行がある。 こうなれば、将来の市場の拡張は期待できないから、企業も積極的な投資を控える。 つまり、どれだけ金融緩和を行っても、オカネはなかなか企業の投資には結びつかず、結果として、そのカネは、金融市場へ流れ込んで、一部は国債に向かい、一部は投機的に使われ、これほどの財政赤字なのに国債価格は維持されており、株式市場はバブル的様相を示している。 この事態から言えることは、少々の異次元的な経済政策によってさえも、経済を成長させることは難しいということだと佐々木氏は指摘する。 ゼロ金利が20年も続くということは、いかに資金需要が低下しているかを示しており、それは、将来へ向けての企業の投資の見通しが悪いということであり、今後の大きな経済成長が期待できない、ということになる。 A氏;佐伯氏は、戦後の先進国の経済成長率は、明らかに傾向的な低下を示しており、とりわけ日本の場合、1960年代の10%ほどの高度成長から、2000年代以降のほとんどゼロに近い水準まで傾向的に低下しておる、今日の人口減少を考慮すれば、多少の変動はあっても、この成長率が大きく跳ね上がるとは思えないという。 私:しかし、そのことは決して悲観することではないと佐伯氏はいう。 60年代とは、明らかに社会の構造も消費者の欲求も違い、今日、モノは溢れていて、われわれは物質的に豊かになり、経済は成熟した。 ただ、それで、われわれの生活が真の意味で快適になったのか、というとそうではない。 A氏:今日、われわれは、市場や金銭の尺度では測れない、生活の質の向上、長期的に安定した仕事の場所、文化的な生活、教育、医療、介護、それに、人々の間の信頼できる関係であり、それを可能とする社交の場や多様な地域の維持、家族や友人と過ごす時間や場所なども求めていると佐々木氏は指摘する。 私:これほどモノが豊かになった社会では、金融緩和によって消費を喚起するのは難しく、人々が求めているのは、公共的で社会的な次元での豊かさであると佐伯氏は強調する。 それは容易にGDPの成長に反映されるものではない。 それは、ひとつの価値としての経済成長主義はもはや限界だということである。 「その次」の価値観が求められていると佐伯氏は指摘する。 こないだ、入水自殺した佐々木氏の盟友の西部邁氏は、金利ゼロということは、資本主義が崩壊していることだとも言っていたね。 金利低下問題は4年前のブログ「資本主義の終焉と歴史の危機」水野和夫著でとりあげたが、この本の最後で、水野氏は「おそらく資本主義を前提につくられた近代経済学の住人からすれば、私は『変人』にしか見えないでしょう。しかし、『変人』には資本主義終焉を告げる鐘の音がはっきり聞こえています」 と言っている。 しかし、残念ながら水野氏は、その後にきたるべき社会の展望にはふれていない。 佐伯氏の「『その次』の価値観」も資本主義終焉後の価値観だろうか。
2018.03.03
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私:全米科学財団が1月に発表した2016年の科学技術の論文総数ランキングでは、 1位=中国、2位=米国、3位=インド、4位=ドイツ、5位=英国、6位=日本。 日本の論文数は03年以降、急落し、逆に初めて首位となった中国の台頭とともに、ドイツの堅調さが光る。 A氏: 論文を引用された回数トップ1%と10%の論文もドイツはそれぞれ4位(13~15年平均、文科省科学技術・学術政策研究所調べ)を維持、日本はいずれも9位(同)に沈んだ。 私:民間を含む研究開発費は、ドイツは日本の7割程度だが安定的に増加、論文総数は過去30年以上、3~4位を保つ。 英科学誌ネイチャーは昨年9月、「ドイツの科学における優秀さの秘密」を特集、その原動力を政策や文化などと指摘し、「今や伝統的な頭脳流出先の英米でなく、ドイツで研究生活を送ることを選ぶ人が増えている」とした。 A氏:目玉政策の一つが連邦政府が州政府と結んだ「研究イノベーション協約」。 大学の基礎研究を支援するドイツ研究振興協会(DFG)への拠出や大学以外の研究機関へ出す資金を、両政府が05年から年3~5%ずつ増やしてきた。 さらに、州政府が出してきた大学予算を連邦政府も出すようにし、大学と大学以外の研究所や企業との連携も進め、現場を活性化させている。 私:背景にあるのは、科学への社会の理解で、連邦政府や自治体、企業に理系の学位を持つ幹部や役員も多く、科学の現状がわかり、高い専門知識を持つ人が、政策や研究支援に深くかかわる。 メルケル首相も元物理学者で、科学技術振興機構の永野博研究主幹は「基礎研究支援がイノベーションにつながるという考えが国全体として共有されている」と話す。 A氏:これに対し、日本は財政難の中、基礎研究より、経済成長につながるような応用重視が強まり、論文総数は00年代半ばまで米国に次ぐ世界2位だったが、08年に5位に沈んでから浮上していない。 ネイチャー誌は昨年3月、「日本は世界トップレベルの研究国としての地位を失う危険性がある」と指摘。 日本学術会議会長の山極寿一・京都大総長は昨年末の会見で「全体としてみれば、研究者は疲弊しきっている。現在は成果がはっきりわからない、可能性や多様性があるものが研究できなくなっている」と危機感を募らせたという。 私:その危機感は、「大隅氏、基礎研究の危機訴え ノーベル賞金、若手支援に活用」のブログでふれたように、今後、日本のノーベル賞受賞者が減るだろうという予測と一致するね。 学生の方も優秀な学生ほど、教授のもっている「正解」を「忖度」してしまうという。 受験勉強がそうだね。 出題者の意図を「忖度」し、正解を当てる頭脳が訓練されている。 結果、多様な新しい発想を生む思考力に乏しいという。 その「忖度」が、基礎研究より目先の経済成長につながるような応用重視になり、新しい物を生むもとである多様化にならない。 A氏:ボンにあるドイツ研究振興協会(DFG)の本部入り口に、「科学者たちが最も恐ろしい残虐行為に加担し、あるいは人の尊厳が侵されることの前に沈黙した」という言葉を刻んだ記念碑が立つ。 記したのは、ドイツ現代史研究家でユダヤ人の故フリッツ・スターン氏で、かつてナチスに科学者が協力し、人類史上の惨禍に加担したことへの反省が込められる。 DFGのヨォーク・シュナイダー国際交流部長は「学問・研究にとって、独立できること、自由に考えられることがとても重要だ」と強調する。 私:DFGは大学などを対象に年3万件以上を助成し、国や州政府が出す研究費の約1割を占める。 時の政治的意向に左右されぬよう、意思決定機関の委員数は、科学者が過半数を占め、国や州政府を上回り、助成の可否は専門職員が一流の研究者に依頼し審査。 資金の自由度は高く、海外との共同研究や人の雇用にも使え、形式的な使途の報告も必要ない。 シュナイダー氏は「政府の影響はなく、完全にボトムアップ型の自由な研究費。毎年必ず確保される」と話す。 コンサルティング会社「IRIS科学・技術経営研究所」代表のイリス・ヴィーツォレック博士は、科学技術政策への姿勢に日独で差がある、とみる。 「日本のマネジメントは『科学を管理する』というニュアンスだが、ドイツは『科学のためになる管理』という思想が根付いている」という。 日本の基礎研究より、経済成長につながるような応用重視が強まる傾向と逆だね。 これが、論文数や引用数の激減となって数字にあらわれている。 結果的に長い目で見たら経済成長の遅れにもなるね。
2018.03.02
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私:新幹線「のぞみ34号」の台車で昨年12月11日に破断寸前の亀裂が見つかった問題で、原因を追求した結果、JR西日本は、亀裂は10年以上前の製造元の川崎重工業の製造段階の不備に起因することが明らかになったと28日に、調査結果を明らかにした。 台車を製造した川重は、JR西日本の記者会見が終了した後の28日午後7時から神戸市内で記者会見を開き、金花芳則社長が深々と頭を下げたね。 A氏:JR西と川重によると、台車の外枠は鋼鉄製で両側にあり、「側(がわ)バリ」と呼ばれ、JR西が定めた設計では底面の厚さは8ミリで、加工しても7ミリ以上とされていたが、最も薄い部分は4・7ミリしかなかった。 さらに、その4・7ミリしかなかった原因は、川重は台車枠を別の部品と溶接する際、すき間をなくし、がたつきを抑えるよう底部分を薄く削っていたため。 削る寸法は、現場の判断で行っていたといい、JR西に「本来行ってはいけない作業だった」と説明したという。 この薄い部分で強度が保てず、溶接で生じたひび割れが破断寸前の亀裂まで大きくなったとみている。 私:さらに、なぜ、そうなったのかという工程の説明で、川重によると、亀裂が見つかった台車枠の強度部材は作業現場の1人の班長の指示で設計上の寸法よりも薄く削られており、班長はほかの部品と溶接で固定する作業で、がたつきをなくすために削るよう作業者に指示したが、社内基準で許された範囲にとどめるよう説明せず、できあがりも確認していなかった。 川重は記者会見で「班長には、作業者が社内基準を守るだろうという思い込みがあった」との見方を示した。 部下に指示したら、実際に部下がその通りやったのか、確認するのが現場班長の職業的な義務なのではないのかね。 しかも、安全上、重要な寸法だ。 さらに、肝心の、なぜ、その班長がその義務を怠ったのかの説明がないね。 A氏:川重は、背景として管理面では、生産管理部門と現場の権限があいまいだったことがあり、車両部門を統括する小河原誠常務は、管理部門が現場に示す作業指示について、「指示を(必ず)守る部分と現場に任せる部分が明確になっていなかった」と述べ、結果的に作業の多くが現場に任せきりになっていたという。 これもおかしな説明で、現場に任せようと、JR西が定めた設計では底面の厚さは8ミリで、加工しても7ミリ以上という設計寸法は、設計図で現場に正確に伝達されているはずだ。 設計図がなくては現場の作業は不可能で、勝手な寸法で作業はできない。 現場は設計図面通り作るのが本業だ。 現場では、「作業仕様書」が貼り出されているため、作業員全員がみることはできたが、実際には「(現場をまとめる)班長の指示」が優先されたという。 班長の指示に問題がある場合に、それを修正する仕組みは確立できていなかった。 なんのために「作業仕様書」が貼り出されているのかね。 管理されているという外向けの格好付けのためかね。 これは、多くの企業も同じで、作業者は貼り出している「作業仕様書」のような文書は見ていない。 だから、修正は遅れても問題ない。 川重は、カネをかけ国際規格ISO9001の品質マネジメント(品質管理)システムの認証を得ているはず。 それなのに、マネジメントの基礎が崩壊しているとはね。 その原因追求がないね。 私:日産、スバル、神戸製鋼、三菱マテリアル、東レ、宇部興産でも品質管理の不正が次々に明るみに出たが、背景には、権限のあいまいさやチェック機能の弱さなど、今回の問題と重なる部分も多く、問題が起きるたび、「安全性には問題がない」と説明がされたが、今回は、一歩間違えれば大事故につながりかねない、「重大インシデント」と運輸安全委員会が認定する事態になったと新聞は書いている。 しかし、日産、スバル、神戸製鋼、三菱マテリアル、東レ、宇部興産の問題と、今回の川重の問題は「異質」だね。 日産、スバル、神戸製鋼、三菱マテリアル、東レ、宇部興産は「計画的な確信犯」がやったこと。 今回の川重は「だらけた業務の怠慢」で起きたこと。 A氏:川重は、再発防止のために外部の人材も入れた品質管理の新組織を立ち上げ、金花社長は「再発防止、品質管理の徹底、社内ガバナンスの強化を、私自身が推し進めなければいけない」と述べ、辞任を否定。 おかしいのは、従来から、品質保証部という、品質管理部門があるのに、新組織がなんで必要で、品質保証部は何をやっていたのだろうか。 カネをかけているISO9001の実施状況は、どうなっていたのだろうか。 原因追求が甘く、再発しそうだね。
2018.03.01
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私:3月4日にイタリアの総選挙がある。 選挙後の政権の枠組みは見通せず、EUに懐疑的な政権が誕生する可能性もあり、経済統合の強化を目指す欧州の「火種」になりかねない。 野党「フォルツァ・イタリア」、 政党連合別で支持率トップのフォルツァなど中道右派連合、支持率で中道右派連合を追いかけるEUに懐疑的な新興政党「五つ星運動」などは、所得税の減税や社会保障の拡充など、財政政策の拡大をこぞって訴えている。 「ばらまき」総選挙となっているという。 A氏:背景には景気回復の弱さや、高止まりする若者の失業率など、経済政策への高い不満がある。 イタリアはGDPが4年連続でプラス成長だが、成長率は1・5%程度にとどまり、昨年12月の失業率は10・8%とユーロ圏諸国の平均(8・7%)を上回り、25歳未満に限れば32・2%。 政府は解雇規制の緩和や税優遇策などで企業に雇用を促したが、求人は期間従業員など不安定な仕事が多い。 条件のよい職を求め、国外に出る若者は後を絶たない。 私:ボッコーニ大の教授が地元紙に発表した試算によると、総選挙の「ばらまき」公約を実現した場合の財政負担は、中道右派連合ではGDP比で10~17%ほど増え、五つ星では同約3・5%増えるという。 しかし、財政拡大路線の公約実現には、EUのルールが立ちはだかる。 通貨ユーロを使う国には「財政赤字をGDP比で3%以内に抑える」などの財政規律ルールが課されるからだ。 イタリアの政府債務の残高はGDP比132%で、ユーロ圏ではギリシャに次いで高く、EUの欧州委員会は再三警告を発している。 A氏:一方、イタリアの政党からはEUルールこそ見直すべきだとの声が上がる。 ユーロ自体への見方も厳しく、割高なユーロのせいで、イタリア産品の競争力がそがれているといった不満が根強い。 欧州委の昨年11月の世論調査ではイタリアでは、ユーロに賛成する人の割合は59%と、ユーロ圏では2番目に低かった。 中道右派連合内で支持を伸ばす野党の同盟(旧北部同盟)は、ユーロ離脱が持論。 野党フォルツァも、ユーロは維持しながら、国内取引に新リラを発行する「並行通貨制度」の導入案を主張している。 私:欧州ではユーロ圏の経済統合の議論が進むが、総選挙の結果次第では、イタリアからEUやユーロ圏諸国との関係見直しを求める動きが出る可能性もある。 将来、英国のEU離脱の後を追うのか。 3月4日の総選挙の結果がどうなるか。 ところで、ポーランドも保守系与党・法と正義(PiS)は、自由経済の旗を振るEUの現状に懐疑的で「自国第一」を掲げる姿勢と共感する。 ポーランドの造船所の「鉄の男」たちは、まるで米大統領選でトランプ氏を支持したラストベルト(さびついた工業地帯)の労働者のようだという。 政権を握るPiSは、民主主義に不可欠な報道の自由や司法の独立への介入を強めていて、経済成長の果実にありつけない人々の不満を吸収するため、内向きのナショナリズムをあおるような動きも顕在化しているという。 EUで合意した中東などからの難民の受け入れにも消極姿勢を崩さず、欧州委員会からEU司法裁判所に提訴されている。 EU統合も一筋縄でいかないようだね。
2018.02.28
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私:韓国では公立小学校の英語の学習課程は3年生から始まり、公立幼稚園や小学1、2年生の場合、希望者に対して放課後、校外の講師を学校に招いて勉強する課外授業を実施してきた。 だが、教育省は、過熱した英語教育が幼児や児童に負担になるうえ、各家庭の教育費を増やしていると判断し、新学期が始まる3月から小学1、2年生の課外授業を廃止する。 A氏:これに対し、韓国の市民団体「良い学校と正しい教育の学父母会」が昨年末、約4300人の会員を対象に行った調査では9割以上が課外授業廃止に反対。 金宣希代表は「公立の課外授業を受ける児童は約15%で、授業廃止は、高い教育費が払えない15%を切り捨てることになる」という。 1月31日、ソウルの新竜山小学校に、保守系第1野党、自由韓国党の洪準杓代表が訪れた教室には、英語課外授業廃止に反対する父母らが集まっていた。 洪代表も父母たちの訴えに同調し「学校の英語教育を禁止する権限が国にあるのか。学習の自由だ。法に合わない」と述べた。 私:ただ小学1、2年生の英語課外授業廃止を決めたのは、洪氏らが支えた朴前政権。 「(今年3月の)廃止まで3年6カ月の猶予期間を設ける」としていたが、教育費削減を訴えてこの政策を引き継いだ文現政権が批判を浴びたのをみて、洪代表の自由韓国党は政策を転換したとみられる。 教育省は1月16日、廃止を目指した公立幼稚園での英語課外授業の扱いを当面保留すると発表したが、小学1、2年生の課外授業廃止は撤回しなかった。 A氏:韓国は「ヘル(地獄の)朝鮮」という言葉がはやるほど激烈な競争社会。 韓国統計庁によれば、昨年、15~29歳の青年失業率は過去最悪の9・9%。 全体平均の3・7%を大きく上回り、「少しでも競争で有利に」と願う親は数多い。 2月1日、国会議員会館で開かれた英語課外授業を巡る討論会で、大学教授は「課外授業をなくしても、親は絶対に別の塾を見つけようとする。負担は逆に増える」と訴えた。 私:韓国では、2歳ごろから英語教育を始める家庭もあり、教育省によれば、「英語学院」は昨年時点で計453園、市場規模は2700億ウォン(約270億円)にも達する。 月謝10万円という。 A氏:企業の求人広告をみれば、ほとんどが、国際コミュニケーション英語能力テスト(TOEIC)で700点以上を求める。 「希望する企業に入るためには900点が必要」が不文律だったが、それでも、業務で英語を使っている人は数えるほどだという。 私:韓国政府によれば、昨年から2021年まで20代後半人口が39万人増加し、22年から減少に転じるという。 青年層の就職難はあと数年は続く見通し。 A氏:ところで、日本も小学校の英語教育の強化が言われている。 これに対し、「文藝春秋」3月号で「日本の教育を立て直せ」として「総力特集」をしているが、その中で、作家で数学者の藤原正彦氏は「小学校に英語教えて国滅ぶ」と題して寄稿しているね。 サブタイトルは「一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数」とある。 要するに、英語ができても、話す中身が問われるが、その中身は日本語で考えて話す以上のことを英語で話すことはできないというわけだね。 そして日本語の読書をすすめている。 私:受験で差をつけるための道具でなく、グローバル化の波の中で、日本人としてどういう教育をすべきかの問題がからんでいるね。
2018.02.27
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私:安倍首相は、今度の憲法改正方針で「9条の1項、2項を残し、自衛隊を明記」だけとしているが、このブログの「自衛隊を明記するとは」で元内閣法制局長官・阪田雅裕氏は、専守防衛の自衛隊を書くだけならば簡単なことで、むしろ小泉政権の時にやっておくべきだったが、安全保障法制が成立し、現在の自衛隊をそのまま憲法に書くことはとても難しくなったとしていた。 そこで、阪田雅裕氏私案では、「第三項の実力組織は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険がある場合には、その事態の速やかな終結を図るために必要な最小限度の武力行使をすることができる」とある。 A氏:この「我が国の存立が脅かされる明白な危険がある場合」、すなわち、「存立危機事態」の説明が今、裁判にからんで問題になっている。 現職の陸上自衛官が2016年3月に、安保関連法の「存立危機事態」になっても、防衛出動の命令に従う義務はないことの確認を求め、安保関連法は憲法違反と訴えた。。 訴えられた国側は「現時点で『存立危機事態』は発生しておらず、国際情勢に鑑みても、将来的に発生することを具体的に想定しうる状況にはない」「(米朝衝突による「存立危機事態は)抽象的な仮定」と主張。 一審判決は自衛官の訴えを退けたが、今年1月末の二審判決は国の主張を「安保法の成立に照らし採用できない」と指摘し、一審判決を取り消し、審理のやり直しを命じた。 私:この裁判でこの「存立危機事態」をめぐり、国の主張が「二枚舌」と批判されている。 「二枚舌」と言われるのは、「いつ『存立危機事態』が発生するか確実なことは言えない」(法務省)という国側の訴訟の場における主張と、これまで安倍政権が安保関連法を正当化するために政府は15年の安保関連法の審議の際、「存立危機事態」にありうべき多くの具体的な想定を例示していたのと矛盾するからだ。 すなわち、朝鮮半島有事を念頭に、日本や日本人を守るために活動する米軍の艦艇が攻撃されたり、原油などの輸送ルートにあたる中東・ホルムズ海峡に機雷がまかれたりする事例。 安倍首相は「弾道ミサイルによる第一撃によって取り返しのつかない甚大な被害をこうむることになる明らかな危険がある。このような状況は『存立危機事態』に該当し得る」と答弁。 小野寺防衛相は17年8月の国会答弁で、北朝鮮による米領グアムへのミサイル攻撃に関し「日本の安全保障にとって米側の抑止力、打撃力が欠如することは、日本の存立の危機に当たる可能性がないとは言えない」と説明し、日本から約2500キロ離れたグアム攻撃で日本が防衛出動する可能性を示唆。 A氏:国会答弁ではグアム攻撃を挙げて「存立危機事態」の認定をちらつかせながら、なぜ司法の場では「想定できない」と主張するのか、というこの「二枚舌」について、ある政府関係者は「裁判における国の主張は、原告の訴えを『門前払い』させる目的だった」という。 裁判で、「存立危機事態」が起きた場合、出動命令に従う義務がないことの確認を求めた自衛官に対し、国側は仮定に基づく訴えが成り立たないと強調し、「『存立危機事態』が生じること、防衛出動が発令されることはいずれも想定困難」と正面から争うのを避けたもの。 私:安倍首相は、昨年10月の衆院選で、北朝鮮情勢を「国難」と断じて安保関連法を成立させた正当性を訴え、国会でも「重大かつ差し迫った脅威」と主張していた。 木村草太教授は、「(国の主張は)訴訟戦術的には理解ができるものの、あまりにも情けない。国は過去の事例と比べたりするわけではなく、抽象的に『存立危機事態は起きない』と主張しているだけなので、強い違和感を覚える」と指摘。 政府関係者も「国の主張が一般の人たちには理解しづらいのは分かる」と認めるなど、普段の安全保障上の脅威の強調ぶりとのギャップは埋めようがないのが実態。 A氏:木村教授はブログ「9条の持論、披露する前に」でとりあげたように、日本国憲法の下では、国内統治作用たる「行政」の範囲を超えて、外国の主権領域で実力行使する「軍事」の権限を行使することは許されないとの政府解釈を含め、元内閣法制局長官の阪田雅裕氏が指摘した通り、「存立危機事態」の定義はあまりに不明瞭で、それを条文にしても意味が定まらず、そんな条文は、権力乱用を招くだろうという。 私:「存立危機事態」を含め、憲法改正の具体的内容になると、もめそうで、こんなレベルでは国民の理解は困難で理想的な国民投票などムリだね。
2018.02.26
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私:たまたま、日本の格差問題にふれた2冊の本の書評があったのでとりあげた。 橋本健二氏〈著〉『新・日本の階級社会』は、「階層」ではなく、「階級」という一寸、日本社会にはショッキングな言葉を用いているね。 それは、(1)資本家(経営者、役員)、(2)新中間階級(被雇用者 管理職、専門職、上級事務職)、(3)労働者、(4)旧中間階級(自営業)という4つの社会学的な階級分類に基づいて、議論を進めるからだと評者は指摘する。 A氏:しかし本書は、こう階級4分類を紹介しておきながら、実はいま階級は5つあるという。 5つ目は、近年、労働者階級の中で正規労働者と非正規労働者の格差が大きくなっており、非正規労働者層を一つの階級(「アンダークラス」と呼ばれる)とみなす必要が出てきているからだという。 「アンダークラス」は就業人口の約15%を占め、平均個人年収は186万円と、他の階級に比べて極端に低く、貧困率は逆に極端に高く、経済的困窮だけでなく、心身の健康、人とのつながり、という点でも「アンダークラス」とそれ以外で明らかな格差があるという。 私:そして、「階層」ではなく、「階級」という言葉を使うように、データからは、「階級」間での人々の移動性が低下し、「階級」の固定性が強まっていることが読み取れるという。 戦後日本の活力の一つは、社会的な流動性が高い点にあったが、労働者から新中間階級へ、さらに資本家へといった上昇のチャンスは、閉じられようとしている。 A氏:評者は、気になるのは、「アンダークラス」で平等化への要求が、排外主義と強く結びつくようになっていることで、日本でも、イギリスのEU離脱やトランプ米大統領誕生の要因となったポピュリズムと同様の芽が現れ始めているのだろうかという。 私:評者は、日本の格差を論じる上での、基本書となるだろうという。 もう、一冊の、岩田正美氏〈著〉『貧困の戦後史』は、副題が「貧困の「かたち」はどう変わったのか」とあるように、戦後、案外、われわれの近くで、目に見えるかたちで存在していた貧困を多数の資料とともに本書は、そうした貧困の「かたち」をたどる。 敗戦直後、最底辺にいたのは焼け跡の「壕舎」で暮らす人々、復員兵を含む身寄りも住まいもない「引揚者」、地下道などで寝起きする戦災孤児などの「浮浪児・浮浪者」だった。 敗戦直後の時代を思い出す言葉だね。 A氏;1950年代の復興期には失業者が急増し、職安が斡旋する日雇い労働者(ニコヨン)が増え、また仮小屋(バラック)が集まった地区は廃品回収業を意味する「バタヤ部落」と呼ばれた。 60年代の高度成長期には臨時雇いの労働者が集まる「寄せ場」と「ドヤ街」が発展するが、「バタヤ部落」や「寄せ場」はやがてスラムと見なされ「改良」の対象にされていく。 これらもよく聞いた言葉で、世相を反映しているね。 私:行政の貧困対策を俯瞰すると、彼らを貧困に追いやった原因は、戦争だったり経済の変動だったり政策の転換だったりしたにもかかわらず「貧困はつねに自らの個人的な努力で対処すべきもの」とされ、「衛生や治安の観点からのみ問題にされ」たという。 自己責任論だね。 A氏:貧困の今日的な「かたち」は中高年の「ホームレス」や若年層の「ネットカフェ難民」。 現在の「ホームレス自立支援法」にも著者は異議を唱え、「『自立』支援という政策目標は、個人の怠惰が貧困を生むという、きわめて古典的な理解に基づいている。だが問題は、怠惰ではないのだ」という。 私:東京五輪を前に、またもや進む排除の論理、現実から目をそむける政治家やお役人に読ませたいと評者は指摘する。 ところで、東京都の「ホームレス」の現状の「かたち」はどうなっているんだろうか。
2018.02.25
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