デフレの正体 0
原発 0
体罰 0
糖質制限食 0
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私:長崎県の端島(通称・軍艦島)を舞台に日本統治下の過酷な労務動員を題材にした韓国映画「軍艦島(グナムド)」が韓国で今夏、上映され、最大の話題作となり、観客動員数は2週間ほどで600万人超だという。 A氏:また、日韓関係の悪化の火種につながるのかね。 しかも、北朝鮮との緊張状態の中でね。 私:映画では終戦直前、朝鮮半島から徴用されて島で働かされた朝鮮人約400人が、強制労働の証拠隠滅のために労働者を抹殺する日本側の企てを察知し、脱走を試みる。 朝鮮人が米軍のスパイと疑われて無差別に殺害され、日本人と朝鮮人が銃撃戦をするなど、現実とは想像しにくい話も出てくるという。 韓国人の柳昇完(ユスンワン)監督が「歴史的事実を基盤にした創作」と語るように、史実を忠実に再現したわけではないが、エンドロールでは、2015年に軍艦島が世界遺産登録された際、戦時中の過酷な労務動員を含む歴史を知らせるとしたユネスコの勧告について、日本政府は履行していないと言及。 観客には事実と虚構の境界がわかりにくいという。 A氏:記者は2年前、終戦間際に島で働いた金炯碩(キムヒョンソク)さんにインタビューしたが、映画と異なり、終戦後は会社が用意した船で朝鮮半島に送られた。 金さんは「自分たちより悲惨な境遇におかれていた」と中国人捕虜のことも語ったが、映画に中国人捕虜は登場しないという。 私:映画公開初日、菅官房長官は記者会見で映画について問われ、「徴用工問題は、日韓請求権協定により解決済みの問題だ」と発言。 日本政府が徴用工の賠償問題に火がつくことを警戒する一方、韓国政府は「創作」の側面を強調する日本側の反応が徴用工の歴史の否定につながることを懸念する。 A氏:しかし、この映画については、韓国内でも論争があり、韓国の観客は目が肥えていて、映画をそのまま事実と受け取るほど単純ではないという。 私:「強制徴用を単に背景扱いした」「ファンタジーに近い」「朝鮮人同士が争う場面が多く、歴史を歪曲している」などの批判があるという。 映画「軍艦島」をめぐっては韓国でも批判が相次ぎ、柳監督は釈明に追われている。 主要紙「朝鮮日報」が徴用工問題の専門家にインタビューし、映画のどこが事実でどこが虚構かという記事を載せるなど、韓国内でも論争を呼んでいるという。 今頃になって、戦中を突っつき、世代が変わっている日本人に悪感情を想起させる映画をまた、70年もたって「ウソ」を交えてわざわざ、何故作るんだろうね。その動機を問いたいね。
2017.08.11
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私:ISO9001規格は、現在、新しいのは2015年版だが、企業によってはまだ、2008年版で動いているところもある。 しかし、たしか、2018年までに2015年版にきりかえないと、認証が無効になる。 そこで今年は、多くの企業で2008年版から、2015版への切り替えが急がれているね。 ところが、2015年版から、2008年版にあった「除外」を認める項目に大きな変更があるという。 それは「8.3 設計・開発」は「除外」できないという。 2008年版にあった「除外」という言葉も「適用が不可能」と言い方が変わっている。 A氏:「8.3 製品の及びサービスの設計・開発」は「除外」(適用が不可能)にできないというと部品加工をやっている企業は、基本的に顧客で製品設計を行い、その図面で加工するので、製品設計はないことで、やってきたから、今、「除外」している「製品の設計・開発」のシステムを新規に作成しなくてはならないね。 私:製品設計の問題は、かって、ISO9000規格にはISO9001、ISO9002、ISO9003の3つの規格があって、企業側が選択したときからある。 このとき、ISO9001とISO9002の違いは「製品設計」の有無だ。 だから、部品加工業はISO9002しかとれなかった。 ところが、「製品設計」がある大手企業でも規格は選択できるのでISO9002で認証し、ISOをとったと言い出すという弊害が出た。 これは、大手企業は設計部門がISO9001の規格要求に従うのに抵抗があり、一方、品証部門は自部門の手柄でISOをとったと言いたかったからだね。 A氏:そこで、その弊害をなくすため、ISO本部は2000年版で、ISO9002を廃止するとともにISO9001に一本化し、同時に妥当性があれば「除外」を認めることになった。 当然、部品メーカーは「製品設計の要求項目」は「除外」とし、ISO9001の認定を得た。 ISO9002で、「製品設計の要求項目」を逃げていた製品設計のある大手企業は逃げられなくなったわけだ。 私:ところで、ISO9002時代にもどるが、当時、部品メーカーはISO9001の方が格が上という見方があったので、せっかく、ISOをとるなら、ISO9001をとりたいという要望があった。 そこで、俺は、部品加工企業は図面をもとに加工プロセスを計画するから、これを「工程設計」とし、ISO9001の設計システムの要求を満たすシステムを作り、部品加工企業でもISO9001を取得するようにした。 A氏:しかし、2000年版のISO9002の廃止で「除外」も可能になったね。 私:ところが、興味あることに2008年版の「製品実現の計画」の要求事項の「注2」に「組織は、製品実現のプロセスの構築に当たって、「設計:開発」に規定する要求事項を適用してもよい」という記載が登場した。 そこで、部品加工企業では、この「注2」を根拠に、「工程設計」を「設計」のまま残した。 A氏:まさに「工程設計」の公認だね。 大体、「製品実現の計画」というのは、部品加工企業では「工程設計」に相当する。 私:2008年版でこの「注記2」が入ったことで、逆に規格の「設計・開発」は、製品設計がメインであることがわかる。 A氏:それが、なんで、2015年版で部品加工業でも「設計・開発」が「除外(適用が不可能)」を認めないとなったのかね。 私:解説書など読むと、親企業がでは設計とみなされなかったプロセス設計(工程設計)が次のサプライチェーン組織では設計とみなされるとあるね。 実際には2008年版から、「製品の実現計画」の項で、製品実現のプロセスの明確化を要求しているから、これを「工程設計」として、「設計・開発」の項目にアレンジして追加すれば、簡単に要求を満たすことができるね。 このように歴史的にISO9001は「工程設計」に弱い。 A氏:「工程設計」は、このブログの工程設計の基礎知識、金型設計は製品設計か? 、ISO9001とTSの比較の効用でふれているね。 自動車業界のセクター規格のISO /TS16949(旧QS9000)では、「設計・開発」については、当時、ISO9001は製品設計だけが対象だが、TSでは「設計・開発」の要求事項は、製品及び『製造工程の設計・開発を含み』とある。 日本の伝統的な「品質は工程で作られる」がTS規格に反映し、ISO9001もようやくTS規格レベルになったね。
2017.08.10
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私:フリードマン氏は、私たちが今日直面する最もやっかいな社会的な問いとは、「私たちの仕事はすべて、機械とロボットに奪われてしまうのか」というものだという。 これに対し、フリードマン氏は、世界中の人が全く見知らぬ人に空いた寝室をいつでも貸し出せる、非常に効率的な信頼できるプラットフォーム、Airbnb(エアビーアンドビー)の活動を紹介している。 A氏:テレビCMで全く見知らぬ人に空いた寝室をいつでも貸し出せる、非常に効率的な信頼できるプラットフォームとして紹介しているね。 私:Airbnbは急成長を続け、今では毎年、ヒルトン系列のホテル全体に匹敵する部屋数を増やしているという。 だが、Airbnbは別の目標を持っていて、それは、「自ら動く人間」とフリードマン氏が呼ぶ人々を生み出すことだという。 「自ら動く人間」とは何か。 私たちの仕事はすべて、機械とロボットに奪われてしまわないように、Airbnbはプラットフォームを作っているという。 それは、すべては、部屋を貸す人々がお客さんに「やあ、部屋を気に入ってくれているとうれしいよ。ところで、私はいい料理人でもあるんだ。夕食会を用意しましょうか」と話しかけたところから始まる。 A氏:そこで、宿泊するだけでなく、料理方法を体験できるというわけだ。 私:Airbnbのウェブサイトの「宿泊先」ではなく「体験」をクリックすると、自分の情熱から利益を生み出し、内に秘めていた職人技を第二の仕事につなげようとしている無数の人々が見つかるという。 これが「自ら動く人間」の誕生だね。 たとえば、ルカさんとロレンツォさんのチームは1人152ドルで、イタリアのフィレンツェを訪れる7人を郊外の森にある古民家でいちからパスタを作る旅に案内。 また、ロンドンでは1人84ドルで、帽子デザイナーのサラさんと一緒に「世界で一つだけの帽子を作る方法」を3時間で学べる。 A氏:Airbnbの創業者の1人でCEO(最高経営責任者)のブライアン・チェスキー氏は、「人生における最大の資産は家ではなく、それぞれの人が持つ時間と可能性であり、私たちはそれを引き出すことができる」と説明。 そしてチェスキー氏は、自分が引退するときに「Airbnbが世界に1億人の起業家を生み出したと言いたい」と語ったという。 米国内の雇用をめぐる今日の議論には、過剰な恐怖と想像力の欠如が目立ち、それは「私たちがなくなっていくものばかりに目を向けているからで、これからやって来るものに注目する必要がある」とチェスキー氏はいう。 A氏:実際、この時代の素晴らしい点は、2万5千人を雇用する自動車工場を持つフォード社が町にやってくるのを待つ必要はないということだ。 そうした工場は、今では2500台のロボットと千人の人間からなり、未来は、地域ならではの特性や熟練した職人、人間の才能を活用することを学ぶ地域社会にかかっている。 私:ケンタッキー州ルイビルにエッフェル塔はないが、素晴らしいバーボン・ウイスキーの蒸留所が林立し、数え切れないほどの観光の機会を作り出している。 自動車産業で知られるデトロイトにピラミッドはないが、モータウンの音楽に彩られた歴史があり、さまざまなアーティストが観光客向けのコンサートやツアーを企画している。 これが、米国の中間層の雇用をめぐる課題に対する唯一の答えではないし、Airbnbのようなプラットフォームはその一つに過ぎないが、多くの人が自らの情熱を掘り起こして喜びと収入を見いだしていることに奮起しなければならないとフリードマン氏はいう。 A氏:Airbnbの体験のプラットフォームは今、訪問客が地元の人のように暮らし、その過程で地域社会を豊かにし、新たな雇用を生み出すことを可能にしている。 チェスキー氏は「これまでの企業がしてきたことの大半は、『自分たちがほしいものを作るために天然資源を引き出して使うことだった』が、今日の新しいプラットフォームは、『自分たちがなりたかった自分になる』ために、人間の潜在的な可能性を引き出しているのだ」という。 「自ら動く人間」になることだね。 私:Airbnbでネット検索したら、日本人でネパールでのAirbnb体験が素晴らしすぎたので、会社を辞めてネパールに移住しちゃった話が載っていたね。 Airbnb日本では、体験とセットはまだ少ないようだが、「自ら動く人間」となることで、新しい地域雇用を生み出すことも考えられるね。 地方創生につながるかもしれない。
2017.08.09
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私:このブログでは早くから博士を持った人たちに関心があり、関連して以下のものがある。 「ホームレス博士」、「博士離れ、止まらない:少ない研究職・企業は敬遠」 今週の「波聞風問」ではその博士問題にふれている。 修士から博士へ進む人の割合は2001年度の15%台から、16年度の9・3%に減っているという。 90年代、政府が進めた大学院改革で、定員を2倍にしたが、就職先の教員数は増えず、大学に残れても多くは任期付きポストでしかないというのが背景にあり、「将来の見通せない博士課程に進んでも……」という不安が大学院生の間で定着してしまっているからだという。 A氏: 企業の採用枠も限られていて、文科省の関連団体が研究開発型企業1825社(資本金1億円以上)を対象にした16年の調査では、新卒の修士の採用企業は3割弱、博士は6%台しかないという。 私:多賀谷克彦氏は、「手持ちの技術の改良、改善で生き残れる企業はどれだけあるか。『ダイバーシティー』を掲げながら、横並びで学士や修士を一括採用する。企業に、博士人材の高度な専門知識を生かす経験、蓄積がないからではないか」と厳しく指摘している。 一方、欧米や韓国では博士人材は増えていて、研究領域の拡大が背景にあるという。 私:このブログの「イノベーションへの道」でもふれたが、昨年のイノベーションのランキングで日本は16位で、07年の日本は4位だったので、この10年低迷は明らか。 安倍政権の第3本目の矢はとんでいない。 背景の一つに日本は博士の活用が下手なことがあげられる。 独NRWジャパンのゲオルグ・ロエル社長は日独の産学連携を手がけるが、日独の博士人材の活用の違いを指摘し、「ドイツは社会として、彼らの専門知識を高く評価している。企業と大学の交流人事も頻繁だし、活躍の場も大学、企業に限らない」という。 A氏:多賀谷氏は、日本の博士人材は本当に使えないのかといことで、少し救われる例をあげている。 それは、北海道大学で聞いた話で、12年前から博士課程の学生に年間50~60社との交流会を開き、採用に結びつけており、東北大、名古屋大、お茶の水女子大など6校と連携しているという。 担当の樋口直樹・特任教授は「一度、博士人材を採用すると、継続して採用する企業が多い。新規事業関連の博士を採る例も目立つ」という。 私:博士人材は自ら課題を見つけ、解決策を探った経験をもつ。 そうした人材が異なる分野の人材と化学反応を起こして新たなものが生まれる。 追いつけ追い越せの時代とは異なる人材が必要ではないかと多賀谷氏はいう。 6月中旬、関西の企業と大学のトップが産学連携の将来を探る研究会の場で、座長の小林傳司・大阪大副学長からの大学の現状報告は「日本は人が資源。人材力が低下することは大学にも、産業界にも危機的だ」と厳しいものだったという。 山口栄一氏〈著〉『イノベーションはなぜ途絶えたか 科学立国日本の危機』で、著者は日本で企業家精神が育たないのはリスクを避ける国民性ではなく、制度設計に問題があり、これを修正すれば、産業競争力は復活するというが、まだ、先が見えていないね。
2017.08.08
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私:ポーランドでは、一党独裁下の1980年代、ワレサ氏は自主労組「連帯」を率いて東欧民主化をリードした。 ノーベル平和賞も受賞した。 だが、今のポーランド政権は同氏を敵視し、熱烈な与党支持者は「ワレサ氏は共産主義者と結託していた」と信じているという。 A氏:東欧では、もう一人、ハンガリー出身の米国人投資家、ジョージ・ソロス氏(86)が、民主化の功労者でありながら、ハンガリーの現政権に敵視されている。 もともと、ジョージ・ソロス氏は、80年代から民主派を支援し、その後も「開かれた社会」を掲げてNGOや教育に資金を提供。 2年前の難民危機では先進国に受け入れを求めた。 私:そのソロス氏に7月、ハンガリー政府は同氏を批判するキャンペーンを展開。 首都ブダペストの地下鉄駅の壁は反ソロス氏のポスターで埋められ、テレビコマーシャルが「ソロス氏が不法移民を支えている」と繰り返した。 政権に近い研究機関ネゾポントのムラズ・アゴシュトン所長は「ソロス氏の移民支援は国の安全にかかわる問題で、現政権は無視できない」と語ったという。 A氏:ポーランドとハンガリーは89年、デモではなく、社会主義政権と民主派の対話で体制転換を実現。 一方、民主化後、リベラルな新政権と対立した民族主義的な勢力は「過去が清算されず、旧体制のエリートが生き残った」と疑った。 両国の右派政権が目指すのは、「『民主化後レジーム』からの脱却」だという。 私:だが、その主張には「陰謀論」が見え隠れすると喜田尚氏は指摘する。 ポーランドでは「ワレサ氏は秘密警察の協力者だった」との疑惑が蒸し返され、ハンガリーでは、オルバン首相は「欧州に押し寄せるイスラム教徒は、EUの官僚と結託したソロス帝国の計画の一部だ」と演説。 A氏:ポーランドとハンガリーは、歴史上、ロシア帝国やオーストリア帝国、ナチス・ドイツにソ連と、大国の力に翻弄されてきた。 パロディー広告で政府宣伝に対抗する市民団体のドゥダッシュ・チョボ氏は「人々は『誰かが操っている』と説明されると、たやすく納得してしまう」と説明する。 私:ポーランドとハンガリーの国民は「陰謀論」に弱いのか、根拠のないユダヤ人「陰謀論」を背景に、ナチス・ドイツ占領下でホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の現場になった。 ポーランド南部のアウシュビッツ収容所でユダヤ人約100万人が殺害され、うち約40万人はハンガリーから運ばれた。 A氏:ハンガリー政府が張った反ソロス氏ポスターには「汚いユダヤ人」などの落書きが続いた。 ソロス氏がブダペストのユダヤ人一家に生まれ、ホロコーストを生き延びたことは広く知られることだ。 「陰謀論」は憎悪と差別をあおる。 歴史の教訓を胸に刻みたいと喜田尚氏は警告する。 私:ロシアの不穏な動きもあり、東欧のポーランドとハンガリーの政治の動きには要注意だね。 最近、ロシアの軍事脅威に対抗して、「スウェーデン、軍備強化へ転換」と報じられ、徴兵制が復活するというが、この地域は、最近、大戦前のように政治面で多くの問題をはらんでいるね。
2017.08.07
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私:「ダウンバースト」という言葉があるが、俺はよく知らなかったね。 ある種の下降気流で、これが地面に衝突した際に四方に広がる風が災害を起こすほど強いものをいい、この突風は風速50mを超える場合があるとウィキペディアにある。 飯田氏は、1975年6月24日に発生したイースタン航空66便着陸失敗事故調査を行い、このときの下降流がそれまで考えられていた積乱雲の下降流と異なるため、downdraft outburstと呼び、このときよりdownburst(ダウンバースト)の呼称で呼ばれるようになったとされる。 今では対策が進み、空の旅は格段に安全になったが、かつては名前さえ知られていなかった。 この「ダウンバースト」の危険性を世界で初めて警告したのが本書の主人公、藤田哲也氏だ A氏:「ダウンバースト」の功績で藤田氏は、アメリカの航空業界で長く英雄として扱われてきて、あのNASAでさえ彼を当てにした。 天才と呼ばれることも少なくないが、肝心の日本ではせいぜい竜巻の大きさを示す藤田(F)スケールの考案者として言及されるくらい。 どうして、母国でこれほどまでに無名なのか、著者は忘れられた藤田像に迫るために費やした取材旅行は、日米両国をまたいで延べ三万キロに及ぶという。 私:もともと藤田氏は気象学者ではなく、九州の専門学校の機械工学科出身の物理学者で、学閥とは無縁の存在だった。 三十代にして独力でアメリカに留学しチャンスをつかんだが、研究を主眼に市民権を獲得し、日本国籍を失った。 だが、藤田氏が提唱した「ダウンバースト」は当初、アメリカで全面的に否定され、地球規模で考えられていた気象学の主流に対し、危険を顧みず仮説を検証したとき、その幅はわずか三百メートルで、これでは地球規模の気象というより爆発。 A氏:なぜ、藤田氏は前代未聞の現象に目を向けることができたのか。 それは、24歳のとき藤田氏は、長崎に投下された原爆調査に赴き、その後、広島の調査にも参加し、爆心直下で生じる爆風と衝撃波の痕跡から局所的で猛烈な下降気流、「ダウンバースト」を着想したという。 つまり、日本に投下された原爆への藤田氏独自の調査と研究が、それを投下したアメリカの気象学に革命を引き起こし、多くの飛行機事故を未然に防ぎ、数知れぬ命を救ったことになる。 私:我々もその恩恵を受けている。 飯田氏は、晩年は日本への帰還を望んでいたという。 1998年、78歳でなくなっているが、その名は復権のときを待っていると評者はいう。
2017.08.06
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私:保守の論客・京大名誉教授佐伯啓思氏が、今月の氏のコラムでとりあげたのは、森友・加計問題だね。 佐伯教授は、加計学園問題がそれほど重大問題だとは思われないが、ここで教授が関心をもつのは、この問題が「事実」をめぐってどうにもならない泥沼に陥ってしまったように見える点であるという。 A氏:とりわけ、メディアは「事実」を御旗にしていると教授はみる。 「事実」といえば、一見、客観的で確定的なものに見えるので、野党もメディアも、文科省の内部メールを持ち出して、これを「事実」とし、官邸が文科省に圧力をかけたという。 そうでないなら、「ない」という「事実」を出せ、という。 出せないのは、安倍首相が「お友達」の便宜をはかるために圧力をかけたからではないか、という。 メディアが連日、そんな報道をしているうちに内閣支持率が急落していった。 私:教授は、現状では、確かな「事実」などどこにもなく、安倍首相が加計学園の便宜をはかり圧力をかけたといった「事実」はでるはずもなかろうという。 すべて藪の中なのであるが、野党もメディアも、政府側が説明できないのは、「事実」を隠蔽しようとしているからだ、というが、教授にはまったく無謀な論理だとしか思われないという。 そもそも「口利き」や「圧力」は証拠など残さないだろうという。 A氏:「事実」報道の客観性を唱えるメディアが頼っているのは、「事実」ではなく「推測」であると教授はいう。 この推測を突き崩す「事実」を提出できない政府を攻撃する、というのだが、政府からすれば「ない」という「事実」を証明することなど不可能であろうという。 安倍首相が言っていた「悪魔の証明」だね。 私:教授は、政府を弁護しようとしているわけではなく、「事実、事実」といっているメディアが、実は、「事実」など本当は信用してはおらず、ただそれを利用しているだけではないか、と言いたいのだという。 森友・加計問題に示されたメディアの報道は、「事実」をめぐる検証の体をとりながら、実際には「疑惑の安倍政権」というイメージを醸成する一種の「世論」操作のようにみえると教授はいう。 A氏:教授は、論争は、不確かな「事実」をめぐる駆け引きではなく、世界観や政策をめぐる意見の対立にこそあるからだという。 私:俺は、森友・加計問題は、別の見方をしているね。 例えば、森友問題で、国有地の払い下げで、官僚側が「記録は破棄してない」と堂々と答弁したことだ。 大幅な値下げをしたら、その「説明責任」を問われるのは明らかだ。 だから、自信のある官僚は「説明責任」をきちんとすべく、書類を残す。 「事実」を争うことなどない。 聞かれて「記憶にありません」は最低だね。 A氏:このブログでも「説明責任はどこへ」東大教授・井上達夫氏、早大・公共経営大学院教授・片山善博氏、コラムニスト・小田嶋隆氏の3氏に聞く・であつかっているね。 私:「説明責任」という意識をもって、責任ある地位にある政治家も官僚も行動しないから、「事実」があいまいになり、野党やマスコミの「推論」となっているだけだ。 安倍首相の「悪魔の証明」という言い訳も、「説明責任」の無知からきている。 だから、支持率が低下してから「李下に冠を正さず」と反省している。 李下を歩くとき、「正していない」という写真でもとるくらいの「説明責任」感を持つべきだね。 教授には、「事実」論でなく、民主政治に不可欠な「アカウンタビリティー(説明責任)」は日本には根付かないのかという観点から論じてほしかったね。
2017.08.05
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私:稲田防衛大臣の1年間で、日報問題に象徴されたように、文民統制がおかしくなった。 北沢氏は、問題の本質は稲田氏が自分の身を守ることを優先し、自衛隊を「私事」のために利用したことだという。 例えば、終戦記念日にジブチに視察に行き、全国戦没者追悼式に出席しない言い訳にしたことが隊員の不信感を生んだという。 「この大臣は責任回避せず、すべてを背負ってくれる」という信頼を隊員から得て初めて、大臣が実力組織を統制できる。 正反対の行動をとった稲田氏が、組織を統制できなくなったのは当然の帰結だと、北沢氏は厳しく指摘する。 A氏:自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長が、憲法に自衛隊が明記されれば「ありがたい」と発言したが、憲法順守義務を負う自衛隊のトップが、憲法を変えてほしいと受け取れる発言をすることは、極めて問題。 バランスが良い彼は以前だったらそうした発言はしなかったが、政治家の緊張感が緩めば、統制される側の組織も緩む。 この問題発言を安倍政権は許してしまったが、これは政権全体の文民統制の欠如だと北沢氏はいう。 東京都議選の最中に、稲田氏が「防衛相、自衛隊、防衛大臣としてもお願いしたい」と発言したのも、実力組織を統制する緊張感が欠けているからだという。 私:文民統制の根本が欠けた政権が、自衛隊を憲法に位置づける改憲を軽々に口にすることに恐ろしさを感じると北沢氏はいう。 守屋氏は、南スーダンPKOの日報問題の根幹は、防衛相の中央組織である文官中心の内局と自衛官中心の陸上幕僚監部のトップがともに、日報という現場からの重要なメッセージへの対応を誤り、大臣に明確に伝えなかった点にあると守屋氏はいう。 それが文民統制を揺るがす事態につながったという。 A氏:自衛隊の活動記録としての日報は、遠隔地にいる部隊長が中央に伝える大切な報告で、今回の日報は現地で激しい戦闘が発生して非常に危険だ、という内容だった。 つまり現地が「赤信号」を出したのだが、知りうる限りでは、陸上幕僚長や事務次官が撤収に向けてイニシアチブを発揮した形跡がなく、大きな疑問が残ると守屋氏はいう。 さらに陸幕だけでなく、陸幕から報告を受けた背広組の内局までもが、隊員の安全をいかに守るかという視点が非常に希薄だったように見えるという。 私:今回は陸自も内局も、日報の中身の重大性を大臣に報告せず、隠す方向で足並みをそろえてしまい、そして情報公開請求に対しては陸自内で開示対象から外し、日誌自体を廃棄しようともした。 その隠蔽が表面化すると今度は幹部内の対立に発展した。 そもそも、現場部隊からの「赤信号」を受けた際に、陸幕長らが、毅然として内局や大臣にありのままを説明しなかったことが一番の問題で、現場からのリークはその動きの鈍さに危機感をもった現場がついに声を上げたのだと守屋氏はいう。 A氏:今回は、現場の隊員と防衛相の中央機関の温度差だけでなく、中央機関の中の制服組と背広組のギャップがあらわになった。 守屋氏は特に、制服組と背広組の間の亀裂に危機感を覚えるという。 私:日報問題で表面化したこうした対立関係を修復するには、まずは内局の背広組がもっと制服組のことを知ることが大事で、実際の部隊や訓練を見に行くなど一層の交流を重ね、信頼関係を築く。 そのうえで相互チェックし、必要なときはおそれずに異論を言うという、文民統制の基礎になるこうした仕組みを再構築することが肝要だと守屋氏は助言している。 緊迫した北朝鮮問題をかかえた現在、小野寺新大臣で制服組と背広組の間の亀裂を埋め、崩れかかった文民統制を早急に再構築することを望みたいね。
2017.08.04
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私:俺は「組織罰」という言葉にははじめてだね。 松本邦夫氏は、JR福知山線事故刑事裁判の上告棄却に関する社説(6月15日)をまずとりあげている。 社説では、「日本の刑法では、過失責任は個人にしか問えない」ので、JR福知山線事故で、歴代3社長の無罪確定で、結局「刑事責任を誰一人負わないこと」になり、「遺族らが割り切れない思いを抱くのも当然だ」とし、大きな組織になるほど事故の要因や責任の所在がはっきりしないまま原因調査や捜査が終わるということが繰り返された、と指摘したことについて、松本邦夫氏は全くその通りだと思うという。 A氏:松本氏たちの提唱している「組織罰」とは、死亡事故などの重大事故を起こした組織(企業・法人・団体など)に刑事罰(たとえば巨額の罰金)を科すことができるようにすることである。 しかし、同時に、当該組織が安全対策を十分に実施していたことを裁判で立証すれば免責されるという仕組みを用意して、組織の十分な安全対策を担保することによって、重大事故を未然に防ごうとしているのであるという。 私:「組織罰」では、安全対策の立証責任を事故を起こした個人でなく組織に課すので、当該組織は事故の原因・要因について積極的に情報を開示することになり、「組織罰」の導入で、事故の真相解明がむしろ進展することが期待できるという。 A氏:100年以上前に制定された現行刑法のままでは、事故の再発防止はもちろん、いままで起こったことがないような領域での事故の未然防止もできない。 重大事故の再発防止・未然防止のためには、企業(活動)に「組織罰」という枠をはめて、安全対策にコストを割く組織や経営者を出現させる必要がある。。 私:組織を罰する法律はアメリカ・イギリス・フランス・ドイツなどの諸国にはすでに存在するという。 イギリスは2007年に「組織罰」を導入し、企業を1つの人格とみなし、企業上層部全体の過失を罪に問えるようにした。 安全対策に取り組む企業が増え、事故が3割減少したという。 A氏:福島第一原発事故を「組織罰」でとりあげたらどうなるかね。 森友学園、加計学園、自衛隊日報問題も、政官の組織が関係しているから「組織罰」でとりあげられそうだね。 私:ISOのマネジメントシステム規格も2015年版でその導入目的に企業のリスク回避を強調しているが、ISO規格に違反して問題を起こしたら、認証取り消すだけでなく「組織罰」を課したらどうかね。 そうしたら、ISOマネジメントシステムに真剣に取組むようになるだろう。 「組織罰を実現する会」の活動に期待したい。
2017.08.03
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私:トランプ政権の混乱、フランスの新大統領登場など、世界の混迷の中で、メルケル氏に対する期待感が高まっている。 そのドイツの総選挙は、9月24日投開票と1ヶ月後に迫っている。 15年9月には、高い支持率を保ってきたメルケル政権に一時暗雲が垂れ込め、大量の難民申請者を受け入れたことが社会不安をもたらし、支持率は低下。 さらに社会民主党(SPD)が「選挙の顔」として前欧州議会議長のシュルツ氏を党首に選んだ今春には、「新顔」への期待もあってSPDの支持率が急上昇し、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(同盟)との両党の支持率が10年ぶりに逆転した。 A氏:しかし、その後、同盟の支持率は回復。 理由は、米国で誕生した「自国第一」のトランプ政権が迷走するなど国際社会の不透明感が強まる中、首相として12年の経験があるメルケル氏の安定感に期待が再び高まったとみられ、失業率が1990年のドイツ統一以来、最低水準にあることや、難民の流入数減少も支持率回復を後押ししている。 私:最新の世論調査で、2大政党の支持率は同盟の40%に対し、社会民主党(SPD)は23%にとどまる。 同盟が勝利すれば、戦後最長だったコール元首相に並ぶ、4期16年の長期政権への道が開かれる。 A氏:劣勢のSPDは6月、「公正な社会の実現」を掲げる選挙公約を発表し、中低所得者層に有利な税制改革を約束。 3年連続の財政黒字を背景に、地方のインフラ整備や教育費の無償化などを通じて社会の底上げをはかる方針も打ち出し、同党のシュレーダー政権がかつて進めた、働き手に厳しい労働市場改革を一部見直すことも盛り込み、再び追い上げをはかる。 私:欧州統合については、2大政党とも「親欧州」の立場だが、SPDは、マクロン仏大統領が雇用創出や社会的安定のためとして提唱する「ユーロ圏予算」にも、積極的に協力すると公約に明記し、同盟よりも親EUの立場であることを示して、ここでも同盟との違いを際だたせる戦術だ。 A氏:ドイツ連邦議会の選挙制度は比例代表を基本としていて、戦後一貫して連立政権が続いてきた。 今のところ同盟の支持率は優位だが、やはり単独過半数には届きそうにない。 2大政党が連立を組むことに対しては「政策の違いが見えにくくなり、有権者の選択の幅をせばめる」との批判も根強いという。 しかし、ドイツの2大政党は、米国のそれとは違い、極端に対立していないから、安定した2大政党とも言えるのかもしれない。 私:ドイツの選挙制度は、第2次大戦前、小党が乱立して政治が不安定化したことが、ナチスの台頭を招いたとされることの反省から生まれた「5%条項」と呼ばれる決まりがある。 それは、(1)比例で5%以上を得票する(2)三つ以上の小選挙区で勝利する、のいずれかを満たさなければ、政党は議席を得られないというものだ。 今回注目を集めているのは、反難民を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が、戦後のドイツで初めて右翼政党として議席を得るかどうかだ。 A氏:3年連続の財政黒字のせいか、同盟の公約は約1兆9千億円の大型減税と2025年までの完全雇用とすごいね。 私:それがドイツが欧州を崩壊させない原動力になっているようだね。
2017.08.02
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私:経営が悪化している東芝の株式が8月1日、東京証券取引所第1部から2部に降格され、さらに上場廃止のおそれもあるという。 A氏:実は、東芝には約70年前にも危機があったね。 この「波聞風問」欄の記事は、石坂泰三氏の活躍を書いているが、その後の東芝再建にあたった土光敏夫社長のことはふれていないね。 私:俺はなまなましく覚えている。 それを書いておく。 1966年(昭和41年)、光文社から出版された「東芝の悲劇」という本が出て俺も読んだが、著者は財界のご意見番とも鬼検事とも称された経済評論家・三鬼陽之助氏。 第一生命保険社長から東芝社長に招聘された「大物社長」の石坂泰三氏と東芝重電部門生え抜きの岩下文雄の対立抗争が不況に際しての東芝の大幅な凋落を招いた。 A氏:現在の東芝の抱える問題の原因と当時の東芝の問題は、似ており、ともに社内人事の対立で風通しが悪くなったというのが共通点だというね。 私:石坂泰三氏は後任社長を土光敏夫氏を推し、岩下氏退陣を迫ったが、結局、東芝重電部門内に強固な地盤を築く岩下の抵抗に折れて、岩下氏を後任社長としたが、これで東芝は岩下社長に媚びへつらうイエスマンだけとなって真に有能な人材の抜擢が行われなくなってしまった。 結局、東芝は経営難になり、1965年(昭和40年)、再建のため土光氏が社長に就任。 A氏:「もーれつ経営」が始まるんだね。 私:俺は、ある用事で、東芝本社訪問したことがあってそこで、「もーれつ経営」を目の当たりにしたね。 本社の9時の始業時刻は、工場と同じ8時半に繰り上げ。 前の岩下社長は、10時頃、鞄持ちの秘書と同行で出社していたが、土光社長は、タクシーで鞄持ちなしの一人で8時には出社し、8時半までは、社員は自由に社長室に話に来れるように、ドアをオープンにした。 A氏:平社員でも社長に直訴できるわけだ。 私:部長は個室だったが、「もーれつ経営」で廃止され、部長は皆と同じ大部屋の机に座るようになった。。 岩下前社長は10時に社用車で出社すると、専用エレベーターで最高階の社長室に行く。 そこには、スタンドバーがあったという。 そこで、ワンドリンクして、3時頃には退社していたという。 俺が最上階に行ったとき、「もーれつ経営」でバーは撤去され、会議室の一部なっていた。 俺の先輩が、専務に会いに専務室に行ったら、部屋が暗いので、窓際で話しましょうと窓際で話したという。 A氏:すごい節電だね。 私:話は、今の東芝に移るが、債務超過を逃れるため、2兆円で虎の子の半導体を売ってしまえば、上場会社として残っても、東芝に残されるのは、巨額損失を招いた「お荷物」の原子力事業や、小粒なものが目だつ社会インフラの事業が中心になる。 このままでは東芝はまた衰退の一途をたどる。 半導体を残して再起を期するか、再び「伸びん」と欲すれば、どう縮まるのか考えどころであると堀篭俊材氏はいうが、今回の「東芝の危機」はいくとこまで行きそうだね。
2017.08.01
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私:加計学園や森友学園をめぐる問題で、安倍政権から「記憶にない」「記録がない」との答弁が繰り返されていて、首相や閣僚のみならず、官僚も「ないない」という。 官僚や行政経験のある片山義博教授は、最近の国会審議では、官僚が「資料がありません」「でも、ちゃんとやっています」という意味の答弁をしているが、そんなことを堂々と言うようになったのは初めてだという。 何かが政治と官僚の間で大きく変わってきているね。 A氏:1990年代はむしろ「官僚支配」の弊害が叫ばれていて、戦後の成長を牽引した官僚の力は強く、業者からの過剰な接待など様々な官僚の不祥事に批判が集中し、「政治主導」への改革が始まった。 それから20年余り、衆院への小選挙区制導入を柱とする政治改革(94年)。 首相のスタッフ拡充を含む中央省庁再編(01年)。 省庁ごとの縦割りの幹部人事を内閣が一元管理する公務員制度改革(14年に内閣人事局設置)。 こうして、首相官邸が行政全体を主導する基盤は格段に強まった。 これに安倍長期政権が乗っかった。 私:けれど、その官邸は国民への説明を尽くさず、勝手に決めていないか。 官僚も付き従っていないか。 いま投げかけられるのは、政治や行政はだれのためにあるのかという問いだと筆者の松下氏はいうが、加計学園や森友学園問題はまさにその象徴だね。 A氏:93年の非自民の細川政権誕生まで38年間続いた自民党政権下の省庁人事は、官僚自身が決めていた。 当時も人事権は閣僚にあったが、短期で代わる「お客さん」で、省庁は割拠し、官邸の力は弱く、官僚は法案を通すため、自民党の族議員やそれを束ねる派閥実力者に気を配り、議員たちは影響力をふるったが、そこに人事権はなく、分散する権力のはざまで、官僚は自律を保った。 私:その中で育ったのが、族議員や業界とのもたれあいや癒着で、90年代によくいわれた「政官業の鉄のトライアングル」で、それは官僚の威勢の源泉でもあった。 しかし、細川政権が生まれ、政権交代の時代に入ると、三角形は崩れだし、94年の「政治改革」をきっかけに、官僚の後ろ盾だった派閥や族議員は次第に力を失い、官邸に権力が集中しだし、官僚の視線も官邸に向かう。 「忖度」が生まれる。 そして首相や官房長官が部長級以上の官僚人事を差配しやすくする内閣人事局が発足。 強い力をもち、長期化する安倍政権に寄り添いすぎる官僚が問題化し、同時に官邸の強引な手法への反発も生まれている。 A氏:松下氏は、この事態を改善するためには、「政治主導」の時代の政官の役割分担や、官僚のあり方を再検討する時ではないかという。 「政治主導」は、根拠も示せない状態でエイヤと強行採決で決めることではないはず。 欧米では実証的なデータ分析をもとに投資効果の高い政策をつくる試みも広がる。 官僚や専門家の知見を生かし、政策の有効性を比較検討し、そのうえで政治が判断し、国民に説明するという、そんな役割分担が必要だろうと松下氏は指摘する。 私:牧原出・東京大教授(行政学・政治学)は「90年代は朝日新聞も含め、『横暴な官僚』をたたいたが、これからは官僚を『全体の奉仕者』に育てる方法を考えなければならない」と唱える。 官僚の力を生かす道を考え、「政治主導」をバージョンアップする提案であるという。 今、世論調査で安倍不信が支持率低下のかなりを占めているが、ある意味、安倍首相は、行き過ぎた「政治主導」の失敗の犠牲者かもしれない。 加計学園や森友学園問題を契機に、今後、「政治指導」の改善は進むだろうか。
2017.07.31
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私:斎藤氏は、暴言や失言をする政治家には三つの特徴があるという。 (1)過去への敬意を欠いている。歴史を知らないし、先人に学ぶ気もない (2)現在、すなわち国民に対する誠意を欠いている。適当にごまかそうとする (3)未来に対する責任を欠いている 保坂氏は、本を読まない人の特徴とも重なり、 (1)形容詞が多い (2)結論しかいえない (3)耳学問だから話がもたない という特徴をあげている。 A氏:言葉の劣化は、小選挙区制が導入されてからという。 与党が大勝すると、小選挙区で負けても比例で復活する人がいて、裏口入学みたいだ。 受かるはずのない人が受かってくるのだから、失言の多発も当然で、「ワンフレーズ政治」は、小選挙区制で強化されていき、小泉政権しかり、安倍政権しかり。 私:保坂氏は、安倍政権の言葉がなぜ軽いのかは、歴史と比較してよく分かるといい、「戦間期の思想」は問題だという。 「戦間期」とは、第1次世界大戦から第2次世界大戦の間で、「戦間期の思想」とは「領地を失ったけれど、次は取り返してやる」というもの。 日本は45年から、「戦間期の思想」を持たないという壮大な実験をやっているから、ずっと「戦後」だ。 安倍首相が危ないのは、「戦間期の思想」を持っているんじゃないかと外国から疑われかねないことだと保坂氏はいう。 A氏:30日の対談では、失言や暴言ではなく、名言にもふれている。 後藤田正晴は法務大臣のとき、87年のイラン・イラク戦争で、交戦地域への自衛隊派遣は参戦と同じだとして閣議で署名を拒否したという。 順法精神を掲げて筋を通したという。 私:77年の日航機ハイジャックのとき、福田赳夫元首相は「人命は地球よりも重い」と発言し,非難もあびた。 一方、安倍首相はISに日本人の人質が殺されても「テロには屈しない」で通した。 A氏:90年のイラクのクウェート侵攻で米国の軍事制裁への協力を求められたとき、当時の海部首相は憲法の制約があるからと断った。 しかも「その憲法を日本と一緒になって作ったのは米国だ」とまで米国に言った。 90年代の初めまではそれがまだ常識で、米国にも物を言っていた。 私:戦前で有名なのは36年(昭和11年)の衆院本会議での斎藤隆夫議員の粛軍演説だね。 4年後の「反軍演説」で斎藤議員の除名動議が出て、7人が反対、296人が賛成し、144人が棄権欠席。 保坂氏は、144人が人間の弱さを示しているという。 政治家に限らず、暴言や差别発言などや言葉の劣化もそうだが「記憶にない」「文書にない」「文書は処分した」という言葉の問題点には誰かが気づいて追及しないと、簡単にスルーしてしまう。 聞くほうも、正しいセンサーを持つことが必要だね。 森友学園の国有地払い下げ、加計学園の獣医学部の問題、稲田防衛大臣の日報など、いつまでたってもすっきりしない政治状況に、国民のセンサーが働いて、安倍政権の支持率の急速な低下になったんだろうね。 やはり、背景には小選挙区制、政治主導への転換とそれによる安倍政権の独走が、今日の政治の劣化をまねいたのだろうか。
2017.07.30
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私:俺は、「社説」はほとんど読まないのだが、今度の陸自PKO日報問題にからむ稲田防衛相と防衛事務次官、そして陸上幕僚長が辞任するという問題については「社説」はよくまとまった内容だと思う。 こんな問題で日本の防衛省がトラブっているときに北朝鮮がこれに「祝砲」をあげるようにミサイルを発射した。 「泣き面に蜂」で、日本の防衛力の弱さを象徴しているね。 A氏:戦争には、第一線や軍事組織の正確な情報が迅速にトップにあげるのが原則で、その上にシビリアンコントロールが成り立つ。 私:トヨタ生産方式で「Bad News first」といのがある。 「悪いニュースを優先的に知らせよ」という意味だね。 人はとかくよいニュースを優先して流し、悪いニュースを隠蔽して、このため、問題が拡大してしまう。 トヨタが30年ほど前に米国に進出し、トヨタ生産方式をはじめたとき、米国の従業員にこの考えを徹底することに力を注いだという。 A氏:トヨタ生産方式では、第一線の作業者が異常を感じたら、すぐに、誰でも見れるランプの点灯で知らせる。 流れ作業ではラインを止め、問題を早期にクローズアップする。 米国では、作業者がラインを止めたら即、解雇だね。 だから、作業者は異常があっても隠して作業するから、後で問題が拡大する。 私:そういう視点で、この陸自PKO日報問題を考えると、原点は「社説」の言うように昨年7月の日報問題にあるね。 このとき、日報には、南スーダンの首都ジュバで起きた激しい「戦闘」が記録されているのに、首相や稲田氏はこれを「衝突」と言い換えて国会で説明してきた。 安倍政権は当時、安全保障関連法による「駆けつけ警護」の新任務の付与を検討していて、そんななか日報が開示され、現地で「戦闘」が起きていることが国会や国民に伝われば、PKO参加5原則に照らして派遣継続自体が困難になりかねない。 そういう政治的配慮から、「戦闘」を「衝突」に言い換えた。 A氏:第一線の正確性が重要な戦時用語に政治的な意図と介入が入るという致命的な情報の劣化を招くことになったね。 すなわち、第一線の情報は、政権には「Bad News first」にならないように政治的な抑制が生まれる。 だから、「社説」は、「日報隠蔽疑惑の発端にはそんな事情があった」とある。 私:軍隊の文書は、軍事機密のものもあるので、公開できないものもあるが、しかし、「文書がない」というのは、戦争のときに情報が不正確で行動する慣習となり、組織活動としては負ける組織体質だということになる。 さらにシビリアンコントロールにとって、情報が不十分なことは致命的だね。 この点、きのう発表された監察結果はそういう発想がないね。 A氏:「廃棄した」とされた日報データが陸自にあったことが、稲田氏に報告されたか。 それが最大の焦点だったなのに、報告書はそこがあいまいにされている。 「Bad News first」になっていない。 私:問題は、「悪い情報」があれば、たとえ、小さくともすぐに稲田大臣に明確にいくようになっていなかったことだし、そういう実力組織との信頼感がなかったことだね。 稲田大臣は辞任のとき、在任中、シビリアンコントロールはされていたというが、日報隠蔽によって、それは事実でなく、戦争にでもなったら、日本は大変なことになっていただろう。 昭和の戦争のときのように、「退却」を「転進」と言った言葉遊び同様、今回、「戦闘」を「衝突」と無理に言い換えた発想から、すべては始まったね。
2017.07.29
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私:今月の「池上彰の新聞ななめ読み」は例の前川喜平・前文部科学事務次官が東京・歌舞伎町の出会い系バーに通っていたことを、読売新聞が5月22日付朝刊の記事で掲載していたことを中心に扱っているね。 A氏:7月11日付朝日新聞は、これについて議員に問われた前川氏は、昨秋に杉田和博・官房副長官から注意を受けていたことを明らかにした上で、「官邸と読売新聞の記事は連動しているというふうに感じた。私以外でも行われているとしたら、国家権力とメディアの関係は非常に問題がある」と語ったと報じている。 私:毎日は同日付の記事で、「(官邸の動向と)読売新聞の記事は連動していると主観的に感じ取った」という前川氏の発言を紹介していて、さらに詳報では、朝日新聞と同じような内容の記事を掲載している。 さあ、前川氏から、これだけ批判された当の読売新聞はどうかと、池上氏は同日付の読売新聞を読んだのだが、どこにも、この部分の前川発言が掲載されていない。 本文の記事はもちろん、「国会論戦の詳報」というページにも、一言も出ておらず、これでは「詳報」ではないと池上氏は指摘しているね。 私:新聞とは、日々のニュースを刻むもので、それはやがて「歴史の証人」になり、新聞が一言も報じなければ、事実がなかったことになってしまう。 新聞で報道された内容がやがて歴史になるという、歴史への責任感がないのだろうかと厳しくコメントしている。 A氏:一方、この日の国会には、愛媛県への獣医学部誘致を進めてきた加戸守行・前知事も出席し、読売は、加戸氏の発言として、「特区が岩盤規制に穴を開け、ゆがめられた行政が正された」と評価していることを伝えている。 私:ところが、この加戸発言を、朝日も毎日も本文の中で取り上げていない。 詳報のページには、両紙とも加戸発言を丁寧に紹介し、読売よりも、むしろ分量は多い。 しかし、池上氏は、朝日も毎日も、詳報で伝えているとはいえ、本文でもきちんと伝えるべきだったのではないでしょうかと最後に指摘している。 これほど、鮮明に扱いが異なるのは、各紙の編集姿勢の違いというか、政治に対す姿勢の違いからだろうか。 この点を池上氏はふれていないが、コメントがほしかったね。
2017.07.28
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私:将棋AI「ポナンザ」の開発に携わった井口圭一氏は、幅広い分野で自律的に課題を発見・解決できる「汎用型」AIは、実現の見通しが立っていないという。 東大合格をめざすAI開発で知られる新井紀子氏は「AIで生産性を上げれば経済が成長する、というのは誤解で、AIで労働コストを削減し、それで生産性を上げることはできるが、それそのものは新しい価値や需要を生み出しません」という。 A氏:いわば現行のAIは、保守的な性格を持つともいえる。 「イノベーション」を説明する例え話として、「馬車をいくらつないでも鉄道にはならない」というものがあるが、同様に、馬車のビッグデータをAIに学習させても、鉄道の発明には直結せず、むしろそれは、馬車の改良を促してしまうだろうという。 AIにできるのは、過去の延長で未来を予測することだけだ。 私:雇用問題専門誌「POSSE」は、AIによる労務管理が普及すれば、かえって古い「日本型雇用」が強化されると指摘。 過去のデータから人事評価基準を作れば、従来型の働き方をしている社員の方が、高く評価される人事システムができるだろうからだ。 AIに変革はできず、AIが得意なのは、従来の構造を維持したまま、コストを削ることで、最悪の場合、AIで労働コストを削ることによって、古い産業や無能な経営者が延命するだろう。 A氏:低賃金で維持されている小売りチェーンなどの低生産性部門が、現状のままAIを導入した姿を想定すると、数人の社員が、多数の無人店舗を管理するべく長時間働き、「労働は減るが、長時間労働は減らないという状態になるだろうという。 これでは、失業とデフレと過労死が併存するだけだ。 私:つまり、AIそのものは新しい価値や成長を生み出すわけではなく、イノベーションを起こすには、新しい価値や、社会制度の変革が必要だが、それは、人間にしかできないというわけだ。 人間は昔から機械に負けていて、自動車より早く走れる人はいないが、そのことで、「人間は自動車に負けた」と嘆く人はいない。 それは、自動車を人間の補助として使いこなせるように、社会のあり方を革新(イノベーション)したからで、人間が機械に勝てるとすれば、機械と競争することによってではなく、機械と共存できるように社会を革新することによってだ。 A氏:その意味で、AIについても共存の方向で社会を変える試みがあるという。 米MIT教授のダニエラ・ラス氏は、自動運転でトラック運転手の仕事をなくすより、運転手が疲労や睡魔に襲われた際の安全装備として自動運転を使う方が現実的だと唱えた。 ドイツの労組は、政府や経済界と共同して、AI導入に備えた職業訓練制度を提起している。 私:この点で日本は対応が遅れぎみで、AIですごいイノベーションを起こせば逆転満塁ホームランが打てるという青写真を描こうとしている。 事務職の仕事の2割がAIに代替可能と予測され、人々を新しい職に移行させる能力開発と、貧困に起因する教育劣化への対策が急務だが、政府は、地道な対策に取り組むよりも、「ここは機械にホームランを打ってもらおう」と考えており、これが今のAIブームを支えているという。 A氏:新技術の導入だけで経済が成長するなどという期待は、高度成長への誤解に基づくノスタルジーにすぎず、古い社会や古い政治を延命するためにAIを使えば、多くの人が犠牲になる。 それこそ、「人間がAIに負ける」という事態にほからならない。 そうではなく、AIと共存できる社会に変えていくために、人間にしかない英知を使うべきだと小熊氏は指摘する。 私:この論壇の記事を小熊氏は、「将棋の藤井聡太四段は、AIに勝てるだろうか」という問いで書き始めているが、最後にその問いの答えを次ように書いている。 「彼はAIに勝とうとしていない。AIを相手に練習し、AIを自分を磨く道具にした。まるで、自動車と競争するのでなく、自動車を使いこなすべく社会を変えた人々のように。」 かって、養老孟司氏の講演会を聞いたとき、養老氏は、演壇で後ずさりで歩きながら、「情報は皆、過去のもの」と言っていたが、情報同様、AIを使いこなして、未来を作り出すのは人間の知恵ということだね。
2017.07.27
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私:米国の上位中間層は、驚くほどうまく、その恵まれた地位を我が子に引き継ぎ、さらに、その他の階層の子どもが自分たちの仲間入りをする機会を狭めることにも、恐ろしいほどたけてきていると、このコラムでは、米国の上位中間層は意図的に自分たちの地位を守り格差の固定化を巧みに企てていることにふれているね。 A氏:まず、第一にあげているのが、子どもの教育で、この数十年間、米国の上位中間層は、出来のいい子どもを育てることを人生の中心に置いてきた。 上位中間層の親は、それより下の所得階層の親に比べて、2倍から3倍の時間を就学前の子どもと過ごすことが、96年以来、裕福な層の教育費は300%近く増加したが、その他の層ではほぼ横ばい。 中間層の暮らしが厳しくなるにつれ、上位中間層の親は我が子が決して階層を滑り落ちないよう、ますます必死になっている。 私;第二の問題は、住宅の建築規制で、高学歴層はポートランドやニューヨーク、サンフランシスコといった地域に住む傾向がある。 これらの地域では良い学校や良い就職機会のある場所から、貧しくて教育レベルの低い人々を遠ざけるような住宅や建築の規制が敷かれている。 これらの規制で1964年から2009年にかけて、米国の経済成長の総計を50%以上押し下げており、さらに格差の拡大の深刻な要因になっている。 A氏:住宅規制についで、構造的な障壁は大学入試だね。 高学歴の親は優秀な教師がいる地域に住む。 さらに、親類縁者が卒業生であれば優遇される制度などがある。 だから、米国の競争率の高い上位200の大学に通う学生の70%が所得分布の上位25%の出身だという。 私:ブルックス氏は、こういう構造的な問題よりも、インフォーマルな社会的障壁のほうがより重要だという。 米国上位中間層は希少な情報を持つものしかアクセスできない慣習を確立させているという。 機会に恵まれた地域で居心地よく暮らすためには、正しいバレー・エクササイズをし、屋台、お茶、ワイン、ピラティスにいたるまで、正しい好みを持つ必要がある。 A氏:高学歴層がはりめぐらす複雑な網は、自分たちを残してその他の人々をゆり落とす揺りかごのようだという。 高級食品スーパーマーケットで心地よく買い物をする80%が大卒である理由は、値段でなく、文化的な規範のせいだという。 私:高学歴の人々を引き寄せ、相互の絆を強め、結束を促す機能もあり、これはその他の人々を遮断する。 高学歴層が築いて流動性に対する障壁は、目に見えないだけに一層強力になっているという。 それ以外の人にはその障壁が何かを言い当てることも理解することもできない。 ただ、そこに壁があることだけは分かっているとブルックス氏はいう。 A氏:「空気」みたいな障壁なんだね。 私:格差固定がこのような巧みな方法で意図的に行われるようになると階級社会に近づいていくね。 トランプ現象はそれへの下層の人々の抵抗かね。
2017.07.26
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私:今朝、「週刊朝日」の新聞広告を見て驚いた。 「限界国家ニッポン」とあり、さらに「人口減で集落も産業も崩壊」とある。 そこで、昨日のこの新聞記事を思い出した。 A氏:この新聞記事では、外国人労働力を頼りにする職種が増えていて、民間シンクタンク「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」が、労働現場で外国人労働者が占める割合の「外国人依存度」を試算した結果、調査した産業の平均は09~16年で1・9倍に増えていたという。 私:総務省の労働力調査と、外国人を雇用する事業所の厚労省への届け出を元に計算すると、16年時点では全就業者の59人に1人が外国人。 7年前と比べ、卸売・小売業(76人に1人)は約2・5倍、農林業(85人に1人)は3・1倍、医療・福祉では463人に1人だが、依存度は2・7倍に高まった。 昨年10月末の外国人労働者数は約108万人と過去最高。 半面、外国人労働者の在留資格別割合は近年ほとんど変化がなく、就労目的は18・5%。 A氏:就労が主目的ではない外国人によって国内産業が支えられており、外国人労働者をめぐる数字は、日本が事実上、「移民国家」に足を踏み入れている現実を突きつける。 私:この記事の2面では「『移民』認めぬまま、進む現実 子の受け入れ、悩む学校」とある。 米国や英国では排外意識が頭をもたげていて、外国人労働力への依存が強まる日本は、目の前の現実を直視せぬまま、問題を先送りしているように見えると記者はいう。 国会で、加計問題などやっているヒマは無いはずだね。
2017.07.25
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私:新聞は、トルコ政府は公立学校の義務教育課程で「進化論」を教えないことを決めたと報じているね。 A氏「進化論」は「人間は猿から進歩した」というが、聖典コーランの内容と違い、「進化論」を信じるのはイスラム教徒をやめるのに等しいという。 私:トルコは、イスラム教徒が国民の99%を占め、「進化論」に抵抗を感じる国民が少なくないことに、イスラムの伝統を重視する政権与党・公正発展党(AKP)が配慮したものだという。 一方、野党や教職員組合は「国是の世俗主義に対する違反だ」と反発している。 A氏:「進化論」を外した理由について、イスメット・ユルマズ国民教育相は18日、「『進化論』の理解には哲学的な素養が必要。児童・生徒の知識では難しすぎる」と説明。 私:これに対し、教師らでつくる「教育と科学教員組合」の委員長は「進化は自然や生物をめぐる科学の出発点だ。説明は難しくない。『ジハード』を理解させる方がよほど難しい」と指摘したという。 A氏:ここで、「ジハード」がでたのは、新教育課程では、イスラム教に基づく「聖戦」(ジハード)の概念を、宗教指導者養成学校で新たに教えるとし、イスラム教の教育を重視して説教師の養成を目指すということからだ。 私:さきのユルマズ国民教育相は「『ジハード』の真の意味は祖国を愛し、国民の団結と連帯に尽くすこと。正しい『ジハード』を教えることは、我々(政府)の責任だ」と説明。 反対派は、「新教育課程は科学を重んじる教育モデルを壊し、政権に言われたことを妄信する若者を育てることが目的だ」と批判。 A氏:トルコでは1923年の建国後間もなく、国家の後進性を脱するため、厳格な政教分離に基づく世俗主義を国是にしてきた。 しかし、エルドアン氏が2002年に政権に就いて以来、「世俗主義の擁護者」を自任してきた軍や司法機関と衝突しつつ、公立学校で「コーラン」や「ムハンマドの生涯」などの宗教関連の選択科目を導入するなど、イスラム教徒寄りの「改革」をしてきた。 私:これに対し、最大野党・共和人民党などの世俗派勢力は「エルドアン政権はトルコの世俗主義をゆがめている」と猛反発。 トルコ社会は「イスラム保守か世俗派か」の分断が深刻化しているという。 シリア問題をめぐって重要な政治的な地位にあるトルコが、国内が不安定なのは、国際政治面でも問題だね。
2017.07.24
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私:この2つの著書についての佐倉東大教授の書評は変わっているね。 AIに好意的な賛成派と批判的な反対派の対話で書かれている。 A氏:ガナシア氏の著書では、AI現象が技術的な根拠のない軽薄なものであることが、丁寧に説明されているという。 私:AIがいずれ人間に取って代わると言っている欧米の研究者もいるが、そういう考えはグノーシス主義という昔の宗教に似ているとも指摘していて、AI言説は科学ではなく、文化的産物だという。 A氏:しかし、機械は進歩していくので、そう遠くない将来、AIが人間を超える思考力を持つ可能性は否定できないのではないか。 私:その点については松田雄馬氏が、知能とは生命体が生存のために身体を通して環境と相互作用する能力だから、知能は身体と不可分で、ソフトウェアだけで知能を実現しようとしても、それはそもそもできないことだと書いているという。 AIは、囲碁とか将棋とか、ルールの決まっている世界の中でしか機能しない。 A氏:ロボットのように身体も人工的に作ればいいのではないか。 私:人間そっくりの身体を作っても、人間の知能と同じものができるだけ。 仮に超人的に動ける人工身体ができて、そのロボットに知能を持たせたとしても、それは人間の知能とは似ても似つかないものになるはず。 人間を凌駕したことにはならないし、人間に取って代わる存在でもないという。 著者は、人間の知能とは別の知能になったとしても、それは人間の限界を超えたとは言えないという。 それは、自動車は人より速く走り、飛行機は空を飛ぶだからといって、それらが人間を『凌駕した』とか『取って代わった』とは誰も思わないと同じだいう。 この書評の対話は、かみ合わないまま続いているが、「続きを知りたい方は、ぜひこの2冊をお読みください」と評者は、ユーモラスに書評を終わっている。 とにかく、AIブームに別な視点を提供してくれるのは確かなようだね。
2017.07.23
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私:米経済は緩やかな回復が続き、人々の財布のひもが固いわけではないが、「モノ」よりも旅行や娯楽、外食にお金を使う傾向が強まっており、00年以降、消費に占める衣類の割合は2割減り、加えて、ただでさえ縮まるパイを急伸するネット通販が奪っていく。 A氏:倒産、人員削減、大量閉店と、米メディアは、実店舗を意味する「ブリック&モルタル(れんがとしっくい)」の苦境を連日伝える。 昨年は約2千店が閉まったが、今年は2008年のリーマン・ショック時(約6千店)を上回る約8600店が閉店すると、金融大手クレディ・スイスは予測し、これは過去最悪のペースだ。 私:ネット通販の主役、アマゾンは最近さらに勢いを増し、6月、137億ドル(1・5兆円)で高級スーパー「ホールフーズ」の買収を決め、実店舗に後れをとっていた生鮮食品で攻勢に出る。 A氏:米国では半数近い世帯がアマゾンの有料会員と推計されていて、米調査会社は米国のネット販売は年15%のペースで成長し続け、4年後に約7890億ドル(約90兆円)に達するとみる。 その半分をアマゾンが占めるとの予測もある。 私:米労働省によると、小売業で働く人は約1600万人。 02年に製造業を抜き、米国でもっとも多くの人が働く産業の一つだが、それが今年初めをピークに下落傾向に転じ、月約1万人のペースで減っている。 ただ、失業率が6月で4・4%と低いこともあり、まだ問題が目立っていない。 日本では、ネット通販の増加で、宅配業者の人手不足が問題になっているが、 米国ではどうなっているのか、記事ではふれていない。 A氏:「雇用第一」を掲げるトランプ政権の関心は、製造業や石炭などの鉱業に偏っており、これらの産業の典型的な担い手がトランプ支持層とされる白人・男性なのに対し、小売業は非白人や女性の割合が高いことが関係しているとの見方もある。 17日のスピーチで、トランプ氏は珍しく小売業の苦境に触れたが、「外国製品の略奪的なオンライン販売がショッピングセンターを殺している」と、話を貿易問題にすり替えた。 私:ネット販売の浸透で配送センターなどの仕事は増えているが、米ゴールドマン・サックスは、100万ドル(約1億1千万円)を売り上げるのに実店舗では3・5人の働き手が要るが、ネット販売なら0・9人で済むと試算し、雇用は減り続けるとみる。 A氏:小売業は、教育や技能に乏しい人にも仕事を提供してきた。 「小売店での職がなくなると、大半の場所では代わりの仕事はなく、地域経済が衰えていく」と米コロンビア大学経営大学院のマーク・コーエン氏は警告し、さらに、「嵐のような小売り危機は、始まったばかりだ」という。 私:トランプ氏にまた一つ、悩みのタネが増えつつあるね。 日本ではネット通販売増による小売りの影響はどうなっているのかね。
2017.07.22
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私:今月の神里教授の「月刊安心新聞」は「ヒアリ」をとりあげている。 「ヒアリ」は元々南米中部に分布する昆虫だが、20世紀前半にアメリカ合衆国に上陸。 1930年代にアラバマ州の港から荷物と一緒に入り込んだとされ、急速に生息域を拡大、57年には連邦議会が根絶のための大規模な予算を措置したが、成功しなかったという A氏:その後も米国は「ヒアリ」制圧に向けて尽力したが、75年までに52万平方キロメートル、また2006年には少なくとも130万平方キロメートルにまで拡大。 現在は、テキサスからアラバマ、フロリダなどを経て、ノースカロライナに至る、南東部の広い範囲の州に定着していて、この地域にはおよそ4千万人が暮らしているが、毎年、1400万人がヒアリに刺されているという推計もあるという。 私:しかし、人体への危険性について、米国での被害者数の統計については、しっかりとしたものは見当たらないという。 A氏:よく引用されているのは、米国アレルギー免疫学会が1989年に行ったアンケートの報告だが、これは、約3万人の医師に郵便で質問票を送り、その1割弱から回答を得たというものだ。 最初の質問として「ヒアリに関連した死亡例を知っていますか?」という問いがあるが、八十数人が「はい」と答えたというが、実は、この八十数人のうち、本人や同僚の医師の診療などに基づく確実な数字は、その4分の1に過ぎず、多くは、「ニュースで知った」や「うわさで聞いた」などであり、重複していた可能性もある。 さらに、この調査は対象期間が明示されていないので、ヒアリの危険性を定量的に理解するにはあまり役に立たない。 私:18日に環境省がパンフレットから「『ヒアリ』で、米国で年間100人以上が死亡」という記述を削除したのはそのためだね。 この米国の報告がさまざまなところで引用された結果、その数字だけが独り歩きし、「死亡率の高い危険な昆虫」というイメージが定着したとも考えられると神里教授はいう。 社会問題に関わる文脈において、科学的知識を適切に扱うことの難しさが、ここに現れているともいえるという。 A氏:日本では、「ハチ」による死亡も、「ヒアリ」同様、アナフィラキシーが原因で、米国南東部の住民の3人に1人が、年に1度は刺されるという「ヒアリ」被害に比べれば、日本でハチに刺される件数は、相当に少ないだろうが、それでも、最近の日本では20人前後の方が、毎年、不幸にしてハチに命を奪われているという。 私:驚くのは、米国における「ヒアリ」対策の費用は莫大で、米国農務省によれば、毎年、ヒアリの制御、被害の修復、そして人の治療のために70億ドル(約8千億円)が費やされているという。 人への健康リスクに注目が集まりがちな「ヒアリ」被害だが、農畜産業への悪影響や、生態系の破壊といった、別の問題を引き起こしているという。 日本が、この「小さな強敵」の侵入を防げるかどうかは、まだ分からないが、すでに半世紀以上にわたる戦いを続けてきたにもかかわらず、制圧できなかった米国を日本は反面教師とし、今こそ十全な対策を講じるべきであろうと神里教授はいう。 俺は、数年前、庭にアリが多くいたので、アリ用の殺虫剤を買ってまいたことがあるが、すこしたって、また、復活していたね。 最近、「ヒアリ」のニュース以来、アリ専用の殺虫剤がとぶように売れているというが、アリの自然体系に影響を与えないか心配だね。 日本も苦しい地方財政に「ヒアリ」対策費用の負担がかかるようになるのかね。
2017.07.21
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私:日本では内閣支持率が急速に悪化しているが野党が弱く、受け皿の政党がないので、無党派層が増加しているだけで、都議選の都民ファーストの躍進のような期待が国政ではできないね。 むしろ、小池新党の噂まで出ている。 ところで、フランスの新大統領のマクロン大統領の新党「共和国前進」が躍進し議会で多数を制したね。 「共和国前進」は発足からわずか1年余りで、今回の選挙で擁立した候補の多くは政治経験が乏しいか、もしくは全くないという。 マクロン・チルドレンだね。 今月のピケティコラムでは、ピケティ氏は、そのマクロン大統領の税制にふれている。 A氏:ピケティ氏は、2つの税制上の後退をあげている。 第一は、源泉徴収制度のことで、マクロン大統領とフィリップ首相の政権はすでに、(所得税の)源泉徴収制度の実施を2019年に延期すると発表しているのを、予定通り18年1月から適用する準備はすっかり整っているのに、まったくのご都合主義だとピケティ氏は批判している。 フランスで何十年も前から待ち望まれる税制近代化の抜本改革が、日の目を見ずに終わる恐れさえ出てきたという。 私:フランスに源泉徴収制度がないのは驚きだね。 第二つの後退としてあげているのが、(企業が支払った賃金の一部を法人税から控除する)「競争力強化や雇用創出のための税額控除(CICE)」の代替策を19年まで延期する、と表明したことで、もともと、オランド前大統領が14年から約束し、今回の大統領選でマクロン自身も公約していた施策だという。 いちばんの悲しみは、こうした小手先のごまかしが、深い議論に進むのを妨げていることにあり、これでは、社会保障の財源をどう確保するかという議論が始まらない。 確かに、フランスの社会保障は、雇用主の負担に過度に依存していて、代わりとなる財源が必要で、ある人たちは、付加価値税の増税分を社会保障に回すのが良いと考えるが、低所得層には高くつく。 本物の代替案は、累進的な社会保障目的税で、官民の給料、年金、資産収入など、あらゆる収入を対象に、その課税は全体の収入レベルに応じたものであるべきだとピケティ氏はいう。 A氏:ピケティ氏は結論として、まず、真の改革者であろうとするなら、名乗るだけではだめで、絶対的な権力は陶酔をもたらし、現実的な感覚を失わせるという。 フランス的な大統領制や、それに群がるイエスマンは何の役にも立たない。 そして左派がまず提案すれば、右派や中道への反論もより建設的なものになるだろうという。 私:絶対的な権力は陶酔をもたらし、現実的な感覚を失わせ、権力に群がるイエスマンなどという状態は、日本が先行しているね。 コラムの最後に、ピケティ氏は「目下の『マクロンへの熱狂』を脱し、本質的な話をする時期に来ている。それが、5年の大統領任期とこの国を成功に導く最良の道なのだ」とそれでも新大統領に期待を寄せているね。
2017.07.20
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私:朝日新聞は、政治家が記者会見や国会答弁でまともに答えないし、官僚も木で鼻をくくった答弁を繰り返すという状態で、英米流の「アカウンタビリティー(説明責任)」はムラ社会の日本には根付かないのかと疑問をもって3氏に意見を聞いている。 井上達夫教授は、「アカウンタビリティー」は「説明責任」と訳されるが、教授は「答責性」と言っており、ただ説明すればいいというのではなくて、きちんと説明しないと責任を問われて首が飛ぶという緊張感ある概念で、政治家の場合は選挙で落とされ、官僚の場合は解任されたり左遷されたりするというものだという。 A氏:小田嶋隆氏は、日本社会では、「アカウンタビリティー」はメディア側では首を要求する言葉になり、責められる側では誰の首を差し出せば決着するのかを考える言葉になっているような気がするという。 しかし、「アカウンタビリティー」を「説明できる状態での業務遂行を推奨する概念」と表現するべきだと思うと小田嶋氏はいう。 仕事に対する姿勢だね。 少なくとも、自信を持って説明できる状態で自分の職務に取り組むということで、米英的な民主的で明快な組織運営の中で、個人が緊張感を持って組織と対抗していくなかで出てくる発想だと指摘し、日本人一人ひとりが、個人の権益と権限、あるいは人権と責任を集団に預けず、自分で引き受ける覚悟だという。 私:片山善博教授は、官僚経験から、いま、お役所が「説明責任」をないがしろにするようになっていると指摘し、かつては「説明責任」に強いこだわりがあり、非常にかたくなだとか、前例踏襲だとの批判も受け、詭弁を弄したこともあったが、それでも「前例がある」と言えば、かなり「説明責任」を果たしたことになったという。 ところが、最近の国会審議では、官僚が「資料がありません」「でも、ちゃんとやっています」という意味の答弁をしているが、そんなことを堂々と言うようになったのは初めてだと官僚や行政経験のある片山教授はいう。 片山教授は、「私が大臣ならば『待て、そんな話じゃ済まない』と説諭して部下にあんな答弁は絶対させません。しかし、現政権はむしろ「説明責任」を放棄した官僚答弁を歓迎している節があります。表面上は官僚の堕落ですが、この政権の下だからこういう事態が起こっているのではないでしょうか」という。 A氏:井上教授は、政治の場で、最も重要な「アカウンタビリティー」は民主的な熟議の実行、政策形成の時に、なぜこの政策が必要なのかをきちんと説明して決めていくことなのに、安倍政権はそこがものすごくいい加減になっていると指摘し、そういう一強政権を選んだのは、最終的に選挙民の責任だという。 私:片山教授は、人事権を内閣が握っている以上、役人だけで今の事態を変えるのは難しく、制度設計を見直す必要があるという。 もともと役人の人事権は大臣にあり、ただ、実力のない大臣が多かったため、次第に官僚主導、先輩、OB主導の人事になり、これを修正するため、現場をよく知らない官邸の「政治主導」になった。 しかし、片山教授は、大臣として力量がある人材を養成して、その大臣が力を発揮して人事権を行使できるようにするのが本来の「政治主導」だという。 片山教授は、「大臣の任命に当たって国会の同意を得るようにしてもいいと思います。与党が多数だから通るとしても、少なくともオープンな場で人となりを審査する。専門的知見も問われるので任命にあたって慎重にならざるを得ません」という。 A氏:安倍政権の最近の大臣の失言の多さにその弊害が事実として出ているね。 民主主義と基本的人権の価値を共有する国として、「アカウンタビリティー」と「情報公開」は標準装備品で、言葉だけでなく、中身を充実させていかねばならないと片山教授はいう。 私:官僚が重要な問題の説明に「書類がありません」「記憶にありません」と平気でいうのは、その官僚が、人権と責任を集団に預けず、自分で引き受ける覚悟で、プライドを持って仕事をしていないのを自白しているようなものだね。 一人の近代的な人間としての仕事に対する姿勢の問題でもあるね。
2017.07.19
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私:夏季五輪の開催都市は、2020年の東京に続く24年がパリ、28年は米ロサンゼルスになるようだが、これは今、五輪が抱えている問題を象徴的に示しているね。 A氏:東京五輪後の24年大会に立候補した5都市中、ローマ、ハンブルク(ドイツ)、ブダペストは住民投票で反対派が上回るなどの理由で断念したため、二つしか残らなかった。 五輪憲章は「開催地は7年前に決める」と定めており、本来なら28年大会は4年後に決めればいいのに、この危機感からの異例の措置となるね。 私:28年大会への立候補都市がなかったら、五輪は存亡の危機に陥る。 委員は4年後の投票の機会を失っても、11年先までの安定を確保する策を取ったということだね。 背景に開催に伴う巨額の財政負担があり、総経費は数兆円に膨らむこともあり、納税者への負担増を招きかねない。 昨夏のリオデジャネイロは資金繰りに困り、東京は都外会場の経費分担が決まっていない。 A氏:IOCは14年、五輪改革案「アジェンダ2020」を作り、既存、仮設会場の推奨などの負担軽減策を打ち出したが、24年大会招致では3都市に逃げられた。 私:五輪が「負の遺産」になるリスクに世界が気づいたのは、2004年アテネ大会。 五輪発祥の国への108年ぶりの里帰りで、ギリシャはインフラ整備を進めたが、閉幕後に財政危機に陥り、多くの会場は使われないまま廃虚となった。 さらに、08年の世界金融危機以降、五輪をテコに国の経済を活気づける戦略も描けなくなり、14年のソチ(ロシア)冬季大会は都市開発を含めた経費が五輪史上最高の5兆円規模に上ったとされ、招致熱は冷え込んだ。 A氏:商業五輪が本格化したのは1984年ロサンゼルス大会。 また、IOCは発展途上国が経済成長し、先進国入りする時を見計らい、開催都市を選んできて、64年東京、88年ソウル、2008年北京、16年リオは典型。 しかし、今やそのモデルも成り立ちにくくなり、経済のグローバル化に伴い先進国も景気は伸び悩む。 04年アテネ大会の国際広報部長、サフィオレアス氏は「日々の暮らしに困窮する市民に、五輪の夢を語っても響きにくい」という。 私:改革は、東京が試金石という。 しかし、東京五輪も招致時に約7千億円とした開催費は、当時含まなかった項目や見積もりの甘さがあり、今は1兆3850億円。 この金額を聞いて、東京都民に住民投票したらどうなったかね。 稲垣康介氏は、「高度成長期だった1964年東京五輪の夢再び、という発想は捨てたい。少子高齢化に直面する中でどのような恩恵を引き出すか。バリアフリー化や、スポーツを通じて生きがいを見つけられる社会。それらを実現できれば、世界の模範になる」という。 A氏:パリ支持でローザンヌに来たマクロン仏大統領は、五輪に希望を託していて、「利己主義で世界は緊迫し、多国間主義への疑念が渦巻いている」と現状を憂い、「責任感、持続可能性、平等、寛容さという五輪の精神が照らすものは尊い」と語ったという。 私:東京大会は改革の試金石になるが、種目は史上最多の339に上るなど、肥大化は止まっていない。 しかし、自国第一主義が幅を利かせる時代だから、「平和の祭典」の理念は、より輝きを増す。 東京大会は、それが掲げる「世界にポジティブな改革をもたらす大会」とも呼応するものになるだろうか。 費用の増加や外国の観光客の増加に目を奪われていないか。
2017.07.18
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私:児美川教授は、新卒一括採用は、新卒のときに1回だけ、採用機会への挑戦権が与えられるしくみで、双方にメリットがあるから、定着してきて、日本の若者の失業率が低いのも、このおかげで、年功賃金を基本とする日本型雇用システムの入り口とも言え、海外に例を見ないという。 A氏:高度成長期の大幅な人手不足の時代に完成した採用方式で、当時は、だれもが「どこかには採用されるだろう」と思え、利点が目立ったが、いまはこの一本道からはみ出す学生が増え、弊害が大きくなり、看過できない状態。 学生有利と言われた昨春でも、新卒の9%にあたる4万9千人が無業で、毎年、職のない若者が多く生まれ、その後も不安定な状態に置かれるのは大きな社会的損失だ。 私:学生は、正社員になれない先輩の苦難を目の当たりにし、新卒一括採用という安定コースから落ちこぼれられないという強迫観念に支配される。 金ぴかの「新卒ブランド」を維持するためには留年も辞さないし、就活時期に間に合わないからと、留学をためらう。 就職後も安定を志向し、一度手に入れた正社員にしがみつく。 最大の弊害は、再チャレンジしにくい社会、リスクを取らない、取れない社会を生み出していることだと児美川教授はいう。 A氏:一方で、90年代初めに約25%だった大学進学率は昨年は52%に伸び、短大や専門学校を含めた高等教育機関進学率は80%となった。 だから、かつて新卒一括採用の関門は、世代の4分の1の人たちの問題にすぎなかったが、進学率がいまは8割の人が直面しており、重みが全然違う。 私:実質的な競争を高めている背景に、就活サイトの存在も大きく、サイトを通じ、ワンクリックでどの大学の学生も応募できるから、何十社もエントリーする。 人気企業では、数十人の枠に万人単位の学生が群がり、不採用が増え、不採用が繰り返されると、自分が全否定された気持ちになり、学生の心は折れていくと児美川教授は指摘する。 A氏:児美川教授は、対案として、「卒業後3年程度は新卒とみなす」しくみを実質化することを勧めている。 現状でも、「第二新卒」として一度就職した人でも新卒とみなしてはいるが、アルバイトの人、仕事をしていない既卒者にも広げるべきという。 私:しかし、ソフトバンクは、すでにその先を行っているね。 ソフトバンク常務執行役員・青野史寛氏によれば、ソフトバンクは、2016年度に入社する人たちから「ユニバーサル採用」を始めた。 入社時に30歳未満なら、新卒・既卒を問わず、同じ選考基準で年間を通して採用するものだという。 事業のグローバル化で、海外の人材も通年で採るようになり、日本だけ新卒一括採用を維持するのはナンセンスになってきたからで、変化するのが、当たり前の時代だという。 A氏:欧米では、早ければ大学1年から企業のインターンシップに参加し、大学で学んだことを社会で実践し、経験を踏まえて学び直す。 若者は企業と大学を行き来しながら、将来について考えている。 ところが日本は「就活解禁」が迫るまでは、将来を考えることを後回しにしがちで、逆に時期がきたら、「新卒ブランド」を逃さないために、考えが定まっていなくても仕事を決めてしまう。 日本では、アメリカに比較して優秀な人材が企業にとどまってしまい、ベンチャーに挑戦し、イノベーションを起こさないのも、背景にこの雇用制度があるね。 私:さらには、日本の学生は就職前に留学やワーキングホリデーに行くために、わざわざ休学や留年をする。 「新卒」の権利を守るため、必要のない授業料を払うくらいなら卒業後に行けばいいし、 そのお金で起業に挑戦したっていい。 せっかく何かに挑戦する志を持つ人が、「既卒」となった途端に、経験者採用のみになるのはもったいない、との思いもあったと青野史寛氏はいう。 A氏:ソフトバンクでは、選考基準だけでなく、入社した後の昇給・昇格のしくみも、新卒と既卒で同じにしていて、年功色がない実力主義なので、年齢構成は気にしない。 でも、会社や仲間への愛着は大切にしたいので、新入社員研修などで古き良き同期意識は培えるようにしているという。 私;ソフトバンクの「ユニバーサル採用」の認知度はまだ低く、今春入社した約400人の中で既卒は30人ほどだったが、他社にも広がり、若者に普通の選択肢になればと思うという。 日本の企業が「変われない会社」のまま社会から取り残されないために、まずは採用から変えてはどうかと、青野史寛氏はいう。 他社の人事担当と話すと「本当はソフトバンクのやり方がいい」と言ってくれる人も、自社では「できません」となりがちで、人事からトップを説得する気概がほしいし、トップにも決断してほしいと青野史寛氏はいう。 トップもそうだが、経団連や政府も就活解禁時期などという姑息な問題を論ずるよりも、その廃止の検討を進めるべきだね。 第3の矢としての、若者によるイノベーションを促進するためにも。
2017.07.17
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私:昨日のブログの「リベリアにて 希望満ちた世界、祝福しよう」で、世界の最貧困層の数は驚くほど減少していて、歴史上のほとんどの期間、世界人口のおそらく90%以上が極貧生活をしていたが、今日では10%に満たないまで急速に減っているという事実を改めて知ったね。 この著も格差問題で新しい視点を提供しているようだ。 A氏:この著書は、ピケティ『21世紀の資本』以来の久々に格差に関する問題作だという。 著者はルクセンブルク所得研究センター上級研究員、ニューヨーク市立大大学院センター客員大学院教授、世界銀行調査部の主任エコノミストを20年勤務していた経済通。 私:著者はまず、グローバル化が加速した年代(1988~2008年)の所得分配を検証する。 縦軸に所得増加率、横軸にグローバルな所得分布をとると、所得増加率の高い「世界最上位1%階層」と「グローバル中間層」(中国、インド、東南アジア諸国の中間層)の高い山に挟まれて、先進国中間層がその谷間に位置する、象の鼻に似た形状の曲線(「エレファントカーブ」)が描け、これは、所得増加率がほぼゼロの先進国中間層の没落、アジア諸国の著しい台頭を裏づけるという。 次に著者は、ノーベル経済学者クズネッツの提唱した「クズネッツ曲線」の妥当性に異を唱える。 A氏:縦軸に格差をとり、横軸に時間をとると、曲線は経済発展とともに右肩上がり(格差の拡大)となり、やがて頂点に達して、今度はさらなる経済発展とともに右肩下がり(格差の縮小)の「逆U字型曲線」を描く。 実際、多くの国々が近代化/工業化でこの経路をたどり、曲線の妥当性が立証されてきたという。 私:しかし、さらに時間が進むと、我々が今まさに目撃しているように、格差は再び拡大。 また、中世から現代まで長期の時間軸をとると、格差は拡大・縮小過程を循環してきたことが分かるという。 著者はこれらから、「クズネッツ曲線」に代えて「クズネッツ波形」を提唱。 この波形は、不平等が無限に拡大しないことを物語る。 極端な不平等は人口減少と国力低下を引き起こし、支配層にとっても許容可能でなくなるからだ。 A氏:著者は、これらの知見に基づいて将来、グローバル格差は縮小すると、大胆にも予測する。 現に、人口加重した各国間の所得不平等度は1980年代以降、着実に縮小の一途をたどっているし、さらにデータから、中国国内の格差の拡大傾向も天井を打ったとみる。 私:問題はアメリカで、あらゆる状況証拠からみて格差拡大傾向が収まる兆候はみられず、中間層のさらなる没落と富裕層支配強化(「金権政治化」)の恐れがあるという。 A氏:格差への処方箋として本書は、事後的な所得再配分ではなく、教育への公的投資や資産保有の平等化など、事前的な是正アプローチの有効性を強調。 私:グローバル化と格差の関係ではこのブログでとりあげた「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」ジョセフ・スティグリッツ著と本書の主張は異なるね。 その点、評者は、先進国/20世紀以降だけで格差を語る場合と、グローバルな視野/中世以降の長期的視点で格差を語る場合とで、こうも風景が異なって見えるのだろうかという。 そして、グローバル格差の分析を通じて、アジア資本主義の歴史的台頭を裏づけた点に、本書の大きな功績があると高い評価をしている。 格差が、中世から現代まで長期の時間軸をとると、拡大・縮小過程を循環してきたという指摘は、興味があったね。 現実に、格差で人口減少と国力低下を起こしている日本では、どうなるのだろうか。 格差はこれで天井をうったのか。 自民党内でも岸田外相のようにアベノミクス見直し論も出ているね。
2017.07.16
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私:我々が、北朝鮮の核兵器に焼き尽くされないとしても、トランプ大統領やテロ、地球温暖化の危険に不安を抱えているが、ニコラス・クリストフ氏は、このコラムで、2017年は人類史上、最良の年になりそうだと興味ある視点を提供しているね。 A氏:最初、ハンセン病のことにふれているが、罹患者数は世界全体で1985年以降、97%減少し、容易に治療できる病気になった。 世界保健機関(WHO)の世界戦略では、2020年までにハンセン病が原因で体に障害を負う子どもをゼロにするという目標が定められているという。 私:しかし、米国の世論調査では、米国人の10人のうち9人が世界の貧困は変わらないか悪化していると回答しているという。 俺たちもそう思っていたが、クリストフ氏はその間違いをデータで指摘しているね。 データでは 1人1日あたり約2ドル未満(インフレ調整後)で生活する、と定義される最貧困層の数は驚くほど減少していて、歴史上のほとんどの期間、世界人口のおそらく90%以上が極貧生活をしていたが、今日では10%に満たないまで急速に減っているという。 A氏:世界銀行のデータによると、毎日、さらに25万人が最貧困層から脱し、約30万人が電気のある暮らしを手にし、約28万5千人が初めて清浄な飲料水を利用できるようになり、今では、85%を超える大人が文字を読むことができるようになったという。 また、世界の戦死者数は残忍な30~40年代と比べるまでもないが、1950~90年代よりもはるかに少ない。 私:我々の勘違いの一因は、クリストフ氏のようなジャーナリストが悪いニュースを好む傾向があるからで、報道されるのは、墜落する飛行機であって離陸する飛行機ではないのだとクリストフ氏はいう。 ジャーナリストや援助団体は、紛争や疾病、災害を強調しなければならないが、同時に、事態が進展している状況を認める必要もあり、そうしなければ、人々は世界の貧困は救いようがないものだと受け止めて、そっぽを向いてしまうとクリストフ氏はいう。 A氏:そうだね。 テレビで、少しの献金で幼い貧困児を救うことができるという映像を流しているが、逆に救いようのない印象を受けてしまい、献金はムダなように思ってしまうね。 一種の印象操作だね。 私:クリストフ氏は「悲観論をほんの少しの間だけでも脇に置いて、良くなりつつある世界を祝福しよう。今日の世界で歴史的に見て最も重要な力はトランプ大統領でもテロリストでもない。最貧困や非識字、疾病に対して発揮された見事な前進だ。ハンセン病を患うことなく学校に通っている、すべての12歳の子どもたちのことなのだ」という。 マスコミから受けるのと違った視点が必要だね。
2017.07.15
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私:政治家は失言の言い訳に「誤解招いた」という。 最近、一番、ひどかったのは、稲田防衛相。 6月27日、東京都議選の応援演説で、自民候補について「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」などと述べ、自衛隊や防衛相を政治利用していると批判されると、記者会見で30回以上「誤解」を連発した。 A氏:どういう「誤解か全く説明がない。 「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」以外に理解のしようがないね。 ある意味、国民をバカにした言い方だね。 「私の発言が間違いでした」ですむものをーーー。 私:国語辞典編纂者の飯間浩明氏は「稲田氏は『誤解』の意味を誤解している」と指摘。 シャレにならないね。 三省堂国語辞典によると、「誤解」とは「まちがえてちがった意味に受けとること」。 飯間氏は、メガネ屋で店員から「ムショクですね」と言われた客が、「俺は公務員だ!」と怒った場合を例に挙げ、「無色」のレンズでいいか確認したいという真意が、間違って客に「無職」と伝わってしまった。 飯間氏は「この例のように真意を納得させられないのに、『誤解』と言ってはいけない」という。 A氏:「誤解」の原因やメカニズム、その対応の仕方など「誤解学」を研究する西成活裕・東大教授(数理物理学)は、政治家が「誤解」という言葉を使う場合、「本来の意味とは離れ、『詭弁』になっていることがあるので、だまされないよう注意が必要だ」と言う。 私:西成教授によると、話し手が言葉を省略した場合や、受け手が先入観を持っている場合などに「誤解」は起きるが、稲田氏のケースは「いずれにも当たらないと思われる。本音をうっかり口にしたら怒られたので、『誤解』という言葉で取り繕おうとしたのではないか。でも、論理をごまかしていると事態の収束は難しくなるのです」と指摘する。 飯間氏も「失言したうえに『誤解』と言い募ることは、二重の意味で有権者に対し不誠実だ」とみる。 A氏:ライターの武田砂鉄氏は、政治家が「誤解」を使うのは、「言っている当人たちも、『誤解』という言葉に無理があることはわかっているが、素直に非を認めると立場が危うくなるので『誤解』でうやむやにしている。それを放置してきたメディアや有権者の責任は重い」と話す。 私:「誤解」という言葉は、「政治家の言葉は一般人とは比べものにならないほど重い。自分の思いや考えを言葉で訴え、有権者の支持を得たり、有権者を説得したりするのが重要な仕事だからだ」と武田氏は言う。 さらに武田氏は「それがうまくできないのは、政治家として実力不足ということ。それなのに謝るどころか、『誤解』だといって聞き手のせいにしてしまう。要するに有権者は盛大にバカにされているのです」という。 政治家が「誤解」を使ったときは、マスコミも国民の立場に立ってもっと鋭く追及すべきだし、国民はその政治家の実力のなさを知るべきだね。
2017.07.14
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私:イラク北部モスルが過激派組織「イスラム国」(IS)から解放された。 ISの弱体ぶりが鮮明になったが、欧州ではISの影響とみられるテロが頻発する。 IS系組織は東南アジアなどでも、世界を脅かしていて、特にフィリピン・中央アジア・フランスでは活発化している。 この中で俺が関心をもったのはフランスだね。 A氏:フランスでは、迷彩服姿の兵士のパトロールや、イベント会場に車よけのブロックが並ぶのが当たり前の光景になり、パリのエッフェル塔の下には、観光客を守る強化ガラスの壁の設置計画が進むという。 私:それでもフィリップ首相は4日、国会での演説で「まわりくどい言い方はしない。新たなテロが、いずれ起きるだろう」と語った。 2015年秋のパリ同時テロは、ISとつながる国際的なテロリストのネットワークが背後にあったもので、ISの封じ込めが進んでも、脅威は極めて高いままだという。 A氏:モスルの陥落は軍事的、政治的な象徴になりうるが、ISが完全に敗北したわけではなく、(ISにつながっていなくても)感化されてテロを起こす事例もあり、危険な人物すべてを常に監視できるわけでもない状況だ。 私:仏政府は、怪しいとみなした人物を自宅軟禁にしたり、裁判所の令状なしで家宅捜索ができたりする非常事態宣言をテロ対策の要としてきた。 マクロン政権は、「非常事態宣言」を11月1日まで延長したうえで打ち切り、対策の骨格を通常の法律に盛り込む方針。 A氏:ただし、弁護士のウィリアム・ブルドン氏は「行政の権限を司法より強くし、証拠より疑いに重きを置く仕組みだ」と指摘し、非常事態の常態化につながると異を唱えるという。 私:日本の「共謀罪」はこれに先行しているようだね。 イスラム教徒の信仰の自由と、過激思想への感化との混同を生みやすいという。 何か問題を指摘すると、テロリストの側に立つかのように受け取られることもあるという。 フランス社会は、テロ対策と市民の自由という問題も抱えたままだという。 日本はテロと言えばオウム真理教のサリンテロぐらいで、その後は起きていないし、イスラム教徒の問題も少ないが、問題は東京オリンピックだね。 どういう効果的な対策を打てばよいのか、「共謀罪」施行だけでは先が見えないね。
2017.07.13
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私:5月の有効求人倍率(季節調整値)が、バブル期を上回る1・49倍を記録し、人手不足感は強まっており、特にバイトの即戦力だった若者の人口が減るなか、人手が必要な小売りや外食チェーンによる外国人や主婦、高齢者らの採用が活発になっている。 A氏:その中で、コンビニ大手が外国人スタッフの採用を増やしている。 東京・池袋のファミリーマートの沢田貴司社長は今月5日、中国やネパールなどから来日したスタッフ5人を社長室に招き、外国人スタッフを増やすのに何をしたらよいのかを意見交換した。 私:ファミマは、全国約1万8千店で働く20万人のうち、5%の約1万人が外国人スタッフで、加盟店の8割は働き手の確保に苦労しており、5月末には都内の専門学校で加盟店を招いて採用面接会を開いた。 沢田社長は「外国人スタッフとまだまだコミュニケーション不足。改善し、働く環境を整えたい」という。 A氏:ローソンは、人材を求めて海外に進出しており、ベトナムに昨年6月、日本に留学が決まった学生向けに、コンビニの仕事や日本の習慣を教える研修所を開設し、これまでに約100人が受講したという。 私:セブン-イレブン・ジャパンは、今月3日、やさしい日本語とイラストで、検品や商品陳列の仕方を解説したマニュアルを作成。 採用後のフォローにも力を入れ、昨秋から、あいさつや袋詰めのコツなどを教える外国人スタッフ向けの研修も拡充した。 A氏:コンビニのレジで外国人スタッフと会話する機会が増えるだろうね。 私:ところで、今日の新聞の「ことばの広場 校閲センターから」欄で、アルバイトの若者が接客業全般で使っている「バイト敬語」「コンビニ敬語」「ファミレス敬語」をとりあげているね。 例として飲食店で注文品を持って来た店員が、「こちら、コーヒーになります」というのがある。 A氏:「目の前に置かれた物がこれからコーヒーに変わるようだ」といった違和感を訴える読者の声がこの欄に多く届くという。 私:「レシートのほうはよろしかったでしょうか」「千円からお預かりします」という表現も同様で、「バイト敬語」は定着の兆しがあるという。 しかし、これは店の指導ではなく先輩や仲間からだという。 ロイヤルホストは03年から一定期間、「バイト敬語」を「禁止語」として、店内に掲示したという。 今後は、きちんと日本語教育を受けた外国人スタッフのほうが、皮肉にも正確な日本語を話すようになるかもしれないね。
2017.07.12
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私:広島県警で同署内の金庫に保管していた現金8572万円が無くなったが、未だに犯人がわからない。 対策として署内に防犯カメラを設置するそうだ。 A氏:警察署内にまで防犯カメラとは笑えないね。 私:「共謀罪」の導入で監視社会化が進むといわれるが、監視カメラが至る所に設置されても、反対する人は少ないというテーマで3人の識者に意見を聞いているね。 犯罪学専門の浜井浩一氏は、監視カメラの防犯効果について、国際的にデータを集めた研究では、駐車場での車上狙いなどはある程度減るが、それ以外の場所での窃盗や暴力犯罪には効果が認められていないという。 でも、事件が起きると、真っ先に「監視カメラの映像はないのか」とメディアも一般市民も思うようになっており、その意味では、防犯効果があるか否かにかかわらず、監視カメラを多くの人は求めているね。 A氏:浜井氏は、社会心理学者の山岸俊男氏の言を引用して、日本人は必ずしも互いを信頼していないが、相互監視によって安心社会を築いてきたという。 「ムラ社会」では、「村八分」があり、戦時中の「隣組」もそうだね。 私:しかし、地域や家族の絆が弱まり、終身雇用も崩れた結果、人間関係での監視がうまく機能しなくなっており、その代用として、監視カメラが求められるようになったのだろうと、浜井氏は指摘する。 「共謀罪」に賛成する人が多いのも、共通するところがあり、監視カメラや「共謀罪」で、外部から来る犯罪者や不審者を排除できるならいいじゃないか、という感覚だという。 犯罪の認知件数は年々減っているが、多くの人がそれを知らず、なんとなく治安が悪化しているように思っており、メディアも治安全体がよくなっていることはほとんど報じないと浜井氏はいう。 A氏:犯罪学の専門家として、多くの受刑者と接してわかるのは、罪を犯す人とそうでない人の違いは紙一重だということで、ましてや「共謀罪」になると、罪を犯す前の話だから、不審者とそうでない人の線引きは非常に難しいと浜田氏はいう。 私:「一般人」などは実態として存在しないというわけだ。 だから、浜田氏は「怖いのは無関心で、自分も何かのきっかけで罪を犯していてもおかしくないということを認識し、犯罪を自分たちの問題として本質的な解決策を考えていく。そうでないと、監視の強化や厳罰化は止まらないでしょう」という。 A氏:田島泰彦氏は、家を一歩出れば、監視カメラが、コンビニ、現金自動出入機(ATM)、駅、路上、学校などあちこちで目を光らせる社会になってしまったという。 浜田氏と同意見なのは、刑法犯の検挙総数は戦後最少を更新しているという指摘で、メディアは外国人や未成年者らの犯罪を含め、ときにセンセーショナルに報じるため、人々の「体感治安」が悪化しているのではないだろうかという。 私:一方、若者たちは、どこに行ったとか、何を食べたとか、写真をつけてSNSで発信するので、個人情報をさらけ出す危険性への理解が十分ではないようだという。 政府は「共謀罪」を「テロ等準備罪」と言い換え、テロ対策を強調して短期間で法改正を実現し、人々やメディアが反対しにくい「東京オリンピック」を持ち出した巧みな情報操作をした。 「一般の人は対象にならない」との説明で「自分は犯罪に関わらないから関係ない」と、反対しなかった人も少なくないだろうが、これは、人々が監視カメラを受け入れる心理にも似ているが、「共謀罪」ができ、捜査当局による市民監視が強まるのは避けられないと浜田氏はいう。 A氏:太田愛氏は、監視を受け入れる背景に、個人からみた国家観の変化があるのではないだろうかという。 「監視されても別にやましいところはない」という感覚もあるだろうが、何が「やましい」かを決めるのは国民ではなく、かつての「治安」と同じく国家であるということは、覚えておく必要があると思うと警告しているね。 私:そう言えば、民間のCSテレビで犯罪などを扱った米国のテレビドラマを見るともう監視社会だね。 監視カメラもSNSも電話もキャッチできる。 スノーデンが暴露したように米国はネットワークによる監視社会だね。 A氏:このブログの「『共謀罪』 監視拡大、民主主義の危機」でふれたようにスノーデンが指摘しているように、米国の諜報機関では日本語を十分に扱えないため、日本の警察が市民を監視して得た情報を入手できれば好都合であり、すでに、米国は日本にそのための技術システムを提供したとされ、米国の利益がこの法案の背景にあるという。 個人の監視情報も、それについでにコンピュータウイルスもグローバル化しつつあるね。
2017.07.11
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私:2017年分の路線価で、全国最高価格となった東京・銀座は1平方メートルあたり4032万円で、バブル期ピークの3650万円(1992年)を超え、最高額を更新。 全国の主要都市でも地価は上昇傾向。 A氏:地価上昇の“物語”を紡ぐ三つのキーワードがあり、それは、「観光大国」「オリンピック」「超金融緩和」で、いずれも政府・日銀の政策を原動力とする「官製バブル」の色彩が濃い。 株式市場操作と似ているね。 訪日観光客を増やす円安環境も、不動産投資ブームを後押しする超低金利も、もとをたどれば日銀の異次元緩和政策にいきつく。 かつてない規模でお金を銀行に流しこみ、市場金利をゼロやマイナスに誘導する。 私:空前のカネあまりの世界ができ、10年長期国債はゼロ金利で、住宅ローン金利も10年固定で年率1%を切るのが最近の通り相場。 これほど住宅ローンや投資資金が借りやすい時代はかつてなかった。 A氏:大手不動産会社の業績も絶好調で、売上高、利益とも過去最高が相次ぐ。 産業界全体の資金需要が伸び悩むなか、不動産業界の銀行借入残高は昨年初めて70兆円を、90年代初頭のバブル期の水準を4割も上回る。 私:こうしたビルやホテルの新増設ラッシュを、ドイツ証券アナリストの大谷洋司氏は「静かなるバブル」と指摘し、「いずれ一気に崩壊するか、ゆるやかに崩れていく」とし、一見好調に見えても強い実需は伴わず、内実はもろいという。 A氏:根拠の一つは、東京都心部のオフィス空室率が4%を切る超低水準なのに、賃料があまり上がらないことだ。 空室率の低下は、東京五輪に向けたビル建て替えラッシュで一時的にオフィスビルの供給が減っているだけ、と大谷氏は言う。 私:外国人客ブームにわく観光業界も、イメージほど好況ではない。 観光庁の調査によると、2016年に国内のホテルや旅館での外国人ののべ宿泊数は6939万人で、前年より378万人増えたが、全体の宿泊数は逆に1158万人減った。 これは、全体の86%を占める日本人旅行者の宿泊が4億2310万人となり、1536万人も減ったからだ。 A氏:バブルは渦中にいるときは心地よく、それと気づきにくいが、いったん崩壊すれば、多くの国民生活にまで深刻な影響が及ぶ危険な毒をふくんでいる。 資産バブルをあおって景気を底上げしようという安倍政権と日銀の政策は、そういう危ういギャンブル。 少なくとも大本である異次元緩和を一刻も早く手じまいする必要があると原真人氏はいう。 私:観光大国・東京五輪・超低金利――この成長物語は経済がうまく回っているときは歓迎されやすいが、五輪が終わったら? 円安局面が転換を迎えたら? 世界経済の変調による外圧で金融政策が修正を迫られたら? どうか。 官製バブルをふくらませる流れが逆回転を始めたとき、かつての悪夢は再びやってくると、原真人氏は指摘する。 いわゆる難しいとされる日銀の金融緩和の「出口戦略」をどうするかだね。 「新バブル」は日本経済にとって朗報か、それとも崩壊の奈落に沈む予兆なのかというが、バブルというのは必然的にいつかは崩壊する運命があるね。
2017.07.10
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私:都議選で、安倍首相は秋葉原での街頭演説に「辞めろ」とやじを続けた一般聴衆に逆ギレし「こんな人達」呼ばわりしたが、自民2回生工藤彰三氏は、やじの一般聴衆を政治テロリストと決めつけ「共謀罪」を適用し逮捕するよう求めたフェイスブックの投稿に、「いいね!」の賛同ボタンを押し続けていたというブラックユーモアのようなニュースが流れたね。 工藤彰三議員は、賛同ボタンを押し間違えたと弁明しているという。 A氏:その「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「改正組織的犯罪処罰法」が11日に施行される。 これに伴い、犯罪を計画段階で処罰し、日本の刑事司法の大きな転換となるとして、朝日新聞は改めて識者に考えを聞くことにし、初回は木村草太氏に聞いている。 私:木村草太氏は、憲法専門でくわしく、しかもわかりやすく説明してくれるね。 感情論でなく論理的に筋だって説明してくれるので、信頼できるね。 木村氏は「改正組織的犯罪処罰法」には二つの問題があるという。 第一は、テロ対策や国際組織犯罪防止条約の締結という目的自体は納得できるが、目的を達成するための手段としては適切さを欠いているという。 A氏:それに関連しても新聞各紙の表記が違うね。 朝日、東京の各紙は、「共謀罪」。 一方、読売、産経は「テロ準備罪」だね。 同じ法案なのに表記に政治性を感ずるね。 A氏:もともと、テロを準備行為から処罰できる法律はすでにあるし、条約締結のために「共謀罪」の立法は必ずしも必要ではないと言われていたのにね。 私:第二に、「共謀罪」は、あいまいな計画や危険性が極めて低い準備行為まで処罰の対象となりかねないのも問題だという。 憲法は「刑罰を科すに値する法益侵害がない限り、刑罰を科してはならない」と求めていると解釈されているから、法律の条文通り適用すれば、違憲となるケースが相次ぐだろうと木村氏は指摘する。 A氏:採決された法の中味も、「ここだけはおかしい」と主張を積み重ね、修正を求める姿勢が大事になるという。 例えば、傷害罪など未遂段階では処罰するほどでもないとされてきた犯罪が未遂よりさらに前段階で適用対象となった点で、不平等な適用や恣意的な運用が増える恐れがあり、修正を検討する上で、対象犯罪の絞り込みは欠かせないという。 私:木村氏は、処罰対象となる組織的犯罪集団の定義も工夫できないかという。 例えば指定暴力団のように、あらかじめ組織的犯罪集団として指定したものだけを処罰対象とすれば、一般人は対象外となるという。 A氏:適正な捜査をどう確保するかも重要で、「共謀罪」は他の犯罪に比べ、物証が乏しい分、供述に頼らざるを得なくなり、徹底した取り調べや弁護人の立ち会いを実現してもらいたいと木村氏はいう。 私:皮肉な言い方だが、「テロ対策のため、と説明していたのだから、関係のない事例には適用しちゃだめでしょ」という言い方で、目的が正しいのに、手段として不適切な法律への向き合い方として、政府の言い分を真に受けるやり方が有効なこともあるという。 木村氏らしい論理だね。 A氏:過度に広範な規制なだけに、裁判所も「極めて具体的な計画で、危険性も明白」などの事例に限って、法律を適用していくだろうという。 私:法律を限定的に解釈するよう裁判所に求め、市民として監視していくことが重要だとして、「ここはおかしい」と言い続け、使われ方をチェックしようと木村氏はいう。 そのなかで、このような「共謀罪」を考えた政治的な意図も明らかになるだろう。 A氏:今回の「共謀罪」を急いだ裏事情は、このブログの「共謀罪』 監視拡大、民主主義の危機」に詳しいね。 私:このブログでは「改正組織的犯罪処罰法」には、テロ対策の内容が1カ条もないし、テロとは無関係だというね。 ここでは、政府が「共謀罪」成立を急いだ背景には、02年以降、犯罪の件数が半数未満に減少した一方で、人員が2万人増員されて仕事のない警察が権限拡大を強く求めていることと、米国の圧力とがあるとみられるとあるね。 今後の「共謀罪」適用例で実態が明らかになるだろう。
2017.07.09
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私:クルーグマン氏の強烈なトランプ大統領批判は、今回はオバマケアの撤廃・代替え案に集中しているね。 米共和党が上院に提出した医療保険制度改革法案の根本は、簡単に言えば、医療保険を何千万もの人々から取り上げ、何百万もの人々にはずっと劣悪で、はるかに高額なものにし、切り詰めたお金で富裕層の減税分に充てるというものだとクルーグマン氏は説明する。 A氏:なぜ共和党が、この無慈悲で道徳的にみても弁護の余地のない法案を推し進めるのかは、謎だとクルーグマン氏はいう。 私:医療保険を失うことは、特に高齢者や健康問題を抱える人、そして病気のときに対応できるお金を持ち合わせない人にとって、悪夢で、そんな米国人こそが、まさにこの法案の実際の対象者であり、何千万もの人々が、まもなくこの悪夢のような生活になると気づくことになる。 一方で、ごくごく少数の富裕層の税金は減税になるか廃止になり、減税規模は巨額でも、すでにかなりの大金持ちたちだから、生活にはほとんど影響がない。 法案は、減税の40%を超す分は年収100万ドル(約1億円)超の人々を対象にするが、幸運な少数派の目から見ても、税引き後所得はわずか2%増えるだけ。 A氏:ひと握りの富裕層にちょっとしたお金を与えるために、多くの一般市民がかなりの苦痛を強いられ、(2026年までの)最もよい推計でも、「防げたはずの死者数」は約20万人にのぼるという。 大衆には受け入れ難く、世論調査では圧倒的な市民が反感を示すとはいえ、この法案が実際にどれだけ残酷なものか、多くの有権者はわかっていないという。 たとえば、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)が容赦なく削減される案だと知る有権者は、半分もいない。 マスコミは報じていないのだろうか。 あるいは、低所得者は偏った考えのマスコミにしか関心がないのか。 私:なぜ、こんなことをやりたがる人たちがいるのかというと、十分な答えとは言えないが、医療保険などへの共和党の残酷な仕打ちの裏には、二つの大きな動機が、実際には、二つの大きなうそがあると思うとクルーグマン氏は指摘する。 第一は、オバマ政権時代、共和党はオバマケアに対し、「(医療打ち切りを決める)死の審査会がある!」などと、ありもしないホラー話を仕立てて、激しく非難したから、オバマケアの廃止を最優先にせざるを得なかった。 第二に、社会のセーフティーネット(安全網)の制度は、働きたくない怠け者が得するだけ、というまやかしで、どんな人たちがうまい汁を吸おうとしているかなんて、みんなお見通しだ、というものだ。 共和党は、恵まれない人々に対する残酷さと、家庭を破滅から守るあらゆるものへの敵意が、行動の起点になっているとクルーグマン氏は厳しく指摘する。 A氏:日本の生活保護者に対する批判と似ているね。 共和党のこの弱者に対する姿勢からして、今回の法案に目新しさはなく、貧困層や労働者階級を懲らしめ、富裕層の減税を行うという内容は、共和党のあらゆる政策案に共通しており、今回は全て明るみに出ていることが、唯一の違いだという。 私:クルーグマン氏は「この恐るべき法案はどうなるのか? 私にはわからない。ただ、法案が可決されようがされまいが、この瞬間を胸に刻んでおこう。これが現代の共和党のやり方であり、これがその『人となり』なのだから」という。 現在、役に立っている社会保険制度は、オバマケアだけではなく、低所得者向け食費支援(フードスタンプ)、失業保険、障害給付などもあるが、これらも問題になっている。 しかし、伝統的産業が衰退するこの時代、セーフティーネットの最大の受益者には、トランプ支持の白人労働者階級が含まれる。 これらの人々は、オバマケアの撤廃・改正の共和党案で生活がより一層苦しくなったことを実感したとき、どういう行動をとるだろうか。 クルーグマン氏は、その予測を書いていないが、結果は目に見えているんだろうね。
2017.07.08
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私:今月の佐伯氏の「異論のススメ」は人工知能(AI)をテーマに論じている。 まず、AIと人間の棋士の対決で、昨年には、囲碁で韓国人の世界トップ棋士相手にAIが4勝1敗で勝利したことをとりあげ、現時点でいえば、この種の能力に関しては、AIは人間よりもはるかに上で、ゲームに限らず、将来、AIは人間の頭脳をはるかにしのぐ仕事をするだろう、とも思えてくると佐伯氏はいう。 A氏:最近のAIは、ディープラーニングと呼ばれる自らの学習機能を持っていて、思わぬことを「考えだす」らしく、たとえば、囲碁での対決においてAIは一度だけ敗北したが、その時には、思わぬ「奇策」を考えだし、そのあげくに自滅していったそうであると佐伯氏は問題を指摘して、これが囲碁であればよいが、仮にわれわれの日常生活に入り込んだAIが、あまりに独創的なことを考えだすとすれば、果たして、われわれ人間はそれについていけるのであろうかと危惧している。 私:今日の科学・技術の展開は、イノベーションの速度の高度化というだけではなく、医療も従来とは大きく異なった医療を可能としつつあり、根本的に新たな段階に突入しようとしているのではないか、果たして、こうした技術の展開を、これまで同様の科学・技術の延長上において理解してもよいのだろうかと問題提起している。 A氏:もともと、近代の合理的科学は、人間という理性的主体が自然や世界を対象化し、そこに理論的で普遍的な法則を見いだし、その法則を利用して、人間が自然や世界(社会)を変えていった。 人間はあくまで、この自然や世界の外から、これらに働きかけ、技術の力を使って、自然を管理し、社会を便利にするところに「進歩の思想」もうまれたと佐伯氏はいう。 私:しかし、今日の脳科学にせよ、AIにせよ、生命科学にせよ、それが働きかける、もしくは分析する対象は人間自身。 AIも人間の頭脳の代替で、」すくなくとも、それは、人間が、自らの外にある自然や世界(社会)に働きかけるものではなく、ちょうど、フランケンシュタイン博士の生み出した怪物が、外界の自然や世界を作り変えるのではなく、いわば人間自身のシミュレーションであり、その技術的創造であるのと同様であると佐伯氏はいう。 A氏:しかし、それを言えば科学技術の歴史で、コンピュータの登場は、すでに今までの自動車、航空機の発達と異質のもので、人間の頭脳労働の機械化であり、原子爆弾などの核技術も科学技術の歴史では異質といえるね。 私:しかし、われわれが理性的にそれを使えば、それは、従来の技術同様、人間に大きな可能性と幸福をもたらすであろうと、多くの技術者もエコノミストがいうように、ただ便利にそれらを使えばよい、というものではないと思うと佐伯氏は「異論」を呈している。 A氏:そして理由を2つあげている。 第一の理由は、人間は、確かに新たな技術を有効利用するが、また同時に他方では、「悪魔と取引する」ものだからで、物理学の発展が生み出した核融合技術をみればこれは明らか。 第二の理由は、もしもこれらの技術が高度に展開すれば、人間自身が、これらの技術に取り込まれてゆくだろうと想像されるからであるという。 私:こうした先端技術は、こちらに人間という確たる「主体」があって、それが「客体」としての対象に働きかけるという近代の合理的科学の前提を大きく逸脱してしまったとし、ここでわれわれは、いやおうもなく「人間とは何か」という根源的な問いの前に立たされることになろうと佐伯氏はいう。 A氏:こうなれば、科学と技術の発展が、自然や社会を支配する人間の力を増大させ、ほぼ自動的に人間の幸福を高める、などとはまったく言えず、近代社会の「進歩の思想」は崩壊するだろうと佐伯氏はいう。 その時、われわれはそれらが、人間にとってどのような意味を持つかを問わざるを得なくなるが、それに対する答えを近代社会は準備できていない。 なぜなら、近代社会は科学・技術とその意味(価値)を切り離したからであるという。 私:身近な例でスポーツ選手のトレーニングや肉体をAIや医療技術を使い、従来の記録を更新していくのと似ているね。 そこには、最早、人間という価値観は存在しない。 A氏:しかし、佐伯氏のこうした問いとはまったく無関係に、もっぱら、それが市場を拡大し、経済的利益を生み出すという期待だけでイノベーションが加速されており、これは恐るべき事態というべきではなかろうかという。 人間同士の将棋で泣いたり笑ったりした時代がなつかしくなるのかも知れないと佐伯氏は最後に皮肉っている。 私:今、北朝鮮の核開発で世界がその開発防止に躍起となり、日本はミサイル防衛で、途方に暮れ、一方で、核保有国はその処分に苦慮しているのと似ているね。 A氏:俺の近所にいる老夫婦は、子どもが結婚して別居したとき、子どもはパソコンを撤去したという。 老夫婦が変な詐欺にかからないようにするためだという。 私:最近、はやりのウイルスによるスマホ詐欺も一番完全な対策はスマホを持たないことだという。 佐伯氏のいう不安は、近代科学技術で形成された社会に住むわれわれの日常にも影響してきているね。 もっとも、AI研究者たちも倫理規定作成を検討しているようだ。
2017.07.07
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私:世界銀行などの専門家チームがまとめた、二酸化炭素(CO2)排出に価格を付けて削減を促す「カーボンプライシング(炭素の価格化)」に関する報告書が注目を集めているという。 A氏:温暖化対策や経済成長という観点だけでなく、財政難に苦しむ国にとっては歳入増への期待がかかり、制度の導入に向けた環境省の検討会でも紹介。 私:「カーボンプライシング」には、排出量に応じて税金をかける「炭素税」や、排出量に上限を設けて過不足分を企業間で取引させる「排出量取引」などがあるのはよく知られているね。 現状は、世銀の別の報告書(17年)によると、世界で排出されるCO2で価格化されているのは全体の15%で、その4分の3が同10ドル未満。 スウェーデンの「炭素税」の126ドルが最も高く、日本は同3ドル。 A氏:税負担が増えるので、企業などは投資や技術開発の対応を急ぐ必要があるが、低炭素社会に向けて必ず生まれる「約束された市場」といえ、負担増よりビジネスチャンスを見極めることが重要。 私:先進国を中心に、低成長で財政難の国にとっては歳入増への期待もある。 報告書はCO21トン当たり30ドルの「炭素税」を課せば、多くの国でGDPの約1・5%以上に当たる税収増になり、これを使えば社会保障を倍増できるとしているという。 報告書は、英国を例に、制度をうまくつくることで、法人税や所得税と比べて脱税がしにくいとも指摘し、「炭素の価格化による歳入増を、家庭への還付や貧困対策、技術革新などにも使えば、公正な成長が可能」とした。 A氏:日本も増え続ける社会保障費で財政的に苦しいが、政府内では、CO2を大量に出す電力や鉄鋼などの業界の負担が増すとして、経産省が「カーボンプライシング」に消極的で、世界の大勢から遅れている。 私:各国・地域の「炭素税」(CO2 1トン当たり)の例は次の通り。 スウェーデン 126ドル スイス 84ドル フィンランド 66~62ドル フランス 33ドル 日本 3ドル A氏:ところで、この科学欄の「ユリイカ」の記事で、温暖化に関連して興味ある記事が載っていた。 地球温暖化が進めば、糖尿病患者が増えるのではないかと、オランダの研究チームが気になる論文を専門誌に発表したという。 注目するのは体内の「褐色脂肪組織」で、寒いと脂肪を燃焼させ体温を保つ。 ところが、温暖化で気温が上がると組織の働きが弱まり、カロリー過多で糖尿病を発症するという仮設を立てている。 私:この記事を書いた記者は、トランプ大統領は「ケチャップをかけたステーキ」のような高カロリー食をとっているので、糖尿病にならないために「パリ協定」から離脱せず、温暖化に向き合ってほしいと皮肉っているね。 しかし、この記者は君の糖尿病予防の「糖質制限食」を知らないようだね。 「糖質制限食」では、糖を制限すれば、肉食はどんどん食べても糖尿病にはならないだろうからね。
2017.07.06
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私:トランプ大統領の「パリ協定」離脱について、3氏に聞いているが、3氏ともトランプ大統領に批判的だね。 国際基督教大学副学長の森本あんり氏は、米国の保守派には、地球温暖化への反知性主義的な不信が根強くあり、でっち上げだ、リベラルの陰謀だ、というわけだという。 そうした陰謀論は、米国の歴史の中で常に存在してきて、反知性主義という言葉の生みの親である歴史家のホフスタッターは、それをパラノイア(妄想傾向)と呼んだ。 19世紀にはカトリックが陰謀団体と見なされ、その後もフリーメーソンなどがやり玉に挙げられた。 トランプ氏の選挙戦での発言も、多くが陰謀論的。 A氏:森本あんり氏は、米国は基本的に「田舎の人」の国で、町という小さな単位で、保安官がけんかの仲裁をするのは認めるけれど、州政府の規模になると信用しない、ましてや連邦政府のすることなどはすべて疑うという。 当然、国際間の協定など受け入れられず、「パリ協定」への不信感も、科学そのものへの懐疑というより、国際的な枠組みが科学を押しつけてくることへの反感が大きいという。 私:その一方で、「正義と公正、自由、民主主義という米国の価値」を、各国に拡大すべきだという「米国の信条」を世界に広げたいという考えもあるという。 この「普遍的信条」と「アメリカファーストの主権至上主義」とが常に拮抗していて、信条が前面に出ると世界をリードする力になるが、反対の考え方が前面に出ると、「パリ協定」離脱のようなことを引き起こす。 その根っこにあるのは、人はみな罪人で、権力を握れば必ず悪用するというキリスト教的な人間観だから、権力を別の権力で抑える一方で、同じ人間観が政府不信と陰謀論にもつながる。 A氏:だから、森本あんり氏は、ある程度の時間はかかっても、揺り戻しは起きるはずで、その力となる機能や精神は、なお健在だと思うと将来の見通しは楽観的だね。 私:東大客員教授の米本昌平氏は、1997年7月の米上院でのバード・ヘーゲル決議に着目している。 これは、明確な削減数値が入っている合意や議定書は批准しないというもので、全会一致の賛成だったという。 だから、ブッシュ大統領は着任早々の2001年に数値のある京都議定書から離脱した。 オバマ大統領のとき、「パリ協定」を大統領権限で批准できたのは、上院の同意がいらない緩い合意だったからで、理想主義が色あせるなかで、ガラス細工の合意だった。 A氏:そこで、米本昌平氏は、対策を各国に委ねる「パリ協定」では高い目標の達成はとても無理なので、そんな中で国際社会では、ジオエンジニアリング(気候工学)で温暖化を抑えるというアイデアが出てきたという。 私:軍用機で成層圏にエーロゾルを注入し、地球を冷やす方法だというが、科学者の大半は大反対の禁じ手だが、トランプ大統領はやりかねないという。 A氏:両親は日本人だが米国育ちの女性タレントのREINA氏は、共和党が強い地域では、環境教育はあまり熱心にされず、地球温暖化なんて全く信じない人もいて、トランプ氏の勝利の力となったラストベルト(さびついた工業地帯)の人たちは、自分たちの仕事を確保すること、「自分ファースト」で、地球のことを考える余裕はなく、世界から孤立するなんて、どうでもいいのだという。 私:森本あんり氏の米国は基本的に「田舎の人」の国だというのと同じだね。 REINA氏は、新聞、テレビ、ネットには情報があふれているが、みな自分の信じるものしか読もうとしないで、国が二つに割れ、分断された人たちの間では話が全く通じなくなってしまったという。 環境問題だけではなく、貧富の格差、銃規制の問題も同様で、米国が壊れていくようだという。 A氏:しかし、連邦政府が「パリ協定」から離脱しても、州政府や都市、企業からは「私たちは協定を守る」という主張が出てきており、芸能人も、おかしなことはおかしいと声を出しており、社会に多様な意見があることが、米国の民主主義のいいところで、それが希望だとREINA氏はいう。 私:「パリ協定」の今後の動向は、とりあえずは、米国を除いた各国、特に中国の活動が重要になってきたようだね。
2017.07.05
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私:ロシアの組織的なドーピング疑惑を機に、国際オリンピック委員会(IOC)は15年8月、2008年北京五輪と12年ロンドン五輪でのドーピング再検査に本格的に動いた。 4月時点で、北京大会では65件、ロンドン大会は46件と合計111件の陽性反応が発覚しているという。 A氏:今になって不正を発見できた理由として体内に長く残っている新しい代謝物の発見がある。 使用した薬物は体内で代謝され、次々に構造が変わり、尿に排泄されるが、使用した薬物そのものや代謝物が尿の中に見えなくても、いくつか姿が変わった後の、いわゆる「代謝物の代謝物」のようなものを見つけたことで薬物使用の兆候を見て取れたという。 私:分析機器の進歩で微量でも検出できるようになったということだね。 種類別では、かつて東独で作られ、筋肉増強効果のあるデヒドロクロロメチルテストロンが多いという。 その他、1988年ソウル五輪陸上男子100メートルで金メダル剥奪となったベン・ジョンソン(カナダ)が使ったスタノゾロールも多く報告されているという。 分析前の前処理や分析機器の設定値を変えるなどして、スタノゾロールの新たな代謝物を発見し、以前は数週間だったのが今は数カ月間見えるという。 A氏:禁止薬物からしか生まれない代謝物を検出すれば、使用した薬物を推定できる。 そこで代謝経路を調べ、その代謝物をつくる研究が進められた。 多額な費用がかかるため、世界反ドーピング機関(WADA)も負担。 10年前の検査だったら、ドーピングした選手はおそらく陰性というケースはあるという。 私:短期間で消えてしまうものが多い主要な代謝物から、長期間確認できる代謝物に照準を切り替えたことで、多くの違反者を見つけられるようになったというわけだ。 A氏:2大会の再検査で陽性反応が相次いで出ていることに、複雑な思いを抱える関係者は多く、中には繰り上げ入賞者もいる。 重量挙げ界は再検査での陽性反応が49件(4月時点)もあり、「外国では(薬物使用を)やったもの勝ちのようにもなっている」という。 私:WADAのニグリ事務総長は「今は無理でも、10年先に捕まえればいい」とドーピング根絶をめざすという。 しかし、ドーピングしてまで記録をのばす動機をなくさなくては、ごまかしのきく新薬の開発とそのごまかしを暴く検査技術との「いたちごっこ」が続くおそれがあるね。 IOCはどういう対策を考えているのかね。 東京五輪でのドーピング検査はどうかね。
2017.07.04
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私:中国共産党はこれまで、盧溝橋事件(1937年)を抗日戦争の起点としていたが、31年の柳条湖事件まで6年さかのぼり、14年間続いたと主張し始めた。 A氏:背景には5年に一度の党大会を控え、「14年間にわたる抗日戦争の前期に、中国は日本に抵抗する重要な任務を担い、日本軍を足止めした」として共産党の権威を高めようとする習近平指導部の意図があるとみられる。 私:2月には共産党機関紙の人民日報が、改訂の狙いを「中国の抗日戦争が世界反ファシズム戦争で重要な役割を果たしたことを正しく学ぶ」などとする軍事科学院の軍史研究者の論文を掲載。 抗日戦争の時間的な長さを強調することで、中国(当時は中華民国)が米英ソ連など連合国側の勝利に貢献し「戦後の国際秩序をつくった」(王毅外相)とのメッセージを打ち出す狙いだという。 A氏:解釈変更のきっかけは2015年7月、党政治局の学習会で習氏が「柳条湖事件から14年間の歴史を一貫したものとして学ばなければならない」と発言したことで、研究者の間には抗日戦争を「14年」とする意見があったのが、習氏の一言で突然「公認」された形となった。 私:党指導部の大号令の前に異論はかき消されていて、中国社会科学院近代史研究所の元所長で「8年」説を貫く張海鵬氏は1月末、「『14年』は学界の共通認識ではない。このテーマを論じるのがタブーになることを懸念する」と訴える評論をネットで公表したが、すぐに削除された。 別の研究者は「今の指導部に異論は唱えられない。教育現場で客観的な歴史の背景を教えるのも難しくなるだろう」と危惧した。 A氏:こないだのブログ「『聖徳太子』と『厩戸王』併記に批判、なぜ?」で、日本での聖徳太子の問題で、「神話」と「史実」の混同があったのと似ているね。 こういう場合。大抵、政治がからんでいるね。 A氏:今回の歴史解釈の変更が、対日関係に与える影響はまだ見通しにくく、今のところ、解釈の変更を踏まえて習指導部が対日批判を強める動きは顕在化していない。 私:日本側には「31年前後から盧溝橋事件までの旧日本軍による『被害』を今後一層強調する可能性もあり、中国が歴史問題で日本を責める新たなカードを増やそうとしている」と警戒する見方も出ているという。 中国も韓国も戦争中の日本との歴史問題は、火種はいろいろあって、依然として根深いね。
2017.07.03
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私:昨日のブログで、福島第一原発事故を扱ったので、この著書が目に止まったね。 1957年、旧ソ連の南ウラルに位置する秘密工場の放射性廃棄物貯蔵庫で爆発があり、後のチェルノブイリにも比すべき原子力災害が起きたという核惨事をこの著書は扱っている。 著者は、旧ソ連生まれの生化学、政治史研究家。 A氏:事故は旧ソ連では極秘とされたが、著者は76年、体制を批判する出版で要職を解任、精神病院に拘禁のうえ、ついには国籍も剥奪され、滞在先の英国で発表した記事で初めて言及、大変な反響を巻き起こしたが、原子力産業に携わる西側の科学者らの反応は、一様に否定的だったという。 西側の科学者にも「原子力村」はあったのかね。 私:反撃するにもすでに著者と母国のつながりは切れていたが、驚くことに著者は、検閲を経て公開済みのソ連の科学者たちの論文に見られる不自然な省略、単位のすり替え、数値の使い回し、意図的な歪曲、生態系調査の偽装を見破り、事故の全体像を詳細に再構築。 独自に情報を得ていたCIAへの資料開示請求などを経て、79年、『ウラルの核惨事』を刊行。 これで、西側で事故が周知のものとなる一方、ソ連はチェルノブイリを経てベルリンの壁が崩れる89年、ようやくこれを公式に認めた。 A氏:ソ連の鉄の検閲があったが、ソビエト体制下の科学者にも欲があり、実は広範囲にわたる詳細な実地調査をしていた。 このような専門家の研究成果をくまなく精査するのは至難の業であるが、著者にはその余白を埋め、有意な情報を読み取るだけの知識と経験があり、その意味で本書は、きわめてスリリングな知的推論の書でもあると評者はいう。 過去にも日本語版があったが、今回はロシア語原文からの訳出で、チェルノブイリ、福島原発事故直後の論考も加えて、新たに書き下ろしの序文が巻頭を飾り、この核惨事について私たちが知りうる今なお唯一の書であり続けていると評者は言う。 私:チェルノブイリに先立って惨劇を予言したとされるタルコフスキーの映画「ストーカー」は、過去に起きたこのウラルの事故を参照していたとも言われる。 さらなる過酷事故で、本書の価値がこれ以上増さないことを祈らずにはいられないと評者は言う。 地震大国日本では、原発の再稼働が逐次開始されているが、さらなる過酷事故が起きないことを同様に祈りたいね。 しかし、昨日のブログでふれたように福島原発の津波を02年にすでに15.7メートルと予測した地震学者島崎氏が、電力会社によっては、震災前と天災に対する姿勢が変わっていないという会社もあるというから心配だね。
2017.07.02
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私:2011年の東京電力福島第一原発事故を巡って強制起訴による、東京地裁の初公判が始まった。 事故につながった巨大津波は予見できなかったとして東電旧経営陣は、無罪を主張。 一方、検察官役の指定弁護士は、3人が津波の危険性を認識しながら対策を先送りしていたと指摘しているね。 A氏:15メートルの津波は「想定外」でなかったことの論争だね。 私:事実、2006年では、東電で津波の高さが15.7メートルになるという計算をしており、当時、役員の武藤氏に海面から20メートル至る防潮堤を設置する必要がある説明し、武藤氏は対策の検討を指示。 それが、08年にとりあげられていない。 A氏: この問題について、今日の朝日は、ロングインタビュー欄で「あの津波に学んだか」として、前原子力規制委員長代理・島崎邦彦氏にインタビューしているね。 島崎氏は地震学者だ。 島崎氏は、国の地震本部の部会長として、福島沖を含む三陸沖から房総沖の大津波の可能性を02年に示した。 原発事故をめぐる東電元幹部の刑事訴訟も、この見解を踏まえた東電の08年の15・7メートルの津波の計算を内部でどう取り扱ったかが論点の一つ。 私:02年の地震本部の見解に基づいて対策していたら、震災に伴うあれだけ大きな被害や、原発事故も防げたと島崎氏は指摘する。 震災後、「想定外」だったと強調する動きが強まったが、02年の段階で大津波の可能性は分かっていたという。島崎氏は、自分にも責任があり、「想定外」をもう起こさないようにすることが、氏ができることだと思っているという。 当時、東電は計算手段を持っていて、02年の時点でも10メートルを超える津波の想定は可能で、対策を取れたはずだが、国の中央防災会議も、地震本部の見解を津波の想定に反映しなかったという。 A氏:自然の怖さを知らない人災だね。 私:02年当時、地震本部で議論していない内容が報告書に加わり、おかしいと思ったことがあったという。 あたかも「地震予測は十分に信頼できない」と読める一段落が入っていた。 震災後、事故調の報告書を読むうちに、政府と電力側の密接な関係が分かり、ミステリーを解くように島崎氏自身の経験とつながった気がしたという。 私:原子力規制委員退任後、地震学者として、政府が新しく想定した日本海側の津波の高さの妥当性を検証し、津波想定に使った計算式を調べたところ、場所によっては過小評価で、以前からある別の計算式を使うほうがよいと気づき、15年に学会で発表した。 A氏:その計算式では 大飯原発の揺れの想定は過小評価で、別の式を使ったほうがよいと確信し、それで、裁判ででも何でも話さなければ、と決意したというのが経緯だという。 私:島崎氏は、言い続けないと「うやむや」になるという。 最たるものが東日本大震災で、太平洋側で大津波を発生させる地震が起きる可能性があるという02年の見解に携わったのに、社会に広く伝えることができなかった。 そして1万8千人余りが犠牲になった。 A氏:しかし、電力会社によっては、震災前とほとんど変わっていない会社もあり、震災前と同じ地震の想定を審査で出してきて、いくらなんでも、それはないでしょうと島崎氏は指摘する。 想定が小さければ耐震費用を抑えられ、地震の想定をわずかでも小さく見積もろうとするのは、コストカットと同じ意識かもしれず、安全文化に対する会社の体質の問題だろうという。 私:島崎氏は、我々にとって自然はある意味、神様で絶対的な存在。 どんな緻密な理論でも、自然が違う結果を示せば「その通りでございます」と言うしかないが、ものを造る側の人は、自然に対する謙虚さが薄いかもしれないという。 あの津波で学んだはずだが、いまだ変わっていない人もいると島崎氏はいう。 本来は科学的に突き詰めたうえで、そこから先は行政が責任を持って判断を示すべきだが、行政は、自分たちの意向を反映した判断へ誘導し、事故が起きれば、「想定外だった」「科学が間違っていた」とごまかそうとするという。 A氏:若い地震学者には島崎氏は、「行政の中には入るな」と言っているという。 世間知らずの研究者を丸め込むのは、官僚にとっては簡単で、研究者が本当に世の役に立ちたいなら、政府の委員会で専門知識を役立てようとするのではなく、外からウォッチし、科学的におかしければ、しっかりと声を上げていくことだという。 私:それにしても、「原子力村」のように地震大国日本が自然の脅威をおそれなくなったのは何時からなのだろうか。 科学者寺田寅彦の伝説の警句、「天災は忘れた頃に来る」を想起するね。
2017.07.01
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私:今回は、安倍首相の自民党としての憲法改正案を年内に提出したいという考えを明らかにしたというニュースに関連して、毎日、日経、朝日、読売、産経の5紙を「ななめ読み」している。 A氏:毎日と日経の記事には神戸市で行われたとあるが、どんな会合だったのか、記事には書かれていない。 日経新聞も「神戸市内で講演し」とだけ。 では、読売はどうか。 私:毎日も日経も1面に掲載しているが、扱いは大きくないのに、読売は1面トップの大きな扱い。 安倍首相との近さを感ずるね。 首相から「読売新聞を熟読してください」と言われるだけあって、首相の発言を詳細に報じ、別の面に「講演の要旨」もまとめられている。 しかし、この記事も「神戸市内のホテルで講演し」となっているだけだが、2面には講演の様子がカラー写真で掲載されていて、背景に「産經新聞社」という文字が見えるので、読者に不親切だと池上氏は、指摘する。 A氏:ところが、朝日では、〈産経新聞の主張に賛同する任意団体「神戸『正論』懇話会」主催の講演会で語った〉と明記している。 自民党の候補者の応援ではなく、こちらの講演会出席を優先した。 安倍首相がいかに産経を大事に思っているかがわかる。 私:問題の産経新聞は、1面トップの大きな扱い。 記事の中に「通常国会で衆参両院で」と、「で」の連続とは、プロの新聞記者が書いたとは思えない文章があるという。 産経の記事の中では、〈首相がここまで強い決意を示したのは、加計学園問題や若手議員の不祥事などで、内閣支持率が急落する中、憲法改正という自民党の党是を掲げることで、保守勢力の奮起を促し、結集を呼びかけたいとの思いがある〉とあり、安倍首相の思いを代弁してくれている。 毎日の分析が冷静だったのに対し、産経はずいぶんと熱が込められていて、自社の関連行事に首相が足を運んでくれた、そんな感謝の気持ちもにじんでいるように思えると池上氏の「ななめ読み」は産経に対し多少皮肉交えに読みとれるね。
2017.06.30
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私:小熊氏は、「戦後」という我々があいまいな意味で使っている言葉をこの欄で氏の持論で明快に説明しているね。 氏の持論は、「戦後×年」とは、「『日本国』建国×年」の代用なのだという。 A氏:現在の国家には、第2次大戦後に建国されたものが多く、中華人民共和国、インド共和国、ドイツ連邦共和国、イタリア共和国などは、大戦後に「建国」された体制だ。 これらの国々では、体制変更から数えて「建国×年」を記念している。 日本でも大戦後、「大日本帝国」が滅んで「日本国」が建国されたと言えるほどの体制変更があったが、その体制変更から数えて「『日本国』建国×年」と呼ぶことを政府はしなかった。 天皇制が象徴性維持により継続したせいかね。 私:しかし「建国」に相当するほどの体制変更があったことは疑えないのに、その時代区分を表す言葉がなく、そのため自然発生的に、「建国×年」に代えて「戦後×年」と言うようになり、戦争から何年たっても、「日本国」が続く限り「戦後」と呼ばれるのだと小熊氏はいう。 だから、「戦後」が終わるのは、「日本国」が終わる時だという。 A氏:「日本国」の憲法体制は、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を三大原則としているが、それを変えるほどの体制変更があれば、体制としての「日本国」は終わり、「戦後」も終わる。 例えば天皇主権、言論・出版の制限、平和主義の放棄などを「改憲」によって国家原則にすれば、「日本国」と「戦後」は終わると小熊氏はいう。 私:その視点からみると、敗戦後の「保守」「革新」の対立は、新しく建国された「日本国」を認めるか、認めないかをめぐる対立だった。 こうした対立は、日本だけではなく、独仏伊などでは、共産党をはじめ、体制を否定する「反体制政党」が力を持つことも多かった。 体制が安定し、反体制政党も穏健化して、体制の枠内での政権交代が定着したのは70年代以降。 A氏:だが日本が複雑なのは、「日本国」という戦後体制を認めない「反体制」の主要勢力が、共産党ではなかったことだ。 例えば1978年にA級戦犯を合祀した靖国神社宮司の松平永芳は、「現行憲法の否定はわれわれの願うところだが、その前には極東軍事裁判がある。この根源をたたいてしまおうという意図のもとに、“A級戦犯”一四柱を新たに祭神とした」という。 私:これは明確に「日本国」による戦後秩序への「反体制」の表明で、こうした意図での合祀によって、靖国神社に参拝することは、戦後に築かれた「日本国」の国内体制と国際秩序への挑戦とみなされるようになってしまった。 しかし、60年代以降の自民党が「改憲」を棚上げしたことで、自民党が安定した支持を国内外で得ることができたのは、「反体制」の側面を封印したことによってであると小熊氏は指摘する。 A氏:しかし、今になって、時計の針を逆戻りさせるような「体制をめぐるイデオロギー対立」が復活している。 かつて「戦後レジームからの脱却」を唱えた首相が、「改憲」を提言したことによってだ。 他の先進国では、体制をめぐる対立が解消した70年代以降、政党間対立も社会的問題への争点の方に移行し、そのなかで若年層の政治参加も進んだ。 私:ところが日本では、いまだに旧来の対立が尾を引いていて、最大の原因は、右からの「反体制」が根強いことだ。 しかし、各種の世論調査が示すように、国民の大多数は「改憲」の必要など感じていない。 政治が社会から取り残されているというべきで、若年層の政治的無関心の一因も、ここにあるだろうと小熊氏はいう。 安倍首相は、「反体制」の「改憲」を急いでいる。 それではじめて、「日本国」と「戦後」は終わるということになる。
2017.06.29
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私:中国南部・広東省東莞(トンコワン)市にある日系電子部品メーカー「東莞田中光学科技」の主力製品は、車載カメラに組み込む赤外線カットフィルターで、車の安全技術の進化につれて、搭載される車載カメラの数が増え、市場の急拡大が見込まれている。 工場は元々、埼玉・秩父の電子部品メーカー「タナカ技研」が中国に設置したが、昨年1月の取締役会で、赤字増の懸念から撤退が議論となったが、工場の責任者だった石野千尋氏(41)が、他から資金を得たりして、自分で買い取り、独立することを即決した。 「一国一城の主になりたい」という長年の夢があったので、「今しかない」と思ったという。 A氏:経済が減速傾向にある中国の工場では近年、ストライキなどの労働争議が相次ぎ、その主な要因は、従業員とのコミュニケーション不足だという。 しかし、石野氏の「東莞田中光学科技」では全員による工場内の掃除など、独自の取り組みでチームワークを高めている。 「石野流」のユニークな経営を参考にしたいと、1年間で中国の企業関係者ら約1800人が視察するまでになった。 私:「石野流」の掃除を始めたきっかけは「石野は黒社会(やくざ)の親分だ――」という一通の怪文書で、2012年、人事評価制度の見直しに着手したところ、人件費の削減を勘ぐる誤解が広がり、怪文書がまかれた。 そこで「気分転換のために清掃でもやるか」とトイレなどの掃除をはじめたが、掃除に加わる社員はなく、黙々と続けた。 A氏:半年ほどたったある日、作戦を実行。 石野氏の指示にいつも反対する30代前半の中国人女性を部長に大抜擢。 今度は古参の社員が女性に従わなくなり、相談にきた女性を掃除に誘うと、少しずつ他の社員も参加し始めた。 私:ほかにも、上司が部下と「飲み会」を開くことを義務づけ、お世話になった社員へのお礼状も書かせている。 こうした「仲間意識」を植え付ける手法で、6年前に2桁だった離職率が昨年は3%台まで低下し、熟練社員の割合が増え、年間20件はあった重大なクレームが今はほぼゼロに減った。 全員掃除では、石野氏は男子トイレを担当し、腰をかがめて大便器に手を突っ込み、ぞうきんで拭き、「人が一番嫌がることをするのがトップの仕事」という。 A氏:午前8時前の朝礼では、社員が「華為(ファーウェイ)を超えるぞ」と一斉に声を張り上げる。 華為技術は従業員18万人を超す中国の電機大手で、石野氏の社員約80人の小さな工場からみれば、果てしなく遠い目標に見えるが、石野氏は本気で、「自分の夢を大きな声で言えば、必ず実現する」という。 私:年商は今、3千万元(約5億円)ほどだが、22年には3億元、25年には10億元まで増やす計画で、石野氏の夢は大きい。 「20年後の37年、華為を超えて世界ナンバーワンを目指す」という。 日本の高度成長期にあった日本流の従業員の「仲間意識」は、日本では消えつつあるが中国の石野氏の企業で受け継がれつつあるということかね。
2017.06.28
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私:文科省が学習指導要領の改訂案で「聖徳太子」の呼び方を「聖徳太子(厩戸王〈うまやどのおう〉)」などと変えようとしたところ、批判が相次ぎ、結局、表記は元に戻ったという。 何故、そうなったのかを取りあげているね。 A氏:「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長が批判の中心になったようだね。 藤岡氏は、聖徳太子は中国(隋)に従属せず、対等外交を展開しようとし、十七条憲法で「和」の精神を打ち出し、聖徳太子が「日本人の精神の骨格をつくってきた」という。 私:ところが、「日本書紀」には、冠位十二階や十七条憲法を制定した人物として「厩戸皇子(うまやどのおうじ)」の名前が記されていて、「聖徳太子」は登場しない。 奈良時代以降に日本仏教の祖とあがめられ、神話化が進んだとされる。 A氏:指導要領の改訂は、ほぼ10年に一度で、文科省は今回、歴史の授業では「古事記」や「日本書紀」の史料に基づいて学ぶことを明記することにし、これに伴い「聖徳太子」の名が没後の呼称であるとの史実を踏まえて2月に改訂案として、小学校は「聖徳太子(厩戸王)」、中学校は「厩戸王(聖徳太子)」に改めるという内容を公表し、パブリックコメントを募った。 私:多くのコメントがあったようだが、文科省はコメントの詳細を明らかにしていない。 文科省幹部によると、寄せられた意見には「小学校と中学校で呼び方が違うと教えづらい」との教員からの声もあったという。 パブリックコメントを経て、結果的に、小中学校とも「聖徳太子」の表記に戻ったというわけだ。 ただ、中学校については「『古事記』や『日本書記』で『厩戸皇子』などと表記され、後に『聖徳太子』と称されるようになった」とのくだりが残り、文科省幹部は「いただいた意見をもとに修正するのは制度が予定するところ」と語るという。 A氏:明治大学の吉村武彦名誉教授(日本古代史)は、学界では「厩戸皇子」と「聖徳太子」を分けるのがオーソドックスな考え方だとして、「歴史を理解するためにも、『史実』と『神話』は区別して理解してほしい」という。 私:ただ、吉村教授は「ただ、『史実』をすべて正しく理解しようとすると、あまりに難しい。 子どもたちには難しいからと歴史を嫌いになってほしくない。小さなころは「聖徳太子」として歴史の流れを学び、中学生になったら名前を併記して歴史をより詳しく学べればいいのではないか」と話しているという。 A氏:ところで、昨年、「明治の日推進協議会」というところで、稲田朋美防衛相が、 「『神武天皇』の偉業に立ち戻り、日本のよき伝統を守りながら改革を進めるのが明治維新の精神だった。その精神を取り戻すべく、心を一つに頑張りたい」と発言したというニュースをネットで見た。 「神武天皇」は「神話」上の人物なのを知らないらしい。 「神武天皇」の戦いで有名なのは「金鵄」と「八咫烏」だね。 稲田大臣は大人なのにこの「神話」も信じているのだろうかね。 私:小学生のうちに「史実」と「神話」の区別」を理解していないと、大人になっても、正しい国の形に無知になるだけで、「神話」は小学生でも理解できるよ。 それに、やや右派よりの「藤岡氏の「聖徳太子は中国(隋)に従属せず、対等外交を展開しようとした」とあるのも「史実」と違うね。 これは、このブログの「異説あり 遣隋使、いつから 600年が最初、野蛮国扱いに奮起」でとりあげている。
2017.06.27
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私:フリードマン氏がソウルのホテルで身支度をしていると、北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射し、東海岸沖に落下したというニュースが携帯に入るが、ホテルのシェルターへの避難警報を待ったが、警報はなく、朝食のビュッフェは大にぎわい。 A氏:韓国人の学生たちから「北朝鮮が攻撃したり戦争を仕掛けたりするとは思っていない」。「米国の人々の方が自分よりよっぽど北朝鮮のことで騒いでいる」という声を聞いたという。 私:それでフリードマン氏がわかったのは、米国が今、孤立した存在になっているということだという。 中国と韓国は考えを共有していて、両国が最も恐れているのは、北朝鮮の核ミサイルで吹き飛ばされることではなく、北朝鮮が経済制裁や米国による攻撃で崩壊してしまうことだという。 そうなれば、中国や韓国に難民や核物質がなだれ込み、多大な費用負担が生じ、中国にとっては、隣に核を保有する統一朝鮮が生まれる可能性もある。 A氏:一方、米国は北朝鮮が自分たちを吹き飛ばすのではないかと恐れていて、朝鮮半島の軍縮問題に詳しいロブ・リトワック氏は、トランプ米大統領によって破滅的な衝突に引きずり込まれるのではないかと韓国は恐れていると指摘。 韓国の研究者は「(北朝鮮の)金正恩氏よりトランプ氏を恐れる人もいる」と言う。 私:米国、韓国、中国は、北朝鮮をめぐり複雑な関係になっている。 中国と韓国は、北朝鮮が崩壊されては困るのであえて飢えさせない。 反撃されては困るのであえて攻撃しない。 米国も北朝鮮の核の脅威が本物だと認めることになるので金正恩氏と交渉しないし、そもそも約束を守る相手と思っていない。 A氏:フリードマン氏は、この状況から、中世の寓話を連想する。 その寓話とは、死刑を1年延ばしてくれたら王様の愛馬に歌を教え込むと約束し、罪人が命乞いに成功する話だ。 仲間に無理だと笑われると、罪人はこう答えた。「1年あればいろいろなことが起きる。王が死ぬかもしれないし、馬が死ぬかもしれない」。 私;これが各国の北朝鮮政策の現状で、「『何かが起きる』のを待っている。馬が歌い出すのを待つように」とフリードマン氏は言う。 あの米空母の日本海への展開はなんだったのか。 まさに「馬が歌い出すのを待つ」しかないとは名言だね。 最近では、韓国・文在寅政権はかなり本気で北朝鮮対策の一環として「2018年に開催される平昌冬季オリンピックに北朝鮮を平和裏に巻き込もう」とする動きを加速しているという。 「何かが起きる」のかね。 しかし「馬が歌う」ことはないだろう。
2017.06.26
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私:著者は、優れた業績を収める著名企業の経営者たちへのインタビューで、21世紀の「知識経済」に求められる働き手の資質として、「専門的知識の有無」がまったく挙がらないことに驚き、共通して重要とされたのは、「的を射た質問をする能力」「相手の目を見て対等に議論できること」、そして「他人と協調しながら仕事を成し遂げる能力」であったという。 A氏:その背景には、企業の組織構造や仕事の仕方の変化がある。 かつて大企業の組織は階層構造をなし、経営スタイルはトップダウンだったが、現在、組織はフラット化し、仕事はプロジェクトごとに部門の枠を超えたチーム編成で進められ、彼らは課題を与えられるものの、解決法は示されない。 中間管理的な仕事は減少する一方、製品・サービスの生産や顧客対応の最前線に立つ労働者は、現場で直接、思考力を働かせて課題を解決する能力が求められるようになっている。 私:著者のトニー・ワグナー氏は、米ハーバード大イノベーション研究所研究員で、同大学変革リーダーシップ・グループ研究所の創設者・共同ディレクターを歴任しているというが、ワグナー氏は、アメリカの学校教育をみると、現在学校で教えられている内容と、グローバルな知識経済で生きるのに必要な能力との間に、大きなギャップがあると指摘。 とくに公立学校は、知識の獲得を依然として主目的とし、その達成度を筆記試験でチェックする従来型から脱却できていないという。 A氏:21世紀型の優れた授業は、次の3つを含んでいるという。 第一は、つねに学び続ける能力の養成で、暗記よりも、論理的に考え分析する能力と、その結果を的確かつ巧みに文章、あるいは口頭で表現する力が重要。 第二は、学習の動機づけの養成で、議論、プロジェクト、実習、論文執筆などへの参加を通じ、疑問や興味を掘り下げる機会をもつことが、学習への動機づけとなる。 第三に、達成度は筆記試験ではなく、生徒の(口頭発表やエッセーなどの)パフォーマンスで評価することだが、筆記試験と異なって、パフォーマンス評価は難しい。 著者はしたがって今後は、評価基準(「パフォーマンス基準」)の研究開発に力を注がねばならないと強調する。 私:日本の新しい学習指導要領も、実は本書と同じ問題意識を共有している。 それで、連想するんだが、昨日のブログでふれた日本の若者の自殺が多いのは、このような自己肯定型の教育をうけていないためなのかね。 「売れてる本」欄では、汐街コナ〈著〉ゆうきゆう〈監修〉『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』をとりあげているが、ここでは、サーカスのゾウは足首のひもで地面の杭につながれているが、逃げ出そうと思えば力ずくで逃げ出せるはず。 しかし、小さいときから杭につながれているゾウは「抵抗してもムダ」という無力感が注入され、逃げる発想がなくなってしまうのだという。 A氏:今日の「働き方改革を問う」欄では「野放しのパワハラ、『殺してえ』上司から罵声」という見出しで、パワハラ問題をとりあげているね。 2015年1月28日、ヤマト運輸の長野県内の営業所で宅配ドライバーをしていた男性が行方不明になり、6日後に県内で遺体で見つかった。46歳だった。1月末ごろに自ら命を絶ったとみられる。 上司のパワハラの形跡があったという。 こないだの秘書に「ハゲ」などという暴言を吐いたという女性国会議員の問題と同様、このドライバーは上司の暴言を録音してあり、そこにドライバ-に対して「殺してえ」という暴言があったという。 私:人手不足だから、そんな企業から飛び出せばいいのに、何かの「ゾウの杭」で動けなかったのかね。
2017.06.25
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私:近年、15~34歳における死因の第1位が自殺の国は、先進7カ国で日本だけで、この層の人口10万人あたりの自殺者数は、日本は他の6カ国の平均の約2倍と、非常に深刻な状況にあるという。 A氏:日本で自殺が急増し、初めて年間3万人を超えた1998年当時は、中高年男性が目立ったが、2006年に自殺対策基本法がつくられ、ようやく社会的な対策が進み始め、ばらばらだった対策に連動性を持たせたり、相談機関が分野を超えて連携を図ったり、啓発活動を行ったりしたが、中高年の男性向けの対策が優先されて、若者向けは後回しになってきたという経緯がある。 私:全体の自殺者数が減る傾向にあるのは、社会的な対策が進んだことが大きく、ここ数年の減少は景気回復も影響しているようだが、若年層の下げ幅は小さく、景気がよくなっても、若者の自殺は深刻なままだ。 A氏:日本の若者は、自己肯定感が低く、日本社会に対する期待も失っている人が少なくないという。 日米中韓の研究機関が協力した「高校生の心と体の健康に関する調査報告書」(11年)によると、自分は価値がある、自分に満足しているという自己肯定感が、日本は極端に低いという。 長野県松本市などの調査では、小学生は自己肯定感が高いのに、中学、高校と、だんだん下がる傾向もわかるという。 国が16年に行った「自殺対策に関する意識調査」では、「生きていればいいことがある」に「そう思う」と答えた割合は、20代が最も低く、わずか37%で、08年の62%から大きく減っているという。 08年というとリーマンショックが起きた年で、09年から日本も不景気になるね。 その頃から、社会が変わってきたんだろうか。 私:清水氏は、自己肯定感が低くなると、過度に周りの評価を気にしがちとなり、評価を得ることが目的となり、自分の本意でないこともしてしまう。 そこまでやっても評価を得られないと、「何のために生きているのか」という感覚に陥る。これは、かつてより、若い世代に広がっている感覚のように思うという。 A氏:さらに、社会に出ると、就職活動での厳しい評価や長時間労働、不安定な雇用などにさらされる。 「死ぬくらいなら、会社をやめればいい」とも言われるが、まじめで責任感の強い人ほど、難しく、逃げ出さずに頑張り抜くことが善しとされる社会で、周りの評価や期待もあり、弱音を吐けない。 結果、どんどん追い込まれていき、若者たちからは「死にたい」ではなく「生きるのをやめたい」と、よく聞くという。 私:将来の夢や信頼関係、やりがいのある仕事や趣味などは、生きることを後押しする促進要因だが、一方で、将来への不安や絶望、過労や借金など、生きることを困難にさせる阻害要因もあり、後者が前者を上回ったときに、自殺のリスクは高まる。 A氏:阻害要因を取り除くことはある程度できても、促進要因を増やすのは容易ではないが、一つの方策として、命やくらしの危機に陥ったときの対処法を中学生のころから教えることが有効だと清水氏はいう。 私:常見氏も、長時間労働を問題にしている。 しかし、よく誤解されるのは高度成長時代は長時間労働で頑張ったというが、時間短縮運動で週6日制から、5日制へとしてきた。 職場もQCサークルのように皆で生産性をあげる活動が盛んだった。 A氏:それが「失われた20年」の頃から、非正規雇用が増加し、一方で、シャープや東芝に代表されるように、企業に革新の活力がなくなってきて、長時間労働が問題になり「働き方改革」が叫ばれる状態になっている。 若者が希望を持てる職場や社会にならないと、この問題は解決しないようだ。 スマホのゲームに熱中している状態ではどうしようもないね。 私:昨日の「国鉄改革」のブログではないが、あれから30年、非正規労働者が増え、ブラック企業の社会問題化、格差社会の出現など、社会全体が大きく変化し、何かの力で国の形を変える総仕上げの段階に入った時代の大きな流れが関係しているのだろうか。
2017.06.24
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私:神宮氏は、国鉄が民営化したとき、JR不採用となったが、不当労働行為として、運動を長年続けてきた。 国鉄改革は反対する労働者を容赦なく切り捨てる激痛を伴ったが、強権的な手法は、今の政治につながり、その痛みは社会に広まっていないかということで、神宮氏にインタビューしている。 神宮氏は、非正規労働者が増え、ブラック企業の社会問題化、格差社会の出現など、社会全体が大きく変化してきた今の政治や社会の状況は、国鉄改革が伏線にあったと考えている。 A氏:国鉄改革は「国の形」を変える壮大な仕掛けの原点で、国鉄の分割民営化を主導した中曽根元首相は、その後のインタビューで「国労(国鉄労働組合)が崩壊すれば、総評(日本労働組合総評議会)も崩壊するということを明確に意識してやった」と言っている。 総評、社会党をつぶして改憲へという大戦略を描いていたことがわかる。 そのために、護憲勢力の社会党を支え、最強の戦闘力を誇った国労を狙い撃ちしたのだという。 私:今年、もうすぐ100歳なのに元気な中曽根氏はテレビで改憲を訴えっていた。 今も執念を燃やしており、戦略通り、改憲が現実味を帯びてきたようで「ようやくここまで来たか」との思いだろうという。 国鉄改革では労働界が一枚岩になれず、国策である分割民営化に徹底的に反対した国労への視線は「やりすぎ」と冷ややかだったという。 A氏:神宮氏は、国鉄の経営が行き詰まった最大の原因は、あそこに、ここにと鉄道を引かせた「我田引鉄」の政治家だという。 加えて、国鉄は、戦争が終わった後の引き揚げ者らを大量に雇った労働福祉的な側面があり、ピーク時で約60万人の職員がいた。 国鉄改革当時では二十数万人で、自然減を待つ方策もあったが、それでも、政治は一気に押し切る道を選んだ。 私:そこで、国労悪玉論が登場し、国鉄のもつ問題点を「労働規律の乱れ」に矮小化し、追及されるべき政治の責任とすり替えた。 今の安倍首相がさかんに「印象操作」と言うが、国鉄改革時はまさに政府・国鉄経営陣が「労働規律の乱れ」という「印象操作」をした。 A氏;国鉄改革には旧陸軍参謀の瀬島龍三氏が深く関与したが、葛西氏ら改革を進めた国鉄官僚や政府指導者は単なる国労つぶしじゃなくて、10年、20年後の日本の仕組みを変えようとしていて、仕掛けが大きく、神宮氏は目先の労働条件の改善を求めてきた我々とは視点がまったく違うと思い知らされ、元軍人だから、どんな手を使ってでも勝つ、勝者が正義だと、戦略を練ったのだろうという。 私:国鉄改革から30年、今、もはや、「国労みたいに」と口に出すまでもなく「クビになったらどうする!」というのが現実で、労働者が権利や安全の確保を言い出しづらい。 労組に入るメリットを感じられないという人も多く、組合の組織率も低下が著しい状況が続いていて、社会全体が大きく変化した。 A氏:神宮氏は「労働者が団結して経営側と交渉していかなければ、ますます労働環境は悪化し、政府や経営側は自分たちの意に沿う形で憲法も労働組合も変えていこうという腹づもりで国労をつぶし、ここまできた」という。 そして、「闘争を続けた私たちから見ると、国の形を変える総仕上げの段階に入ったように感じます。やりたい放題を許さないためにも、労働組合の意義もそうですが、政府と国民との関係を多くの人にいま一度考え直してもらいたいですね」という。 私:安倍首相が、野党が弱いときに突然、解散して、与党3分の2を確保し、いきなり、20年までに改憲すると言い出しているね。 1強の勢いで、集団的自衛権も確立し、共謀罪法も成立し、神宮氏のいうように、国の形を変える総仕上げの段階に入ったようだね。 しかし、この段階で、加計学園問題のつまずきは痛いがね。
2017.06.23
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