デフレの正体 0
原発 0
体罰 0
糖質制限食 0
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私:すでに「中国の夢と足元」、と「中国、狙うネット覇権 政府主催で世界大会 言論の自由とは一線」4日朝日新聞・国際面のブログで、中国はベンチャー企業の企業価値や投資額で米国に次ぐ、世界第2位で、ITの技術革新は急速に進んでいるということにふれたね。 この記事では中国の「AI技術開発」にふれている。 中国のAI技術開発の担い手として存在感を高めるのが、IT同様、「風投企業」と呼ばれるベンチャー企業。 中国政府は2015年、AI強化政策「インターネットプラス」を打ち出し、ベンチャーを巻き込んだ技術革新を進めている。 米調査会社CBインサイツによると、中国のベンチャーによるAI関連の資金調達額は17年、米国を抜いて世界一になった。 A氏:上海・張江地区にある創業支援施設「アント・メーカースペース」には、物語の読み聞かせや計算クイズができるロボットや、教育用タブレットの開発を手がけるベンチャーなど数十社が入る上海市が支援する民間の施設。 上海市幹部は「創業支援施設に対して資金面で援助していて、イノベーションを促したい」という。 上海財形大学によると、こうした施設は中国に約3千カ所あり4割が中央政府や地方政府から支援を受けている。 私:中国企業に詳しい藍沢証券アナリストの王曦氏は、「中国は人口の多さを生かしてビッグデータを囲い込み、米国との主導権争いに勝ちたいと考えている。『百度』、『アリババ』などを中心に、広告発信やクレジットといったビジネスで稼ごうとしている」とみる。 A氏:ただ、AIは生活やプライバシーの「監視」に使われる危うさもはらむ。 これはすでに「「中国発のスマホ革命 独裁国家が握る個人の信用」のブログでふれたようにスマホレベルでも問題になっている。 6月中旬、上海で開かれた家電見本市「CESアジア」で、15年に創業した雲従科技(クラウドウォーク)のブースには、「雲従城市大脳(シティブレーン)」という黒い大画面があり、画面中には場所と「異常人数」が表示され、市街地の監視カメラの画像を分析し、変わった動きをした人がいると報告される。 クラウドウォークの担当者は「交通、天気、犯罪、すべてを一元的に管理できる」といい、同社のシステムは中国の省政府や100社以上の金融機関で使われているという。 私:日本総研の田谷洋一・副主任研究員は「中国はAIをめぐる覇権争いで米国に勝つため、ベンチャー育成に力を入れている。今後中国企業のアプリが日本市場にも入れば、個人情報が収集される可能性もある」と指摘している。 トランプ政権は安全保障上、中国への先端技術の流出を問題にしているが、そのうちに中国の技術の方が先行し、逆な立場になるかもしれないね。
2018.07.25
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私:カンヌ国際映画祭で是枝裕和監督の社会の底辺で生きる一家の物語の「万引き家族」が最高賞パルムドールを取ったニュースははや、1ヶ月も前の話だが、振り返ってみよう。 「万引き家族」に流れ込んだのは劇映画だけではなく、『雲は答えなかった』は、是枝が初めて作ったドキュメンタリー番組「しかし…福祉切り捨ての時代に」(91年)を元に書かれた。 この番組は、環境庁の局長の自殺を追ったノンフィクションで、局長は水俣病訴訟の国側の責任者で、和解勧告を拒否して「批判の矢面」に立たされた末に自殺をした。 A氏:このノンフィクションの中で是枝氏は新聞を批判。 局長の自殺までは環境庁を悪者に仕立て、自殺が分かると、「大蔵省や通産省との意見調整がうまくいかず、和解勧告を受けられずに苦しんだ」と局長に同情。 是枝氏は憤る。自殺前にそれをどこも指摘しなかったのはなぜか? 彼を批判の矢面に立たせたのは誰か、と。 マスメディアの側から言わせてもらえば、複雑な現実を複雑なまま投げ出すよりも、ある程度、整理して提示することが求められ、その過程で単純化への誘惑が断ち切れないのも事実。 是枝氏は、現実を単純化することへの警告が随所にちりばめている。 私:単純化を嫌い、複雑なまま世界を提示するということを徹底的に実践するのが是枝映画。 「万引き家族」は犯罪を擁護する映画でもなければ犯罪を撲滅する映画でもなく、社会的弱者を持ち上げたり、たたき落としたりもしない、複雑系の映画だ。 是枝氏は「万引き家族」は年金詐取事件を報じた記事に着想を得たという。 複雑な事情を抱える家族が起こした事件を、新聞記事が圧縮・単純化し、それをまた、是枝氏が複雑な実寸大に戻すということで、「万引き家族」は生まれた。 A氏:この作風を彼は多くの先人から学び取ったが、評者は、その中から脚本家の山田太一氏を挙げたいという。 山田氏がホームドラマの作家であり、近年、是枝氏が撮る映画の多くがホームドラマの形式を取っているからだ。 山田氏が描くのは「家族だからわかりあえる」でなく「家族だからわからない」だった。 是枝氏は著書『映画を撮りながら考えたこと』でそう分析し、そして「『かけがえがないけど、やっかいだ』。その両面を描くことが、ホームドラマにとってはとても重要だと考えています」という。 私:今回の受賞は、山田氏や向田邦子氏らが育んできた日本のホームドラマが初めてカンヌの頂点に立ったということでもあると評者はいう。 このような見方で映画「万引き家族」を鑑賞すると興味深いだろう。
2018.07.24
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私:企業の品質マネジメントシステムの国際規格が、「ISO9001」で、もとは英文。 これを和訳して日本の「JIS Q 9001」としているだけで、内容は基本的に同じ。 「ISO9001」の規格の特徴は品質マネジメントシステムの規格なので、文章だけで数字がないことだ。 しかし、JISには、製品の規格があり、数字が示されている。 神戸製鋼の不正は、製品がJISの製品の規格の数字を満たしていなかったことがからんでいた。 いつものことだが、新聞記者は「ISO9001」の特徴の知識に弱いから、JISとISOの認証をゴチャゴチャにして報じている。 今朝の朝日新聞一面トップの「JIS認証機関が無資格・手抜き審査 英大手の日本支店」は、「ISO9001」に関することだから、正確には、JIS認証機関でなく、「ISO認証機関」、今度のニュースに限れば、正確には「ISO9001認証機関」だね。 新聞は、工業製品の品質や企業の品質管理をチェックする「番人」である認証機関でも、不十分な審査で企業に「お墨付き」を与える不正が明るみに出たと報じているが、品質管理でなく正確には「品質マネジメントシステム」だし、認証機関は「番人」でなく、「品質マネジメントシステム」が「ISO9001」規格通り運営されているかを客観的に審査するだけだね。 「マネジメントシステム」の審査だから、製品のチエックより、マネジメント用の書類のチエックや企業幹部との質疑応答が主となるね。 A氏:「番人」は企業内で行うような「品質マネジメントシステム」であうことを「ISO9001」規格は要求しているね。 私:経産省などによると、企業にマネジメントに関する認証を与える権限がある認証機関は国内に約50あり、少なくとも6万件以上の認証をしている。 企業が認証を維持するには毎年審査を受ける必要があり、審査料金は1回あたり数十万~数百万円に上ることもあり、認証機関にとって、認証を依頼する企業は審査対象であると同時に収益源。 私:この認証機関に認証の権限を与えるのが公益財団法人「日本適合性認定協会(JAB)」。 ニュースになったのは、英国の大手認証機関「ロイド レジスター クオリティ アシュアランス リミテッド(LRQA)」が、不正な審査をしたので、JABが、認証機関としての資格がないとして、同協会はLRQAに対し、認証機関としての認定を取り消す処分を今月12日に出したこと。 処分をしたことはホームページで同19日に公表したが、機密情報にあたるとして詳しい処分理由は説明していない。 LRQAは不正や処分について、「お客様との守秘義務の関係上、情報をご提供することは差し控えます」としている。 協会の処分には審査業務を停止させる強制力がないため業務は継続できるが、LRQAは6月、「JISQ9100」の認証業務から撤退すると表明した。 A氏:どういう不正をLRQAが具体的にしたのか明らかでないが、 朝日新聞が入手した内部資料によると、航空・宇宙関連企業3社から依頼を受け、品質マネジメントシステムの国際規格「ISO9001」に、航空宇宙産業で必要な項目を追加した規格「JISQ9100」に関する審査を昨年実施したとき、複数の韓国人審査員が審査を担当したが、経歴が不十分で無資格だったり、所定の訓練を受けていなかったりする人物が含まれていたという 審査員がまとめた報告書が適正かどうかをチェックする工程を省略した不十分な審査も複数見つかったという。 私:内部資料によると、LRQAは審査の手続きが不十分なまま、依頼を受けた企業に認証文書を発行しており、こうした不正行為は日本支店の代表者(当時)も了承していた。 LRQAは昨年11月、アルミ製品の検査データ改ざんが発覚した神戸製鋼所大安工場に対し、JISとISOの認証を一時停止する処分を出していた。 銅管を製造する北九州市の神鋼子会社についても、今年2月にJISとISOの認証を取り消している。 今度はLRQAの自らの不正で、「日本適合性認定協会(JAB)」に認証機関としての認定取り消し処分を受けたことは、皮肉なことだ。 このニュースは大きくとりあげているが、認証機関の審査員の質は、1900年台にISO9001が、日本で広がりだした最初からあった本質的な問題だね。 それと、「品質マネジメントシステム」は企業組織全体の問題なのに大手企業になると、認証活動を品質保証部門に押し付けていることだ 興味あることに、中小企業の精美堂が、2001年からISO9001の審査で審査員とのやりとりを下記サイトで記録しており、審査員の質の問題をあきらかにしている。 http://www.ds-seibido.co.jp/30iso/ これを見ると今頃、ISO9001の審査員の質をトップニュースにするのは遅いね。 精美堂が審査に対応した審査員の質ついては、https://plaza.rakuten.co.jp/ryu32/diary/201110100000/のブログでもまとめている。
2018.07.23
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私:22日に閉会する通常国会では、政府・与党の強引さが目立ったが、思惑通りに進まなかったのが、安倍首相の提言をきっかけとする憲法9条への自衛隊明記を含む自民党改憲案の議論。 ひるがえってみると、今国会が召集された1月22日に、安倍首相は自民党の両議院総会で、「結党以来、憲法改正を党是として掲げ、長い間議論を重ねてきた。いよいよ実現する時を迎えている」と力を込めた。 首相にとって、今国会が憲法改正の発議へ踏み出す場になるはずだった。 首相が昨年5月3日に改憲案を提起して以来、憲法論議は首相ペースで進んできて、秋の衆院選で大勝した自民党は今年3月の党大会に向け、9条への自衛隊明記など4項目の改憲案を首相案に沿う形でまとめた。 今国会で自民案を議論し、与党や改憲に前向きな勢力が衆参両院で3分の2を占めることが確実な来年夏の参院選までに発議する日程を描いた。 A氏:ところが、3月に財務省による「公文書改ざん」が発覚し、1月時点で45%あった内閣支持率(朝日新聞調査)が31%まで下落。 その後も政権不祥事が続くなかで、野党は追及を強め、与党内からも「改憲どころではない」との声が高まり、与野党で対立点の少ない国民投票法の改正を国会での憲法論議の「呼び水」にする思惑も頓挫し、自民党案は議論の俎上にも載らなかった。 事実上の国会閉幕日となった20日に、自民党が政令指定市の議員を対象に、党本部で開いた憲法改正問題の研修会で、出席者の一人が細田博之・憲法改正推進本部長に「憲法改正の議論は前に進んでいるようで進んでいない。改憲のスケジュールを教えてほしい」と問いただした。 細田氏はそれに対し「各党を説得するが、強引にはできない。世論をみながら地道にやる。いつまでに、何をやるというスケジュールはない」と答えた。 私:しかし、20日深夜の首相官邸で、国会閉幕を受けて記者会見に臨んだ安倍首相は「自民党の憲法改正案を速やかに国会に提出できるよう取りまとめを加速すべきだ」と改憲への意欲を隠さず、連続3選を目指す9月の総裁選にも触れ、「憲法改正は立党以来の党是であり、自民党の長年の悲願だ。候補者が誰になるにせよ、大きな争点となる」と踏み込んだ。 自民党は総裁選後の臨時国会で、今国会で継続審議となった国民投票法改正案を成立させ、自民党案の議論に入りたい考えだが、野党側は国民投票運動のテレビCM規制の必要性を訴えて抵抗する構えで、与野党合意を原則とする「憲法審査会」の運営は難航必至。 むしろ、「政治決戦」となる来夏の参院選を意識し、対立が深まる可能性が高い。 A氏:今月17日には、保守系の自民党議員たちが議員提出による改憲をめざす超党派の勉強会を立ち上げた。 呼びかけ人の一人である山田宏参院議員は「『憲法審査会』は事実上、開店休業状態だ。自民党だけでなく、野党の声も反映した改正案の提出を目指したい」と話す。 私:議論が停滞している「憲法審査会」を迂回するかのような自民党の一部の動きに、公明党の北側一雄「憲法審査会」長は19日の記者会見で、「憲法改正はそんな簡単なものじゃない。自民党だけでできると思っているとしたら、まったくの錯覚だ」と怒りをあらわにしたという。 しかし、安倍首相が「自衛隊が違憲かもしれないなどの議論が生まれる余地をなくすべきだ」「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という改正憲法の条文化は技術的に難しく、「自衛隊を明記するとは」元内閣法制局長官・阪田雅裕氏に聞く・」のブログでもふれたように、安全保障法制が成立し、現在の自衛隊をそのまま憲法に書くことはとても難しくなったようだ。 森友・加計問題など政権のスキャンダルがあっても自民党や安倍内閣支持率はあまり変化しないが、森友・加計などのスキャンダルの個別案件になると、世論調査では7割近くが政権にネガチブな反応だね。 同様に憲法という個別案件になると、自民党や安倍内閣支持率のようにはいかないかもね。
2018.07.22
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私:最近の政治家のことばは、どこか空疎になっていないか?ということで、「耕論」欄で3氏に聞いている。 このうち、著述家・古谷経衡氏の考えに興味を持った。 古谷氏は、麻生さんの「新聞を読まない人は全部自民」発言にしても、自民党議員ががん患者に言い放った「いい加減にしろ」というヤジにしても、政治家の失言のレベルがずいぶん下がったなと思うと言う。 A氏:政治家の失言は昔からあった。 2001年に森喜朗首相(当時)は「日本は天皇を中心とする神の国」という前年の発言をきっかけに支持率が低下して退陣。 07年には「原爆投下はしょうがない」発言をした久間章生防衛相(同)が引責辞任。 でも今や、政界では罵詈雑言レベルの失言が頻発し、進退の問題にもならないし、世間で議論すら起きない。 私:古谷氏は、理由の一つは、この6年、5回もの国政選挙ですべて圧勝し、危機感のない自民党議員が増えていることで、森友・加計問題など雨が降ろうがやりが降ろうが選挙に勝つものだから、政治家に「耐性」がついてしまったことだという。 ネット上で右翼的な考えを発信する「ネトウヨ」に支えられている面もあり、主に40代以上の中高年層の彼らは、知的で裕福、スマートな「上から目線」の人々を嫌う。 逆に親近感を覚えるのが、凡庸でやぼな存在で、「はめられた可能性もある」発言はまさにそれで、「ネトウヨ」やそれを過大評価するメディアによってその言説が拡散され、社会の失言へのハードルは下がったと思うと古谷氏はいう。 A氏:しかし、古谷氏は、劣化していく政治家の失言が許容される最大の要因は、日本の大多数の有権者にあると思うという。 経済成長が鈍化し、以前は合理的な思考により働いていた「何の得にもならない」失言に対するブレーキが弱まり、それに加えて、少子化や人口減がこれほど進んでいるのに、それを多くの有権者が直視しようとしない現実が起きているという。 バブル期には本当にこのままでいいのかと訴える「日本悲観論」が起き、00年前後には「ここがヘンだよ日本人」というテレビ番組があり、いずれも社会に自省を促す意識があった。 しかし、今やそれは、伝統文化や観光地などの日本礼賛の番組、明治時代の日本を懐古する風潮に変わり、「就職率が回復したから失言ぐらい」と甘受されるようにもなった。 私:こうした状況を「悲惨だなあ」と達観して見るだけだったリベラルの責任は大きいとと古谷氏はいう。 本当は「おかしい」ともっと声を上げなければならなかったし、もっと熱く泥臭く、政治家の失言を批判すべきだったと思うといい、政治家の失言は、有権者の民度を映す鏡だという。 この古谷氏の考えは「與那覇潤氏著『知性は死なない 平成の鬱をこえて』」のブログでとりあげた與那覇氏の考えに同じ内容が多いね。 與那覇氏は、「平成史」は、政治も世論も「一大転向の時代」とみる。 2012年、民主党政権が崩壊して、多くの有権者が「改革」や「二大政党」の夢を捨てた。 それ以来、優勝劣敗の自由競争をいとわず、政治は強い指導者に一任するといった形で日本社会の「中国化」が進んでいると與那覇氏は指摘。 A氏:確かに、今の日本の1強多弱で動かない政治情勢をみると、習近平独裁体制の「中国化」が進んでいるように見えるね。 野党の反対とは無関係に法案は自民党ペースで決まっていく。 多数意見や社会のムードに迎合するなら、知識人の存在意義はないことになった。 「自分たちがいつ、なぜ『転向』したのかを自覚し、検証する意味は大きいはず」と、與那覇氏はいう。 有権者の民度を映す平成の「政治家、空疎なことば」の時代は、平成の次の時代まで持ち越されるのだろうか。
2018.07.21
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私:世界のカジノ業者が日本に巨額投資を計画する背景には、世界3位の経済規模に加え、21兆円市場のパチンコ・パチスロの存在がある。 他にも競馬や競輪、競艇、スポーツくじまであり、マカオのカジノ研究者は「ギャンブル市場を新たにつくるのは大変だが、すでに基盤がある」と語る。 日本国内の潤沢な資産と、気軽に賭け事ができる「風土」が関心を集めている格好だ。 A氏:同日の朝日新聞の「ギャンブル依存」(ニッポンの宿題)欄では公益社団法人日本駆け込み寺代表の玄秀盛氏は「日本はギャンブル大国や。パチンコだけで約22兆円、競馬や競艇、競輪なんかも合わせたら30兆円産業になる。テレビCMや新聞広告で俳優や有名人を使い、すごくいいイメージにして勧誘するわけや。パチンコや競馬などを「レジャー」というが、やっていることは賭け事。『ばくち』やねん」と断言しているね。 また、日本ではギャンブル依存症の増加が心配されているが、依存症対策に取り組む米カリフォルニア州ギャンブル問題協会のロバート・ジェイコブソン代表は、日本にはパチンコなどがすでにあるとし、「カジノができると依存症が増える、とは必ずしも言えない」と話す。 「アルコール依存症を増やすのは高級シャンパンでなく安酒。ギャンブル依存症も同様で、入場料もかかるカジノが依存症を増やすとは考えにくい」(シンガポールのカジノ関係者)との声もある。 私:シンガポールのカジノについては、19日の朝日新聞の「カジノ、光と影 アジア2カ国の実情 シンガポール・韓国」欄でふれている。 シンガポールのカジノでは、自国民は1日100シンガポールドルを払わなければカジノに入れず、その入場料収入は2012年度から16年度にかけて2割以上減少し、自国民用入り口は閑散としているという。 シンガポールのカジノの利用者の大半を占めているのは外国人客で、特に富裕層を含む中国の観光客が「東南アジアのカジノ業界を左右する鍵となる」という。 A氏:しかし、先の「ギャンブル依存」(ニッポンの宿題)欄によると、ギャンブル等依存症が疑われる人の人口に対する割合は、樋口進・樋口久里浜医療センター院長の調べでは下記のように日本人がダントツに多い(カッコ内は調査が報告された年)。 日本・3.6%(2017)、オランダ・1.9%(2006)、フランス・(2011)、スイス・1.1%(2008)、カナダ・0.9%(2005)、イタリア・0.4%(2004)、ドイツ・0.2%(2009)。 これは、パチンコだけで約22兆円、競馬や競艇、競輪なんかも合わせたら30兆円産業になる日本がギャンブル大国のせいか。 シンガポール人はそういう巨大産業がないから、ギャンブル等依存症が疑われる人は育っていないが、日本人はカジノの入場料を高くしても『ばくち』ぐせがついているのでカジノでもギャンブルするのではないのかね。 私:日本の市場開放は、韓国でも関心が持たれていて、韓国にはカジノが17カ所あるが、16カ所は外国人専用で、韓国文化観光研究院の柳匡勲研究員は「日本が『成功』すれば、韓国内でも自国民が出入りできるカジノの増設を求める声が高まるだろう」と話す。 しかし、これもおかしな話だね。 韓国北東部にカジノリゾート「江原ランド」は唯一、韓国人もカジノができる。 先の「カジノ、光と影 アジア2カ国の実情 シンガポール・韓国」欄で韓国のこのカジノの現状をとりあげている。 「江原ランド」は、ソウルから高速バスで約3時間、炭鉱が閉山した山間部に2000年、初めて自国民が利用できるカジノとして誕生。 A氏:しかし、韓国の政府機関によると、1日平均8千人余りの利用者の6割は「賭博中毒者」。 「江原ランド」の近くに政府が設置した韓国賭博問題管理センターのの張孝強氏は「賭博中毒者は財産も社会的信用も失い、完治という言葉はない。日本でも自国民が利用できるカジノを作れば必ず起きる問題。まして大都市につくるのは自爆行為だ」と警告。 中毒者の相談活動を続けてきた牧師の方恩根氏は「江原ランド」周辺で開業以来、約2千人が自殺したと推定する。 自殺の予告電話を受け、モーテルの部屋に飛び込んで止めた経験もあり、家族関係が悪化して家に戻れず、サウナなどを泊まり歩く「カジノホームレス」もいるという。 私:ところで、韓国は2006年8月にパチンコ禁止に踏み切った。 射幸心をあおり、パチンコ依存症になり、人生の破滅の原因になるから。 自己責任だと言っているわけにはいかなくなったんだね。 背景にパチンコ業は正業でないという社会的な認識があったようだ。 その韓国が「江原ランド」のカジノでギャンブル依存症者を復活させているとはね。 やはりパチンコで身についたギャンブル依存症は、カジノでも再発することを韓国の例は示しているようだ。 ギャンブル大国日本、それに育てられたギャンブル等依存症が疑われる人の人口に対する割合が世界ダントツの日本。 日本にカジノができたら、韓国の「江原ランド」になるだろうか。
2018.07.20
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私;6月18日朝に発生した大阪府北部を震源とする地震の影響で、マンションやビルのエレベーターが止まり、中に閉じ込められる被害も相次いだ。大阪府の摂津市役所では、男性職員がエレベーターで6階の職場に向かう途中、地震が起きて、エレベーターが停止し、「このまま落ちるのではないか」と不安な気持ちを抱えたまま、携帯電話で家族に無事を伝えた。 エレベーターは4階にさしかかっていたところで、外から「大丈夫か」「頑張れよ」と声をかけられ、約2時間20分後、消防隊員が外から扉を開けて救出し、男性は長かったと、ホッとした半面、「職場の人に迷惑をかけ申し訳なかった」と疲れた様子で話した。 京都市のマンションでは6階部分で女児(11)と男児(7)が一時閉じ込められ、警察官らが救出。同市の老人ホームでは86歳の男性が、奈良県大和郡山市のケアハウスでは70~90代の女性利用者ら4人が一時、閉じ込められた。A氏:国交省によると、2009年9月以降に竣工したエレベーターには、強い揺れを感知すると最寄りの階に止まる「地震時管制運転装置」の設置が義務づけられたが、その前に竣工したエレベーターは同装置がないものがあるという。 国交省や日本エレベーター協会によると、地震の被害が大きかった2府3県(大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀)で、稼働台数の約半分にあたる6万6千台のエレベーターが緊急停止。一時的に、東日本大震災を上回る339人が閉じ込められた。私:停止したエレベーターを復旧するためには、かごをつるすロープが絡まっている恐れがあるため、メーカーの技術員による点検が必要。 エレベーター保守大手の三菱電機ビルテクノサービスが関西で管理する6万台では、おおむね震度5弱以上だった地域にある2万2千台が停止。 関西地区に在籍する技術者約1千人が、すぐに手分けして建物をまわったが、それでも復旧したのは地震発生から3日後。広報担当者は「人海戦術なのでどうしても時間がかかる」という。日立ビルシステムやフジテックなども、復旧に3日ほどかかったという。このため、数日にわたって不便な生活を強いられたマンション住民のような「エレベーター難民」が生まれる。A氏:震度6弱を記録した大阪市北区や西区には高層マンションが多く、ある14階建ての賃貸マンションでは12階に住むという女性が、幼児を抱えて階段を上り下りするのに苦労していた。別の20階建てマンションでは、生協の配達員が野菜や冷凍食品を運んでいた。エレベーターの復旧の順番は、エレベーター協会が優先順位を決めていて、被災地の範囲がさらに広くなれば、復旧までの時間もさらに長くかかり、病気の人などは、低層でも簡単に外出できなくなる。私:各家庭ごと、マンションの各フロアごとに、数日分の水や食料など、日ごろから数日間生活するのに必要なものを備蓄しておく必要がありそうだね。 これが、首都圏になるともっと高層住宅が林立しており、莫大な「エレベーター難民」が生まれることになる。大阪北部地震を教訓に盲点になりやすい「エレベーター難民」の対応が早急に必要だろう。
2018.07.19
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私:英国では75歳以上の半数以上が独居。 英国には、高齢者を支援する「ロイヤル・ボランタリー・サービス」というのがあり、そこの登録ボランティアのエディー・ジェンキンス氏は、「以前は教会やパブで世代を超えた交流があったが、そんな近さは失われつつある」と心配する。 高齢者だけの問題ではなく、全英児童虐待防止協会が運営する無料電話相談「チャイルドライン」でも孤独に関する相談が増え、ソーシャルメディアの華やかな投稿記事と自分を比べ、卑下する子が目立つ。 ピーター・ワンレス代表は「子どもたちは人間関係や見た目などで、社会が定義する『成功』を収めねばならないというストレスにさらされている」という。 英国赤十字と生協の調査では、900万人以上の成人が「いつも」または「しばしば」孤独を感じていると推計されていて、成人の5人に1人だ。 別の調査では、障害者の半数が常に孤独を感じ、また65歳以上の5人に2人がテレビかペットが「一番の友人」と回答。 ロンドンの移民・難民の6割弱は孤独や孤立が最大の課題だという。 A氏:孤独は、健康への悪影響も心配されていて、米ブリガムヤング大が2010年、過去の研究を分析し、世界の30万人以上の生活様式と健康の関係を調べ、孤独はたばこを1日15本吸うのと同等の健康被害があり、肥満よりも健康への悪影響は深刻だと結論づけた。 英国生協の調査では、孤独が原因の体調不良による従業員の欠勤や生産性の低下で、英国の雇用主は年25億ポンド(約3700億円)の損失を被っているという。 私:対策を求める声が強まり、高齢者や障害者らを支援する官民5団体は11年、「孤独を終わらせるキャンペーン」を始め、行政への働きかけを強めた。 英政府は、これに対し、今年、「孤独担当大臣」を置いた。 「孤独担当大臣」のクラウチ氏は「ボランティアや活動家、企業、政治家が力を合わせれば、孤独に打ち勝つため前進できる」という。 これまで民間主導だった孤独対策を国が指揮することになり、個人の内面に公権力が踏み入る危うさをはらむが、社会の受け止めはおおむね肯定的だ。 しかし、一方、保守党政権はこれまで、地方への予算を減らし、様々な公的サービスを削減してきており、10年以降、貧困地域の就学前児童と家族を支援する各地のセンターが500カ所以上閉鎖に追い込まれ、同時期に家庭内暴力の被害者の避難施設も5分の1が閉鎖された。 私:こうした施設やサービスは孤独の軽減に役立ってきた可能性があるのに、予算削減で閉鎖された。 だから、政府の「孤独担当相」の設置は、政府の「偽善だ」(英紙ガーディアン)とする厳しい見方もある。 A氏:どうも、英国の緊縮財政はいろいろな問題を起こしているね。 そのため、英国緊縮財政知的街道ができているね。 「緊縮財政で医療の質低下 命の格差、広がる英国」では、緊縮財政による寿命の格差拡大、「社会主義、共鳴する若者 アメリカでは― イギリスでは―」では、授業料の増加による学生の極端な左傾化、「緊縮病『失われた10年』 待ちわびる、冬の終焉」では緊縮財政後の英国のホームレスの急増、「治安悪化するロンドン 若者への投資、削減の末」では、ニューヨークを上回ったロンドンでの殺人事件の急増など。 私:そして今度は、予算削減による「孤独」の増加。 まさに、英紙ガーディアンの言うように政府の「偽善」の連続だね。
2018.07.18
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私:南アフリカの「アパルトヘイト(人種隔離)」政策を91年に撤廃に導き、国民の融和に努めたマンデラ氏が生まれてから7月18日で100年を迎える。 しかし、ヨハネスブルク北部にあるビジネスの中心、サントン地区の富裕層が住むアパートは侵入者を防ぐため高い塀や電線、有刺鉄線で囲まれている。 一方、そこから南西に約25キロ。旧黒人居住区ソウェトのクリップタウンの一角にはトタン屋根の小さな家が立ち並び、電柱の電線を違法に自宅までつないでいる。 そこに住む黒人住民は、マンデラ氏が「アパルトヘイト」政策を廃止に導いた時、黒人への恩恵を期待したが、貧富の差はむしろ広がったと感じるという。 A氏:2003年に、政府は格差是正を目指し、黒人の経済参加促進法「BEE」を制定し、採用や幹部登用で黒人を優遇する企業を後押し、無償の初等教育や社会保障も充実させた。 黒人の企業幹部は96年に8%だったのが、15年までに約40%まで上昇し、黒人の富裕層は一定程度増えたが、権限を持たない黒人の名前を幹部として記載する企業があるなど「BEEは失敗だった」という声もあるという。 私:世銀によると、南アフリカは人口の1割が富の約70%を保有し、貧富の差がきわめて大きい国の一つ。 中でも多くの富を持つのが人口の10%に満たない白人で、14年に白人家庭の平均年収が約44万ランドだったのに対し、8割を占める黒人の家庭は約9万3千ランド。 条件の良い土地や農地の多くは今も白人が所有。 失業率も15~64歳の黒人は31・3%で、白人の5・7%との差は大きく、黒人は24歳以下では失業率が5割を超え、大多数が貧困に苦しんでいる。 世銀は「富裕層ほど教育や就業で恵まれる『機会の不均等』が格差の是正を妨げている」と指摘。 A氏:今年も、大学生専用のアパートが白人だけに入居を認めたとして批判を浴び、白人女性が黒人を中傷する「アパルトヘイト」期の差別用語を繰り返し使ったとして、禁錮2年の判決を受けたなど、差別事件が相次ぐ。 ヨハネスブルク中心部には、ジンバブエやナイジェリアからの移民が多く住み、国内の黒人の仕事を奪っているとみられて暴行事件が起きていて、黒人同士の憎悪感情も一部で広がる。 私:マンデラ氏の功績や「アパルトヘイト」の史実を若い世代に伝える歴史の継承教育も問題になっていて、現代史を教える時間を割けない学校が多いほか、低賃金による教員の質の低下や貧困家庭の子どもの中退などが原因。 年間20万人以上の来場者があるヨハネスブルクの「アパルトヘイト」博物館は,民主化運動に参加した人々と大学生との交流会を開くなど、若い層への歴史の継承に取り組んでいて、児童や生徒の訪問を増やそうと政府や学校にも働きかけているが、公立学校の児童らは博物館までの交通費が支払えないなどの問題があり、なかなか訪問してもらえない。 クリストファー・ティル館長は「国内外で人種差別がいまだにあり、不寛容さが増している」と危惧し、だからこそ、対話や融和の精神、人種差別の撤廃を訴え続けたマンデラ氏の考えが大事で、「生誕100年は、全世界に彼のメッセージを伝える貴重な機会になる」 という。 しかし、マンデラ生誕100年は、南アだけでなく、米国もそうだが、人種問題は根深いことを、逆に示しているね。 米国は初の黒人大統領オバマの後、トランプ大統領は移民問題で人種差別強化に転じたね。
2018.07.17
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私:国王の決断で、長い国王親政を経て2005年、近代化を目指す前国王が立憲君主制への移行を表明し、08年に初の国民議会(下院)選を実施。 選挙運動は静かで、拡声機が使えず、戸別訪問が基本で、期間中は仏教の法要や結婚式も禁じられ、いまだに選挙の仕組みや目的がわかっていない人が多いという。 A氏:表向きの静かさとは異なり、SNSでは現地のゾンカ語で「ノロプ(謀反人)」という言葉が飛び交う中傷合戦。 警察官のスムゲ氏は「政党は一部の代表だが、国王は全国民の代表。国王のもとでまとまっていた国なのに、家族や村さえも分断された」という。 政府は選挙を根付かせる政策を繰り出し、前回13年の上院選投票率は45%。 今回、帰郷できない人のため郵便投票を導入し、家族で誰も投票しないと後から理由を尋ねられる。 政党もできたが、以前は政党といえば反王室の亡命勢力を指し、結成は反逆行為。 このため、いまだにいいイメージを持たない人が多く、憲法上、集会や結社の自由は「国家の統合に支障をきたさない」という条件があり、難民や人権といった敏感な問題を扱う組織の結成は難しい。 私:ブータンは「国民総幸福」(GNH)を国是に掲げ、物質的豊かさだけではないバランスのとれた成長を目指してきた。 鎖国状態から徐々に国を開き、1999年にテレビとインターネットを解禁。 しかし、いま問題となっているのが若者の失業で、特に男性の失業率は15年の8%から16年は16%に。 高学歴化で肉体労働を避けるようになり、建設現場はインドの出稼ぎ者ばかり。 大学生は、まず政府の仕事を狙う。 外貨を稼げる産業は水力発電と観光業ぐらいで、一方、自国製でない自動車や携帯電話の消費ブームが盛り上がる。 職につけない若者が薬物に手を出しやすい現実があり、薬物事犯の逮捕者は16年の523人から1年で倍増。 大麻が自生し、インドから大量の薬物が流入する。 今回の上院選は候補者数が前回の倍近くまで増え、中でも30代が約6割を占めた。 「若いのに仕事がなくかわいそう」という理由で投票する人も多いという。 A氏:トブゲイ首相は「若くて急成長する国にはよくある問題だ。ブータンはシャングリラ(理想郷)ではないのだから」とだけ語ったという。 しかし、若くて急成長する国はチャイナスタンダードではないが、独裁のほうがいいのではないのかね。 私:10年たっても国民の意識は変わっていないようで、ある主婦は「立憲君主制への移行は、国王が決められたことだから仕方ないけど、王政の方が当然良かった」という。 「国民総幸福」が国是で有名なブータンが、王政から立憲君主制への移行の10年で、家族や村も分断され、若者の失業・薬物事犯の増加とは、民主主義の原点が問われるね。
2018.07.16
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私:核兵器に転用しないことを条件に、非核兵器保有国である日本にウラン燃料の濃縮や使用済み核燃料の再処理を一括で認める日米の二国間協定である「日米原子力協定」だが、現在の協定は1988年7月に発効し、明日、7月16日に30年の期限を迎え、自動延長となるが、米国は、その「条件」として余剰プルトニウムの削減を強く求めていて、核兵器への転用や、核拡散リスクの高まりが懸念されるなか、日本の対応に厳しい目が向けられている。 もともと、「日米原子力協定」は平和利用目的でプルトニウムを取り出すことができ、原発で燃料として再利用する「核燃料サイクル政策」の根拠となっている。 30年間一括して日本にのみ認められてきた再処理が、今後は米政権の意向に左右されやすくなる。 自動延長された「日米原子力協定」は今後、半年前の通告で破棄できるようになり、すぐに協定が破棄されることはないとみられるが、政府内には「極めて不安定な状況になる」(河野太郎外相)など、危機感がくすぶる。 A氏:現行の協定が発効した88年当時、日本のプルトニウム保有量はわずかで、「もんじゅ」の建設が進むなど、プルトニウム利用計画は今より現実味があった。 当時、在米日本大使館の1等書記官として協定締結交渉に携わった坂田東一氏・元文部科学事務次官は「日本は進んだ原子力の計画を持ち、実績も示していた。国家として信頼できる存在だった」と振り返る。 しかし、「もんじゅ」事故があった95年から16年までの21年間で、「核燃料サイクル政策」の破綻で、日本のプルトニウム保有量は約3倍に増え、再処理を委託した英仏と国内に原爆6千発にあたる約47トンを抱え、「余剰は持たない」としてきた政府への信頼が揺らいでいる。 「核燃料サイクル政策」の柱の一つで、プルトニウムを使うはずの高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」の廃炉が決定。 さらに、ふつうの原発でプルトニウムを使うプルサーマル発電も、一部しか導入が進んでいないため、自動延長を控えて、余剰分を減らすよう求める米国などの「外圧」が強まっていた。 坂田氏は「『核燃料サイクル』開発を続けるなら、プルトニウムの利用計画を立てるだけでは不十分。余剰は持たないということを、実績で世界に示していくしかない」という。 私:この問題については、小泉元首相同様、朝日新聞の「社説」は「『核燃料サイクル政策』破綻を認め撤退すべきだ」と朝日らしく、明快に論じているね。 そもそも、プルトニウムは原爆に転用できるため、核不拡散条約(NPT)の下では非核保有国による再処理は許されていないが、ただ一つの例外が日本として米国が「日米原子力協定」で30年間認めた。 この特権を保障してきた「日米原子力協定」が自動延長されることで、今後も「核燃料サイクル」を続けていくことに支障がはないと「社説」は言うが、30年間余裕があったのが、自動延長で半年前の通告で破棄できるようになり、厳しい。 それに対して「社説」は、いまやプルトニウム利用の合理性は失われているから、政府は「核燃料サイクル政策」の破綻を認め、日本が自ら撤退を決断するべきだと主張する。 A氏:米国内にも「日米原子力協定」への否定論は根強く、議会や外交・不拡散の専門家の間には「日本が呼び水となって韓国やサウジアラビアなどにプルトニウム利用が広がるのではないか」「北朝鮮との非核化交渉で日本のプルトニウムが障害になりかねない」といった懸念の声がある。 かねてプルトニウムの徹底管理を求めてきた米政府も、いっそう要求を強めていると「社説」はいう。 いま「核燃料サイクル政策」の転換を決断せずに、青森県六ケ所村の再処理工場とMOX燃料加工工場を稼働させれば、40年間の操業や設備投資などに12兆円近くかかり、破綻した「核燃料サイクル政策」の延命に巨費を注ぎ、電気料金の形で消費者に負担させ続けるのは理不尽であると「社説」はいう。 私:しかし、「核燃料サイクル政策」からの撤退も容易でなく、六ケ所再処理工場の運転廃止による地元の自治体財政や雇用の問題、保有するプルトニウムを英国などに引き取ってもらえないか交渉する必要性などがあるが、「社説」は中でも難しい問題は、使用済み核燃料の取り扱いだという。 歴代の青森県知事と経産相は「青森を廃棄物の最終処分地にしない」との約束を交わしており、政府は対応について県と誠実に話し合わねばならない。 「日米原子力協定」の期限切れと自動延長を機に、「核燃料サイクル政策」の徹底的な見直しが迫られているが、この政策はまさに「進むも地獄、退くも地獄」となったね。
2018.07.15
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私:與那覇氏は、東アジアとの関係を軸にした日本近現代史が専門で、2007年から地方公立大学に勤務。 11年に刊行した『中国化する日本』が評判になったという。 俺はこの本は知らなかったが、この書で與那覇氏は、優勝劣敗の自由競争をいとわず、政治は強い指導者に一任するといった形で日本社会の「中国化」が進んでいると指摘。 近代化や民主化を基準にした西欧中心の歴史観を相対化し、日本史を描き直す仕事だったという。 A氏:確かに、今の日本の1強多弱で動かない政治情勢をみると、習近平独裁体制の「中国化」が進んでいるように見えるね。 「チャイナスタンダード」が、奈良、平安時代のように日本にも押し寄せてきたみたいだね。 私:期待された著者だったが、14年春、鬱(うつ)状態と診断され、一時は「人と話すのも音楽を聴くのも苦痛。本も読めず原稿も書けない」状態になった。 デイケアでは病気の経緯を話したり、文章にしたりする機会があり、米大統領選でトランプ氏が当選すると、「日本だけが駄目なんじゃないと妙に元気が出た」という。 今回の著書『知性は死なない 平成の鬱をこえて』は発病から回復までの体験記で、同時に、時代に照らした「平成史」でもあるという。 A氏:與那覇氏は、「平成史」は、政治も世論も「一大転向の時代」とみる。 自衛隊と日米安保条約に反対した戦後の左派は、90年代の自社さ連立政権誕生で「転向」。 戦争の「加害者」だった日本は、00年代には拉致問題の「被害者」に転じた。 民主党政権が崩壊して、多くの有権者が「改革」や「二大政党」の夢を捨てた。 多数意見や社会のムードに迎合するなら、知識人の存在意義はないことになった。 「自分たちがいつ、なぜ『転向』したのかを自覚し、検証する意味は大きいはず」と、與那覇氏はいう。 私:與那覇氏の「鬱」はこの平成の知識人の存在意義を失った「転向」による「鬱」かもしれない。 病気を経て「能力は個人の私有物ではなく周囲との共有物」だと気づいたいま、他人と競い合う地位への未練はまったくないという。 「万国の知性ある人びとの団結を!」という、著書を締めくくるのは組織や国境を越えた幅広い「共存」の呼びかけ。 與那覇氏は、大学を昨年退職し、今後は「純粋に面白さでつながれた初期のネットのように」自分の思想へのアクセスを待つつもりだという。 また、新しい視点での日本現代を論じてもらいたいね。
2018.07.14
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私:NYタイムズ紙のクルーグマン氏は、徹底したトランプ政権批判派だね。 今月のコラムでは、トランプ氏の関税措置問題をとりあげ、痛烈な批判をしている。 移民問題と違い、トランプ大統領の貿易相手国への攻撃は、激怒した貿易相手国の政府は(多くは裏切られたと感じている米国の同盟国だ)、報復できるし、そうするだろうという。 例えばカナダ。 今年3月、米国は鉄鋼とアルミニウムの輸入品に関税を課し、しかも安全保障を理由にカナダへの措置を正当化したが、その時、ホワイトハウスで通商問題を率いるピーター・ナバロ氏は、「どの国も報復してくるとは思わない」と断言した。 しかし、今月1日、カナダは126億ドル(1兆4千億円)分の米国製品に対する報復関税を発表した(ちなみにカナダの対米輸出入額はほぼ同じ)。 EUと中国も、報復関税を発表していて、メキシコも、左派の次期大統領が選出され、米国の言いなりになる可能性はまずない。 EUは、トランプ氏が欧州の自動車への課税という脅しをあくまで実行するなら、さらなる措置をとると警告しており、米国からの輸出品に約3千億ドル分の報復関税を課す可能性がある。 A氏:トランプ氏の関税は、規模も動機(安全保障という明らかな欺瞞)も、今までになかったもので、米国自身がつくり上げた貿易のルールを踏みにじることになる。 EUは警告の中で、米国の行為を「国際法の軽視」とずばり表現。 米ニュースメディア「アクシオス」は、トランプ政権の新関税法案の草案とする文書を掲載したが、それは案の定、事実上「WTOからの脱退」を意味するものだった。 米国は今、貿易体制全体の崩壊や、世界貿易の急激で破壊的な縮小を、いとも簡単に引き起こそうとしていると、クルーグマン氏は指摘する。 こうして我々は貿易戦争へと向かっていて、どうすれば事態の悪化を阻止できるのかもわからない。 何しろ、各国政府がトランプ氏の望みをかなえることはまさに不可能。 私:米国の国内経済も問題だ。 約1千万人の雇用を抱える輸出業者は、打撃を受け、輸入品と競合する一部の産業は雇用増になるかもしれないが、それらは連動するわけではなく、貿易戦争は大量の解雇を生み出すだろうとクルーグマン氏はいう。 特に注目すべきは、トランプ氏が支援を主張する業界でさえ、彼の政策に反対し、方向転換を求めていることだ。 A氏:ゼネラルモーターズ(GM)は、自動車関税が「投資の削減、雇用の減少、従業員賃金の低下」をもたらしかねないと警告。 米国自動車部品工業会(MEMA)は、「逆効果の一方的行為」は「米国の雇用と成長を損なう」とし、一方で安全保障の保護に何ら役立たないと断言し、政権は手を引くよう力説している。 トランプ政権でなく別の政権なら、他国からの報復や産業界の反対、関税による失業の可能性を目にすれば、政策の誤りに気づくかもしれないが、現政権では無理だとクルーグマン氏はいう。 さらに、クルーグマン氏は「大半の企業や金融市場の投資家は、貿易戦争の脅威を真剣に受け止めているとは思えず、これが一過性のもので、行き過ぎた下方スパイラルになる前に、『大人』が止めに入ってくれると考えているようだ。 現政権に、そんな『大人』などいやしない。この政権は、おおむね“かんしゃく”によって政策を決めているのだ。全面的な貿易戦争になる可能性は、十分すぎるほどある。いや、もう始まっているのかもしれない」という。 かなり悲観的な見方だが、クルーグマン氏の危惧するように、現実に、「大人」の存在なしに、世界は全面的な貿易戦争を展開するのだろうか。
2018.07.13
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私:全米科学財団が1月に発表した2016年の科学技術の論文総数ランキングでは、 1位=中国、2位=米国、3位=インド、4位=ドイツ、5位=英国、6位=日本。 A氏:日本の科学低下の「知的漫遊紀行」は下記のようになっているね。 「大隅氏、基礎研究の危機訴え ノーベル賞金、若手支援に活用」、「科学界、存在感増すドイツ 研究資金安定、論文数の伸び堅調」、「大学の研究力低下、打開には 資金・時間・ポスト…どう確保 6月までに政府が戦略まとめ」、「イノベーション政策 政府は『主導』より『対処』を」などがあるね。 私:今日の新聞記事は、直接、科学研究でなく、研究を支援する実験機器の操作や保守をする技術職、研究費を管理する事務職など、研究の「裏方さん」の問題だね。 2013年に施行された改正労働契約法には、有期の雇用契約を更新して通算5年を超えると無期契約への転換を求めることができる「5年ルール」が盛り込まれた。 だが、文科省が今年、国立大学を調査したところ、無期契約に転換する制度を導入し、雇用期間に上限を設けないのは東大など8大学にとどまることが分かった。 A氏:文科省によると、全国の国立大学には約10万人の有期雇用者がいて、研究者たちの仕事を支える「研究支援者」が、その大半を占めるとみられる。 研究支援者の業務は、実験装置の保守や資材の調達から特許事務、研究費の管理まで多岐にわたるが、こうした人々が雇い止めの対象になると、研究現場には大きな影響が出る。 私:文科省科学技術・学術政策研究所は、研究力低下の原因として「研究者が研究に割ける時間の減少」を指摘し、その一因として、研究支援者の確保の問題を挙げた。 事実、同研究所の2013年の大学などの教員アンケートによると、教員が研究に割く時間の割合は2002年の46.5%が、2013年には35.0%に低下。 全国最多の5457人の有期雇用職員を抱える京都大学では、このうち3316人が、事務系や技術系の研究支援に関わるが、70人以上が今年3月末に雇い止めの対象になったとみられる。 大学側は「契約期間満了に伴う対応」(人事課)とするが、京大教職員組合は「法の趣旨を踏まえず研究教育の現場への影響は深刻」(川島隆委員長代行)と反発。 給与は大学の「運営費交付金」のほか、研究者が応募し国の審査を経て支給される「競争的資金」でまかなわれていた。 国は「運営費交付金」を減らし、「競争的資金」を増やしてきた。 「競争的資金」は、期限付きの資金なので安定雇用の財源には向かないが、その依存度は増すばかり。 3月末に473人を雇い止めした東北大学は「非正規雇用の財源の5割がこうした資金に依存し、雇用上限の設定は今後も避けられない」と説明。 A氏:多くの学者が研究支援者の重要性を訴えていて、京大iPS 細胞研究所の山中所長も12年のノーベル賞授賞当時、米国での研究支援者の充実ぶりや社会的地位の高さなどを引き合いに「育成のため長期間雇用する必要がある」と指摘。 不安定な人件費を補うため、自身が設立した基金への寄付金をあてている。 大学の研究環境に詳しい近畿大学医学部の榎木英介講師は「本来は必要なキャリアパスを用意して育成すべき専門職だが、生活が不安定なため優秀な人材が集まりにくく、日本の科学力を低下させる一因になっている」と指摘。 私:一方、解決へ向けた独自の試みとして、名古屋大学は、「競争的資金」が切れて業務を離れざるを得ない有期雇用者を、欠員が出た別の学部に異動することで解雇を防ぐ仕組みを導入。 全国大学高専教職員組合の長山泰秀書記長は「学部や研究室単位での縦割りを超え、雇い止め問題を大学全体で解決する姿勢が必要」と指摘。 しかし、そんな小手先の手段では、日本全体の科学力低下は防止できないだろうね。
2018.07.12
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私:「バック・トゥ・近代」とは、第2次世界大戦前の保護主義政策の応酬が最近の米中間で始まっているので、また、第2次世界大戦前の近代にバックしているのかという意味だね。 柴山桂太氏は、今回の米中貿易戦争に驚きはないという。 現在のグローバル経済の最大の問題は世界全体での上位1%と、中国・インド・メキシコなど新興国の都市労働者の所得は増えているが、先進国の大多数の労働者の所得は増えていないという所得分配にあるという。 世界経済の統合がどんなに進んでも、政治単位としての主権国家は残り続け、世界政府は存在しないから、現状の改善を自国政府に求める動きが出てくるのは当然。 A氏:トランプ大統領は、米国の労働者が抱く不満をうまく利用して政権を握った。 保護主義への移行は民主主義の要求だとも言えるわけで、歴史的に見ても、自由貿易と民主主義の相性は必ずしもよくないと柴山氏はいう。 19世紀の経済グローバル化では、先進国に工業が集中し、途上国は資源の輸出か農業しかなく、その頃の保護主義は途上国によるもの。 今のグローバル化では先進国が脱工業化し、途上国が工業化していて、産業の空洞化や雇用の劣化に悩む先進国が、保護主義を打ち出す時代。 私:今後注目すべきなのは通貨だと柴山氏はいう。 保護主義としては自国の通貨を安く誘導するほうが効果的。 アベノミクスで円安を後押ししたのは一種の保護主義で、トランプ氏は、中国や日本が自国通貨を不当に安くしていると非難していたが、中国に対する米国の追加関税はわかりやすいので注目されるが、今後の主戦場は通貨になると柴山氏はいう。 保護主義は貿易だけの話ではなく、市場から国民の生活を守る意味では、雇用の確保も社会福祉も保護主義。 主権国家が本来のあり方に戻る大きな流れの一部として理解すべきだという。 A氏:これに対し、伊藤元重氏は、今回の「貿易戦争」は、2大国の覇権争いの前哨戦だと考えているという。 歴史を振り返れば、自由貿易から背を向けた国で経済がうまくいったところは一つもなく、保護主義的政策は結局はうまくいかず、揺り戻しが来るから、米中貿易戦争がエスカレートしても、自由貿易体制が終わることはありえないと伊藤氏はいう。 私:3人目の田所昌幸氏は、米国は第2次世界大戦後、諸国が同じルールに従う多国間主義に基づいて、開放的な国際経済のしくみをつくろうとしてきた。 今回のトランプ氏の行動で、戦後、米国が築き上げた多国間主義の体制が侵食されたが、今のところ、損害は決定的ではなく、大きく歴史が逆戻りしてしまうかは、まだ分からないという。 伊藤氏、田所氏の両氏は柴山氏と違いトランプ批判側だが、この日の朝日新聞の「聞きたい」欄では米鉄鋼大手ニューコア名誉会長、ダン・ディミッコ氏が「通商紛争、なぜ同盟国も標的・中国野放しの責め負うべきだ」として、違った見方をしていて、柴山氏の見方に近い。 ディミッコ氏は、「第2次大戦で欧州もアジアも破壊され、ドイツや日本などが製造業の基盤を立て直すのを米国は助けたが、もう自分の足で立つべき時だ。このままでは米国の製造業が失われ、どこかの時点で米国の自己破壊につながる。製造業こそ世界のリーダーとしての要石に他ならないのにだ」という。 また、中国が鉄鋼の過剰生産や知的財産の侵害などで想像を超える規模でルールを乱し、世界の貿易秩序をおかしくしたのは確かで、その中国が自由貿易主義者のように自己演出しているが、最悪の偽善としか思えないという。 日本など米国の同盟国も、責めを負わなくていいわけではない。不作為によって、中国を野放しにした。米国の多国籍企業と同じように、中国市場の魅力に負けたのだという。 A氏:自衛の観点からは、いざというときに必要なものを製造できる工業力は必要で、米国はその力を失いつつあり、このままでは安全保障上、弱体化してしまう。 中国は航空宇宙分野の支配も狙っているとみている。 ディミッコ氏は、最後に「中国をグローバル経済に取り込むには、世界の国々が団結しなければならない。どの国も口ではそう言いながら行動しなかった。トランプ大統領は、世界の国々に気付いてもらうには痛みを引き起こさなければいけない、と言っているようにみえる。もちろん、日本にも痛みを引き起こすだろう。しかし、もしいま問題を正さなければ、将来経験する痛みは第2次大戦のようなものになる。質は違っても同じように破壊的なものになってしまうだろう」と米国の危機感を訴えているね。 米中貿易戦争は自由貿易論者が言うように、簡単に終わりそうになさそうだね。
2018.07.11
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私:高村薫女史は、教祖らの死刑執行を受けてあらためて、教団の反社会性を看過し続けた私たちの無力と無関心、さらには一方的なカルト宗教批判に終始したことへの自省や後悔を述べている。 A氏:裁判では、宗教教義と犯罪行為の関係性は慎重に排除され、一連の事件はあくまで一般の刑法犯として扱われたが、その結果、神仏や教祖への帰依が反社会的行為に結びつく過程は見えなくなり、宗教の犯罪という側面は手つかずで残された。 しかしながら、高村女史は、どんなに異様でも、オウム真理教は紛れもなく宗教であり、それがたまたま俗世の事情で犯罪集団と化したのか、それとも教義と信仰に導かれた宗教の犯罪だったのかは、まさにオウム事件の核心部分であったのに、司法も国民もそこを迂回してしまったという。 私:高村女史は、形骸化が著しい伝統仏教の現状に見られるように、日本人はいまや宗教と正対する意思も言葉ももっていない、という。 この「精神世界」への無関心は、理性や理念への無関心と表裏一体であり、代わりに戦後の日本人は物質的な消費の欲望で人生を埋めつくした。 地道な言葉の積み重ねを失ったそういう社会で、若者たちの求めた「精神世界」が既存の宗教でなかったのは、いわば当然の結果だったと言え、彼らは伝統仏教の迂遠な教義と権威を拒否し、手っ取り早いヨガの身体体験に出会って社会に背を向け、疑似家族的なカルト教団に居場所を求めたのであるという。 A氏:どんな宗教も、始まりは何かしらの神秘や秘儀の体験であり、ヨガの特殊な呼吸法や、数千数万時間もの瞑想が身体にもたらす特殊な意識状態は、宗教が標榜する秘儀の正体であり、人はそこに神や超自然を発見する。 そうした宗教の発生原理を見れば、教祖麻原彰晃の出発点がヨガだったのは納得のゆく話であるという。 ヨガはわりに効率よくこの特殊な意識体験を得られることから、古来インドでは宗教とよく混交してきたが、麻原を教祖と仰いだ若者たちも、その多くが入信前後の早い段階でクンダリニー(生命エネルギー)が身体を貫くなどの決定的な身体体験をしたことが知られている。 そして自分の身体に起きる直接体験ほど強力な体験はないため、彼らは一も二もなく教祖の教えを信じたのだが、傍目にはどんなに無理筋の教義でも、信心は道理を易々と超えてゆく。 私:信心と帰依は信仰の本態であり、また信仰は本来、自身を守るための殉教や殺戮もあり得る絶対不可侵の世界であり、もとより社会制度や通念とは相容れないところで立っている。 オウムをめぐる言説の多くが生煮えに終わったのは、信仰についてのそうした本質的な認識が私たちに欠けているためであると、高村女史はいう。 そして、自他の存在の途絶に等しい信心の何たるかを、仏教者すら認識していないこの社会の限界だったと言えようと厳しく指摘している。 A氏:高村女史は最後に「それでも、いつの世も人間は生きづらさを和らげる方便としての信仰を求めることをやめはしない。オウム真理教が私たちに教えているのは、非社会的・非理性的存在としての人間と宗教を、社会に正しく配置することの不断の努力の必要である」という。 私:最近、若者の新幹線内での殺傷事件や、同じ世代の若者が警察官を襲って殺し、拳銃を奪ってこれも殺人するという事件があったが、彼らの「精神世界」を理解できるものを我々はオウム事件で得られたのだろうか。 「世の中は分かりやすくない」「万引き家族」のブログでとりあげた是枝監督の「世の中って分かりやすくない。分かりやすく語ることが重要ではない。むしろ、一見分かりやすいことが実は分かりにくいんだ、ということを伝えていかねばならない」という言葉を連想する。
2018.07.10
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私:報道で、厚労省が、2028年ごろに医師の需給が均衡するとの推計を公表したという。 この推計は、医師の週あたり労働時間の制限を60時間程度とすることを前提としていて、これだと、時間外労働時間は週あたり20時間、月あたり80時間以上となる。 脳血管疾患などの労災の基準では、時間外労働が月45時間を超えて長くなるほど、発症のリスクは高くなり、月80時間を超える時間外労働が続くと、長時間労働と発症との関連性が強いと判断されため、「80時間」が過労死ラインとされている。 つまり、厚労省による必要な医師数の推計は、医師が過労死ラインを超える労働をすることを前提として、組み立てられていることになり、医師の健康確保の観点から不適切であると、斎藤裕氏は指摘する。 A氏:斎藤裕氏は、また、推計の前提にはもう一つ疑問があるという。 それは、医師の労働時間に関する現状のデータは、一律に「オンコール」時間を労働時間から除外していること。 「オンコール」とは、院外に待機し、病院から緊急の呼び出しがあれば応急患者に対して診療などの対応を行うこと。 10年の大阪高裁判決では、奈良市の県立奈良病院で医師が「オンコール」対応を行っていたのは自主的な取り組みだったとして、労働時間には該当しないとされたが、同判決を前提としても、「オンコール」勤務がなければ病院の診療体制がなりたたない場合や、病院側の一定の関与のもとで対応がなされている場合は、「オンコール」時間も労働時間に該当すると考えられる。 「オンコール」は十分な休息を妨げるものであり、医師にとっての負担は小さくない。 厚労省の推計は、「オンコール」時間も含めた労働時間を適正なレベルに抑えるには、どの程度の医師数が必要かという発想を欠いていると、斎藤氏は指摘する。 私:厚労省は、「オンコール」勤務についても考慮したうえ、週あたり労働時間を50時間程度(月あたり時間外労働は45時間程度)に制限することを前提とした医師の需要推計を行うべきで、医師数のあり方を再検討し、その結果によってはさらなる医学部定員の増員も必要だと、斎藤氏はいう。 医師の体調は診療の質にも影響するね。 斎藤氏は、加えて、医師が書類作成に時間を取られず治療に専念できるように医療秘書を増やすことや、患者の急変で勤務時間外に医師が駆けつける事態を減らすための複数主治医制の導入など、比較的短い期間でも実現できる対策を、着実にとっていくべきであるという。 A氏:それに、「広がる医療の地域格差」のブログで取り上げた医師の格差問題はどうみているのかね。 老齢化が進むと、診療要請が増加し、医師の負担が増加すると思うが、それをどう予測しているのかね。 私:ところで、働き方改革法案の裁量労働制で、厚労省の基礎データが不正確だったことが問題になったが、その厚労省は、今度の医師の需要予測データも大丈夫かね。 似たような政府の予測ハズレに 「横浜・法科大学院、県内ゼロ 横国大も来年度募集停止」のブログでは、政府の法曹需要の予測があったね。 ついに横浜国立大が、来年度から法科大学院の学生募集をやめる原因となる。 医師の問題は国民の生命に直接かかわるだけに、厚労省の正確な予測が期待されるね。
2018.07.09
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私:「ガーファ(GAFA)」とは、世界を席巻している米IT企業のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社の頭文字をとったもの。 小林弘人氏は、この数年、「ガーファ」のサービスが広がることで、自分でも行動様式や生活習慣が、ドミノ倒しのように変わってきたと思うという。 以前は、ちょっとした買い物でも近所に出かけ、どこにペットショップがあるとか、街のつくりを意識していたが、今は必要なら、アマゾンがすぐ届けてくれるから、もう全然気にならないという。 俺もそうで、ジレットのカミソリの2枚刃なんて、古くてスーパーにはないが、アマゾンでは売っているので、未だにアマゾンからの宅配だね。 小林氏は、出張の時も、グーグルのアプリが日程や飛行機のスケジュール、滞在先の見どころまで、全部教えてくれるので、」旅行ガイドを買わなくなったという。 スマホの普及も大きく、パソコンと違って、スマホは移動中、移動先でも使えるし、自分のことを何でも知っていて、脳に直接つながっている、と思えるぐらいだという。 A氏:それはつまり、膨大なデータが「ガーファ」に集中しているということ。 システム的にも利用者が好きな情報ばかりが表示され、嫌いな情報は入ってこず、「エコーチェンバー(反響室)」と呼ばれる特定の主張の増幅、強化も起きている。 「タコつぼ化」がフェイクニュース拡散の原因の一つとも言われている。 便利な一方、「タコつぼ化」もしているので、小林氏は、さらに情報に受け身で接するのではなく、自分から能動的に探し、多様な視点で深掘りするよう気をつけていくことが大切で、「ガーファ」のサービスは便利だが、それと引き換えに何を失っているのか、そのことに向き合う必要があるという。 私:小寺信良氏も同様な意見で、「ガーファ」の「知識の支配」から逃れるためには、ユーザーが頻繁にサービスを乗り換えて、「ガーファ」間で競争させるべきで、良いサービスを提供しなければ勝ち残れないということがわかれば、「ガーファ」も勝手なことはできないという。 さらに小寺氏は、スマホしか使わないユーザーも、携帯事業者をもっと乗り換えて、競争を起こせばよく、「ガーファ」のみならず、大きくなりすぎた会社やサービスに対しては、集中したものを分散させることをユーザー自身が考えていくべきだという。 これも小林氏のいう「タコつぼ化」にならないことだね。 A氏:以上の2氏に対し、土屋大洋氏は「ガーファ」を国際的な視点でみている。 「ガーファ」に集まる個人情報は従来の概念を大きく超えるもので、「いつどこで何を買い、その後病院へ行った」といった膨大な行動情報・履歴であり、詳しく分析すれば個人のかなりのことがわかり、それだけに米国や欧州、ロシアや中国の当局はその対応策を練っていると国際的な見方をしている。 米国は、米国家安全保障局(NSA)はテロ対策などで、企業が集めたデータを提供させていて、「ガーファ」はこうした状況を「透明性報告書」で、ある程度開示している。 私:これに対し、欧州は、市民の行動履歴が域外に持ち出されることに不満を持っていて、一般データ保護規則(GDPR)というルールを新たに設け、それに従わない企業が域外にデータ送出することを禁じることにしている。 これには、欧州では「ガーファ」に取って代わるような企業はまだ育っていないことによる産業政策の一環が背景にあるという。 ロシアは、米国政府が「ガーファ」のデータを使って内政干渉するのではないか、といった警戒感を持っていて、ロシア語の検索エンジンやネット通販、SNSで独自サービスを育てている。 私:IT先進国になりつつある中国は、「ガーファ」に対抗し、ネット空間での覇権を握ることを考えている。 一帯一路構想に次いで「デジタルシルクロード」構想を打ち上げ、検索エンジンの百度(バイドゥ)など独自サービスを浸透させていて、ネット上で米国をしのぐ力を持とうとするだけでなく、国内では「献血でプラス」「政府批判でマイナス」といったポイント制度も絡めて、14億の人民の行動を監視するツールにしようとしている。 さらに、中国は、アフリカとブラジルを結ぶ海底ケーブルの敷設を計画するなど、ネットのインフラでも米国に対峙しようとしていて、非常に戦略的。 欧ロ中と比べると、日本の対抗戦略はみえない。 日本は2000年ごろ、世界のネット空間で主導的な役割を果たしていて、国内のインフラ造りがうまく、先駆的なSNSサービスもあったのだが、フェイスブックなどにあっという間に席巻されてしまった。 ネットワークは何より利用者の数がものをいう。 日本政府は社会のあらゆる局面でデータを生かす超スマート社会「ソサエティー5・0」の旗を掲げているが、GDPR(一般データ保護規則)もてこにして、「ガーファ」を使いこなす知恵が必要だと土屋氏はいう。 日本には「ガーファ」対応に、どのような知恵が期待できるだろうか。
2018.07.08
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私:麻原ら、オウム真理教元幹部7人の死刑が執行されたので、この新聞欄では3氏に、オウムとは何だったのか聞いている。 俺は12年前のブログ「松本被告の死刑・サリン事件・林被告の自白」でサリン事件にふれたが、事件の起きた日の午後1時にJR浜松町駅に近いある会社のビルで打ち合せのためにいたが、会議中に何か外が救急車のサイレンの音とか騒然とした雰囲気であったように鮮明に記憶している。 A氏:もし、午前中の打合せだったらやばいことになっている確率はあったね。 私:この3氏のインタビューで、中村裕二氏はちょっと違った立場の意見だが中村文則氏と森達也氏のコメントは共通部分が多いね。 中村文則氏は、松本死刑囚に過去の出来事にきちんと向き合わせ、なぜこういうことをしてしまったかを語らせたかったとして、精神の殻に閉じこもらせたまま死刑にしてしまったのは、本当に驚きで残念だという。 森達也氏が、裁判の傍聴で見た麻原は廃人で、事件を起こした理由を聞けずに終わったことが、加害者に発言をさせることは事件を歴史の教訓にするために必要だったから残念でならないという。 森氏は、取材を通じ、サリン事件には三つの要因があると考えとぃるという。 教団がつぶされるのではないかという麻原の危機意識と、殺すことが救うことと通じてしまう宗教の論理と、そして麻原が喜ぶであろう言動をしようとした弟子と、弟子が期待するであろう方向にふるまった麻原との「相互忖度」だという。 A氏:君の3年前のブログ「死刑弁護人・生きるという権利」の著書紹介では、著者の安田好吉弘氏は主任弁護人として目撃した麻原彰晃の素顔を明かし、なぜ飽食の時代の若者たちが無差別テロに走ったのかという謎に迫っていくとある。 その著書の中で実は、犯行に使われたサリンの原材料は麻原が「捨てろ」と指示していたものだったという。 教団幹部がその指示に反して隠し持っていたことが安田の反対尋問で分かり、麻原首謀説が揺らぐとある。 私:その点は、すでに廃人のように沈黙した麻原なきあと真実は不明だね。 日本史上、最大といわれるテロ事件は真相不明のまま終わったようだね。
2018.07.07
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私:保守の論客である佐伯啓思教授の今月の「異論のススメ」は西郷隆盛にふれている。 明治維新のもつ根本的な矛盾とは、それが攘夷、すなわち日本を守るための復古的革命であったにもかかわらず、革命政府(明治政府)は、日本の西洋化をはかるほかなく、そうすればするほど、本来の攘夷の覚悟を支える「日本人の精神」が失われてゆく、という矛盾であると教授は指摘する。 西郷隆盛という人は、まずは、その明治維新という「革命」が内包する根本的な矛盾が生み出した人物であり、また、それを象徴する人物であったように教授は思えるという 明治維新とは、封建的身分社会に不満を抱いた下級武士の反乱というよりも、押し寄せてくる外国の脅威から日本を守るべく強力な政府を作り出す運動から始まった、ということであり、この運動の中心に西郷隆盛はいた。 西郷隆盛は、もっとも過激な武力倒幕の指揮官であり、倒幕運動は、基本的に政府(幕府)に対する非合法的な武力行使という意味では、一種のテロ活動と見ることもでき、西郷はそのテロ活動の中心人物。 内村鑑三がいうように、明治革命は西郷の革命であった、といっても過言ではないと教授はいう。 A氏:しかし、西郷隆盛という人物の真骨頂は、明治維新の立役者でありながら、明治6年には盟友の大久保利通たちと袂を分かって鹿児島へ帰郷し、4年後に明治政府に対する大規模な反乱(西南戦争)を起こしたあげく最後は自刃する、というその悲劇にあると教授はいう。 西郷を動かしたものは、攘夷の精神を忘れたかのように西洋化に邁進する明治政府への反発や、維新の運動に功をなしたにもかかわらず報われずに零落した武士たちの不満であった。 敬天愛人に示される無私の精神、いっさいの贅沢を排して義を重んじる精神、という「日本的な精神」が今日にいたるまで西郷ファンを生み出している。 それこそ、今日、われわれのこの平成日本からはすっかり姿を消してしまったものではないのだろうかと教授は指摘する。 とすれば、われわれは、今日の日本からは失われてしまったものの残影を西郷に見ていることになると教授はいう。 現実には、現代日本は、まさしく大久保利通や伊藤博文のすすめた西洋化、近代化路線の延長上にあり、西南戦争の終結によって、明治の西洋化・近代化は本格的に開始され、明治政府を作りだした西郷隆盛は、政府から排除され、新時代になじめない旧士族の不満を一手に引き受けて死んでいった。 私:西郷とともに江戸城明け渡しを決めた勝海舟は、西郷の死をたいそう残念がっていた。 また、明治の文明化を唱えた福沢諭吉も、西郷の死を惜しんでいた。 明治政府に批判的だった福沢は「政府が好き勝手にしているのに、世の中はすべて「文明の虚説」に欺かれて抵抗の精神が失われている。世にはびこっているのは、へつらいやでたらめばかりで、誰もこれをとがめるものはない。そうした時に、西郷は立ち上がった。それを賊軍呼ばわりするのは何事か」という。 その福沢諭吉はまた、江戸城明け渡しを決めた勝海舟を厳しく指弾していて、城を枕に討ち死に覚悟で一戦を交えるのを回避したために、明治という時代から「武士の精神」が失われた、という。 それが、明治の西洋かぶれの風潮、浅薄で表面的な文明開化の流行をもたらしている、といいたいのであろう。 これは、以前、養老孟司氏「超バカの壁」「無思想の発見」、加藤典洋氏「敗戦後論」「日本の無思想」、藤原正彦「国家の品格」のブログでふれた福沢諭吉の「やせ我慢の説」がある。 それは勝海舟が旧幕臣であったのに、それを倒した明治政府に仕えた「裏切り」批判であり、諭吉は勝に辞職を要求する。 福沢も旧幕臣であるが、勝海舟はそんな内部の「やせ我慢」より、大きな外圧の危機に瀕した日本全体を考えたら変節は仕方がないと考えたのか、だから、日本には近代思想は育たなかったということか、となる。 A氏:勝海舟は戦を避けることで平和的に新しい時代を作り、日本近代化の大変な功績者であるが、その明治は、本来の攘夷の精神を忘れて、西洋模倣へとなだれ込んでゆく。 この風潮に我慢がならなかった西郷は、敗北を覚悟で戦い自刃。 福沢によると、西郷は、明治政府のありさまをみると、徳川幕府には悪いことをした、と後悔していたそうである。 そして、西郷の死後、一見したところ、武士的な精神、無私や自己犠牲の精神はすっかり忘れ去られ、ひたすら日本は文明開化の近代化路線を走ることになる。 しかし、それにもかかわらず「西郷どん」は、多くの人のこころに生きてきて、人気では、大久保や勝など比べものにならない。 教授は、押し寄せる西洋近代文明の流れに、敗北を覚悟で抵抗して死んだ西郷に、つい敗北覚悟の日米戦争へとゆきつく日本の近代化の帰結を重ねたくもなってくるという。 私:教授は敗戦への路を示唆しているのだろうか。 それとも、敗戦後の米国の核の傘の下にいる日本を示唆しているのだろうか。
2018.07.06
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私:秋山訓子女史は、何十年も前のことになってしまったが、大学4年間を体育会のアメリカンフットボールのマネジャーとして過ごし、かつて彼女の人生の中心だった。 チームは長く大学リーグの1部をめざしていて、でも昇格できないでいたが、彼女が2年生の時、ついに悲願の昇格を果たした。 その時の4年生(監督が来るのは週末だけで、指揮指導は4年生が担っていた)がしたことを一言で言えば「考える」ことだった。 「根性」や「気合」でひたすら猛練習を重ねるのではなく、自分たちに何が足りないのか、何が必要かを突き詰めて考えて欠落を埋めていった結果、勝てた。 A氏:チームスポーツでは、チーム内の分業と役割分担が明確で、戦術と戦略がものを言うアメフトは特に「考える」ことが重要だから、運動能力では必ずしも超一流を集めたとはいえないチームでも日本一になることができる。 関西学院大学のアメフト部出身で、かつて日本一になった同僚は現役時代、4年生全員が監督と面談して「チームに何が貢献できるんだ、どういう選手になりたいんだ」とひたすら問われ、それを録音し、繰り返し聞いたのだという。 対話を通じて選手に徹底的に考えさせ、意思と意見を持った個を育てると言ってもいいかもしれない。 日大の場合はそうではなく、選手はまるで監督に支配されたアンドロイドのようで、その場しのぎのことしか頭になくて、思考停止だったと秋山訓子女史はいう。 私:この日の朝日新聞の「私の視点」欄では「日大信頼回復のために 人権守る体制づくり必須」と題して、たまたま、日大教授の末冨芳女史が、日大アメフト部の悪質タックル問題をとりあげていた。 彼女のアメフト問題に対する視点は、秋山訓子女史と異なり、大学の運動部に潜むハラスメントだ。 彼女の指導学生でもあるアメフト部員たちからは、骨折や脳振盪などの不安を抱えながらも、厳しく指導され、試合に出なければならない、といった話は聞いていたが、彼らに「大丈夫?」と心配して尋ねると、「大丈夫」と答え、それ以上の対応を求めるそぶりはなかった。 しかし、その背後には、監督・コーチに対する立場の「弱さ」が隠されていたのに、そのことを踏み込んで理解せず、相談や保護につなげられなかったことは、専門家として恥じるしかないと末冨芳女史はいう。 私:そして、「弱い」立場にある運動部の学生たちの相談体制の整備、人権保護体制の充実は必須だとして、道のりは長いが、彼女自身も真摯に取り組んでいきたいという。 アメフトというか、スポーツに対する見方が、秋山訓子女史と末冨芳女史とがまったく違うね。 アメリカでは、アメフトの優秀選手は「考える」力をしっかり持っているとみなされるのか、エリートとして扱われるそうだ。 日本でもパワハラで「根性」や「気合」でひたすら猛練習を重ねるチームは、時代遅れで帝京のラグビー9連覇や、青学の箱根駅伝4連覇などは望めないことを知るべきだね。 きちんと学生スポーツの基本を行えば「弱い」学生などいないのだから、学生のパワハラ相談体制の整備、人権保護体制の充実など不要だろう。
2018.07.05
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私:中国のネット通販サイト「京東商城(JD.com)」は、「中国のアマゾン」と呼ばれる。 「京東」は、新進気鋭の劉強東会長(44)が1998年6月18日に創業し、中国有数のIT拠点、北京・中関村にわずか4平方メートルの店舗を開設し、光ディスクの販売から始めた。 2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行を見て、外出不要のネット通販に可能性を見いだし、04年にネット販売に移行。 07年には物流網の構築を始め、14年には米NASDAQに上場。 A氏:中国のネット通販といえば、馬雲が率いる「アリババ」集団が有名だが、外部からの出店で主に構成する「アリババ」と異なり、「京東」集団は主に自社で商品を調達して配達する「アマゾンモデル」。 もう一つ、「京東」の存在感を高めているのが6月18日の創業日を記念した大セール。 売り上げは年々急伸し、「アリババ」が仕掛ける11月11日(独身の日)と半年離れており、大手2社が主導するそれぞれのネットセールが定着しつつある。 私:北京の北西部にある、中国有数の名門大学・中国人民大学の構内を4輪の付いた箱がのろのろと進む。 「京東」集団の無人配達車で、学生寮の前に着くと、商品を注文した人のスマートフォンに通知が行い、寮から出てきた学生が、スマホに表示されたコードを車の側面にある液晶表示に打ち込むと、箱の扉が開き、注文した荷物が出てきて、「とても便利」と学生は満足げ。 「京東」集団は、これまで人力だった集配拠点から顧客への配達を無人化した。 商品の配送スピードを速めて、コストを引き下げており、陜西省などの人が少ない地域では、集配拠点までの配送にドローンを使うことで高速化と効率化を実現。 現在、荷物を10トンまで積める新機種を開発中で、自動運転トラックの研究も進めている。 上海にある同社の倉庫「アジア1号」では、四角いロボットが床をはい回り、出荷前の荷物を一時的に集める一角は完全に無人。 個人向け配達での無人倉庫を実現したのは『京東』だけという。 大規模セール期間でも、京東の自社販売は90%以上が注文当日か翌日に配達できるという。 A氏:世界最大級の国土面積を持ち、約14億人という世界最多の人口を抱える中国。 ネット通販が小売りに占める割合は18年1~3月期、約2割に達したが、「京東」と「アリババ」は激しい争いを続け、やめる気配はない。 両社は今、競争のフィールドを実店舗にも広げつつあり、ネット通販と実店舗とのデータを共有して顧客を分析し、「京東」は顧客の表情をカメラで読み、おすすめの商品を提案するシステムなど、買い物を楽しくするシステムの開発も進める。 私:「京東」の目は外国にも向き、6月、米グーグルから5・5億ドル(約610億円)の投資を受け入れる提携を発表。 欧米や東南アジアのネット通販市場の開拓を共同で進めるという。 日本の一戸建て住宅の空をネット通販のドローンが飛び日がくるだろうか。
2018.07.04
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私:ブログ「安く安全な水、黄信号」で、大阪北部地震で、重要なインフラの水道の維持費が問題化して、クローズアップしたことをとりあげた。 総務省が作成した指定市など111市町村の2006年から2009年度決算をもとにすると自治体が近年、道路・上下水道・公共施設に投じた1年当たりの額のうち、更新費用は約3000億円。 これが、今後40年間にかかる1年当たりの更新費用は約2.6倍の約8500億円となり、老朽化するインフラの更新費用が自治体財政を圧迫するという。 ブログ「安く安全な水、黄信号」では、解決策の一つとして、施設所有権は自治体が持ち、運営権を民間企業に売却するコンセッション方式の導入にふれている。 A氏:コンセッション(公設民営化)は、空港や道路などのインフラを効率的に維持する手法として導入されたが、1日の新聞では、下水道に採用されるのは浜松市が全国で初めてだと報じている。 浜松市では、90年代以降を中心に総延長3590キロの下水道管が整備された。 老朽化が深刻な問題になるのはこれからで、施設も合わせ、今後50年で5200億円の更新費用がかかるが、一方、市の人口は08年の82万人をピークに減少し、料金収入は先細りになる。 これにより、浜松市は下水道にコンセッション方式を導入。 運営を行う合弁企業は、インターネットで施設を集中監視するシステムなどを導入し、市が運営した場合より20年間のコストを14%、計86億円減らすことをめざす。 「人口減少が進むと、インフラの老朽化による維持費の増加が自治体には大きな課題になる」と、鈴木康友浜松市長はいい、「民間に任せることで官の負担は軽くなる」と話す。 浜松市は、上水道にもコンセッションを導入することを検討。 民間に任せれば経営悪化による撤退のリスクも出てくるが、鈴木市長は「民間が破綻するより、このままでは自治体が破綻するリスクの方が大きくなる」という。 私:人口減少が進む中で、水道管を60年ごとに更新しながら上水道の黒字を確保しようとすると、30年後に今の料金を平均1・6倍に値上げする必要がある。 値上げを抑えようと香川県は今春、県と8市8町の上水道事業を統合し、宮城県は上下水道、工業用水道の施設の運営を民間企業に任せる方針。 しかし、飲み水の上水道まで民間企業に任せることには、地域住民から不安の声があがる。 奈良市は16年、中山間部3地域の上下水道事業にコンセッションを導入しようと、市議会に条例案を提出したが、「命にかかわる水は市でやってほしい」という地元の声が強く、否決された。 老いるインフラを次の時代にどう引き継ぐか、人口増加を前提に昭和から平成にかけて各地に次々とつくられた道路や橋、公共施設なども、水道と同じ構図にある。 ブログ「安く安全な水、黄信号」でふれたように「身の丈」にあうインフラとはどんな姿か。地域で考える時期にきている。
2018.07.03
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私:NYタイムズは徹底したトランプ批判だね。 乳製品への7関税を低くするよう求める米国を、カナダのトルドー首相が控えめに押し返すと、トランプ氏のチームは、背中から刺すような「裏切り行為」であり「地獄での特別な場所」がふさわしいとトルドー氏を非難。 これに対して、フリードマン氏は、9・11米同時多発テロで攻撃されたのはカナダではなく米国なのに、カナダは何千人もの男女をアフガニスタンに送り、米国の都市を攻撃した国際テロ組織アルカイダを、米国が壊滅させるのを助けてくれ、そして158人のカナダ人が、その活動で命を失ったと指摘。 フリードマン氏は、これらは、トランプ氏がいかに前任者たちと異なる視点で世界を見ているかを示していて、全ては取引であり、あなたは私のために何をしてくれたのか、ということ。 米国は国際秩序と人権を支持する最後のとりでであるとした概念は終わったと、フリードマン氏はいう。 A氏:もしも朝鮮半島で戦争が起こる可能性が下がって非核化につなげることができるのならば、トランプ氏が北朝鮮の独裁者である金正恩委員長と親しくなることを支持できるとフリードマン氏はいう。 しかし、トランプ氏が恐ろしいのは、彼が我々の民主的な同盟国よりも独裁者を好んでいるように見えることで、トランプ氏は北朝鮮の独裁者について、「彼が話す時、国民は直立して聞く。米国民も同じようにしてほしい」と記者団に述べた。 トランプ氏は後にこの発言は冗談だと言ったが、悲しいかな、その冗談はトランプ氏のこれまでの言動と完全に一致していて、トランプ氏は強大な権力を持った指導者を好み、彼らがトランプ氏をあがめる限り、彼らが自国民をどう扱おうが気にしていない。 私:こうしたやり方は、独裁者たちにとっては、自国の革命家やテロリストのみならず、穏健な反対派をも圧殺することにトランプ氏が許可証を与えたようなものだと、フリードマン氏はいう。 まず、エジプトでは、2018年5月上旬以降、エジプト警察はシーシ大統領を批判する者を何人も逮捕しているという。 エルドアン大統領の支配下のトルコでも状況は同じ。 ジャーナリスト保護委員会は昨年12月、「2年連続で、全世界で収監されているジャーナリストの半数以上が、トルコ、中国、エジプトに集中している。トランプ氏の国家主義的なレトリック、イスラム過激派への強迫観念、批判するメディアを『偽ニュース』と呼ぶことへの執着は、こうした指導者たちがジャーナリストを収監しようとして告訴や告発をするための枠組みの強化に役立っている」という報告をした。 サウジアラビアのムハンマド皇太子は、汚職容疑のビジネスリーダーや17人の女性の運転活動家を専横的で不透明な手法で逮捕・尋問したことは、恐怖を呼び起こすことに役立っている。 米国の同盟国フィリピンでは、上院議員で人権委員長も務めたレイラ・デ・リマ氏が、17年2月に収監され、リマ氏は過去3年で7千人以上が死亡した麻薬戦争を進めるドゥテルテ大統領を批判しており、でっち上げの麻薬疑惑で現在も獄中にいる。 A氏:かつての米国ならば、外国の指導者たちに「米国はこんなことを許してくれない」と言わせていただろうが、もう違う。 トルコやサウジアラビアには、それらを耳打ちする大使ですらトランプ氏は配置していない。 ニューヨーク大のマイケル・ポズナー氏は「我々には強力な制度があり、民主主義を維持するだけの十分な人手があるが、エジプトやトルコ、フィリピンは脆弱な国である」という。 また、ポズナー氏は「彼らは文字通り、異を唱える人に罪を着せていて、市民らは、我々がそれを許容していると思うだろう。もしそれがまかり通るなら、この世界は我々全員にとって危険なものになる」という。 私:しかし、習主席の独裁国家中国、インドも「インドの教科書、消された偉人 モディ政権、強まる排外意識」のブログでとりあげたようにヒンズー教の独裁国家、プーチンのロシアなど、何か世界の国々は独裁色を強めているようだね。 国連人権理事会から米国が離脱するなど、まさに、この世界は我々全員にとって危険なものになりそうだね。
2018.07.02
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私:木村草太教授はマスコミによく登場する憲法学者で、その説明は論理が明快で、理解しやすい。 そして、自衛隊を違憲とは言っていない憲法学者だね。 仮に自衛隊が本当に違憲だとすれば、今すぐに自衛隊を解体しなければならないはずだが、違憲論者は、自衛隊の即時解体までは主張しておらず、それこそが欺瞞でなくて、何であろうかと木村教授は厳しく指摘しているね。 その木村教授の考えをすでに、ブログ「9条の持論、披露する前に」で、とりあげている。 本書の評者の齋藤純一教授によれば、「自衛隊は違憲だ(合憲説は欺瞞だ)」、「自衛隊は大きな武力をもっているから事実上軍隊だ」、「国際法は集団的自衛権の行使を認めており、日本も当然それに従うべきだ」など、自衛隊をめぐっては様々な意見が飛び交っているが、こうした意見や誤解に対して、本書は明快な議論で応じていると評している。 A氏:ブログ「9条の持論、披露する前に」でもすでに木村教授は説明していたが、個別的自衛権は、国民の生命・自由の保護を国家に命じる13条を根拠として正当化されるので、本書でもそれを繰り返し自衛隊は違憲ではないとしている。 自衛隊は9条2項が禁止する軍隊ではなく、72条の規定する「行政各部」の一つ、財務省などと並ぶ行政組織で、国際法が容認する権利であっても、あえてそれを行使しないことは国際法に反しないなどと説明する。 自衛隊が違憲かどうかでは、憲法9条ばかりで、13条をとりあげているのは、木村教授ぐらいかね。 私:木村教授は本書で、政府・自民党は自衛隊の明記によって「なにも変わらない」との説明を繰り返し、自衛隊の任務を意図的に曖昧にしているとし、この姿勢を著者は「あまりに卑怯」と呼ぶ。 少なくとも、その任務が個別的自衛権の範囲に限定されるのか、それとも他国のための武力行使も含まれるのかについては明確にして国民の意思を尋ねるべきであるという。 自衛隊の明記によって、自衛隊は行政組織から憲法が直接定める特別の組織に変わるから、この組織をどう統制するか等について憲法上の規定が必要になるが、それすらも示されていないと指摘している。 A氏:しかし、評者の齋藤教授は、個別的自衛権を正当化する根拠を13条のみに求めてよいかについては、国民の生命・自由の保護という理由は集団的自衛権をも正当化しないかという異論もありえようと評している。 私:それについては、木村教授は、自衛隊の任務が個別的自衛権の範囲に限定されるのか、それとも他国のための武力行使も含まれるのかについては明確にして国民の意思を尋ねるべきであると本書でのべているとしているね。 「9条の持論、披露する前に」のブログで取りあげたように、木村教授は、9条論議は活発化しているが、そこで持論を披瀝開陳する人の多くが、政府解釈や憲法体系を全く理解していないのは驚きで、現在の憲法を理解しない人々が、その改正を語れるはずはないと言っていた。 まさに評者の「本書は、混迷しがちな改憲論議にあって、問題を整理して考えるための導きの糸になる。合間を縫ってでも目を通してほしい一冊である」だろうね。 なお、「自衛隊を明記するとは」のブログで、元内閣法制局長官・阪田雅裕氏が、9条改正案を私案として示しているが、やはり、安全保障法制が成立し、集団的自衛権がからむと、現在の自衛隊をそのまま憲法に書くことはとても難しくなったという。
2018.07.01
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私:2009年に導入前された裁判員制度。 この制度が始まった頃、俺に一度、選任通知がきたことがあり、宝くじが当たったようだと喜んで、裁判の中身を体験したく裁判所に出頭したが、20名位いて、裁判官・弁護士などと数名ずつ面談し、そこで、健康上や、仕事の都合で、裁判員ができない人などは辞退を申し出ていた。 待っている間、扱う事件の内容が実名で掲示されていて関係者は、辞退することになる。 たしか、殺人事件ではなかった。 面談が終わって、辞退を了承された以外の人たちで、また、抽選で数名選ばれたが、俺はこの抽選で落ちた。 辞退者が多いので多くの余裕をみて、出頭要請をしていたんだね。 ところで、9年たって、この制度に問題が多いことが、本書で指摘されている。 運用面から見ても裁判員制度はすでに破綻しつつあり、16年現在、選任手続きのための出頭に応じない「無断欠席者」は37%、裁判員を辞退する人は65%。 世論調査では約8割が「参加したくない」と答え、その理由は「的確に判断する自信がない」などで、本音をいえば、裁判員なんか誰もやりたくないのだ。 A氏:量刑が変わる、死刑が無期懲役になる、甚だしきは有罪が無罪になるなど、控訴審で判決が覆るケースも少なくない。 裁判に「市民感覚」を反映させるというのが導入の理由だったはずだが、控訴審でひっくり返るなら、何のための「市民参加」かわからない。 評者は、裁判員制度は司法のポピュリズムに関係していると著者は指摘しているという。 民主主義は政治に民意を反映させるしくみだが、民意はときに暴走する危険をはらむ。 司法はそこに自由主義の観点から歯止めをかける役割を果たしてきたはずだ。 〈裁判員制度は国民の司法参加によって、司法を法の支配ではなく、多数の支配のための機関に変えてしまいました。これでは、三権がいずれも多数支配の原理によって運用されることになり、権力の抑制・均衡が働く余地はありません〉〈司法を「民主化」してはならないと述べたのはそのためです〉と著者はいう。 私:評者は本書の読後感として「刑事裁判は人の命にかかわる事案だ。医師の資格を持たない素人に医師の代行が務まるだろうか。 中高生でも理解できるやさしいタッチで書かれた良書。しかし、その批判と問いかけは鋭く、重い」という。 果たして裁判員制度の見直しは、いつ、行われるだろうか。
2018.06.30
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私:ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル氏の著書「なぜ世界は存在しないのか」がベストセラーになっている。 そのガブリエル氏が来日し、東京・築地の朝日新聞東京本社読者ホールで12日、哲学者の國分功一郎氏と対談。 政治や経済の「危機」の解決に、「民主主義」は役立つのかなど、「民主主義」の原理を見つめ直す議論が繰り広げられた。 この記事はそれをまとめたもの。 A氏:まず、ガブリエル氏は、「民主主義」の誕生の歴史をひもときながら「人間が人間として存在するために譲れない諸権利(=人権)に対応し、その権利の実現を目指す政治システム」だとして、「民主主義」に内在する価値として「平等」を重視していることを明らかにした。 例えば、古代ギリシャの「民主主義」は「奴隷制」、フランス革命後のナポレオンによる「民主主義」の試みは「帝国主義」という矛盾を抱えていたがゆえに、失敗。 「みんなのための」「民主主義」のはずなのに、その最も重要な価値の普遍性を実現できなかったことが共通の原因だと、ガブリエル氏は語った。 「危機」は現代にも通底し、「途上国の人が先進国の人のためにTシャツを作っていて、大勢の人たちが自分たちのために働いているのが(先進国側から)見えない状況」は不平等で、非常に深刻な問題だと指摘。 私:國分氏はこれを受け、「メンバーシップの平等」の問題を提起。 例えば、昨年のフランス大統領選で、決選投票まで進出した右翼政党の候補マリーヌ・ルペン氏の「フランスのことはフランス人が決めよう」という発言は、「外国人は入れるべきではない」という排他的な主張でもあり、國分氏は「決定権における平等の問題が排除に結びつく場合がある」と述べ、グローバル社会のなかで、政治的な決定権をどこまで、どう与えるかが重要な問題だと指摘。 これに対して、ガブリエル氏は、「『民主主義』の本質は『国民国家』と相いれない」と断言し、「気候変動や経済的格差といったグローバルな性格を持つ問題に、私たちは国境で線引きして『ここからは関係ない』とは言えない」という。 「国民国家」の「枠外」に放出された難民や移民も、本来は「民主主義」の下で自分たちの人権を求めることができ、「彼らはまさに『民主主義』者っで、人権を自分たちのものにしたいと言っている」とガブリエル氏はいう。 そして、「民主主義」の価値を重視する立場から、難民・移民の人権に繰り返し言及した。 A氏:「民主主義」の限界を指摘したうえで、ガブリエル氏が強調したのが「(『国民国家』を超えた)シチズンシップを与える『民主主義』の形式」への転換。 ガブリエル氏は、多様な含意を持つ「民主主義」について、「普遍的な価値システム」としての「民主主義」の重要性を強調し、「『主権』という概念はいりません。主権なしに新しく「民主主義」について考える必要があります」と述べた。 私:最後の論点が、「立憲主義」と「民主主義」の関係。 「立憲主義」とは、簡単に言えば「民主的に決めれば何をやってもよいわけではない」(國分氏)ということで、「民主主義」体制下で権力は、憲法によって制約を受ける。 ガブリエル氏が住むドイツは、こうした発想が特に強く、ナチスドイツスへの反省から、戦後のドイツの憲法(基本法)は、手続きとしてではなく、価値としての「民主主義」を重視しており、「国家は単なる形式的なシステムではなく、倫理的な基礎が必要です」とガブリエル氏はいう。 國分氏は「下からの『民主主義』」と「上からの『立憲主義』」の衝突の問題に言及。 下から民主的に決めた事項に、「立憲主義」が「それはダメだ」と突きつける。 これに対する民衆の反発をどう考えればよいのかと問う。 これに対し、ガブリエル氏は、「だれかを拷問するかどうかを民主的な投票で決めてはいけない」と例示し、「民主主義」の価値の重要性を、「民主主義」によって否定することはできない、とする。 そのうえで、立憲的な価値を前提として共有することの重要性と、その具体的手段として子どもたちへの倫理教育をあげた。 A氏:質疑応答では「多数決は平等なのか」という視点が話題になり、「少数意見の切り捨て」になり、「『民主主義』の理念から隔絶している」との声があった。 國分氏は、日本で「民主主義」=多数決となる傾向は「変なこと」と指摘。 私:ガブリエル氏は、ドイツでは多数決ではなく、合意を形成していくことが重視されていると話し、少数意見を重視する一つの提案として、議会の公聴会の委員の3分の2を野党推薦にし、議論を通じて同意を生み出す仕組みを制度化したらどうか、と語った。 我々は、日常「民主主義」と簡単に言っているが、政治や経済の「危機」の解決に、「民主主義」は役立つのか、現実の限界にぶつかって、大いに疑問に思うことが多いね。 そうかと言って、それを否定はできないしね。
2018.06.29
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私:親イスラエルのキリスト教福音派は、聖書の記述を忠実に信じるとされる米国最大の宗教勢力で、人口の約3割を占めると推計され、中絶禁止や同性婚に反対。 1980年のレーガン大統領の当選のころから政治への影響力を強めた。 トランプ氏の当選には、敬虔な福音派であるペンス氏を副大統領候補に据えるなど、福音派へのアプローチも大きかったとみられていて、その公約の一つが、イスラエル大使館のエルサレム移転だった。 A氏:福音派のイスラエル支援のよりどころは、旧約聖書の記述で、神は、アブラハムと約束を交わし、アブラハムの子孫であるユダヤ人にカナン(パレスチナ)の地を永久に与えるとする。 私:もともと、イエスを救世主と認めないユダヤ人は、キリスト教世界において長く差別されてきて、暴力的な迫害はたびたび起き、ナチス・ドイツのホロコーストにまで至った。 それが、福音派とイスラエル支援はどうして結びつくのか。 「熱狂する『神の国』アメリカ』の著者、松本佐保・名古屋市立大教授(国際政治史)は「聖書に立ち返る16世紀の宗教改革を経て、英国にピューリタンが生まれ、そこで強調された終末論と、その際にどうすれば救われるかという救済神学の影響がある」と言う。 新約聖書のヨハネの黙示録では、イエスが再臨して最後の審判を下すが、ユダヤ人がエレサレムに集まることが再臨の条件となる。 このような理由からキリスト教徒がユダヤ人のエルサレム帰還を支援する考えは、キリスト教シオニズムと呼ばれ、19世紀末ごろに米国に渡って、より純粋な信仰として広まり、聖書を忠実に解釈する教義のため、似たような傾向の福音派に浸透していった。 一方で、そこには「キリスト教徒にとって自己中心的な側面もある」と松本教授は言う。 エルサレムに集まったユダヤ人はイスラム教徒らと戦い、多くの犠牲者を出すが、その後、キリスト教徒が来て、生き残ったユダヤ人もキリスト教に改宗することで救済されるという解釈もあるという。 A氏:藤本龍児・帝京大准教授(宗教社会学)は、米国のイスラエル寄りの姿勢には、豊富な資金力を持つユダヤ人のロビー活動が知られるが、より熱狂的に支持しているのは福音派だ、とみる。 米国で調査機関が数年前に行った調査では「イスラエルは神がユダヤ人に与えたものか」という質問に「はい」と答えたのは、ユダヤ人が40%だったが白人の福音派は82%に上った。 私:大使館移転には、カトリックのローマ法王が懸念を表明し、パレスチナ人の抗議デモで死者が多数出た。 国際的な常識からするとトランプ氏の暴挙に映るが、移転の法律は95年に成立し、歴代の大統領が先送りしてきたのが実態。 藤本教授は「聖書に基づいた世界観を根底に置いた宗教国家が米国だ。中絶など内政だけでなく、外交にも影響している」と話す。 まさに「『神の国』アメリカ」の側面だね。
2018.06.28
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私:最近の大阪北部地震で、水道管が破損し、多くの世帯で断水したが、水道管の法定耐用年数は40年なのにそれを超えた老朽管が3割くらいあったという。 何故、老朽化を放置したのかの原因追求は直接言及はないが、背景は浦上拓也氏が詳しく説明。 浦上氏によると、水道法では水道事業は、「原則として市町村が経営する」とされていて、 現在の上水道の普及率は約98%。 水道が地方にも広がり、爆発的に普及したのは、戦後の高度経済成長期。 人口が増え、経済が成長すれば、需要が高まり収入が増え、安い水を供給でき、経営も順調。 A氏:しかし、人口が減るなか、水道事業は拡大期から「維持、管理」の時代を迎えていて、約50年後の人口は9千万人を下回ると推計されるが、厚労省は水需要が約4割減ると予測。 さらに、水をあまり使わない、節水意識も高い高齢者の割合増や、トイレや洗面所、洗濯機なども節水型となり、水の需要を押し下げており、さらに、最近は災害への備えもあり、病院や工場が敷地内で井戸を掘り、地下水を浄化して使うことも増えている。 水道料金は基本料金と、使用量が増えるほど割高になる従量料金とで構成されていて、基本料金内に収まる世帯が増えれば、事業収入は加速度的に減り、水需要減で水道事業が数億円単位の減収となっている自治体もある。 私:一方で、水道を維持するコストはかさみ、水道管の法定耐用年数は40年なので、1960年代後半から70年代にかけて水道整備が盛んだったころの水道管の減価償却期間は過ぎており、各地で漏水や破裂事故が多発し、地震のたびに事故が拡大する。 厚労省によると、水道管(基幹部分)の耐震適合化率は、2016年度で4割未満。 更新と耐震化は緊急の課題だが資金は十分でない。 大阪の場合も資金難だったのか。 水道管工事をする民間の技術者の高齢化も問題で、若者はこうした仕事を嫌い、後継ぎがおらず、人手不足で工事費も高くつく。 また、多くの自治体では、経費削減のため、職員を減らしていて、首長が水道事業について理解がないと、水道部門の職員を削減したり、配置転換したりするので、現場をよく知り、経験豊かな職員が育たない。 地方自治体の水道事業者は1300余りあるが、とくに困難に直面しているのは、経営基盤の弱い地方の小さな自治体で、安全で安い水が供給されなくなれば、人口流出に拍車がかかり、自治体の存続にかかわる。 A氏:浦上氏は、市町村単位ではなく都道府県や、市町村が共同出資する一部事務組合(企業団)が水道事業の主体となるよう、水道法の改正も必要だと指摘し、このまま何もしなければ、水道事業は立ちゆかなくなり、次世代に負担を押しつけるわけにはいかないと危機を警告する。 私:橋本淳司氏も大阪北部地震で注目されたように、水道インフラは全国で老朽化していると、冒頭で指摘している。 そして、設備更新のための料金値上げも各地で相次いでいて、現在の設備をそのまま維持、更新すれば、利用者負担は際限なく増えるという。 将来の水道料金の最新予測の推計では、全国の水道事業者の90%で2040年までに値上げが必要になり、4割では30%以上と大幅になり、中には3、4倍にはね上がり、20立方メートルあたり3千円台が、1万6千円と予測された地域もある。 昭和時代の人口増に慣れ、さらなる人口増を見込んで建設した浄水場や管路は、結果的に過大投資。 対策として、以前よりも水道水を使わない時代に応じて、インフラの管理を考える必要があり、縮小社会に合わせた水道インフラの縮小、ダウンサイジングだと、橋本氏はいう。 まずは取水源だが、新たに利水目的のダムは必要ないし、老朽化したダムは順次廃止。 浄水場などの設備も、不要なものは更新せずに廃止。 A氏:安全で安い水道を維持するための広域連携などの方策はこれまで、厚労省が検討してきたが、そこへ安倍政権の成長戦略として民営化方針が滑り込んできた。 施設所有権は自治体が持ち、運営権を民間企業に売却するコンセッション方式の導入をめざしていて、今国会には、この方式を促す水道法改正案が提出されている。 これについて、橋本氏はいくつか問題点を指摘している。 まず、真に課題を抱える小さな市町村では、民営化は解決策にならない。 また、災害時に、民間企業の社員を設備の補修や点検にどこまで動員できるかも問題。 私:事業運営が不透明になる心配もあり、民営化の優等生と言われてきた英国でも今年に入って、水道事業会社は巨額の利益をほとんどすべて経営陣への報酬や株主への配当に回し、税金を支払っていないと指摘され、英国では再公営化の議論が起きている。 それでも、日本でいまから民営化を促すのなら、経営を透明化し、水道の私物化を防ぐ方策を併せて考えるべきだと、橋本氏は指摘する。 水需要が減少し、維持費が増加する水道業に民営化は向くのだろうか。
2018.06.27
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私:秀吉の朝鮮出兵の目的はよくわかっておらず、従来は「秀吉の誇大妄想の結果」「家臣に恩賞として与える土地が不足していたため」などと考えられてきた。 これに対し、宮城学院女子大学の平川新学長(日本近世史)が、4月に刊行した著書「戦国日本と大航海時代」で、秀吉は当時、世界の覇者となったスペイン・ポルトガルのアジア支配に対抗するために出兵したとする学説が発表された。 A氏:スペイン・ポルトガル両国は1494年、世界を分割支配することで合意した「トルデシリャス条約」を結び、領土拡大に向けて動き始める。 ポルトガルはインドのカリカットやゴアに拠点を建設し、マレー半島のマラッカを攻撃して勢力下におき、一方、スペインは艦隊をフィリピンのセブ島に派遣し、マニラを占領。 私:やがてスペイン・ポルトガルの両勢力は日本に目をつける。 1549年にはポルトガル系の宣教組織であるイエズス会のフランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸。 80年代にはスペイン系のフランシスコ会士も来日し、カトリックの布教が盛んに行われた。 しかし、そんな宣教師の多くが「征服のための先兵」だったとみる研究者は多く、イエズス会日本準管区長のガスパル・コエリョはフィリピン布教長にあてた85年の手紙で「早急に兵隊・弾薬・大砲、数隻のフラガータ船(軍船)を派遣してほしい。キリスト徒の大名を支援し、服従しようとしない敵に脅威を与えるためである」と書いた。 平川氏は「コエリョは大名を改宗させ、その武力で中国・明を征服しようとしていた」といい、「宣教師らは、キリシタン大名は彼らの指示に忠実に従うとみていた。だから日本支配についても楽観していたようです」という。 A氏:このイエズス会の野心を、秀吉も警戒していたようで、キリスト教徒の国外退去を命じた87年のバテレン追放令は、宣教師の軍事力や信徒への影響力の排除が目的と平川氏はみる。 この一連の流れの中で始まったのが朝鮮出兵。 92年5月、朝鮮・漢城の陥落を肥前名護屋城で聞いた秀吉は、その後の予定として、明の征服後はおいの秀次を征服地域の関白とし、自らは東シナ海交易の拠点だった寧波に居住して、天竺をも切り取ると、手紙で秀次らに書き送っている。 前後して、琉球と高山国(台湾)にも服属を要求し、中でもスペインのフィリピン総督には複数の書簡を送り、「旗を倒して予に服従すべき時なり」「多数の武将がマニラ占領を予に求めている」と恫喝。 平川氏は「秀吉の目的は、単なる朝鮮侵略ではなく、その先の唐・天竺・南蛮(東南アジア)を服属させることにあった」と推測し、「フィリピン総督への書簡で秀吉は『カトリックの布教は、その国を侵略する策略である』と糾弾した。布教を隠れみのに征服を狙うスペイン・ポルトガル勢力を、逆に服従させようとしていた」という。 私:実際、こうした秀吉の強硬外交や軍事行動は、脅威に映ったようで、マニラが秀吉の攻撃目標になったと恐れ、総督の使者が「大きな城壁を備えておくことが重要」と、マニラの監査官に書き送った手紙が残る。 秀吉以前、スペイン・ポルトガルでは日本征服論が盛んだったが、朝鮮出兵以降、そうした意見は鳴りを潜める。 平川氏は「他国への侵略行為を肯定するつもりは毛頭ないが、出兵が結果的にスペイン外交に方針転換を促した可能性はある」という。 時代劇では晩年、老いさらばえ、判断ミスなどが頻発したように描かれる秀吉だが、それをはっきり裏付ける一次史料は存在せず、平川説は、当時の世界情勢という視点から、秀吉外交に再考を迫った新説と言える。 なお、宣教師が本国とやりとりした史料には、徳川家康は「Rey(国王)」ではなく、「Emperador(皇帝)」、日本は「Imperio(帝国)」と記されていて、当時、欧州で皇帝を称したのは神聖ローマ帝国の統治者のみで、英国もフランスも一格下の王国に過ぎず、一方、家康は神聖ローマ皇帝と同格で、各地の大名が国王格(たとえば伊達政宗は「奥州の王」)だった。 当時の世界の動きの視点から見た新しい日本史だね。
2018.06.26
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私:パルムドールを受賞して以降、SNS上で「文化庁の補助金を受け取っていながら、日本の恥部を描く反日映画を作った」と攻撃されたり、政府の「祝意」を受けることを是枝監督が「公権力とは距離を保つ」と断ったりした。 そんなニュースをマスメディアが拡散することで、映画の知名度が大きく広がった。 是枝監督は、「芸術への助成を“国の施し”と考える風潮は映画に限ったことじゃない。大学の科研費もそうだし、生活保護世帯への攻撃も同じです。本来、国民の権利のはずですよね。今回、政府の補助金がどうあるべきかが可視化されたことが一つの成果だと思っています」という。 A氏:また、監督は、「補助金をもらって政府を批判するのは真っ当な態度なんだ、という欧州的な価値観を日本にも定着させたい。いま、僕みたいなことをしたら、たたかれることは分かっています。でも、振る舞いとして続けていかないと。公金を入れると公権力に従わねばならない、ということになったら、文化は死にますよ」という。 私:そして、さらに監督は「東京・目黒で少女の虐待死がありました。あの両親は断罪されるでしょう。しかし例えば独りで子育てしている母親は『一歩間違えたら自分も……』と思う時があるんじゃないか。新幹線の殺傷事件もそう。セキュリティーチェックを強化せよという話というよりも、人々を極限まで追い込まないためのセーフティネットを充実させることでしか、こうした犯罪は軽減出来ません」という。 A氏:SNSが浸透した現代社会では、意見を同じくする人たちにしか響かない言葉ばかりが勢いよく飛び交っているが、意見を異にする人たちに伝えるにはどうすればよいか、監督は「僕は意図的に長い文章を書いています。これは冗談で言っていたんだけど、ツイッターを140字以内ではなく、140字以上でないと送信出来なくすればいいんじゃないか(笑)。短い言葉で『クソ』とか発信しても、そこからは何も生まれない。文章を長くすれば、もう少し考えて書くんじゃないか。字数って大事なんですよ」という。 是枝監督は以前から、現代のメディアが陥りがちな「分かりやすさ至上主義」に警鐘を鳴らしていて、彼の映画も、説明しすぎないことが特徴になっている。 監督は「だって、世の中って分かりやすくないよね。分かりやすく語ることが重要ではない。むしろ、一見分かりやすいことが実は分かりにくいんだ、ということを伝えていかねばならない。僕はそう思っています」といいう。 私:是枝監督の著書「万引き家族」については、23日の「書評」欄に美術家・横尾忠則氏の書評がある。 小説や映画の中に描かれている家族を本物だと信じようとしているが、最初から家族は崩壊しているということを隠蔽したうえでの約束事。 つぎはぎだらけの家族を修復しながら、さもここに幸福があると小説や映画は語るが、現実を虚構化して現実の家族から逃避しながら、道徳や倫理をふりかざし、真実から目を逸らすのであると横尾氏はいう。 そして、本書はそんなニセ家族を見事に解体してくれ、そして本物の生き方を示そうとしたという。 本書の前半は現実を幻想のように生きる姿が描かれるが、後半になるに従って小さな傷口〈亀裂〉が開き始め、その傷を必死にふさごうと、家族は思いっきり幸福と平和を擬態する。 A氏:そして解体された家族はひとりひとりが強烈な感傷と対峙しながら、傷を負った魂と化して自己救済の旅に立とうとする。 人間の悟性がこれほどまでにニヒリスティックに造形された物語は知らないと横尾氏はいう。 うそ偽りのヒューマニスティックな〈家族〉は、この「万引き家族」によって封印されたという。 私:東京・目黒で少女の虐待死にふれ、独りで子育てしている母親は「一歩間違えたら自分も……」と思う時があるんじゃないかという是枝監督の言葉の意味は深いね。
2018.06.25
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私:横浜国立大が、来年度から法科大学院の学生募集をやめると表明。 これで、県内にできた四つの法科大学院がすべて募集を停止することになった。 横浜国立大が法科大学院を設置したのは2004年4月。 設置当初は人気が高く、04年度入学者の選抜では志願者が970人(定員50人)に達したが、今年度入学者の選抜では志願者は33人(同25人)にとどまり、入学者も9人のみ。 A氏:文科省によると、全国的に法科大学院は07年度の74校をピークに減少が続き、これまでに全国で計38校が廃止または募集停止を表明。 神奈川県内では関東学院大、神奈川大に続き、昨年5月に桐蔭横浜大が募集停止を発表。 最後に残っていたのが横浜国立大だった。 私:撤退が続出した背景には、政府の法曹需要の予測がはずれたことや、司法試験をめぐる制度の改正などがある。 まず、法曹需要だが、裁判所が受理した事件数は、17年は約360万件と、04年比で約4割減少し、訴訟の数からみれば、法曹需要は伸びていない。 制度からみると、11年には、法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格を得られる「予備試験」制度が始まった。 この制度で、直近の司法試験では合格者の約2割を占め、法科大学院に通う時間と費用を節約するルートとなっている。 A氏:また、補助金問題もある。 15年度には、文科省が司法試験の合格率などによって各校への補助金を削減する制度を導入した。 18年度の横浜国立大が法科大学院の補助金は、入学者数の低迷もあり、基準額から4割減額されている。 私:法科大学院支援委員会の高岡俊之副委員長は「試験や補助金の制度変更がマイナスにはたらいた。法曹需要の読み誤りで弁護士の就職先が減ってきていることも、法科大学院の魅力を減少させている現状がある」と指摘。 2004年4月に横浜国立大が法科大学院設置以来、地元弁護士会から講師を受け入れるなどして「地域連携型」の法科大学院をうたい、169人の司法試験合格者を出し、大学によると、うち51人が県内を拠点に弁護士として活動しているというが、横浜国立大の法科大学院撤退で、このような地域の活性化も減退することになるのだろうか。
2018.06.24
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私:日本の「医療の地域格差」というから、大都市とへき地という旧来型の図式の問題かと思ったら全然違うんだね。 人口10万人当たりの医師数で比較すると埼玉県が全国最低の160・1人で、全国平均の240・1人を大きく下回っている。 47都道府県別で見ると、茨城県(下から2位)、千葉県(下から3位)、神奈川県(下から9位)といった東京のベッドタウンを抱える地域も埼玉県と同じような状況。 名古屋圏や関西圏でも一部似た地域がある。 1位は、なんと徳島県。 A氏:この問題で、伊関友伸氏は、なぜ、この格差が生まれたのかを説明し、武藤真祐氏はその解決方法を提案している。 まず、ベッドタウンに共通するのは昭和の高度経済成長を支えた団塊世代が集中して暮らす地域であること。 俺の住む横浜市など、山林や田畑中心の広大な戸塚区に一挙に民族移動のように大手デベロッパーによる住宅地が開発され、行政も人口増で戸塚区は栄区という新しい区を作って対応したくらいだ。 これから「2025年問題」と言われ、この世代の高齢化に伴い、医療や介護の需要が爆発的に増えていく時代に入る。 私:医師の視点から見ると、医療行為をするには医師免許が必要だが、裏を返せば医師免許があれば、どこに勤務しても、どのような診療科を標榜しても個人の自由。 医師偏在の是正策が検討される際、議論になるのが、憲法の職業選択の自由で、勤務地や診療科を医師個人の意思でなく、強制的に決められることへの抵抗感が強いことだ。 2004年に導入された新医師臨床研修制度では、医師免許取得後の2年間、内科、外科、小児科などで研修し、研修する病院は本人の希望で決まるため、大学病院の医局に所属する医師が減り、地域への医師供給機能が大幅に低下。 A氏:医師の偏在は、地域における医療提供力の格差を生み、16年の119番による救急の覚知から、病院などに収容されるまでの平均時間は、東京都が50・6分、千葉県が44・1分、埼玉県が43・6分に対し、福岡県は30・7分。 また、医療機関の病床数も西日本は、東日本に比べて多く、日本は国民皆保険制度だが、暮らす地域によって格差が生じているのが現実。 今、医師の働き方が問題となっていて、長時間労働を是正していくと、地域や医療機関によっては、今までのような医療を提供できなくなる可能性がある。 とはいえ、無理に若手医師に医師不足の地域への勤務を求めても、医師の士気は下がるだけで、伊関氏は、格差是正には、自治体や住民も変わる必要があり、都道府県に策定が義務づけられている地域医療計画を基礎自治体である市区町村でも作るべきだと考えているという。 私:解決策として、在宅の患者さんを往診するクリニックを、都内4カ所と宮城県石巻市で運営し、またシンガポールでは、在宅医療サービスと、それを支えるためのICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の企業を経営している武藤真祐氏は、医師や看護師、介護スタッフなど、チームで医療を支えるのが大切だと考えているという。 シンガポールでは政府が国民に医療用IDを割り振り、公立病院の電子カルテは共有されていて、患者が症状に応じて複数の病院を掛け持ちしても、検査や投薬の無駄な重複を防げているから、日本でも、病院間で情報共有した上で、地域の病院同士で受け持つ診療科を分担し、一つの病院に特定の診療科の医師と患者が集まれば、治療レベルは高くなり、患者にとっても安心で、医師も成長できると、武藤氏はいう。 A氏:限られた医師と病院で地域医療を回していくには、ICTやAIの利用が不可欠だね。 日ごろからセンサーなどを使って患者の体の状態をモニタリングできれば、病院との距離にかかわらず早めに医師や看護師が適切な助言や対応をすることができ、重症化を防げ、慢性疾患のほか、脳梗塞や心筋梗塞の予防のために高血圧をコントロールするのにも役立つ。 入院や再入院を減らす取り組みが重要だと武藤氏はいう。 また、武藤氏は、「高齢者の増加や財政を踏まえれば、現在のような低負担で高品質を求める医療はいつまでも続きません。選択と集中の時代です。医療に何を期待して、何を我慢するのかは、国民のコンセンサスが必要です。医療の地域格差はなくならないとしても、無駄をなくし、少ない医師や病院で対応できるようにしていく――。そうすれば格差は思ったほど問題にならなくなるでしょう。そんな発想の転換が必要だと思います」という。 団塊世代の高齢化を迎える2025年問題対策に、これから発想の転換ができるか勝負だね。 大きな宿題だね。
2018.06.23
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私:永守重信氏は、日本電産の創業者で会長兼社長。 永守氏は「新聞をはじめメディアで『働き方改革』のニュースを目にしない日はない。だが、働き方改革は生産性の向上や、そのための投資や税制、女性の活躍などさまざまな面があり、企業経営と政策の組み合わせで論じるべきだが、メディアの報道からは見えてこない」という。 A氏:君も「働き方改革」のマスコミの扱いが、残業時間や過労死問題に集中していて、中心となるべき生産性の向上にあまりふれていないことを指摘していたね。 永守氏は、社員には残業ゼロが目的ではなく、あくまで生産性を2倍にするんだと説明した。 減った残業代の半分はボーナスに上乗せし、残り半分は生産性を上げるために英会話や管理職の研修に振り向けている。 英会話ができないと、外国人との商談に通訳を連れていくので、2人で1人分の仕事をすることになり、生産性が半分になってしまう。 管理職は部下を野放しにせず、仕事の内容や量を見て、残業が必要なのかどうかを見極めないといけない。 私:永守氏は、「英会話が重要なのは、ドイツを見ればよく分かる。当社が工場を持つ国では、ドイツのグループ会社が最も生産性が高い。平均しても『日本の2倍』だ。にもかかわらず、まったく残業しない。しかも、夏休みは1カ月ある。それでも業績がいいのは、一つには英会話ができるからだ。ヨーロッパの非英語圏ではドイツは最も英語ができると思う」という。 永守氏が28年前、ドイツに行ったとき、英語を話せる人は少なかったが、その後、状況が大きく変わり、ドイツ国内産業が国際競争に負け、残った自動車と工作機械を世界中で売るには、ビジネスでの共通語である英語が欠かせないと国を挙げて英会話を身につけさせた。 それが、「働き方改革」だね。 だから、日本も英語を話せるような教育をすべきだと永守氏はいう。 A氏:日本電産では、生産性を上げるため、2016~20年に1千億円を投資。 工場で自動化するための設備投資や、在宅勤務の社員がテレビ会議に出るためのカメラ付きのパソコンへの買い替え、研究所の古い分析装置も新型にした。 それでも16、17年度は増収増益で最高益を更新。 永守氏は、「『働き方改革』は経営そのもので、企業経営を抜きに制度づくりは語れないはずだ。政府やメディアには『働き方改革』と企業経営の双方を見据えた議論をしてもらいたい」という。 私:その通りだね。 22日の朝日新聞で、「医療現場も働き方改革 研修医自殺・新潟の病院、長時間労働是正」という見出しで「働き方改革」を報じているが、やはり、生産性向上でなく、残業時間抑止だ。 医療の専門家は、「医師の労働時間を短くするだけでは、夜間に患者を診る医師が不足して地域医療が破綻する」と訴えるという。 生産性を向上しないで、残業時間を減らそうとするからだね。 順序が逆だね。 A氏:同日の朝日新聞の経済面では「食材加工、ロボットお任せ 技術進化・人手不足で普及」という見出しで、自動車や電機の工場で一般的な産業用ロボットが、食材の加工現場にも広がってきたと報じている。 技術の進化と人手の不足が普及を後押ししているとしているが、ロボットはホタテ殻開け、1分96枚と手慣れた従業員11人分の働きという。 ジャガイモから有毒の芽を取り除くロボットも現れ、イモを回転させながら芽の位置を把握し、正確に削り取り、1個あたりの作業時間はわずか2秒。 単純労働をロボットに任せれば、限られた人手を付加価値の高い仕事に回せる。 日本ロボット工業会によると、産業用ロボットの2017年の国内での出荷先は半導体などの電気機械が4割、自動車が3割を占め、食料品分野は2%にとどまっており、この分野へのロボット投資効果が経営的にみて期待されるね。 私:永守氏の言うように、残業時間問題でなく、こういう本格的な生産性向上による「働き方改革」を中心にマスコミはとりあげるべきだね。
2018.06.22
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私:このコラムのタイトルの「見る 聞く 言う」は、インドのモディ首相が安倍首相に贈った白い大理石製の「『見る 聞く 言う』の三猿」を指す。 しかし、コラムの中身はインドから始まる国際情勢。 「成功するには日本をしゃべらせ、インドを黙らせる」という国際会議にまつわる伝説があり、日本でも雄弁な政治家や官僚は増えたと聞くが、かつては主張の弱さで知られた。 逆に、問われなくても激しく意見を述べ、まとまりかけた議論を揺さぶるのがインド。 誇張が混じるとはいえ、インドは自分は他者とは異なる前提で独立した意見を述べあう社会で、十数億人がひしめくなか、その多様性がインドという国家をつくっていると、吉岡氏はいう。 A氏:しかし、18日のブログ「インドの教科書、消された偉人 モディ政権、強まる排外意識」でふれたように歴史を書き換えまでして、ヒンズー教独裁国家に進んでいるのは多様性国家が変質しつつあるようだね。 私:台頭する中国と向き合うため、日本にとってインドの重要性が高まっていて、米国とともに「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げ、関係を強化している。 インドも国境紛争を抱えるうえ、スリランカ、モルディブ、パキスタンと周囲の港の整備を続ける中国を警戒する。 習近平政権の対外戦略「一帯一路」にも冷たく、中国政府の情報収集の拠点とみて、中国が世界に展開する中国語などの教育機関「孔子学院」の設置にも消極的。 中国が主導して設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)は来週、3回目の年次総会をインドの商都ムンバイで開くが、中国研究で知られるネール大学のコンダパリ教授は「中国に地域をハイジャックされないために加盟したのだ」という。 自らもメンバーの組織がかかわれば、情報も得られるし、誘導もできる。 日米は入らなかったが、インドの出資比率は中国につぐ2番目で、副総裁のイスにも座る。 中国がAIIBを国際機関として育てるなら地域の大国インド抜きはありえない。 米国との摩擦が強まるなか、インドとの関係は重みを増し、その足元を見ながら、カネを出すなら口も出すで、審査中も含めると全45件のうち、12件がインドでの事業。 A氏:歴史的な南北首脳会談が開かれた4月27日の約1カ月後、インドのモディ氏はシンガポールで開かれた国際会議の演説で、「インドと中国の協力がアジアや世界のより良い将来につながる」と中国を刺激しない言葉を選んだ。 対中牽制を期待していた日本政府の関係者は拍子抜けしたようだったが、地域の重心がインド洋へ移ることを心配する東南アジアの国々への配慮でもあり、中国とXXのどっちをとるかという踏み絵を嫌う彼らとうまく付き合うため。 私:ところで、トランプ米大統領の「暴言」に揺さぶられた6月上旬のG7。 タイの英字紙ネーションの風刺漫画では、メルケル独首相が「トランプ」赤ちゃんを必死にあやすが、おしっこをひっかけられていて、開催国カナダ、英仏の首脳が見守るが、なんと、イタリアと日本の首相の姿がない。 吉岡氏は、「正しい描写かどうかは別にして、今の日本のアジアにおけるイメージの一面だ。誰かの『腹話術』に聞こえたら、耳をそばだてるべきは後ろにいる人の言葉だ。インドほどでなくとも、身も心もどこかの国と、誰かと、一心同体はありえない。かの人の『暴言』の連投は、自らの言葉を取り戻す好機なのかもしれない」という。 かの人の「暴言」の連投とは、トランプ大統領のこと。 トランプ米政権は19日、国連人権理事会からの脱退を表明したね。 これも「暴言」の一つか、日本はどう対応するのか。
2018.06.21
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私:インターネット草創期は、わずかな人々に使われていた頃から、自由で開放的であるべきだという考えが根本にあったが、一方で米政府は、早くからネットから情報を取ろうとした。 しかし、スノーデン事件で米政府が大量の通信記録を集めていたことが暴露された後、批判を受けて「米国自由法」が制定され、政府によるネットの監視活動はある程度制限された。 逆に英国では、秘密裏にIT企業に広範な協力を求めるようになり、他国でも、政府がIT企業を通じて行う情報収集を合法化する動きが出ているという。 A氏:中国では、政府による監視を前面に出し、国民が悪さをしないよう抑える戦略をとっていて、中国でグーグルの検索が利用できた当時、禁止用語を打ち込むと一時的に使えなくなった。 監視されていることを国民に意識させるためで、欧米のようなひそかな情報収集とは違うという。 多くの中国人はプライバシーを政府に渡すことに嫌悪感を抱かない。 「ネット管理」は、技術的な問題よりもプライバシーに対する各国の考え方や文化が反映される。 米国では、インターネットは自由な言論空間であるべきだと考え、政府の干渉を嫌ってきた歴史があるが、一方、欧州連合(EU)は企業が個人情報をどれだけ持っているかを気にして、我々のルールに従わなければ域内で商売させない、という姿勢。 私:オブライエン氏は、「異なる価値観が台頭し、インターネットの世界は過渡期にある。今後、どの形の規制が普及するかは、各国がどの文化をモデルにして、どういう価値観を求めるかによるだろう」という。 フェイスブック(FB)の個人情報流出問題が起きたが、これは、誰の個人情報が流出してどう使われ、どんな結果を招いたかまで見えた非常にまれな例。 さらにこの情報が米大統領選でトランプ陣営に利用された点も怒りを買った。 多くの人は、個人情報を守ろうにも、なすすべがないと感じ、どこか気持ち悪いと思いながらFBを使い続けたのは、どうしたら状況を変えられるのかわからなかったから。 ネットは個人に等しく力を与えるはずだったのに、大企業が巨大な力を持ってしまい、FB問題はこの不均衡を是正する機会だと、オブライエン氏はいう。 他国でも今までは米国のIT企業を通じて価値観が浸透し、米国のやり方に合わせてきたが、それも変わるかもしれないという。 A氏:EUでは5月から「一般データ保護規則(GDPR)」が施行。 これは、企業や団体が欧州域外に個人情報を持ち出すことは原則として禁止で、対象は名前や住所、メールアドレスのほか、ネットを通じた商品購入記録まで幅広く、違反すると高額の制裁金が科される可能性がある。 欧州連合28カ国にノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインを加えた欧州経済領域で5月25日から導入。 これが、EU外でモデルになる可能性はあるが、懸念があるとすれば、かなりあいまいな言葉で書かれているところで、今後、EUの規制当局がプライバシー保護の名のもとに、ネットを管理し始める可能性は否定できなく、プライバシーだけでなく、言論の自由など他の権利も尊重する必要があり、バランスが求められると、オブライエン氏は指摘する。 私:中国型の管理(チャイナスタンダード)が世界に広まる可能性については、オブライエン氏は、「GDPRは他国からもいい規制だという声が多くあるが、中国に対して前向きな反応がほとんどないところを見ると、他地域に広がる可能性はまずないだろう。ただ、それぞれの国がどの方向へ動いていくのか注視していく必要がある」という。 「価値観の過渡期」とはそういう意味だろう。
2018.06.20
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私:俺がこないだ図書館から、本を借りたとき、本に「紙切れ」がはさんであった。 「紙切れ」には数箇所、書き込みがあると書いてあった。 図書館の貸出し担当者は、俺が本を返すときには、この「紙切れ」を忘れずに挟んでくれという。 A氏:要するに君が書き込みをしたのではないと立証できるというわけだ。 私:全国の図書館で、本がなくなったり、傷つけられたりするケースが後を絶たないということで、今週の「ニュースQ3」欄ではこの問題をとりあげているね。 九州大学の例から取りあげている。 福岡市西区にある九大の学生寮で3月下旬、清掃担当者がごみ袋に入った書籍計78冊を見つけた。 大半が「演習物理」「量子力学」といった理系の本で、いずれも行方不明になっていた付属図書館の蔵書で、うち36冊は裁断機のようなものですべてのページが切り取られ、背表紙だけになっていて、被害総額は約10万円。 宮本一夫・付属図書館長は「本は悲惨なダメージを受けている。倫理観のなさを危惧する」と嘆く。 A氏:原因は学生らに「自炊」と呼ばれている行為で、書籍を一ページずつ分解してスキャナーで取り込み、電子データ化する行為。 検索しやすく、かさばらないため利用者が増えているが、著作権法上、私的な利用に限られ、図書館の蔵書を勝手に裁断するのは論外。 電子犯罪に詳しい紀藤正樹弁護士は「自炊」について、「本そのものに価値を見いだしておらず、裁断にはちゅうちょしないのだろう」として「図書館のいまのセキュリティーでは、本の持ち出しを完全に防ぐのは難しいのでは」という。 私:多くの図書館には、ブックディテクションシステム(盗難防止装置)が導入されていて、本の裏表紙などに貼られた特殊なテープやICタグが、出入り口のゲートに反応すると、ブザー音が鳴る仕組み。 九大の図書館でもテープを貼っていたが、見つかった本はすべてはぎ取られていた。 私:蔵書の持ち出しには、多くの図書館が頭を悩ませてきており、東京都町田市の市立中央図書館は、1990年の開館から5年間で約6万7千冊が所在不明。 だが、盗難防止装置を導入すると、50分の1ほどに減ったという。 図書館の蔵書の「不明率」を調べたことのある筑波大学の歳森敦教授(図書館情報学)は「装置には一定の抑止効果はある」という。 それでも、その後も館内に置いてある雑誌や新聞の一部が切り取られる被害が全国的に多発。 A氏:東京都内の図書館では2013~14年、300冊以上の「アンネの日記」や関連書籍が破られる被害があり、昨年は郷土誌や記念誌が切り取られたり、破られたりする被害も各地で相次いだ。 モラル頼みの公共財をめぐり、不届き者とのいたちごっこが続く。 私:日本図書館協会理事で、福岡女子短大の永利和則特任教授(図書館学)は、利用者の良心に訴えかけるべきだと説き、有効な手立てとして、「『持ち出し厳禁』の貼り紙より、むしろ、『持ち出さないで』と声をかけることが実は有効。蔵書が被害にあっていることを館側が把握していると分からせることが抑止につながる」という。 しかし、出入りの多い図書館では、声掛けのタイミングがむずかしいね。 俺の利用している市立図書館では、ときどき、切り取った頁のある本など、被害のあった多くの本を展示し、訴えているね。 効果があるのかわからないが、図書館はなくなった図書数や、被害にあった図書数を定期的に大きく公表すべきだね。
2018.06.19
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私:インド西部ラジャスタン州で一昨年、公立校の社会科教科書から「初代首相ネール」の記述が削除され、「建国の父、ガンジーの暗殺」も触れられていないという。 「ガンジー」と「ネール」は、モディ氏率いる与党インド人民党のライバル政党、国民会議派のメンバーだったかららしい。 人民党の支持母体でモディ氏の出身団体でもある「民族義勇団(RSS)」は、「ヒンドゥー教の伝統によるインド社会の統合」を目指す。 モディ氏自身は表立ってガンジーを批判しないものの、RSSは「ガンジーもネールもイスラム教徒に弱腰でヒンドゥー教徒を苦しめた」と非難する。 A氏:一方、教科書に書き加えられたのはRSSの思想に影響を与えたサーバルカル。 「ヒンドゥー教国家」を唱え、ガンジー暗殺への関与が疑われた人物。 14年に国内紙が実施した世論調査では、教科書書き換えへの支持が69%に上った。 私:世界遺産にも歴史書き換えの波は押し寄せる。 ウッタルプラデシュ州は昨年つくった観光ガイドブックに「タージマハル」を載せなかった。 17世紀、イスラム系ムガール帝国の皇帝シャー・ジャハーンが先立った妻のために建てた墓だからだ。 ヒンドゥー僧侶出身で人民党のヨギ州首相の影響が取りざたされる。 ヨギ氏は「(侵略者が建てた)「タージマハル」はインド文化を代表するものではない」と発言したことがある。 ヒンドゥー至上主義の浸透にイスラム教徒は不安を隠せない。 政府系のマイノリティー委員会のザフルル・カーン委員長は「モディ政権はヒンドゥー教徒こそ『本来のインド人』で、イスラム教徒や少数派を『よそ者』と位置づけている」と指摘する。 A氏:国民約13億人のうちヒンドゥー教徒が約80%を占め、これに対し15%ほどのイスラム教徒は有力な全国政党を持たず、国民会議派を支持する傾向が強い。 モディ氏が首相に躍り出た14年の総選挙で人民党は第2党の会議派に大差をつけ圧勝。 デリー大学のサンジャイ・スリバスタバ教授(社会学)は「モディ氏は古代インドの優越性を強調してヒンドゥー教徒の誇りを刺激する。これを世界でのインドの存在感の向上や経済成長などが後押ししている」とみる。 インド憲法はすべての宗教を平等に扱う「世俗国家」を掲げるが、人民党にはこれを削除すべきだと公言する閣僚がいて、教科書の書き換えは、その地ならしとも指摘される。 私:危機感は歴史家にも広がり、歴史教科書の執筆に携わってきたアルジュン・デブ氏は、政府の歴史書編纂事業の責任者だったが、第1巻は出版したが、モディ政権発足後の15年に原稿を仕上げた第2巻は出版を差し止められている。 独立運動でのヒンドゥー至上主義者への言及が少ないのが理由らしい。 デブ氏は、「今の動きは、ゲルマン民族の優秀さを歴史から強調し、ユダヤ人を迫害したナチスと重なってみえる」と警告する。 ヒンドゥー教徒が多数とはいえ、過去の歴史的事実を書き換えるとはね。 インドは独裁色の強い国家になりつつあるね。 発展国の独裁色が強いのは、「独自の統治モデルを意識、『Gゼロ』世界、中国の好機 識者に聞く」のブログでふれた一種のチャイナ・スタンダード化かね。 中国も歴史を書き変えているね。
2018.06.18
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私:台湾からの旅行客をきっかけに麻疹(はしか)が流行し、6月までの患者数は160人を超えたが、これがきっかけで、日本は国際的には「ワクチン後進国」と呼ばれていることがオープンになった。 「おたふく風邪」ワクチンを導入していない国は日本、北朝鮮、東南アジア、インド、アフリカ諸国で、先進国日本の遅れが際立っているね。 A氏:日米のワクチン定期接種導入を比較すると、破傷風で51年遅れ、麻疹で15年遅れ、Hib (インフルエンザ菌b型)感染症で26年遅れ、水痘19年遅れ、ロタウイルス感染症7年遅れ。 私:中山哲夫氏は、日本は接種方法の改善や導入時期が遅れる「ワクチンギャップ」が長らく指摘されてきて、例えば、欧米では80年代後半以降に開発されたワクチンにより、Hib(ヒブ)(インフルエンザ菌b型)や肺炎球菌による子どもの死亡はすっかり見られなくなった。 一方、日本が両ワクチンを定期接種にしたのは13年で、それまでに何人もが亡くなったといい、「『ワクチンギャップ』の実体は、政策ギャップです。日本政府には感染症をワクチンで予防するという確たる方針がなかったのです」という。 日本のワクチン開発は80年代まで、それほど遅れてはいなかったが、70年代以降、天然痘ワクチン後の脳炎など、予防摂取後の死亡や障害が社会問題になり、国がその責任や補償をめぐり争ったため、各地で集団訴訟が相次ぎ裁判は長期化。 国に損害賠償を命じた92年の東京高裁判決などで決着したが、国は予防接種に消極的になり、ワクチン政策は約20年間止まる。 多くのメディアが被害者の悲惨な状況を報道したこともあって、子どもにワクチンを受けさせないという考えも広がった。 A氏:中山氏は、「ワクチンは国に導入の意思がなければ開発が進みません。政府は開発のみならず、海外から導入することもしませんでした。防げる感染症を防ごうとしなかった厚生行政の責任は重いのです」と指摘する。 欧米では感染症の発生動向を監視し対策を講じるという政府の戦略が明確だが、日本はその姿勢が貧弱。 例えば「おたふく風邪」は90年ごろ、ワクチンによる無菌性髄膜炎の副反応が問題となり、自己負担で受ける任意接種になったが、その結果、接種率が下がり、15、16年の2年間で少なくとも348人が「おたふく風邪」による難聴になった。 これは国の調査ではなく、日本耳鼻咽喉科学会による調査で明らかになった。 「おたふく風邪」ワクチンが定期接種となっていないのは、先進国では日本ぐらい。 私:ワクチンは開発、導入されたら終わりでなく、海外でも導入後に想定外の副反応が多発して中止になったワクチンがあり、重い感染症でもワクチンの効果で患者数が減ると、副反応対策の重みが増す。 そうした状況を常に注視し、根拠に基づいた対策を進めることが重要だと中山氏は指摘する。 A氏:矢野晴美氏は、ワクチンには圧倒的なメリットがあるが、残念ながら、一定の割合で副反応は出るという。 日本では救済のハードルが非常に高い印象があるが、手厚く救済すべきで、定期接種と任意接種で救済制度が違うのも問題だという。 米国では幼稚園から大学まで、それぞれ入学時に予防接種のチェックがあり、宗教上の理由やアレルギーなどがない限り、接種するが、メリットや副反応について、専門家が中学生にもわかるような言葉やイラストで伝えることにも熱心。 日本では予防接種のチェックが弱く、接種の意義も十分に浸透していない。 矢野氏は、医学部を卒業後、米国で感染症を学び、2000年に一時帰国して日米の違いに驚いたという。 早速、医療関係者のメーリングリストを作り、先進国の対策について情報を共有し、新型インフルエンザ対策の発生を経て国の意識も変わり、「ワクチンギャップ」は小児を中心にかなり解消されたが、現場をみると課題が残っていると、矢野氏はいう。 例えば、人間ドックや会社の健康診断の血液検査で麻疹、風疹、「おたふく風邪」、水ぼうそうの抗体を調べ、陰性ならば、予防接種費用の補助の提案を矢野氏はしている。 私:矢野氏は、理想を言えば、定期と任意の区別をなくして、小児、思春期、成人、高齢者のそれぞれで国が推奨する標準のワクチンが費用負担なしで打てるようになればという。 また、破傷風・ジフテリア・百日ぜきを含む混合ワクチンは現在、小児で定期接種しているが、67年生まれ以前は定期接種でなかったため、毎年100人前後の破傷風患者が出ている。 元気な人が突然亡くなったり、集中治療室で数カ月過ごしたりする。 こうしたことを分析しワクチン政策に組み込むには、日本は疫学の専門家がまだ足りない。 米国で麻疹は1回接種では不十分と気づいたのも、疫学調査で組織的にデータを集め解析した結果で、日本も人を育ててはいるが、感染の動向を監視するサーベイランスをさらに充実させる必要があり、予防にもっと重心を移し、当たり前のワクチンを当たり前に接種できるようにすべきだという。 A氏:一方で定期接種が増え、小児では小学校に入るまでに10種類近いワクチンを複数回、打たなければならず、予防接種法が、打ち方などを細かく決めすぎているとの批判もあり、法改正なしに対応できる部分もあるが、同時接種や混合ワクチンをより積極的に取り入れて、負担を軽くすることも大事だと矢野氏はいう。 WHOが途上国も含めて全員接種を勧めるB型肝炎ワクチンも、日本は、世界に大きく遅れてようやく小児の定期接種が始まったが、肝炎や肝がんを減らすために成人にも広げるべきだという。 矢野氏は「感染症は海外から入ってくる前提で考えなければいけません。その予防は医療の枠組みだけでは不十分です。東京五輪を控え、海外から多くの人が来日します。市民に自分のからだや健康への関心を高めてもらう工夫が急務です」という。 東京五輪を控え、「ワクチンギャップ」は至急に埋めるべきだね。
2018.06.17
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私:2005年4月25日の福知山線の大事故で、妻と妹を失い、娘も重傷を負った、淺野弥三一氏のJR西日本との闘いを追うノンフィクション。 淺野氏は、新社長に就任した山崎正夫氏が、想定問答を読むだけの旧経営陣とは違い自分の言葉で語る人間とみて「責任追及はこの際、横に置く。(再発防止を)一緒にやらないか」と声をかけ、このひとことが、加害企業と被害者が同じテーブルにつき事故原因について話し合う前例のない試みにつながっていく。 A氏:やがてJR西日本の対応にも変化が表れ、事故原因は現場の力量不足とする旧来の考え方から、さまざまな要因がからんだ組織事故だという認識に変わっていった。 ヒューマンエラーが起こることは避けられないが、それを組織やシステム、ハードによってカバーする仕組みが出来上がっていく。 評者の宮田珠己氏は、「それは大きな成果といえるが、遺族がそこまで踏み込まなければならないのかとの思いは残る。それを責務とするのは、遺族にとってあまりに荷が重いと感じた」という。 私:丁寧な取材で問題点を浮き彫りにする本書の筆致は圧巻だが、なかでも白眉は、JR西日本の「天皇」と呼ばれ、事故当時は相談役だった井手正敬氏へのインタビュー。 あくまで運転士個人の責任と言い張る井手氏。 はたから見ればその考え方にこそ事故の根っこがあると言いたくなる部分だが、本人がこの発言を本書に載せても構わないと言い切るところに、溝の深さがあらわになる。 井手相談役には、自動車産業で常識になっている「ポカヨケ」装置の意味は理解できなかったろうね。 評者の宮田珠己氏は、「自らの振る舞いを根源的に検証することの難しさ。今も日本社会を覆う理不尽な雲の正体を垣間見た気がした」という。 A氏:事実、その後、JR西日本の「安全軽視」の体質は変わらないようだ。 一昨日の14日午後2時5分ごろ、のぞみ176号の運転士は博多―小倉間を走行中の「ドン」という衝突音を聞いたが、東京の指令所に報告しなかった。 マニュアルでは走行中に動物と衝突するなどして異音がした場合、安全上、指令所に報告するよう定めているが、守られなかった。 私:のぞみでは昨年12月、車掌らが異常を感じながら走らせ続けた台車亀裂問題が起きたばかりで、また、繰り返された。 鉄道の運転士の経験がある金沢工業大学の永瀬和彦客員教授(鉄道システム工学)は「運転時に異変を感じれば、指令に判断を仰ぐか、ただちに運行を止めて安全確認をすることが当然だ。昨年(12月)以降、JR西日本では躊躇なく停止することは改めて厳しく指導されているはずだ。なぜできなかったのか」という。 先頭車両があれほど損傷している状態で時速300キロ近い速度で運転すれば、損傷部分が落下し、重大な事故が起こっていた可能性もある。 A氏:昨年12月の台車亀裂問題の有識者会議で座長を務めた関西大学の安部誠治教授(交通政策論)は、「JR西日本が安全意識を転換させたのは間違いないと思うが、隅々の社員まで浸透していなかったのではないか。安全性向上のため、今回の事故の丁寧な検証が必要だ」という。 私:JR西日本では、2005年4月25日の福知山線事故で死者107人、負傷者562人を出した大惨事の教訓は、13年経ってもまだ生かされていないね。 1930年代、アメリカのハインリッヒ氏が労災事故の発生確率を調査し、「1:29:300の法則」を見出した。 これは、1件の重大事故の背景には、29件の軽い事故と、300件の傷害にいたらない事故(ヒヤリ・ハット)があるというもので「ハインリッヒの法則」という有名な経験則があるが、これは、「ヒヤリ・ハット」段階での防止体制がしっかりしていれば、重大事故は防止できるという教訓。 昨年の台車亀裂問題、今回の先頭車両の損傷問題で「ヒヤリ・ハット」を軽視しているJR西日本は、ハインリッヒの法則を学んでおらず、重大事故が予想される。
2018.06.16
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私:現政権において、「イノベーション」は非常に重視されており、「第三の矢」とされる「成長戦略」においては、中心的な役割が与えられてきた。 「イノベーション」の過程やメカニズムについての学術的研究もなされてきたが、その結果、「イノベーション」を管理するための知識も、ある程度は蓄積されてきたが、社会に強いインパクトを与えるような「イノベーション」の多くは不連続的な現象であって、事前の計画や設計ができる類いのものではないことも分かってきた。 A氏:真に影響力の大きい「イノベーション」は少数のパイオニア、時には狂信的ともいえるような情熱を持った人たちが、世間の冷たい視線にもめげず努力を続け、そしてついに成果を世に示す日が来る。 人々は驚愕し、世界が変わるというストーリーは当然、計画や設計にはなじまない。 私:ところが、そんな「イノベーション」を日本政府が計画や設計をし、促進していることで、神里達博氏は視点を政府の政策を分析している。 政府は、90年代半ばから5年ごとに「科学技術基本計画」を策定し、科学技術政策を長期的視野で進める仕組みを設けている。 その4期目にあたる2011年の「基本計画」では、「自然科学のみならず、人文科学や社会科学の視点も取り入れ、科学技術政策に加えて、関連する『イノベーション』政策も幅広く対象に含めて、その一体的な推進を図っていくことが不可欠」とし、これを「科学技術イノベーション政策」と位置づけた。 本来、科学技術政策と産業政策は別ものだが、最近は産業政策、特に「イノベーション」政策の手段のように科学技術政策が位置づけられる。 実際、政府の科学技術政策の司令塔「総合科学技術会議」(CSTP)」は、14年の内閣府設置法改正により「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」に名称変更。 A氏:加えて、閣議決定で設置された「日本経済再生本部」のもとに置かれた「産業競争力会議」の、さらにその中のワーキング・グループが、CSTIに対して「宿題」を出し、CSTIが対応するという、不思議な現象も起きているという。 これを「官邸主導」と呼べば聞こえはいいが、国会の議決に基づく、法的根拠のある行政組織が、閣議決定を根拠とする組織の「手足」のごとく走り回っているとすれば、問題ではないかと神里氏は、指摘する。 私:かつての通産省は、石炭から石油へのエネルギー革命に対処すべく、石炭対策特別会計を設け、石炭産業を安定化させ、離職者の生活を守ることにも気を配った。 神里氏は、このように、行政の本来の仕事は、「イノベーション」を加速することよりも、その結果起こるさまざまな社会経済的なゆがみに対処することではないだろうかといい、結局のところ、政府は「イノベーション」という難題に、どのように、どこまで関わるべきなのか、いま一度、落ち着いて見つめ直すべき時だろうという。 しかし、神里氏は、ブログ「日本の科学、未来は」で述べたように、日本の科学力の現場での低下、理系で修士課程から企業に就職する大学院生が増え博士課程への進学者が激減、物理学の分野では企業の論文数は96年ごろをピークに減少に転じたこと、などの現実に視点をおいていない。 博士号を得た研究者が一人前になるのに通常6~7年かかるが、博士減少というボディーブローが、科学力の衰えとして表面化。 「ほかの研究者からの引用数が世界トップ10%」に入る論文数で、日本は5千本台で4位と横ばいなのに、1位の米国は4万本、中国は06年に日本を追い越し、急成長で15年には2.5万本と第2位。 こういう日本の「イノベーション」の根底が弱体化し「イノベーション」力が低下しているのに、政府が机上論で「イノベーション」促進を唱えている矛盾を、専門家の神里氏には突いてほしかったね。 「イノベーション」は会議で計画的に起きるものでなく、力ある現場の泥臭い活動から突然生まれるものであることを強調してほしかったね。 政府もゴチャゴチャ会議ばかりしていないで、足元の現場の状況をよく見るべきだね。
2018.06.15
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私:ロックバンド「RADWIMPS(ラッドウィンプス)」は、 映画「君の名は。」の主題歌で注目を集めたというが、俺は映画を見てないし、ロックバンドにも興味がなかったが、このロックバンドの新曲「HINOMARU」が「軍歌を思わせる」と歌詞に賛否の声があがり、国会でも言及され、話題になったという。 A氏:「HINOMARU」は、フジテレビのサッカーワールドカップのテーマソング「カタルシスト」のカップリング曲として6日に発売。 「この身体に流れゆくは 気高きこの御国の御霊」「たとえこの身が滅ぶとて 幾々千代に さぁ咲き誇れ」と歌う。 「美しい」と好意的な声が上がる一方、「軍歌のようだ」「戦争を想起させる」などの臆測も広がった。 ボーカルの野田洋次郎氏はインスタグラムで6日、見解を公表。 「日本は自分達の国のことを声を大にして歌ったりすることが少ない国に感じます」「純粋に何の思想的な意味も、右も左もなく、この国のことを歌いたいと思いました」と明かした。 それでも批判はやまず、ライブ会場での抗議運動を呼びかける動きもでた。 野田さんは11日、ツイッターで、軍歌のようだとの指摘について「そのような意図は書いていた時も書き終わった今も1ミリもありません」と否定。 そして、一方で「戦時中のことと結びつけて考えられる可能性があるかと腑に落ちる部分もありました。傷ついた人達、すみませんでした」と謝った。 私:国会では、小野田紀美議員(自民)は12日、参院文教科学委員会で「侮辱的な言葉であるとか差別的な言葉であるとか、何かを批判することは一つも入ってない。いとしい誇らしい、その思いを言っただけ」などと述べた。 同様の騒ぎは4月にもあり、人気デュオゆずの「ガイコクジンノトモダチ」で「TVじゃ深刻そうに 右だの左だのって だけど 君と見た靖国の桜はキレイでした」との歌詞が話題に。 2014年には椎名林檎氏が歌うNHKのサッカーテーマ曲「NIPPON」の歌詞で「淡い死の匂い」「混じり気の無い気高い青」などが非難を浴びた。 椎名氏は当時取材に、「『特攻隊』みたいだとおっしゃる方がいましたが、全然考えてもみませんでした」と語った。 A氏:増田聡・大阪市立教授(ポピュラー音楽研究)は、今回の「HINOMARU」騒動が謝罪にまで至った経緯について、「軍国主義的だと批判する人たちは、健全な「愛国歌」を求める人が多数いることを冷静に受け止めるべきで、「排外主義的ではない愛国心」の行き場を作ろうとするアーティストへの非難が、素朴な「愛国心」を過激化させ、彼らやそのファンを排外主義者の陣営に追いやってしまうのを危惧する」と憂慮する。 私:日本には戦前、音楽が軍国主義に利用された歴史があるのも事実。 「愛国とレコード」などの著書がある近現代史研究家、辻田真佐憲氏によると、当時、軍歌はビジネスと結びついて流行。 東京五輪が控える時期だけに「スポーツの祭典を商機ととらえ、『愛国歌』が増える可能性はこれからもあるだろう」と辻田氏はみており、「今回のような『愛国歌』はナショナリズムを刺激しやすい。テロや外交問題と結びついて排外主義的な動きにつながりかねず、注意も必要だ」という。 「軍歌」で、育った世代はすでに老いているが、歴史で学んだ世代も気になるだろうね。
2018.06.14
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私:一般に、マルクス主義の唯物史観では、社会構成体の歴史は、生産力と生産関係という経済的土台の変化に規定され、最終的に、社会主義にいたるというような見方だ。 だが、この考えは、二〇世紀の末にほとんど消滅。 では、柄谷行人氏は、なぜ、今、マルクスを読む必要があるのかというと、資本主義経済という現実を見るのに、マルクスの「資本論」が不可欠だからだという。 その理由は、柄谷行人氏が影響を受けた東大教授・宇野弘蔵氏の影響を受けたことにあり、宇野氏は、唯物史観も社会主義もイデオロギーであるが「資本論」は科学である、という。 簡単にいうと、宇野氏は学生に、君たちは将来何をやっても構わないが、資本主義経済が決して避けることのできない欠陥をもつことだけは承知しておけ、という。 それは、産業資本が「労働力商品」という、必要だからといっても増やすこともできず、不必要だからといって減らすこともできない、特異な商品に依拠しているということ。 A氏:マルクスの経済学というと、労働価値説、すなわち、各商品に「労働時間」が価値として内在するという考えだと説明されているが、それは、アダム・スミスら国民経済学(古典派経済学)の考えにすぎない。 剰余労働の搾取という考えさえ、リカード派社会主義者の見解であり、マルクスがそれらを受け継いでいることは確かであるが、「資本論」は何よりも、その副題にあるように「国民経済学批判」だという。 そのことは、マルクスが生産に対して交換を重視したことに示され、交換は共同体と共同体の間で生じ、それは、見知らぬ不気味な相手に交換を強いる「力」なしにはありえない。 マルクスは商品の価値を、物に付着した物神、つまり、一種の霊的な力だと考えた。 貨幣や資本はそれが発展したものであり、その意味で、資本主義経済は宗教的な世界で、宗教を小バカにしているような人たちが、この物神を心から信じているのだという。 私:柄谷氏は、最初に唯物史観・社会主義はイデオロギーだが「資本論」は科学だ、という宇野弘蔵氏の考えを述べ、基本的にそう考えていたのだが、二〇世紀の末に、考えが変わったという。 「資本論」は商品の交換から出発して、全体系に及ぶ。 柄谷氏は、それと同様に、別のタイプの交換から出発して、共同体、国家、宗教、社会主義などを科学的に把握することができると考えるようになり、柄谷氏はそれを「世界史の構造」などの著書で示した。 柄谷氏は、とはいえ、それは結局、マルクスが開示したことを受け継ぐものであるという。 その意味で、マルクスは健在だね。
2018.06.13
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私:アベノミクス3本目の矢、成長戦略は「強固な規制にドリルで穴を開ける」とのふれ込みで、加計学園問題で、「岩盤規制」という言葉が飛び交った。 この堀篭俊材氏は、「公証人」という「岩盤規制」の問題を取りあげている。 会社の設立には起業家が「公証人」と会い、定款を認証してもらう必要があり、面談を義務づけるのは不正目的の起業を防ぐためだが、「公証人」にアポをとって会うには、それなりに時間がかかる。 やり玉にあがったのは、この「公証人」という職業で、証書に法的な「お墨つき」を与え、遺言状や会社の決まり事を盛り込んだ定款を認証する。 約500人の多くを検察官や裁判官のOBが占める。 この規制改革にあたり、政府は昨秋に弁護士や起業家、経団連役員らが入る検討委員会をつくり、議論を重ねた。 最後は、8人の全委員が「公証人」による面前認証では不正は防げない」で一致。 委員の一人、起業を支援する「創業手帳」の大久保幸世社長は「『公証人』の面前認証は形骸化している」という。 ベンチャー約80社を対象にした同社の調査では、「公証人」との面談は7割が「自分で行わなかった」と答えた。 多忙な起業家は、司法書士を代理人に立てるケースが多い。 A氏:だが結局、検討委の議論は反故にされた。 スマホの画面を通じ「公証人」の認証は受けることで決着。 「所管官庁として定款認証は廃止できない」と法務省が猛反対したためといわれる。 それでも本当にドリルがあれば穴は開いただろうと、堀篭氏はいう。 霞が関からは「安倍政権は公証人を輩出する検察当局を刺激したくなかったのでは」という声が聞こえる。 折柄、学校法人「森友学園」をめぐる公文書改ざん問題で、財務省への検察の捜査が進んでいた。 私:そもそも「公証人」には「高収入の天下り」との批判が根強く、2002年度に公募選考が始まったが、それから16年、公証人の採用は千人以上にのぼったようだが、民間からの登用は4人だけ。 当時、規制改革の旗振り役だったオリックスの宮内義彦シニア・チェアマンは「利権が特定のところに集中している構図は変わらない。国が規制に風穴を開けても、実際の運用で実があがらないのが現状だ」と指摘。 堀篭氏は「小さな岩盤になかなか穴も開けられない。つまりは緩和の沙汰も忖度次第なのか。このままではアベノミクス3本目の矢は、当たらずに終わるだけである」という。 規制改革が叫ばれてから、随分立つが、まだ、いろいろな規制があるし、その規制改革に対する抵抗もあるんだね。
2018.06.12
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私:15年、英サセックス大学で開かれたセミナーで示されたのは、日本の50年の人口ピラミッドの予測で、若者に比べて高齢者が異常に多く、国が滅びる――そんな意味を込め「棺おけ型」と表現され、ロナルド・スケルドン名誉教授の「日本の無策は特殊で、回復不可能。政策決定者たちの近視眼的な対応が不思議だ」という言葉に、日本人の参加者は言葉を失った。 A氏:同じ年に安倍首相は「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する」と言い切った。 当時、1人の女性が生涯に産む子どもの数である合計特殊出生率は1・45で、25年までに出生率を1・8に引き上げるというものだった。 しかし、慶大の津谷典子教授(人口学)は「今後10年で1・8はあり得ない」と冷ややか。 日本の出生率は、終戦直後に4を超え、「第1次ベビーブーム(1947~49年)」が起きたが、その後は低下し、61年には2を下回り、「第1次ブーム」の世代が出産適齢期を迎えた71~74年には「第2次ブーム」が来て、一時は2を上回るまで持ち直したが、再び低下に転じた。 平成が始まった89年は、出生率がそれまでの最低だった66年(1・58)を下回り「1・57ショック」と言われた。 私:当時、厚生省児童家庭局長だった古川貞二郎氏は危機感を抱き、当時の海部首相の演説に「少子化対策」をねじ込み、検討を促した。 育児休業や保育所の充実、児童手当の増額――。数値が発表された翌91年にまとめられた答申には、今も課題とされるほとんどが網羅されていたが、政府は本腰で実行しなかった。 「第2次ブーム」世代が出産適齢期を迎えれば「第3次ベビーブームが来る」との楽観論があった。 しかし、出生率は91年以降もじわじわと下がり続け、「第3次ブーム」が来ると予想されていた00年ごろになっても上向かなかった。 最悪のタイミングで「就職氷河期」が来てしまったからだ。 平成になってからの長期不況に苦しむ企業は、規制が緩和された非正社員に飛びつき、新卒採用を凍結する企業も続出し、正社員になれなかった多くの若者が、家庭を持つ余裕を持てなくなった。 先週の日経では、外国と比較しながら日本の出生率の低下を大きくとりあげていたが、外国でもリーマンショックのような経済悪化は出生率低下に影響を与えているようだ。 A氏:出生率が1・26にまで低下した05年、政府は少子化担当を初めて専任閣僚として置き、対策を加速させようとした。 対策チームのまとめ役を担った増田雅暢・元内閣府参事官は、経済的な負担の軽減を考え、その一つが、3歳未満の医療費の本人負担を2割から1割に下げることだった。 折衝に入ると、財政再建を唱える財務省ばかりか、古巣の厚労省も反対に回った。 小泉政権は財政再建のため、高齢化で膨らむ社会保障費の圧縮を進め、「子育て予算を増やせば、年金や医療費をその分削減する必要があった」(厚労省OB)。 06年にまとまった対策には盛り込めなかった。 私:出生率が1・8を超えている先進国は、スウェーデンや仏など少なくないが、これらの国の多くには、日本よりも税金が高く、児童手当などの子育て支援策も手厚いという共通項がある。 国立社会保障人口問題研究所の阿藤誠名誉所長は「負担をせずに予算だけを求めることに、無理があるのではないか」と問いかける。 01年、保育所の「待機児童ゼロ作戦」を始めた政府。 しかし、予算の制約もあっていまだに実現できていない。 たしかに、スケルドン名誉教授のいう「日本の無策は特殊で、回復不可能。政策決定者たちの近視眼的な対応が不思議だ」は当を得ているね。{
2018.06.11
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私:ブレイディみかこ氏は、保育士・ライターで、96年から英国在住。 現地の生々しい状況を伝えているが、前回は3月の「緊縮病『失われた10年』 待ちわびる、冬の終焉」で英国の緊縮財政をホームレス問題を通じて現場の姿を報じていたね。 今回は、治安悪化するロンドンと題して、背景にやはり緊縮財政があることを報じている。 A氏:ロンドンで2月と3月に起きた殺人件数が、現代史上初めてニューヨークを上回ったことが4月に明らかになり、ロイヤルファミリーとアフタヌーンティーの国の首都が、ニューヨークより治安の悪い都市になったというニュースは、英国のみならず、世界中を驚かせた。 ロンドン警視庁の発表によれば昨年4月から今年3月までのロンドンの殺人件数は前年比44%増で、若者の犯罪件数が約3割増。 凶器も銃の発砲事件は23%、ナイフ犯罪は21%上昇。 週末になるとロンドンで10代の少年や20代の若者が刺殺・射殺されたという報道が流れ、「ユースクライム(若者犯罪)」という言葉がクローズアップされている。 長年ロンドンの貧困区で若者支援に関わるユースワーカーとして働いた人は「政治が若者支援の予算を削減し続けたら、ロンドンはかつてないほど危険な都市になるだろう」という。 11年から17年までの間にロンドンでは88の若者支援の「ユースセンター」が閉鎖されている。 私:「ユースセンター」は、地域の10代の青少年たちが集まって放課後や余暇を過ごせる場所で、そこで働くユースワーカーたちは、ティーンの話し相手となり、問題を抱えた青少年を指導し、学校や福祉課、警察と連絡を取りながら支援していく仕事をする人々だ。 こうした若者支援サービスの縮小が青少年犯罪の増加に結び付いているという声が福祉関係者から上がっている。 昨日、日本でも新幹線車内で22歳の若者が「むしゃくしゃした。誰でもいいから殺したい」という無差別殺人があったが、これもメンタルヘルスが欠けていたんだろうね。 英国では10年以降、公的な若者支援への支出は約3億8千万ポンド削減されており、12年から16年までに閉鎖された全国のユースクラブは603に上る。 また、11年には、低所得家庭の学生を対象とする教育維持補助金が廃止。 10年から14年の間に16歳から19歳の青少年への教育予算は実質で14%削減。 A氏:ロンドンの若者犯罪の増加は複雑な要因が絡み合っているが、その背後には「緊縮」の2文字が浮かび上がってくるとブレイディみかこ氏は指摘する。 保守党政権は緊縮財政を推し進め、財政支出を削減してきたが、青少年が教育を受けることや、メンタルヘルスの治療を受けることや、余暇を過ごせる安全な場所を与えられることや、専門の知識と経験を持つ大人に相談する機会を得ることを困難にすればするほど、都市の暴力犯罪件数は増える。 これは現代の若者たちが理解不能な生き物になっているわけでも、親の養育が急に劣化したわけでもなく、若者たちへの投資が圧倒的に足りていないのであって、経済政策の欠陥と社会現象の明らかなリンクを、精神論や道徳論にすり替えるわけにはいかないとブレイディみかこ氏はいう。 私:一方、首都の治安を守る警察もまた、人員削減の一路をたどっている。 政府は警察の予算削減と暴力犯罪増加には関連性がないと主張してきたが、ロンドン警視庁の警視総監はそのリンクを認める発言をした。 路上を常時パトロールして不審人物に声掛けし、反社会的行動を取り締まる地域治安維持補助官(PCSO)が、ロンドンでは08年から16年までに65%も減少。 市内149カ所にあった警察署や交番も半数以上が閉鎖されて73カ所になった。 10代が凶器を持ち歩くのが日常になれば、取り返しのつかない悲劇が生まれる機会が増え、未来を担う若者たちを守れずに、何のための緊縮財政なのか。我々はこの悲劇にけっして慣れてはいけないと、ブレイディみかこ氏はいう。 緊縮財政の問題は、英国だけでなく、EU諸国でも財政規律にからんで政治問題なっているね。 日本もプライマリーバランスの達成を先送りし続けている。
2018.06.10
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私:今週は、2冊とりあげた。 まず、『革命』はマクロン氏が大統領選に出馬するために書いた本。 評者は、立命館アジア太平洋大学学長・出口治明氏。 「第1部」は「思想」で、勤勉であることを教えてくれた祖母、高校生のとき恋に落ちた教師ブリジットとの出会い。 次に、なぜ「前進!」を立ち上げ大統領選に出馬したのかが説明され、そしてフランスという国家は人々を解放する一つのプロジェクトであり、それを目指す共和制だと定義づける。 A氏:「第2部」は「戦略」で、フランスがなすべきことが明瞭に語られ、人的資本への投資が第一。 「環境問題こそ、フランスがトップに立たねばならない」とマクロン氏は言い切る。 「自分の仕事で生計をたてられること」が基本で「持たざる人々により多くのことをし、最も弱い者を守る」。 政府が地方に約束できる時代が過ぎ去った中での大都市の発展と「地方創生」をどう考えるかと、優先順位が明確で整合性がとれており、日本にもそのまま適用できそうだと評者は言う。 私:第3部は「未来」で、マクロン氏は冒頭に歴史を持ってきて、歴史に学ばない限り「何者にもなれない」とし、EUに対する姿勢は「ユーロ圏をいまだに完成させていないのは間違いだった」と揺るぎがない。 では、いかにして民主的な革命を成し遂げるのか。 それは、既成の政治家ではない普通の人々のアンガージュマン(政治参加)によってであり、「新しい人を国会に投入」して右でも左でもなく前へ進むことによってであるという。 マクロン氏は、ごく当たり前のことを言っているに過ぎないのだが、世襲議員が大多数を占める日本の現状から見れば何と新鮮に響くことだろうと評者はいう。 現に、大統領選挙後に行われた国民議会選挙では、マクロン氏の与党「共和国前進」が大勝したが、女性が当選者のほぼ半数を占めるなど「新しい人」が大量に国会に入った。 A氏:我々は、このような個性的な政治家を生み出した欧州の懐の深さにもっと学ぶべきではないかと評者はいう。 政治家は、理念や思想ではなく結果で評価されるので、この先マクロン大統領がどんな結果を残すのか楽しみだと評者はいう。 私:2冊目の『グローバル化する靖国問題 東南アジアからの問い』の評者は評論家・保阪正康氏。 この書は、1985年の中曽根首相の靖国神社参拝を「靖国問題のはじまり」とみて、その後の首相参拝をアセアン(東南アジア諸国連合)10カ国はどう見てきたか、各国の英字紙を参考に分析を試みた書。 小泉首相の時代には東南アジアの国々にとって日本は最大の「経済援助供与国」だったので、表立った抗議はしていない。 A氏:しかし、中国の経済大国化と共に変化が起き、尖閣問題での日中対立によって、第三者の目から、地域の危機ととらえる当事者の視点へ変わる。 中国と韓国の反発に同調するか、距離を置くか。 2013年の安倍首相の参拝には中韓だけでなく、米英、EU、アセアン各国からの批判があった。 タイ紙は、近隣諸国の気持ちを害さないで戦死者を敬う方法を見つけよと説く。 私:日本では中韓の批判しか語られないが、東南アジアの国々の静かな怒りを理解する必要があるように思うと評者は指摘する。 まだ、日本は真に太平洋戦争を終わらせていないのかね。
2018.06.09
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私:日大のアメフトの悪質タックル問題に関連しての吉田良治氏の寄稿。 吉田氏が、ワシントン大学のアメフト部でアシスタントコーチを務めていたころに知り合った米国人コーチもこの事件に驚き、そして「悪質タックルを受けた選手の体は大丈夫か? (加害者の)選手を正しい道に戻してやれ」と気遣っていたという。 米国の学生スポーツ、とりわけアメフト指導者は、国造りを担っていると言われ、若者の未来を壊さないように、「三つのゴール」を持っている。 「一つ目」は選手を育てて勝利をめざすこと、「二つ目」は選手の人生に責任を持つこと、「三つ目」は、競技引退後に国を背負って立つ未来のリーダーを育てること。 A氏:今度の日大のアメフトの悪質タックル問題に関連して、米国の全米の大学スポーツの大会運営などを担うNCAA(全米大学体育協会)の存在がよく取りあげられたが、ここでは大学運動部の練習制限や、選手が満たすべき学力基準などを設けていて、破れば、個人やチームの練習時間が削られる罰則がある。 練習時間は、週20時間を超えてはならず、シーズンオフの1~7月は基本、春の15回の練習以外は、体づくりが中心。 練習が度を越せば選手の体が壊れ、学業や社会経験を積む活動に悪影響が出るとの認識を指導者は共有している。 私:米国は1980年代、学生選手による犯罪が多発し、引退後の第二の人生での失業や家庭崩壊に陥っていて、そんな苦い経験から、コーチが選手に全人格的教育をするように努めてきた。 日本でも、スポーツ庁が大学スポーツ改革として「日本版NCAA」を進めているが、吉田良治氏は、魂を込めたものにしなければならないという。 練習時間を制限し、学業を優先できる環境をつくり、社会貢献活動を課すしくみは、米国に見習うべきではないかという。 そうなれば、日本のスポーツは弱くなると言われそうだが、そんなことはなく、リオ五輪には、入学前や卒業後を含むNCAAの選手が各国の代表として約1千人出場し、そのうち約6割は海外からの留学生で、競泳男子100メートルバタフライで、シンガポール初の金メダリストになったジョセフ・スクーリングは、超難関のテキサス大学の学生。 アジア人でも、学業とスポーツの高いレベルの両立が可能であることが証明されているという。 吉田氏は、「日本のスポーツ界はスポーツ偏重の古い思考の扉を開いてほしい。新しい時代に合った新たな価値観に、目を向ける時期にきている」という。 しかし、日本でもラグビーで9連覇した帝京大学の岩出雅之監督のように、従来の軍隊式のスパルタ教育や選手の体育会的上下関係を排し、岩出監督は、「学生を教えるのでなく、考えさせる」ことを重視した指導法を通じて、組織形成を推し進めた。 また、箱根駅伝で4連覇した青山学院大学の原晋監督の指導方法も同様で、指導目標は、選手自身で考えられるようにすることで、自分で考えながら楽しくプレーをするような指導をせよ、と言っているという。 そういう日本の強いチームの事例にもふれてほしかったね。
2018.06.08
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私:鎌田遵氏は年に2回、研究のため、カリフォルニア大学バークリー校を訪れているが、かって、在学していた1990年代半ばから見てきたが、格差は広がる一方と感じるという。 学生の苦境の主な要因は、学費の大幅な値上げ。 米国では教育予算の削減が学費の値上げを招き、ここ20年間で約3倍になった。 公立大学でも学費は年約150万円(州の住民以外はさらに約300万円)で、大学には裕福な子弟が増えたという。 A氏:一方で、学生の10%にあたる約3千人が友人宅を転々とし、空き家や車で寝る「ホームレス」を経験していて、有名大学の門戸が貧困層の移民にも開かれているのは多民族社会の希望だが、奨学金や学生ローンだけでは生活は難しいという。 大学職員ルーベン・カネド氏は学生の2割が食事を抜く窮状を見て、無料で食事できる食品室を大学内に立ち上げた。 「自立の一歩になり、助けを求めて人とつながることもできる」として、一学期の利用者は3千人前後にのぼる。 私:アルバイトで疲弊し、ネットで洋服などを売って生計を立て、栄養不足で大学の教科書も買えない。 教養を育み友人と議論するよりも生活費の捻出に奔走し、卒業後は学生ローンの返済に追われる。 学費を滞納して去る学生は珍しくなく、日本の大学でも学生の切実な声を聞くことが増えた。 経済格差を背景に、大学で学ぶことは限られた所得層の特権に戻りつつあるのではないかと鎌田氏はいう。 さらに、鎌田氏は、こうした米学生の苦境は、日本の学生の近未来像かもしれないという。 カリフォルニア大学の試みから学ぶことは多く、地域社会が若者を支える食品室に、移民国家の懐の深さを感じ、助け合いの精神を身につける場所こそ、大学であるはず。 A氏:日本政府も、奨学金制度の脆弱さは認めていて、学内の福祉施設や特待生制度、政府系の無償援助や無利子・低利・長期返済の奨学金、民間団体や企業による総合的かつ広範な学生への支援策を充実させる必要がある。 政府が進めるべきは防衛費の拡大ではなく、人間力を強くする教育費の拡充ではないか、社会が若者たちに希望を与え、未来と確かに向き合える学生生活を支えていけるようにしたいと鎌田氏はいう。 私:安倍政権は、国家財政のプライマリーバランスを20年度に黒字化する財政健全化の目標を掲げていたが、首相は昨年秋の衆院選前に、19年10月に予定する消費税率引き上げによる増収分を教育無償化などに回すことを表明し、目標達成も断念しているね。 教育無償化は財政健全化を犠牲にすることになるのかね。 背景に少子高齢化も影響しているね。
2018.06.07
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私:休戦して65年になる朝鮮戦争について、トランプ大統領は12日に迫る米朝首脳会談で、「終結」の可能性に言及し始めた。 朝鮮戦争を歴史的にどうとらえ、ここからどう行動すべきなのかということで、「耕論」欄では3氏にインタビューした。 まず、菅英輝氏は、朝鮮戦争で「米の国防組織、強化進んだ」として、1950年に勃発した朝鮮戦争は、冷戦のグローバル化と軍事化を招いた世界史的事件だという。 朝鮮戦争の発生直前、米国のトルーマン政権が包括的軍事外交戦略「NSC68」をまとめていて、共産圏に対抗し、国防予算の上限を135億ドルから450億ドルに3倍以上に引きあげることを勧告していた。 第2次大戦後まもなくのことで、巨額の国防予算が議会で承認される状況ではなかったが、朝鮮戦争で一変。 1947年に誕生したばかりのCIAやNSCの役割が強化され、こうした組織が定着。 アチソン国務長官は朝鮮戦争を「天祐」と歓迎。 A氏:米国は、第2次世界大戦後初の「限定戦争」だった朝鮮戦争を、ソ連の世界制覇戦略の一環と受け止め、軍事介入。 それが中国義勇軍の参戦で拡大し、「封じ込め」政策が中国にも適用されて冷戦がグローバル化し、分断が固定化された朝鮮半島は冷戦の最前線になった。 94年の核開発疑惑以降、米国は北朝鮮に対し、「圧力」一辺倒の政策を続けてきたが、北朝鮮が核・ミサイル開発で成功したことは、歴史的には、米国の政策の行き詰まりを意味し、だから、北朝鮮は交渉に応じる準備が整い、他方で米国は、米朝首脳会談の可能性を打ち出したとみるべきだと、菅英輝氏は指摘する。 私:日本は日朝国交正常化に向けた努力を続けておくべきだったという。 しかし、米国の圧力路線に同調してきただけで、気がつくと協議の枠外に置かれていて、イニシアチブを発揮している韓国とは対照的。 日本は、トランプ大統領を通じて要望を伝える以外に手がない状況で、米国に協同する政権が陥りがちなジレンマにあるといえるという。 菅英輝氏は日本にもカードはあり、それは1兆~2兆円ともいわれる北朝鮮への経済協力金で、拉致問題解決や日朝国交正常化につなげるべきだという。 A氏:2人目の朱建栄氏は、中国に視点を置き「中国、経済発展遅れた一因」として 朝鮮戦争は、国際社会に「新生」中国の存在感を認識させた一方、経済発展が遅れる原因にもなったという。 中国が「義勇軍」を朝鮮半島に送り、苦境に陥った金日成率いる北朝鮮軍を支援したのは、開戦から4カ月たった1950年10月。 当時、中国は、1年前に本土での国民党との内戦に勝利し、まさに新国家建設に乗り出したときだった。 米軍主体の国連軍は、38度線を越え中朝国境に向かっていたが、国境の背後の中国東北地方は石炭を産出し、重工業の拠点だっただけに、毛沢東は出兵した。 毛は、ソ連(現ロシア)が空軍を出すことを前提に参戦を決めたが、スターリンに裏切られた。 社会主義国共通の利益より、国益が優先され、中国は米国との代理戦争の前面に立たされ、ソ連への不信を強め、後にこれが武力衝突までした中ソ対立の背景的要因となる。 私:中国は、最強の米軍を38度線に押し戻し、「眠れる獅子」のイメージを一掃し、軍事、外交大国の地位を獲得。 一方、中国国内では、朝鮮戦争を全力で戦うため、比較的緩やかな「新民主主義」路線を一変させ、スターリンモデルの政治体制を導入、毛の独裁に拍車がかかる。 しかし、経済発展は大きく遅れ、米国の封じ込め政策は、ニクソン大統領が訪中した1970年代初めまで20年にわたった。 国内では戦時体制が続き、文化大革命など社会主義の原理を重んじた左派色が強まり、改革開放も遅れた。 A氏:中国は、北朝鮮の核、ミサイル開発が、周辺国の核保有や軍事衝突を誘発するとして強く反対しており、隣接する中国にとっても大変懸念される事態となった。 米朝首脳会談を契機に朝鮮半島の非核化が実現し、休戦協定が平和協定に変わることを中国は支持し、そうなればTHAADの配備も、米兵約2万8千人の韓国駐留の根拠もなくなり、中国は平和協定の先にそうした変化を見通していると、朱建栄氏は指摘する。 私:3人目の山本昭宏氏は、「『基地』『平和』、日本に矛盾」として、朝鮮戦争で複雑な立場に追い込まれた日本に視点をおいている。 敗戦後しばらくは、日本の進路は流動的。 東西双方との講和を主張する全面講和論と、西側との講和を優先する片面講和論があり、平和についても、非武装中立論から自主防衛論まで多様な立場が存在していた。 しかし、朝鮮戦争勃発時に、日本は占領下にあったため、西側陣営に組み込まれて米国頼みが鮮明になり、多様な立場はかき消され、「軽武装・日米安保体制」へと収束。 自主防衛論だった右派は、「反共」で主流派と一体化し、非武装中立や全面講和論だった左派は、批判勢力として野党化。 そして、対米自立論は潜在化し、自民党の長期政権を可能にした「55年体制」は、朝鮮戦争が準備したといえると山本昭宏氏は指摘する。 A氏:ただ、国民の受け止め方は両面的で、戦争特需の好景気を国民は歓迎し、「米国のもとで経済的に得をする」という、したたかな生活優先主義が広まり、自民党政権を支える基盤となっていく。 西側陣営最前線の「米軍の基地国家」でありながら、建前は「平和国家」であるという、日本の戦後の二重構造はこうして形成されたという。 冷戦後も、朝鮮半島の分断が続いたことを、日本の政権は利用して、事あるごとに、北朝鮮という格好の「敵」に言及し、ナショナリズムを喚起して、国民の支持を「調達」してきたという。 米朝首脳会談で、朝鮮戦争が「終戦」したら、一番困るのは日本かもしれず、自民党政権は、会談後も北朝鮮の脅威を強調し続けるのではないかと山本昭宏氏はいう。 そして、そうではなく、戦後の「平和」の矛盾を直視する機会にすべきで、「基地国家」でありながら「平和国家」を自任するという、朝鮮戦争が作り出した二重構造を再考する時期に来ているという。 しかし、日本は拉致問題をかかえている以上、そう簡単でなく複雑だね。 それに軍事大国化している独裁国家中国の脅威もある。 「平和国家」であるとともに「基地国家」であるという日本の運命は、朝鮮戦争というより、太平洋戦争での敗戦の遺産としての9条憲法と安保条約の両立よるものだろうね。 朝鮮戦争での興味ある話題は、ブログ「朝鮮戦争のこと」、韓国映画「戦火の中へ」に掲載されている。
2018.06.06
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