デフレの正体 0
原発 0
体罰 0
糖質制限食 0
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私:公文書を大量「改ざん」し、国会で虚偽答弁を続けた財務省幹部が不起訴になり、4日に省内の処分が発表され、政権は「幕引き」をはかる考えだいうことで、3氏にこれについて意見を聞いている。 佐藤優氏は、「責任追及、終わらせるな」として、結果的に起訴できず、逆に問題が小さいという印象を社会に与えてしまったがことの善しあしの判断を検察に任せきりにしてしまうのは、我々の責任放棄だという認識に立たなければいけないという。 問題の真相究明のために、真実を語ってこなかった佐川宣寿・前財務省理財局長の証人喚問をするべきで、麻生財務相の1年分の閣僚給与返納程度で終わらせてはいけないという。 A氏:また、佐藤氏は、今、政策能力が低くてやる気のある政治家と、能力が高くて倫理観のない官僚とが結びついてしまっていて、民主党政権への交代、自民党の政権復帰によって、自民党、民主党、どちらかに軸足を置いていた官僚が排除され、いなくなったという。 残ったのは、自民党にも野党にもごまをすれる「超ごますり型」か、やりたいことがないために無理をしてこなかった「省エネ型」の2種類の官僚だけだという。 国家の劣化ぶりが著しく、改めるには、小中学校を含め教育から変えるしかないという。 人間としての価値や人生観を深く考え、なぜ官僚になるのかを問い続けられる優秀な人材を育てることで、この深い病理を変える特効薬はなく、地道な取り組みが必要だと、かなり悲観的な見方をしているね。 私:2人目の川崎英明氏は、今回の不起訴処分は権力者犯罪について、検察が必ずしも厳格な姿勢で臨むわけではないという疑念を生じさせる結果になり、「検察不信」を生む事態がまた繰り返されたという感じがするするとして、対策として「検審の権限、大幅強化を」を提言している。 今回のケースで、告発人が検察審査会(検審)に審査を申し立てたから、議論の舞台は「検審」に移る。 A氏:しかし、「検審」に求められる機能は、市民の目線で検察の事件処理過程をチェックすることだが、そのチェック機能はまだまだ不十分だという。 この中途半端さは戦後の司法制度改革で、GHQと日本政府の間の妥協の産物として、検審が生まれたことに、端を発していて、「検察の民主化」を進めるため、GHQが、市民から選ばれた陪審員が起訴を決める米国の大陪審のような組織の創設を求めたのに対し、日本側は激しく抵抗し、結局、「検審」に落ち着いたという経緯がある。 今回の不透明な事態を踏まえ、「検審」の調査権限を大幅に強化するべきだと川崎英明氏は主張する。 私:3人目の早大教授・中林美恵子氏は、米上院予算委員会補佐官を努めた経験から「国会の調査権、米参考に」として、米国との比較で、日本の問題点を明らかにしている。 今回の不起訴のように司法のチェックが利かないならば、国会が監視機能を果たさねばならないが、日本では国会の調査権がなかなか機能していないと指摘。 日本でなぜ国勢調査家が機能しないのか、米国と比較すると、原因の一つが、国会の予算策定に関わる力が弱いこと。 日本は予算案を政府がつくり、国会は議決を通じ、事実上それを追認するので、「財布を握る」日本の政府は米国に比べ、国会や野党を軽んじた対応になる。 米国では議会が予算の策定権限を握るので、省庁スタッフはお願いする側。 日本でも例えば、政府の予算案に対して国会が修正案を付ける余地を残せば、国会の本来の調査権限を活用できるようになるという。 A氏:また、米国との比較で、日本では国会議員の行動が所属政党の論理に拘束されることも問題。 米国では、連邦議会選挙の候補者は地元で党内の予備選を勝ち抜く必要があり、それを決めるのは有権者。 議員は党中央の指示より、地元の市民の意向を優先して動くので、こうして米国議会では党派に縛られず、大統領や政府への監視機能を果たす。 私:中林美恵子氏は、日本でも予備選を導入すれば、国会議員が党の論理に巻かれずに行動するように変わるかもしれないという。 国会の調査権限を強め、議員個人も党だけに依存しないとなれば、立法府が本来の監視機能を発揮でき、官僚が官邸だけを「忖度」して国民を欺く事態を抑止できるのではないかという。 A氏:3氏とも今のやり方の問題点と対策を具体的にのべているが、政権は「責任をもって再発要望をする」というだけで、具体策がないね。 私:それは、今回の不祥事発生の原因が明らかでないからだね。 原因が明らかなら、対策はその原因を潰すことになるだけだからね。 それから、ある元自民党幹部が指摘していたが、「責任」という言葉の使い方が間違っているね。 確かに、不祥事を起したという事実の「責任」と再発防止を実行する「責任」とをゴッチャにしているね。
2018.06.05
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私:Hapa(ハーパ)とは、いわゆる混血(ハーフ)で、辞書を引くと、元はハワイで用いられた表現とあるが、このごろは日系米国人の口から、しばしばこの単語を耳にすると沢村亙氏はいう。 日米開戦後、米西部を中心に12万人の日系人が大統領令で強制収容所に送られ、終戦前後に解放されたものの帰る家を失った人々の一部が、缶詰などを作っていた当地の食品加工場の職を求めて移り住んだ。 多い時で約2500人で、加工場は1980年代に閉鎖されたが、今も約100人が周辺に暮らす。 A氏:「私もHapaよ」。 サンフランシスコからの電話で力強く語ってくれたのはカレン・コレマツさん。 強制収容所を拒否して逃亡・逮捕され、無罪を訴え続けた人権活動家、故フレッド・コレマツ氏の長女。 父の遺志を継ぎ、学校を回って強制収容の非人道性を説き、2001年の同時多発テロ後に広がったイスラム排斥に異議を唱えた父と同様、トランプ政権が打ち出したイスラム圏などからの入国禁止令に反対する裁判を支援。 私:ロサンゼルスの全米日系人博物館は、今、アジア系を中心に様々な人種・民族が混じり合った市民の肖像写真展「hapa.me」を開催中。 01年から彼らを撮ってきたキップ・フルベック氏は父が英国人とアイルランド人の混血で、母が中国系。 子供の頃から「父母のどちらかを捨てる気がして」人種選択欄への記入が苦痛だった。縦割りのアイデンティティーを問い直す企画は好評。 日本人のハワイ移住が始まって今年で150年。 他人種・民族との婚姻も進み、「日系人」の輪郭はぼやけつつあり、むしろ「混じり合っていること」に立脚した、新たなアイデンティティーの胎動を予感させるという。 「われわれ」と「彼ら」の間に壁を築く空気が充満する昨今の米社会。 だが、沢村氏は、「悲観はしたくない。壁を溶かす動きがいずれ凌駕していくと期待して」という。 Hapa(ハーパ)とは、別の米国での人種問題もあるんだね。
2018.06.04
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私:今世紀初頭まで、欧州の人々はさまざまな面で米国人より暮らし向きが良く、皆保険制度があり、それに伴って平均寿命も長く、貧困率はずっと低く、実際、働き盛りの時期に実入りのいい仕事につける可能性も米国人より高かった。 しかしと、クルーグマン氏は言う。 今、欧州は大きな困難に陥っていて、米国も同じだが、とりわけ、大西洋を挟んだ両岸で民主主義が苦しい状況にあり、もし自由の崩壊が起こるとすれば、おそらく米国が先になるだろうという。 それでも、米国が抱えるトランプ大統領の悪夢からいったん離れて、欧州の苦悩に目を向ける価値はあり、すべてではないが、米国の苦悩と重なる部分もあるとして、このコラムでは、焦点を欧州にむけている。 A氏:まず、クルーグマン氏は、欧州が抱える問題の多くは、単一通貨・ユーロの導入という、1世代前のひどい決定に端を発しているという。 ユーロの誕生によって一時的に高揚感が高まり、スペインやギリシャといった国々に巨額のお金が流れ込み、バブルは崩壊。 自国通貨を維持していたアイスランドのような国々が通貨を切り下げて早々に競争力を回復した一方、ユーロ圏の国々は支出を抑えるのに苦労するなか、不況は長引き、失業率は極めて高くなった。 私:この不況を悪化させたのは、欧州の問題の根本的原因が支出調整の誤りでなく財政の浪費にあるとし、厳しい緊縮財政で解決しようとしたエリート層の見解で、この緊縮財政が状況をさらに悪化させた。 スペインのように何とか競争力を取り戻すことができた国もあるが、ギリシャは今も災難の渦中。 EUに残る3大経済国の一つイタリアは、今まさに「失われた20年」のただ中にいて、1人当たりの国内総生産(GDP)は2000年の水準に及ばないのが現状。 A氏:だから、今年3月にイタリアで行われた総選挙で、反EUを掲げるポピュリスト政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」が大勝したことは、それほど驚くようなことではなく、むしろ、それがもっと早く起きなかったことの方が不思議なくらいだと、クルーグマン氏は指摘する。 このコラム欄の記事が書かれた後、総選挙後の「政治空白」が続いていたイタリアで、EUに懐疑的な「五つ星運動」と右派「同盟」の2党による連立政権が発足することになったね。 クルーグマン氏は、連立政権がどんな政策を取るかはまだ定かではないが、さまざまな面で他の欧州諸国とは別の道を進む内容が含まれるのは間違いなく、財政の引き締め緩和からユーロ圏離脱に至る可能性は大いにあるし、移民や難民の締め出しも強まるだろうと予測する。 欧州の他国の事情を見ると、いくつかの恐ろしい先例があり、ハンガリーは事実上、一党独裁国家となり、民族主義的イデオロギーに支配されているし、ポーランドは、一度もユーロ圏に加わらず、ほぼ無傷で経済危機を乗り越えたが、同じように民主主義が崩壊しつつある。 私:クルーグマン氏は、失敗の背後には、さらに根深い話が潜んでいるのではないかとして、欧州には常に闇の勢力が存在しているという。 その闇の勢力を抑え込んでいたのは、民主主義の価値観に専心する欧州のエリート層の威信だったが、その威信はずさんな管理運営によって失われてしまったという。 A氏:ここで、クルーグマン氏は、米国に視点を変え、米国の事情との類似点がみられるとして、米国の「中道派」エリートの判断の誤りは欧州のそれに匹敵すると指摘。 2010年から11年にかけて米国が大量失業にあえいでいたころ、ワシントンの「大まじめな人たち」の大半は社会保障制度改革のことで頭がいっぱいだったことを思い出しほしいという。 一方で米国の中道派は、多くの報道機関と一緒になって、共和党の急進化を何年も否定し続け、ほとんど病的なあしきバランス主義にはまり込んでいて、そして今、米国は、ハンガリーの与党に負けず劣らず、民主的な規範や法の支配をほとんど尊重しない政党によって統治されているとクルーグマン氏は、指摘する。 私:そして、クルーグマン氏は最後に「要するに、欧州の失敗は、奥深いところでは米国の失敗と同じだということだ。そして、どちらの状況も、回復への道のりは非常に厳しいだろう」という。 きわめて、悲観的な予測だが、日本も文藝春秋6月号で「『政と官』の劣化が止まらない」の特集を組んでいるように、似たような状況になっているようだ。
2018.06.03
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私:最近の日本の研究現場は元気を失っていて、背景に何があり、どう変えていくべきなのかということで3氏にインタビューしている。 大隅氏については、「大隅氏、基礎研究の危機訴え ノーベル賞金、若手支援に活用」のブログでふれ、さらに、「大学の研究力低下、打開には 資金・時間・ポスト…どう確保 6月までに政府が戦略まとめ」で、日本の科学力の低下についてもふれている。 そのブログの繰り返しになるが、大隅氏は、研究者が真面目に研究に取り組もうにも研究費が足りない現実があり、競争的な資金を獲得しようとすれば、すぐ役に立ちそうな研究や、はやりの研究に向かいがちだという。 理系で修士課程から企業に就職する大学院生が増え、博士課程への進学者が激減。 就職活動に追われながらの2年間の大学院生活では、研究の楽しさを知ることができず、自分で課題を見つけて解決する能力を鍛えられないまま、卒業。 A氏:大学の運営に関わる事務作業が膨大になっていて、研究費の申請や成果報告の書類書きに追われ研究者自身の研究時間が減っていることも深刻。 ほかの国のように、もっと研究者がやるべき仕事を明確にし、それ以外を支援するシステムが必要だと大隅氏はいう。 大隅氏が恐れるのは、科学が多くの人から遠い存在になり、理解されなくなることで、そうなると人類に未来はないという。 大隅氏は、ノーベル賞の長い歴史をもつスウェーデンでは、最先端の科学を市民が楽しみ、理解しようとする文化を感じ、次世代を担う若者たちが一人でも多く真理の探求に立ち向かって欲しいと願っているという。 私:2人目の山口氏は、約20年前、1990年代半ばから、情報通信や製薬などの大手企業が相次いで中央研究所を縮小・廃止し、基礎研究から手を引いたのがきっかけで、日本の科学技術力の衰退が始まったという。 もともと企業の中央研究所縮小は、米国の動きをまねたものだが、米国では情報通信の分野に限られていたのに、日本では製薬などバイオ系企業にも広がり、生化学、分子生物学、材料科学など、産業競争力を下支えする科学分野の収縮を招いてしまった。 以来、日本は、新しいイノベーションモデルをみつけられずに漂流。 A氏:影響はまず、企業の学術論文数の減少となって表れ、たとえば物理学の分野では企業の論文数は96年ごろをピークに減少に転じた。 同時に物理学の博士課程の学生数も減り始める。 2003年ごろ、今度は日本の物理学全体の論文数が減り始めた。 博士号を得た研究者が一人前になるのに通常6~7年かかるが、博士減少というボディーブローが、科学力の衰えとして表面化。 私:山口氏は、対策として参考になるのが米国のSBIR(スモール・ビジネス・イノベーション・リサーチ)制度と、科学行政官の存在だという。 しかし、これについては、山口氏は、著書「イノベーションはなぜ途絶えたか 科学立国日本の危機」で、米国政府は「大企業はもはやイノベーションを起こせない」と見切りをつけ、技術革新の新たな担い手として大学院生らの起業を支援する「SBIR制度」を創設。 これが効果を上げ、卓越した審査・報償方式によって目覚ましい成果を上げたとある。 日本政府も追随しようとしたが、実際には「パフォーマンスの低い中小企業」への補助金制度と化し、国税の浪費に終わったという。 日本で企業家精神が育たないのはリスクを避ける国民性ではなく、制度設計に問題があるという。 A氏:山口氏は、日本が周回遅れの状態から盛り返し、科学とイノベーションの好循環を取り戻すのに、すぐに効果が表れる特効薬はなく、科学者によるベンチャー起業の支援を根気づよく続けていくことだという。 そのためには、無名の若き科学者をイノベーターにする制度と、その運営に携わる目利き役(米国の科学行政官に該当)を育て、制度に組み込んでいくことが必要だという。 3人目の高橋氏はベンチャー企業としての成功例だが、一般的な問題はのべていなかった。 いずれにせよ、「ほかの研究者からの引用数が世界トップ10%」に入る論文数で、日本は5千本台で4位と横ばいなのに、1位の米国は4万本、中国は06年に日本を追い越し、急成長で15年には2.5万本と第2位。 成長戦略の中核としての科学のイノベーションの競争力強化には、抜本的な対策が急務ということだね。
2018.06.02
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私:今月の佐伯教授の「異論のススメ」は今、マスコミを賑わしているアメフトの試合における日大の悪質な反則行為の話題から始めている。 今日の午後のニュースでは、日大は今日の理事会で、内田正人前監督が大学で務めている常務理事の役職の辞任を承認したと報じているね。 「異論のススメ」では、佐伯教授は、改めて「スポーツ」とはなにかの原点にもどって展開している。 「スポーツ」とは、もともと「ディス・ポルト」という語源をもっているようだが、これは船が停泊する港(ポルト)を否定する(ディス)ものであり、停泊地から離れる、つまりはめをはずす、といった意味を含んでいるという説があり、実際、英語の「スポート」には「戯れ」や「気晴らし」や「ふざけ」といった意味がある。 その第一義的な意義は、それが日常の窮屈な秩序や組織の規則から一時的に解放されて気晴らしを行う、という点にあり、日常のなかに無理やりに押し込まれた過剰なエネルギーの発露であること。 A氏:古代ギリシャの「オリンピック」も、もともとは神々へ捧げる祝祭の競技であり、「スポーツ」は、確かに「遊び(ルードゥス)」を起源としているが、「スポーツ」がもっている非日常的な「はめはずし」の行き過ぎを防ぐものは、その背後にある「聖なるもの」であり、そこに一定の「様式」や「規則」が生み出されてきた。 日本では、「道」という観念がその代替的役割を果たしたのであろう。 「柔術」と「柔道」の違いだね。 そして、神々を背後において行われる競技という「遊び」の精神は、ソクラテスやソフィストの言論競技の根底にもあり、そうだとすれば、それは言論を戦わせる民主政治にも通じ、また、もともと、聖なる場所にしつらえられた市場でモノのやりとりをする市場経済にも通じるものであり、それらの根底には「遊び」の要素がある。 私:とすれば、「スポーツ」にも、また政治上の言論戦にも、また経済競争にも、どこか余裕があり、楽しむ精神があり、偶発性があり、ルールがあり、その先には、何らかの「聖なるもの」へ向けた意識があったと佐伯教授は指摘する。 「スポーツ」の競争や競技は、むろん真剣勝負であるが、その真剣さは、生きるための日常の必死な生真面目さとは一線を画した、どこかに余裕をもった真剣勝負であったという。 ところが、オランダの歴史家であるヨハン・ホイジンガは、今日、「スポーツ」から「遊び」が失われている、として、ただただ勝つことや記録だけが自己目的化され、カネをかけた大規模な大会に組織され、機械的で合理的な訓練が優位となり、もっぱら職業的な活動となっているという。 これでは、本来の「高尚な気晴らし」は失われてしまい、勝つために合理的に訓練され組織された闘争本能の発露になっている、という。 A氏:政治も経済も、もともと「遊び」に淵源もつというホイジンガの発想を借用すれば、今日の民主政治も市場競争も、「スポーツ」と同様、あまりに合理化され、組織化され、過度に勝敗にこだわり、数字に動かされ、自由さも余裕も失ってしまったと佐伯教授は指摘する。 確かに、今日の国会論戦も、金融市場の投機も、どこかゲーム的で「過剰なエネルギーの発露」の感がないわけではないが、そこには、「遊び」のもつ余裕もなければ、逆に生きる上での必死の生真面目さもなく、ただ、「勝つこと」だけがすべてになってしまったという。 私:本来の「遊び」が失われてしまい、本当にはめがはずれてしまい、勝つためには反則でもしなければ、という意識があらゆる領域で社会を動かしているという。 「遊び」がもっていた余裕や自由さが社会からなくなりつつあり、まずは「スポーツ」こそ人間存在の根源にある「遊び」の精神を取り戻す時であろうと佐伯教授はいう。 ところで、「働き方改革関連法案」が31日午後、衆院本会議で採決されたが、過労死するような「働き方」でなく、「スポーツ」同様、佐伯教授のいう「遊び」の精神理念をもった「働き方改革」こそが問われているね。 ただ、「スポーツ」でマスコミであまり登場しないのは、帝京大学ラグビー部が9連覇した裏には、軍国主義と正反対の指導をした監督がいることや、箱根駅伝4連覇の青学大の監督の選手の自主性を重んじた指導など、ユニークな指導が逆に「勝利」を呼び寄せていることに注目すべきだね。 そうすれば、現存する別の「スポーツ人生論」が生まれたかもしれない。
2018.06.01
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私:日本だけでなく外国でも観光客が急増しているという。 国連世界観光機関(UNWTO)の統計では、2000年から17年に世界の国際観光客到着数は2倍に増え、17年は7%の「高度成長」ぶり。 A氏:16年のランキングだと、日本は国際観光客到着数で世界16位だが、増加率が高く、12年から17年に3倍以上になった。 今や観光は日本第5位の産業だが、多すぎる観光客のせいで「観光公害」が出ているほど。 私:日本の国際観光客到着数の急増の原因を小熊氏は、世界各地を訪ねた経験からいうと、観光客からみれば、日本は「安くておいしい国」になったからだという。 ここ20年で、世界の物価は上がり、欧米の大都市だと、サンドイッチとコーヒーで約千円は珍しくないし、香港やバンコクでもランチ千円が当然になりつつある。 ところが、東京では、その3分の1で牛丼が食べられる。 それでも味はおいしく、店はきれいでサービスはよく、ホテルなども同様で、これなら外国人観光客に人気が出る。 1990年代の日本は観光客にとって物価の高い国だったが、今では「安くておいしい国」なのだと小熊氏は指摘する。 A氏:なお、00年から16年に、フランスは国際観光客数が7%しか伸びていないのに、日本は400%の伸び。 国際観光客数ランキング30位までの国で400%以上伸びたのは、日本・インド・ハンガリーの三つ。 この三カ国は、外国人観光客からみて「安くておいしい国」だといえるだろうと小熊氏はいう。 私:ここで小熊氏は、視点をGDPに置く。 「安くておいしい国」ということは、日本の1人当たりGDPが、95年の世界3位から17年の25位まで落ちたことと関連しているという。 「安くておいしい店」は、千客万来で忙しいだろうが、利益や賃金はあまり上がらず、観光客や消費者には天国かもしれないが、労働者にとっては地獄だろうという。 元経産省官僚の古賀茂明氏は「日本には、20代、30代で高度な知識・能力を有する若者が、高賃金で働く職場が少ない。稼げないから、食べ物も安くなるのだろう」という。 A氏:一方で日本では、観光客だけでなく留学生も増え、12年度の約16万人が、17年度には約27万人。 もっとも世界全体でも00年の約210万人が14年の約500万人に伸びてはいるがこれまた日本の増え方には特徴がある。 日本は非英語圏で、日本語習得は難しいのに、それでも留学生が集まるのは、「働ける国」だからだという。 日本では就労ビザのない留学生でも週に28時間まで働けるが、米国では留学生は就労禁止で、独仏や豪州、韓国は留学生でも就労して生活費の足しにできるが、日本より時間制限が厳しい。 そのため日本に来る留学生の層は、おのずと途上国からの「苦学生」が多くなるという。 私:いま日本では年に30万人、週に6千人の人口が減っていて、17年末の在留外国人は前年末から7%増えたが、外国人の労働者で就労ビザを持つ人は18%。 残りは技能実習生、留学生、日系人など。 こうした外国人が、コンビニや配送、建設、農業など、低賃金で日本人が働きたがらない業種を支えている。 外国人のあり方は、日本社会の鏡で、外国人観光客が喜ぶ「安くておいしい日本」は、労働者には過酷な国ということで、そしてその最底辺は、外国人によって支えられている。 そこで、小熊氏は、もう「安くておいしい日本」はやめるべきだと提言する。 客数ばかり増やすより、良いサービスには適正価格をつけた方が、観光業はもっと成長でき、牛丼も千円で売り、最低賃金は時給1500円以上にすべきだという。 そうしないと、低賃金の長時間労働で「安くて良質な」サービスを提供させるブラック企業の問題も、外国人の人権侵害も解決しないし、デフレからの脱却もできないし、出生率も上がらないだろうという。 A氏:小熊氏は、「日本の人々は、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、そのストレスを、安くて良いサービスを消費することで晴らしてきた。そんな生き方は、もう世界から取り残されている」という。 私:しかし、日本のこれらの背景には、日本の現在の実質賃金の低下や社会保障の将来不安という経済構造や、さらに少子高齢化問題が基底にあり、移民問題など簡単にいかない難しい問題が多いね。。
2018.05.31
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私:久保利英明氏は、東大法学部を出て、弁護士になり、98年、日比谷パーク法律事務所を開設し、14年、「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長に就任。 不祥事が起きると、中立的な第三者委員会を設置し、原因の調査結果を報告書にまとめる場合があるが、「第三者委員会報告書格付け委員会」は、その報告書の内容を検証している。 大企業や中央省庁で不祥事が続いている点について、久保利氏は、「日本全体が劣化している。財務省や防衛省、大企業でも『隠蔽する』『無いことにする』『ウソをつく』『偽装をする』などの行為ばかり。国民や株主をなめているとしか思えない。国中でガバナンスが壊れていると感じる」と指摘する。 A氏:財務省の文書改ざんやセクハラ問題への対応については、久保利氏は、「財務省の顧問弁護士を使った調査で済ませるなどナンセンスだ。麻生財務相は国民目線で『第三者委員会に調査を頼む』と言うべきだった。失敗例は、東京都知事だった舛添要一氏の政治資金問題の対応だ。自分が頼んだ弁護士を連れてきて、『違法性はなく、問題はない』として、もっと国民を怒らせてしまった」という。 私:第三者委に公正な調査を期待するというのは、「公正中立で厳正な第三者委をつくり、当を得た再発防止策を打ち出せば、『あの会社は問題があったが、本性は悪くない。本気で直そうとしている』と周囲は評価する。『どんな第三者委員会をつくるか』が将来見込みのある会社か、そうでないかを見極めるメルクマールになるのでは」という。 だから、第三者委が厳しい方が、最終的に会社は救われるという。 久保利氏が第三者委の委員長を務めた牛丼のすき家の過酷労働問題への対応はまさにそうで、すき家を展開するゼンショーホールディングスの当時の会長から「(報告書は)厳しくて構わない」と言われ、委員の人選もすべて任されたという。 ゼンショーの社員は明らかに働き過ぎで、第三者委は「1人勤務態勢(ワンオペ)を早急に解消すべきだ」などと提言し、ゼンショーの株価は一度は落ちたが、第三者委の報告書が出た後、再び上がり、いまは問題が起こる前の約2倍になっている。 A氏:「良い調査報告書」なのかを見抜くポイントについて、久保利氏は、「『わかりやすい』『読みやすい』かどうかが一番。法律文書のように書いているのは良くない。『○○の理由で認定できない』と書かれているものがあるが、『証拠が見つからなかった』と書くべきだ」という。 私:今、問題になっている、日大のアメフト問題で、日大は第三者委員会を作って、原因調査と改善策を検討することになっているが、「良い第三者委の報告」が期待できるかね。 かえって、さらにまた問題をこじらせることになるかも。
2018.05.30
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私:日本に在住する外国人が2017年末で256万人となり、過去最高を記録。 日本に住む50人に1人が外国人ということになり、昨年1年間でみると、18万人増え、一方で、日本人は40万人減っている。 コンビニやファストフード店で接客する外国人は、今や珍しくなくなった。 今日の新聞の「列島をあるく」欄では、香川県坂出市の常勤介護職員の半数が外国人という社会福祉法人を取材をしている。 現在、この法人の全体の常勤介護職員100人のうち、53人が外国人。 A氏:介護分野の人手不足は深刻で、厚労省の推計では2025年に38万人不足するという。 特に地方は深刻で外国人なしでは立ちゆかず、来日した介護職員の奪い合いも起きているという。 私:外国人の急増は国内の人手不足や人口減少が、海外から労働者を引き寄せた結果と考えられる。 政府は新たな就労資格の創設を検討しており、6月の「骨太の方針」に盛り込むといい、今後、受け入れ拡大の議論が本格化するだろう。 同日の朝日新聞の「私の視点」欄では、毛受敏浩氏は、すでに在住する外国人への対応に視点を向けている。 すなわち、政府は、移民政策はとらないとの立場で、合法的に在留している外国人に対しても日本語教育や子どもの教育をどうすべきか方針が定まっておらず、外国人は、中途半端な状況に置かれている。 このため、在住外国人の間からは、日本での子育てや子どもに教育を受けさせることへの不安や不満の声が上がっている。 A氏:日本国際交流センターでは今年、当事者の声を社会に伝えるため、日韓両国に移住したアジア出身者同士の交流事業を始め、韓国を訪れた日本の移住者からは、韓国の状況をうらやむ声が聞かれた。 韓国の移民政策が国際的に高い評価を受けているのは「外国人雇用、韓国の光と影 単純労働、ニーズ高く待遇改善」のブログでふれている。 韓国では移民ブローカーもいない。 同様に、韓国への移住者に、韓国政府は外国人への統合政策として、無償で415時間の韓国語教育をしている。 子どもには、バイリンガル教育や技術教育など才能を伸ばすための取り組みもあり、韓国はまだ人口減少に直面していないが、移住者の能力を高めて、国の成長につなげるとともに優秀な外国人を呼び込む方針を明確にしている。 すでに外国人受け入れの法制度を整え、毎年300億円の予算措置が行われている。 私:人口減少が続く日本こそ、急増する定住外国人への本格的な支援体制が必要。 外国人観光客向けのインフラ整備などにあてる国際観光旅客税(出国税)の創設が決まったが、一過性の観光客向けよりはむしろ、定住化が進み、子どもを育てる外国人への対応こそ急ぐべきだと毛受氏はいう。 毛受氏が知る在住外国人の多くは「日本に貢献したい」「母国との橋渡し役を担いたい」と考えているが、現状のままでは社会から落ちこぼれる可能性もあり、日本は海外からみて移住先として魅力を感じられないという。 他国にひけをとらない外国人労働者の受け入れの枠組みとともに、安心して暮らせ、社会の一翼をしっかり担ってもらえるような制度構築が必要だと毛受氏は指摘する。 先進国トップの少子高齢化が急速に進み、すでに50人に1人は外国人だという実態となっており、特に地方の介護職員の人手不足が深刻なのに、移民政策は後手にまわっているようだね。
2018.05.29
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私:6月12日にイラクで、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する戦闘終結宣言後、初の総選挙がある。 「アラブ諸国で民主主義はうまくいかない」。そんな指摘をよく聞く。 王制や独裁が続き、公正な市民社会ができていない、イスラム教は民主主義と相いれない、部族に依存する風潮が根強いなど、理由はいろいろと挙げられる。 A氏:確かに民主化運動「アラブの春」はチュニジアを除いて挫折。 エジプトでは独裁政権崩壊後、2012年に当選したイスラム系大統領を1年後に軍が拘束。 イエメン、リビアではいまも内戦や混乱が続き正式な政府ができていない。 イラクでは03年に米軍がフセイン政権を倒した後、新憲法制定、総選挙と形のうえで民主化が進んだが、宗派対立、過激派台頭で暴力が吹き荒れ、汚職も蔓延し、IS支配後の復興はなかなか進まない。 私:翁長氏は、バグダッドで、イラクの政治家や政府に対する不満を切々と訴える民衆の声に聴き入るしかなかったが、3月に実施されたエジプト大統領選と比べて市民の反応が対照的だったので、胸のすく思いもあったという。 そのエジプト政府は、「テロとの戦い」を優先するため、デモを規制し、政府に批判的なメディアへの締め付けも厳しい。 現職シーシ・エジプト大統領に対抗する有力候補は立候補断念に追い込まれたり、拘束されたりし、市民に政権をどう思うか尋ねても答えを拒む人がほとんど。 結局、もともとシーシ氏を支持していた小政党党首が唯一の対立候補となり、シーシ氏が圧勝。 A氏: これに対し、イラク総選挙では、対IS戦勝利の実績を強調したアバディ首相率いる政党連合は獲得議席数で3位。 かつて反米強硬派で知られたイスラム教シーア派指導者が率いる政党連合が躍進し、先行きの不透明感教が漂うが、それは、完璧ではなくても自由な選挙が行われた証しで、時間がかかってもイラクがこの正念場を乗り越え、民主主義でアラブを引っ張る存在になってほしいと翁長氏はいう。 私:トランプ旋風で荒れている中東の混乱の中で、6月12日のイラクの総選挙の結果に注目だね。
2018.05.28
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私:土地の所有者が分からなくなったり、資産価値が下がったりして処分に困る問題を「負動産」問題という。 日本には土地を「捨てる」制度が存在しない。 ただでも買い手がつかないような土地を運悪く抱えてしまうと、売ることも捨てることもできず、管理コストや固定資産税の負担だけが残る「負動産化」が進む。 ところが、ドイツでは、土地は捨てることができると法律に明記されているという。 ドイツの民法には「所有者が放棄の意思を土地登記所に表示し、土地登記簿に登記されることによって、放棄することができる」(928条1項)と明記されていて、放棄された土地をまず先占する権利は「州に帰属する」(同2項)とも定められている。 放棄された土地は、どこかに所有させなければならない義務もないため、ほとんどは「無主地」として管理されるが、そのコストは行政が負担せざるを得ない。 ドイツ国内でも地域によっては、無主地の増加による行政の負担増が問題になっているという。 一方で自治体には、事故防止や景観保全など土地の管理責任が生じ、放棄地が増えれば、そこに税金を投入して良いのかという議論も当然、出てくる。 A氏:日本の民法は、所有者がいない無主の不動産は「国庫に帰属する」(239条2項)と定めているが、所有権を放棄する具体的な手続きを定めた法律はなく、実務上もほとんど認められていない。 財務省によると、相続人全員が相続放棄して、事実上、所有者がいなくなって国が引き取った土地は、ここ数年は年間30~50件ほどにとどまり、それは家庭裁判所を通じて選任される「相続財産管理人」が市場で売却する努力をするが、最終的に国に引き取ってもらえず、捨てることも、売ることもできずに宙に浮いた状態にある土地も増えているとみられる。 私:札幌学院大法学部の田處博之教授(民法)は「粗大ゴミなら処分費さえ払えば捨てられるが、土地はそうはいかない。現行制度でも、相続放棄された土地は国が引き受けている。国民が必要としなくなった土地とどう向き合うか、国は検討を急ぐべきだ。このままでは、荒れはてた山野が広がることになりかねない」と話している。 27日の朝日新聞の「負動産時代」欄では、主に土地の所有者が分からなくなった問題をとりあげている。 日本の「負動産」問題はじわじわと深刻化していて、有識者による所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)の推計では、所有者不明になった土地の総面積はすでに九州より広い約410万ヘクタールに達し、道路の拡幅を妨げたり、防災工事に着手できなかったりする「実害」も目立ち始めている。 さらに、国土交通省の推計では築30年超の分譲マンションは今後20年で約3倍の528万戸に増える。 日本のマンションは、修繕積み立てや建て替えなどの意思決定は区分所有するオーナーたちの合意のもとに行われ、行政が介入する仕組みはない。 このため、老朽化対策を決められないまま「負動産化」を止められなくなる事態が懸念されている。 A氏:フランスでは、住民の安全確保や公衆衛生のために「負動産」問題に行政が介入することが義務とされている。 米国では2007年ごろ深刻化したサブプライム(低所得者向け)ローン問題後、空き家が大量発生。 連邦政府は空き家解体などに使える巨額の助成金を創設し、全米で100以上あるランドバンクはその受け皿にもなっている。 ランドバンクは、税滞納で行政が差し押さえた物件を権利関係を整理したうえで無償で取得でき、保有しても資産税の支払いは免除される。 私:政府は今年度から、自治体の要請に応じて相続人一覧図をつくったり、長い期間放置されている土地の相続登記をする際の登録免許税を一部免除したりするが、解消に向かわせる抜本的な対策は手つかずのまま。 米ランドバンクのように、まちづくりのビジョンに沿って不動産を再利用する試みも広がりを欠く。 獨協大の小柳春一郎教授(不動産法)は「所有者不明地問題などを解決できる『特効薬』はない。省庁の枠組みを超えた取り組みを国全体として進めていくことが必要だ」と指摘。 少子高齢化で、今後、地方の「負動産」の増加が進むが、根本的対策が望まれるね。 この問題は、自治体が介入するようになると税負担増がからむだろうね。 人口減が進む地方自治体にとって大きな問題だね。 日本の伝統だった「土地神話」の崩壊だね。
2018.05.27
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私:ブログ「東京モーターショー始まる 変容する『クルマの世紀』」で中国は、電気自動車(EV)で主導権をとろうとの国家戦略があることにふれた。 そのEVの心臓部は電池だ。 車載用電池メーカー、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は、設立から7年の新興企業だが、電気自動車(EV)シフトを進める中国政府の後押しを受けて急成長。 CATLの2017年の電池出荷量は、3年前の44倍となる12ギガワット時に急拡大し、パナソニックや中国大手の比亜迪(BYD)を抜き去り、一気に世界最大手に躍り出た。 A氏:急成長の背景には、中国政府のEV奨励策があり、地場メーカーがつくる電池を載せた車に限って補助金を出す制度があるほか、自動車メーカーが生産・輸入する乗用車の一定割合をEVなどにするよう義務づける規制も19年に始まる。 CATLは25日、日本法人の事業拠点の開所式を、EVに経営資源を集中させている日産の本社近くの横浜市で開いた。 顧客は中国の地場メーカーにとどまらず、独BMW向け電池の開発を12年に開始。 欧米メーカーからコスト競争力に加え、航続距離などの品質も認められるようになり、独フォルクスワーゲンなどと取引を広げ、いまや世界の自動車業界の関係者が注目する企業の一つになった。 私:CATLの次の照準は日本車で、日産は中国市場に投入予定のEVにCATLの電池を使うことを決めており、ホンダも取引先の有力候補にあげる。 最大手の座を奪われたパナソニックは警戒を強め、今春に中国・大連で大規模工場を稼働させるなど反転攻勢を狙うが、CATLとの競争が激しくなるのは必至。 パナソニックは「電池ではいたずらに規模を追わず、技術力を磨いて利益をしっかり確保する」(幹部)構えだという。 A氏:自動車生産後発国の中国にとって、EVはエンジン車に比べ3割も部品が少なく、エンジン製造の長年にわたって蓄積した「職人芸」が必要ない。 私:心臓部の電池は量産すればするほどコスト削減が進み、製造業やITで競争力をつけた中国なら、後発でも強みを発揮でき、それが心臓部の電池メーカーのCATLの急成長で、さらに現実化してきたね。 中国の車需要は日本の6倍、年2800万台が売れる世界最大の市場。 近い将来、ガソリン車を駆逐して、EV車が中国市場を走ることになるか。
2018.05.26
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私:地方鉄道のおよそ4分の3は赤字で、維持や存続が危ぶまれており、2000年以降に廃止された鉄道路線は累計879.2kmになる。 このインタビュー欄では、上山教授に主にその原因と、吉田社長には具体的な解決案を聞いている。 うまくいっている鉄道は、日本を含めたアジアの人口密集地域を走る通勤・通学列車や、貨物に特化した米国など、世界でも限られていて、多くの路線が存続を危ぶまれる苦境にある。 原因はモータリゼーションの深化。 特に、わが国は自動車工業を基幹産業に育てるため、国家が隅々にまで道路網を広げ、いまも高速道路の全国への拡張が続く。 運転士の人件費や維持費などがかかる鉄道は持続可能でなくなる。ただでさえ人口減で乗客が減る地方鉄道は、やっていけない。 A氏:ドル箱路線の山手線や東海道新幹線などを持たず、赤字ローカル線を抱えるJR北海道やJR四国など3島会社のハンディは、分割当初からわかっていて、経営安定基金で支えようとしたが、低金利で運用益が減ったことも、苦境を激しくした。 一方で、JR東海は新幹線の収益でリニア中央新幹線を建設中だが、現行の新幹線車両は運行できず、東海地震などの災害時の代替にはならない、むだな投資で、本当は中央新幹線として現行車両を走らせれば良いと上山教授は指摘。 私:東海地震対策では確かにその通りだね。 だから、上山教授は、リニアの建設費は、ドル箱を持たないJR北海道やJR四国など、いわゆる3島会社の経営支援に注がれるべきで、その意味で、国鉄の分割・民営化の負の側面に注目した「第2次国鉄改革」が必要だという。 国民全体の資産である新幹線網のインフラを、きちんと国民の手に取り戻して利用料を取り、利益はJR北海道などに流すなどの抜本策が欠かせないという。 A氏:これに対し、「ひたちなか海浜鉄道」の吉田千秋社長は、最初、富山県の高岡市と新湊(現射水)市を結ぶ路面電車の赤字路線の「万葉線」を、市民も寄付で参加する国に依存しない第三セクター方式で再出発し、5年間で年間の乗客数が98万人から115万人に増やした。 また、茨城県で廃線が取りざたされていた全長14・3キロの「ひたちなか海浜鉄道」も、吉田氏が公募で社長になった2008年に、やはり第三セクターとして再出発し、いろいろな手を打ち、一時は年70万人を割り込んだ乗客数は、17年度に目標の100万人を超えた。 私:だから、吉田氏は、多くの地方鉄道が、営業、商売というもうひとつの大事な分野で努力をしているか、というと、疑問が残り、スーパーが目玉の特売品でお客さまに来てもらうような、あらゆる商売における当たり前の努力は欠かせないという。 したがって、すべての固定電話や携帯電話に負担を求める「ユニバーサルサービス料金」のように、全国すべての鉄道利用者から一定の料金を徴収して、地方に配分するというアイデアは疑問だという。 都会のお金で地方の鉄道網を維持することが、果たして現実的だろうかという。 上山教授とは、反対の発想だね。 本来は、国鉄が分割・民営化された30年前から、路線ごとに将来像を真剣に考えなければならなかったと吉田氏は指摘する。 自治体と住民が鉄道会社と情報を共有し、それぞれに存廃を判断するのが基本。 吉田氏は、社会資本は経済合理性だけで存廃を決めるべきではなく、将来的には地域活性化の成功事例を体系化して、全国の役に立てればと考えているという。 地方創生活動の一環だね。
2018.05.25
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私:また、森友学園問題で、財務省のずさんな「公文書管理」が露呈した。 この山室教授の寄稿は、この問題を予告するように、日本の「公文書管理」のずさんさの危機感からその根本原因を明らかにしているね。 A氏:ところで「真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命」として開館された「国立国会図書館」が、6月に70周年を迎える。 「国立国会図書館」は、その名に示されているように「国立図書館」と「国会図書館」という二重の業務を果たしている。 「国立図書館」としては国内で出版されたすべての刊行物を収集・保存する唯一の納本図書館。 「国会図書館」としては、国権の最高機関権である国会の立法を補佐するために「調査及び立法考査局」などを置く情報収集・調査機関。 私:日本の「国会図書館」の制度を構想した当時の参議院議員・羽仁五郎氏は「政府官僚の資料をすべて、鉛筆やペンで書いた下書きまでとはいわないが、ガリ版なりなんなりおよそ印刷したものは、すべて主権在民の人民の選挙した代表である国会議員が徹底的に調査することができるように、政府各省の行政官庁の資料室を、すべて国会図書館の分館とする」と考えたという。 すなわち、政策決定に関する全資料を国会図書館に集めて国民に公開していくアーカイブズの機能を持たせようとした。 こうした発想は、国民が国政情報から隔離され、誤った情報操作に踊らされたことが戦争の惨害を招いたという猛省から生まれたもの。 主権者である国民が正しい情報を知ること、それこそが民主主義の大前提となる。 A氏:ただ本来、刊行物を扱う図書館と、公務で作成された文書群を整理・保存する技術を要する「公文書館」とは違った機能をもっており、できる限り早く「国立公文書館」を作る必要があったが、それが設立されたのは1971年。 年金記録紛失などの杜撰な扱いが問題となって「公文書等の管理に関する法律」が施行されたのは2011年。 私:しかし、「公文書管理法」が施行されても改ざんや隠蔽は後を絶たず、国民の知る権利は妨げられ、国会も虚偽の資料や答弁で機能不全に陥っていると山室教授は指摘する。 山室教授は、公文書がこれほど粗雑に扱われる理由として、端的に言えば、国会議員も国民も「公文書管理」に無関心だったからであるという。 「国立公文書館」設立に至るまでには幾度も歴史研究団体から要望書が出されたが、文書館に収められる公文書を用済みの古文書と考えて軽視してきた。 さらに言えば、国会で成立する法案の9割前後を行政官僚が作成しているように、国会議員が立法のプロとして活動してこなかったからだと山室教授はいう。 A氏:早急な対策としては公文書改ざんができない「ブロックチェーン」などの技術導入が不可欠。 しかし、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であるはずの「公文書管理」の重要性を国会や国民が認識し、「国会図書館」と「公文書館」が収集した資料を元に議員立法が活性化しない限り、「真理がわれらを自由にする」日は訪れないであろうと山室教授は警告している。 これだと、森友学園、加計学園問題で露呈した日本の「公文書管理」のお粗末さが先進国並みになるのには、時間がかかりそうだ。
2018.05.24
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私:マレーシアのナジブ前首相は自身の資金流用も疑われる政府系ファンド「1MDB」の約420億リンギ(約1兆1600億円)の巨額負債が表面化した際、ファンドの資産を中国国有企業に売却して経営破綻を免れた経緯があり、中国との関係が深かった。 マハティール新首相は「ナジブ氏は中国に国を売っている」と批判してきた。 A氏:同首相は、中国の主導する大型インフラ事業の見直しを進めている。 中国の習近平国家主席が掲げる「シルクロード経済圏構想(一帯一路)」の案件や中国の受注が有力とみられていた高速鉄道計画などだ。 ナジブ前政権で強まった中国依存を修正する狙いがあるとみられ、マハティール新首相は、前政権が決定した大型案件はすべて見直すと表明。 前政権下で1兆リンギ(約27兆6千億円)にまでふくれあがった国の債務を減らすためとされるが、マハティール新首相には中国への過度な依存を弱める狙いもある。 私:マハティール新政権のアズミン・アリ経済相が見直しの対象として挙げているのが、マレー半島部のタイ国境から南シナ海に沿って東海岸を走り、マラッカ海峡に通じる「東海岸鉄道」。 中国が1兆4千億円規模の総工費の大半を融資し、「一帯一路」に位置づけられている重要な鉄道だ。 A氏:また、クアラルンプール―シンガポール間の約350キロを約1時間半で結ぶ高速鉄道計画も見直す考え。 23日の会見では、事業を所管していた陸上公共交通委員会(SPAD)を解体するとも発表。 高速鉄道の入札手続きは昨年12月に始まり、来年9月までに事業者を選定する予定で、日本や中国が激しく受注を争っていたが、前政権下では中国が有力との見方が強かった。 私:マハティール新政権の登場で、習近平の「一帯一路」構想の重要な地域であるマレーシアだが、これにブレーキがかかりそうだが、習近平はどのように対応するだろうか。
2018.05.24
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私:今や、人間の価値をはかる物差しのようにさえ使われる言葉が「コミュ力」だという。 「コミュニケーション能力」のことで、新卒採用で話題になっている。 経団連による企業アンケートでは、新卒採用で「選考に重視した点」のトップは2017年まで15年連続で「コミュニケーション能力」で、「主体性」や「チャレンジ精神」「協調性」より重視されているのだが、それがどんな能力なのか、学生も企業も、漠然とイメージしているだけで、言葉が独り歩きしている面もあると川嶋教授はいう。 「コミュニケーション能力」が求められる背景には、モノづくり中心の経済から、新しいアイデアや知識をベースとする知識基盤社会へ変化するに従い、人間相手のサービス産業が増えてきて、変化のスピードも加速しており、3年経てば賞味期限が過ぎる専門知識や技術より、新しい知識や情報をうまく取得し、それを生かす力が必要になってきていることがある。 また、同時にグローバリズムの時代には、相手の言い分を正確に理解し、相手にうまく伝える能力こそが重要だ、という考え方が世界的にも広まってきた。 A氏:米国の大学団体の調査(15年)によれば、企業が学部卒業者を採用する際に17のスキル・能力のうち、最重要視するのは「口頭でうまく伝える能力」(85%)で、ちなみに最下位は「英語以外の言語の熟練」(23%)。 ただ、日本では、「コミュ力」という省略語で若者の間で日常用語化し、本来の意味から離れつつあり、空気をうまく読んだり、雰囲気を巧みになごませたり、テレビ番組のMCのようにうまくその場を仕切って回したりすることができる対人スキル、という理解が広がっているようだが、少なくとも企業が学生に求める能力とは違うと、川嶋教授はいう。 きちんと話す力同様に、「コミュニケーション能力」の中核として企業が重視するのは、「文章を書く力」で、依頼や報告、連絡など、あらゆる仕事は「きちんと書く能力」を必要とするからだ。 SNS時代で友人に短文で思いを簡単に伝えることには慣れていても、論理的に書く能力は世界的にも低下しているようで、書く能力は、筋道立てて考える力とも重なるので、今後も「コミュニケーション力」を支える重要な柱として、求められると川嶋教授はいう。 私:「コミュニケーション」の手段に革命的な変化が起きたのは、1990年代半ばの携帯電話とインターネットの普及。 斉藤氏が、90年代終わりに若者の聞き取り調査をしたとき、すでにそれぞれの友達の数が、百人単位になっており、相手を傷つけず、ほどよい距離感で誰とでもやりとりするという作法になっていったのが「コミュ力」だった。 表層のキャラをいじり合うだけで深い話はせず、「コミュニケーション」を続ける。 これを「毛づくろい的コミュニケーション空間」と斉藤氏は呼んでいる。 情報量はほとんどなく、原型はお笑いで、言葉も業界用語が輸入さ、キャラをいじる、かぶる……。 若者はこの空間でこの「コミュニケーション」で10年以上前から生きている。 A氏:この「コミュ力」の空間は、価値を決める上位の人がいて、さらに、空気を読む取り巻きである中間層がいて、一方で、そうした「コミュ力」社会に違和感を覚える人は「下層」として排除され、一説には、この階層は上位が1割、中間層が6割、下層が3割。 上の7割には快適、残り3割には地獄で、これは、内閣府の調査で現在の生活に満足と回答する若者が7割以上という結果に合致。 おいしいものを食べなくても、高級車に乗っていなくても、つながってさえいれば何となく満足できるが、問題はその満足が、排除される3割の不幸の上に成り立っていること。 この「コミュ力」は、表層的な心地よさの一方で、一部の相手を排除する攻撃性を持っていると斉藤氏は指摘する。 だから、斉藤氏が、こういう「コミュ力」に対抗する流れとして、斉藤氏が期待しているのは「対話主義」で、それは議論でも説得でもなく、対等の立場で、私の考えとあなたの考えを交換しましょうという対話。 交換を続けると理解が深まり、意見が異なっていても、折り合えるアイデアが見いだせるようになる。 この「コミュ力」は、表面的なやりとりで序列を固定するだけで相手を変えることはないが、「対話主義」は関係性を揺さぶってお互いに変化をもたらし、顔を合わせて言葉を交わすことが重要で、ネットとは親和性がない。 このような「コミュ力」偏重は続くだろうが、「対話主義」を用いたケアの方法がいま一般にも注目されていて、90年代半ば以来の転換点の兆しと思いたいと斉藤氏はいう。 私:岡田教授は、ふだんは意識しないけれど、人間は不完全さをお互い補い合い、「コミュニケーション」を成立させている点に着目する。 「あいさつ」でも、相手が返してくれて初めて、「あいさつ」として意味を持ち、返してくれないと宙に浮いたまま。 つまり、言葉を話すとは表現行為であると同時に、知覚したり、探索したりする要素も含んでいて、自分が主体として言葉の意味を100%決めているように見えて、相手が受け取らないと完結しない。 それなら「コミュニケーション」に能力という言葉をつけて個人に帰属させるより、「コミュニケーション」とは2人の持ちつ持たれつの間で立ち現れる関係だと考えるべきだと岡田教授はいう。 つまり「コミュ力」とは、不完全な私たちが、お互いを補い、支え合うなかで生じる関係の力で、言い方を変えれば、自分の弱さ、不完全さを上手にそして適度に他者に開示することによって、相手の手助けを引き出していく力とも言えると岡田教授はいう。 川島教授が「コミュ力」の中心に「文章を書く力」を置き、斎藤氏がネットによる「コミュ力」に対し「対話主義」を主張し、岡田教授が「人間関係」着目している点などを指摘している。、 その点から「コミュ力」とは、現実の生々しい肉体的で、基礎的な「コミュニケーション能力」となるようだね。
2018.05.23
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私:2040年度には高齢化率が35・3%と、今より7ポイント上がる見通しで、高齢者入りする団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)と団塊世代の人数の多さを反映し、高齢者数は3920万人とほぼピークを迎える。 政府これに対して、21日の経済財政諮問会議で、2040年度に、社会保障給付費は188兆2千億~190兆円となるとの推計を公表。 高齢者の医療や介護、年金にかかる費用が増えるため、18年度の約1・6倍となる。 40年度は、年金は18年度の1・3倍、医療費は1・7倍、介護費は2・4倍、税負担は1・7倍、保険料負担は1・5倍。 A氏:これまで安倍政権は10%への消費税引き上げを2度延期しており、負担増をめぐる議論は政府内で本格化していない。 社会保障給付費は増大し、税や社会保険料の負担増は避けられないが、経済財政諮問会議で、推計は出したものの従来負担の担い手となってきた若い世代が減る中、誰にどのような負担増を求めるか、政権内での議論は進んでいない。 社会保障と税の一体改革で示した「社会保障のあり方」は25年までで、それ以降の議論も止まっている。 官邸に置かれた「有識者会議」は、昨年6月に開かれたきり。 来年は統一地方選や参院選が控えており、自民党内は「負担増の議論はできない」(幹部)という声が多数を占め、今回の推計は、あくまでも「参院選後の社会保障改革のベースになるもの」(官邸幹部)との位置づけ。 私:負担増の議論が実質的に封印されている中、厚労省が対策として打ち出すのは、健康上問題なく日常生活を過ごせる「健康寿命」の延伸。 平均寿命との差を縮められれば医療や介護を必要とする期間が短くなるとの算段から。 現在の健康寿命は男性が72・14歳、女性は74・79歳で、厚労省は40年度までにそれぞれ3歳延ばすことを目指すが、それがどれだけ社会保障給付費の抑制に役立つか、具体的な効果は未知数。 A氏:深刻なのは費用だけではなく、介護や医療の担い手不足が、40年度にはさらに進む見通し。 厚労省の試算によると、40年度には介護や医療の分野に必要な人材数は事務職員も含むと今より242万人多い1065万人となる。 就業者数に占める割合は6ポイント以上増え、18・8%になる見通し。 しかも、15~64歳は今年4月から40年までに1584万人減る。 厚労省が21日に発表した需給推計によると25年度時点で介護現場では、約34万人が不足する。 私:現場からは「今でも外国の人材に頼らざるを得ない」との声が上がり、政府は移民政策を採らない姿勢を崩していないが、一方で在留資格として新たに「介護」を加え、外国人技能の対象分野に「介護」を設けるなど、実質的に外国人を現場の担い手とする施策に本腰を入れ始めている。 しかし、今、勤勉なベトナム人は、評判がよく、人手不足の国が引っ張りだこ。 人口構造が日本と似ている台湾などは、すでに大量のベトナム人が移民しており、日本は後手にまわっている。 A氏:慶大の土居教授(財政学)は、政治家・国民の危機感が足りないとして、特に政府・与党は「負担増は選挙で票を失う」と、過剰におびえ改革から逃げてきたが、健康寿命を延ばす取り組みなどをやっても、消費増税が不要という話には全くならないという。 東洋大の高野准教授(高齢者福祉)は、やはり、2040年には、外国人労働者の受け入れを正面から議論することが必要で、処遇や質の確保など制度は注意深く作らないといけないが、今の政府の動きは遅すぎると指摘。 私:この日の朝日新聞の「波聞風問」欄では、「巨額買収 人も成長も外から入れないと」と題して編集委員の堀篭俊材氏が、「買収を重ねる武田はグループ2・7万人のうち日本で働く人は3割を切った。国境を越え広がる企業とは逆に、海外から日本に渡ってくる人たちは観光客だけではない。 コンビニや外食店で、レジに立つ外国人を目にしない日はなくなった。その多くはアジアからの留学生である」「この国は彼らを労働者として彼らを受け入れているわけではない。しかし、彼らをなくしては、24時間や深夜営業のサービスはなりたたない。人も成長も外からとりこまないと、もはや支えていけない国になったのだ」という。 「介護」分野だけでなく、真剣に移民政策を考える必要が迫ってきたね。 2040年というと先のようだが、今のうちに手を打たないと間に合わない問題ばかりだ。
2018.05.22
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私:就職情報会社の「学情」(本社・大阪市)が毎年、翌年3月卒業・修了予定の大学・大学院生を対象にした「就職人気企業ランキング」のトップ20位を発表している。 19年卒と09年卒を比較すると、資生堂や味の素、伊藤忠商事などの7社は、10年前も今もトップ20を維持しているが、一方で、10年前のトップ20に入っていたメガバンクや電気機器メーカーは、19年ではいずれもランク外。 代わりに浮上した食品メーカーは、09年は2社だったのが、19年では7社に増加。 「学情」の担当者は「10年前と比較すると、身近でなじみのある食品メーカーが浮上し、『働き方改革』などにも力を入れている伊藤忠商事などの企業の人気も依然として高い」と話す。 A氏:法政大学キャリアデザイン学部の児美川孝一郎教授(キャリア教育)は、10年前の学生と比較すると最近の学生は堅実になっている、とみる。 そして、「出世したいという上昇志向の学生は確実に減っているように感じる。そんなに無理せず働くことができて、ワーク・ライフ・バランスや自分の仕事が世の中に役立っていると実感できるかどうかを重視して、就職先を選ぶ傾向がある」と分析。 5月中旬、食品メーカー「カゴメ」(本社・名古屋市)の東京本社で、就職活動中の学生約80人を集めた会社説明会があり、人事担当者は、農業の成長産業化や健康寿命の延伸などの解決したい社会問題を紹介。 「食を通じて社会問題、社会課題を解決していきたいと思っている」と強調。 私:昨日の朝日新聞の「平成経済」欄で「なぜ働く、意識変わった30年 旧来制度と実態のズレ、浮き彫りに」では、高度成長を果たした昭和は、「仕事のやりがい」に働く理由を見いだす人が多かったが、低成長の平成に入ると、生活の楽しさに重きが置かれ、働き方は多様になっていったと指摘している。 新入社員に働く目的を長期的に尋ねている日本生産性本部などの調査によると、1970年代から伯仲してきた「楽しい生活をしたい」と「自分の能力をためす生き方をしたい」の差が00年代に入って広がり始めた。 「楽しい生活」は17年度、43%まで増加し、「自分の能力をためす」が減る中で、「社会のために役に立ちたい」がじわじわと増えてきた。 A氏:ところで、共働きが増えた現代、夫婦どちらかの転勤は、子どもの教育だけでなく相手の仕事とも両立が難しい。 その結果、「単身赴任」がこれまで以上に増えることになり、国勢調査によると、世帯主が配偶者を持つ男性の単独世帯は85年以降、右肩上がりで、15年は75万人と、この30年で2倍弱に増えた。 学生がワーク・ライフ・バランスを求めているのと逆行している制度だね。 私:リクルートワークス研究所の大久保幸夫所長は「転勤は、企業の拠点展開や幹部育成のために残る制度」と効用を認めつつ、転勤を当然視する日本の慣行に疑問を投げかける。 「転勤のコストに値する効果は本当にあるのか。転勤ではなく、異動で昇進するキャリアパスを描ければよいのではないか」という。 地域限定や転勤回避時期を社員が指定できる制度など、転勤は残しつつも、社員に応じて柔軟に対応する企業も現れてはいるという。 私:法政大の武石恵美子教授は、労働力人口の減少も視野に「人材の確保・定着が今後、企業の大きな課題となるのは確実。社員の希望を丁寧に聞き、密にすり合わせを行う制度や体制を整えなければ、企業の発展は期待できないのではないか」と指摘する。 従来からの転勤制度は、新入社員の働く目的が「楽しい生活」だという考えの増加に逆行することにもなるね。
2018.05.21
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私:政府のずさんな「公文書管理」で、急務と考えられているのは、メールなど電子情報のあいまいな扱いの是正で、現状、政府内で、情報の共有や連絡に電子メールは広く使われているのに、分類・保存への配慮がほとんどない。 「『キャップストーン・アプローチ』のようなメールの合理的な管理・保存のあり方について、ぜひ採り入れるべきだ」と、国民民主党の玉木雄一郎氏は14日の衆院予算委員会で、安倍首相に提案。 「キャップストーン」とは、ピラミッドの頂上に置かれた「冠石」で政府機関の幹部を意味し、幹部が送受信する全ての電子メールを自動的に保存する仕組みが「キャップストーン・アプローチ」。 米国の政府機関の多くで導入済み。 A氏:日本の「公文書管理法」でも電子メールは「行政文書」になりうるが、その場合、保存期間を設定し、最終的に「歴史資料として重要」かも判断しなければならない。 しかし、1日に多くのメールを受け取る職員が一つひとつを行政文書かどうか判断するのは容易でない。 このため、日本の行政機関では、大部分のメールが廃棄されているようで、財務省は送受信から60日たったメールを自動的にサーバーから削除。 加計学園問題でも、2015年4月に内閣府から文科省に送られたメールがサーバーに残っていないことが明らかになった。 私:NPO法人・情報公開クリアリングハウス(三木由希子理事長)は「電子メールは政府の諸活動そのものを記録している。原則行政文書と位置づける」べきだと提言。 日本と対照的に、多くの米政府機関では、幹部公務員を対象に、原則としてすべてのメールを政府機関が取得し、永久保存する。 その代わり、幹部より下の公務員が送受信したメールは、歴史的に重要かどうか、いちいち判断しなくてもいいことにしている。 米国立公文書館・記録管理庁職員で、米政府の記録管理のルールづくりを担当するアリアン・ラバンボクシュ氏は「記録を何も残さないよりも、まずは記録を保管し、それの開示をどうするかは後で考えるほうが大切だ」という。 A氏:行政文書の「定義」に問題があるとの指摘も多い。 官僚たちは、作成した文書を「公文書」ではなく、「個人メモ」「個人資料」「手控え」などと主張することが多く、「公文書管理法」や「情報公開法」を不当にせまく解釈し、公文書を隠したり、廃棄したり、私物化したりしている実態がある。 本来は公開されるべき文書でも、組織によって「個人メモ」に仕分けされるおそれがある。 沖縄県公文書館の専門職員として沖縄戦などに関する日米の資料を見てきた仲本和彦氏によると、米国では手書きメモも公文書館で保存されており、仲本氏は「公文書の定義を『組織共用』に限定すべきではない」という。 私:「公文書管理」について、各政府機関を監視・監督する独立機関の設置を求める声も上がる。 現行の「公文書管理法」でも、行政機関に報告を求めたり、実地調査したり、改善勧告を出したりする権限が内閣総理大臣に与えられているが、実務を担うのは職員が20人程度の内閣府の公文書管理課。 同課では改善勧告は一度もなく、報告を求めた例も1件、実地調査も2件だけで、政治からの独立性もない。 内閣府公文書管理委員会委員の三宅弘弁護士は「数百人規模の公文書管理庁」、仲本氏は「独立機関である記録管理院」の創設を提言。 日本の「公文書管理」の実態も、安倍首相のいう「膿」の一つだね。」
2018.05.20
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私:政府が今夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」の素案が16日、経産省の審議会に示され、了承。 素案では、世界的に導入が増え、コストが下がった「再生エネ」の「主力電源化」を目指すと初めて明記。 一方で、経産省が2015年の「長期エネルギー需給見通し」で決めた30年の「電源構成」(原発20~22%、「再生エネ22~24%」など)は見直さなかった。 審議会では素案について一部委員から反対意見が出たものの、大筋了承。 外務省は素案をめぐる非公式の省庁間折衝で、30年時点の「再生エネ比率」を大幅に拡充するよう経産省に要求。 国際エネルギー機関(IEA)のリポートを元に、日本の「再生エネ比率」は22年に20~24%に高まる可能性が大きいとし、30年までには40%程度に上積みが可能との見解も示したが、これは、政権内で脱原発・再生エネ推進派として知られる河野太郎外相の意向が働いているとみられる。 A氏:外務省がこう主張する背景には、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」をめぐる交渉で、米トランプ政権とともに日本政府が批判にさらされていることへの危機感がある。 今回の素案は石炭火力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、高効率化を条件に輸出も推進する文言が入った。 環境省も「再生エネ」の推進に積極的で、30年の「再生エネ比率」が最大で35%に達するとの試算を公表したこともある。 市民団体の間でも、「再生エネ」推進を求める声は強く、日本生活協同組合連合会は15日、「再生エネ比率」を「最低でも30%、さらに『先進国水準の50%以上』を目指すべきだ」などとする要望書を世耕経産相あてに提出。 二村睦子・組織推進本部長は「現状維持では主力電源化とはとても言えない」と批判。 私:それでも、経産省は「電源構成」の比率を見直すつもりはない。 「再生エネ」の固定価格買取制度による電力料金への上乗せ分は年約2兆円にのぼることを挙げ、「さらに負担を増やすわけにいかない」(エネ庁幹部)と説明。 「再生エネ比率」を引き上げる場合、原発などほかの電源の比率を下げる必要が出てきて、原発再稼働が進まないなか、原発の比率を下げれば、再稼働の動きに影響しかねない。 経産省は今回の素案で、原発の新増設の必要性に触れなかったが、20~22%の「原発比率」の「実現を目指し、必要な対策を着実に進める」とあえて明記。 省庁間の協議は今後も続くが、「電源構成」が見直される見通しは立っていない。 A氏:記事では、計画素案を議論した審議会の委員2人に評価を聞いている。 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の辰巳菊子常任顧問は、「基本計画を検討した審議会は、産業界を重視した委員構成で、日常の生活を営む国民の声が反映されない」という。 もう一人の東京理科大学大学院の橘川武郎教授は、「非常に問題のある計画案で、30年時点の『電源構成』は、原発の割合が過大で、「再生エネ比率」が過小」という。 さらに、世界では「再生エネ」のコストが劇的に下がり、導入量は飛躍的に伸びていて、「再生エネ」を「主力電源化する」としたが、それなら少なくとも30年の「再生エネ比率」を30%程度に上方修正すべきという。 経産省は「再生エネ」の拡充にはあまり乗り気でないようだね。 原発再稼働にこだわっているのだろうか。 原発は二酸化炭素を出さないが、大量の放射能廃棄物を出す。 その処理が明確にならないうちに、原発再稼働で廃棄物の増加を始めるのだろうか。 経産省は、その処理コストと廃炉コストの合計を「再生エネ」とのコスト比較に含めているのだろうか。 今夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」で「再生エネ比率」はどう決まるか。 「セクハラ罪という罪は存在しない」というレベルの閣議決定をしなくてならないようでは心配だね。
2018.05.19
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私:19世紀半ば、ドイツの経済学者エンゲルが「エンゲル係数」を提唱した。 消費支出に占める食料費の割合を示し、一般に低いほど生活水準が高いとされる。 日本では、終戦直後は60%を超えたが、高度成長を経て、1970年代後半には20%台後半になった。 その後も下がり続けた。 それが、2005年の22・9%(2人以上の世帯)を底に逆に上昇に転じ、16年は25・8%となった。 その上昇の伸びが話題になり、2月発表の17年の数値は25・7%と微減したが、「エンゲル係数」の定義通りに解釈すれば、この10年ほどで生活水準は悪化したことになる。 A氏:この点が国会で議論になったのが、1月31日の参院予算委員会。 野党議員が「エンゲル係数」のデータなどを示し、「国民生活が苦しくなっている」と迫ったが、安倍首相は「アベノミクスで雇用は大きく改善している」と反論し、上昇の要因に物価変動や生活様式の変化をあげた。 野田総務相も「共働き世帯が調理食品など価格の高いものを購入するなど、様々な要因が考えられる」と補足。 SNSでは「首相は実態を無視している」「いや、一つの指標では豊かさをはかれない」などと議論が盛り上がった。 私:確かに物価は上がり、弁当や総菜などの購入費も増えているが、一方、17年のデータを見ると、共働き世帯の「エンゲル係数」は22・3%で、夫だけが働く世帯は24・3%。 共働き世帯の方が「エンゲル係数」は低く、全体を押し上げているわけではなく、野田総務相の説明は実際の数字と違うことになる。 青山大の美添教授は、「(『エンゲル係数』は)生活水準や貧困の尺度として一定の参考にはなるが、エンゲルの時代ほどの役割はない」と話し、家計調査の食料費には外食や高額な食品も含まれることが理由の一つ。 美添教授は「野菜や米など、生活必需品といえるようなものに絞って数値化すれば指標にはなるので、政府が参考値として示せばよい。公的統計は中立性が保たれるよう設計されているが、都合のいい数値だけが抜き出されることもある。調査方法などを正確に理解して解釈することが大切だ」という。 ただ、美添教授は、現在の生活水準については「格差が若干拡大し、(生活)水準が『低下した』と感じる人が増えている」との見解だ。 A氏:経済アナリストの森永卓郎氏は、「『エンゲル係数』は基本的には時代や国を超えて成り立つ普遍的な法則」との考え。 「エンゲル係数」を五つの所得階級別にみると、17年は所得が最も高い層で22・1%、最も低い層で30・6%。 やはり「エンゲル係数」は生活水準を示している。 森永氏は「低所得者ほど高い傾向ははっきり出ており、最近10年間で高所得層との差は広がっている。この5年間で『実質賃金』は約4%も落ちている。他の支出を減らして食費に回しているのが実態では」という。 野党もアベノミクス追及には「実質賃金の低下」を中心にすべきだね 『文藝春秋』2018年3月号の「数字が証明した『アベノミクス』の失敗」には、「実質賃金の低下」の数字により失敗としているね。
2018.05.18
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私:ブログ「北朝鮮への疑念と期待 戦争回避の道筋は描ける」で、北朝鮮専門家」のニコラス・クリストフ氏は、北朝鮮はしたたかで、核は手放さないだろうと予測していたが、このブログの記事の後の16日、やはり、北朝鮮・第1外務次官は、米国が要求している非核化の方式に不満を示し「(トランプ政権が)一方的に核放棄だけを強要しようとすれば、来たる米朝首脳会談に応じるか再考するほかない」との談話を発表。 これに先立ち、北朝鮮は同日未明、板門店で同日開くことになっていた南北高官協議の直前の中止を韓国政府に伝えた。 6月12日の米朝首脳会談もあやしくなってきたね。 A氏:この「時事小言」欄の藤原帰一氏も、北朝鮮に対して、アメリカ、さらに韓国と日本の求めてきた朝鮮半島の非核化が実現に近づいたとは考えないと否定的だね。 この藤原氏の記事も16未明、板門店で同日開くことになっていた南北高官協議の中止を韓国政府に伝えたというニュースの前だね。 まず、問題は北朝鮮の非核化に対する韓国の姿勢だね。 文在寅大統領は、米朝首脳会談に応じるようにトランプの説得を試み、それに成功した。 文在寅の第一の目的は南北の対話であり、朝鮮半島における緊張の緩和であり、同じ民族が南北に分断されてきた悲劇を顧みるなら正当な目的というほかはない。 文在寅と金正恩との南北首脳会談の開催は、間違いなく歴史的な意義を持つものであった。 私:逆にいえば、北朝鮮の核兵器を廃棄することは文在寅の第一の課題ではなく、朝鮮半島の非核化を訴えているとはいえ、米朝関係と南北関係の緊張緩和が優先されており、韓国政府は将来における核開発の放棄や国際査察の受け入れを求めているが、現在北朝鮮の保有する核兵器の廃棄を重視しているとはいえないと、藤原氏は指摘する。 米朝会談は、北朝鮮が譲歩したわけではないと藤原氏はいう。 トランプ政権は北朝鮮に対する軍事的威嚇を繰り返し、中国も含む経済制裁の強化も実現したが、その圧力に屈して北朝鮮が米朝首脳会談に応じたとは言えないという。 米朝会談は以前から北朝鮮が求めてきたものであり、変化があるとすればアメリカの方だからで、核実験場の廃棄や抑留者の解放に応じたとはいえ、北朝鮮は現在保有する核兵器を廃棄するというコミットメントを示していない。 当面は核保有を続けつつ経済制裁の解除を実現できるのならば、米朝関係の改善は北朝鮮にむしろ有利な選択。 A氏:だが、藤原氏は、トランプはアメリカの圧力のために北朝鮮が変わったという間違った認識をとっていると指摘。 藤原氏は、軍事的威嚇と経済制裁によって北朝鮮が変わったという認識にも賛成できないという。 韓国政府の南北間の信頼醸成と共生を求めるイニシアチブは正当だが、北朝鮮の保有する核兵器を既成事実として認めることは、核兵器の拡散結果を招く懸念が残る。 そのような認識は米朝接近の長期的な持続を揺るがすばかりでなく、核兵器さえ持てばアメリカが寄ってくるという恐るべき「教訓」を残し、イランもからみ、中東情勢の混乱を深める結果に終わるだろうと藤原氏は警告する 私:金正恩が、中国に頼ったり、いろいろな動きしたりするのをみると、ニコラス・クリストフ氏や藤原氏のいう、北朝鮮の核兵器保持は変わらず、核兵器廃棄の米国と対立して、ついには、米朝会談は中止となるかね。 それとも中国をバックにすることに成功した北朝鮮のねばりが成功するか。
2018.05.17
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私:ソーシャルメディアの発達と普及は、誰もが「評論家」になることを可能にし、ジャーナリズムやニュースメディアは格好の批判対象。 ただ、そこには矛盾した状況があり、ある報道の「裏」や「意図」を積極的に読み解こうとする姿勢と、ジャーナリズムの意義に対する無関心やシニシズムが奇妙に同居していると山腰氏はいう。 ジャーナリズムやニュースメディアへの批判、不信が、これほどまでに広まったのは、ソーシャルメディアの普及と、そして広い意味での「メディア・リテラシー」の向上の結果。 A氏:「メディア・リテラシー」はニュースやドラマ、広告といったメディア・コンテンツを「批判的に」読み解くことだと理解されており、現代社会では、多くの人々にとって、政治の世界も、あるいは解決すべき社会問題もメディアを通じて経験されることになり、人々が政治的な争点や社会問題を知り、あるいは理解するうえで「ニュース」がその手がかりとなる。 しかし、どのようなジャーナリズムが「良い」ものなのかを見極める力が社会の中で定着し、あるいは向上しているとは言い難い。 「良い」ジャーナリズムとは何か、ジャーナリズムの世界で、あるいはメディア研究の領域では、「調査報道」こそがその典型と見なされることが多い。 「調査報道」とは、まだ知られていない(あるいは隠された)出来事や争点を掘り起こして明るみに出すジャーナリズムの手法。 私:「調査報道」は、通常、多くの権力資源を有する個人や集団、組織、すなわち権力者や権力組織の不正や汚職を追及する。 その際に、公的な組織や人物によって発表された情報だけでなく、公文書や内部告発などを活用した独自取材を行う点に特徴がある。 米国でニクソン大統領の辞任につながった「ウォーターゲート事件」を究明したワシントン・ポスト紙による「調査報道」がその代表。 日本でも、朝日新聞による「リクルート事件」報道をはじめ、多くの優れた「調査報道」が存在する。 こうした点では、3月の「財務省の公文書改ざん問題」に関する朝日新聞や毎日新聞のスクープは、「調査報道」として高く評価されるべきだと山腰氏はいう。 A氏:「調査報道」の意義を再確認する潮流は世界的にみられ、例えばハリウッドでは、「スポットライト」や「ペンタゴン・ペーパーズ」といった「調査報道」を主題にした映画作品が近年、立て続けに制作。 要人たちの租税回避に関する「パナマ文書」の問題では、国際的な「調査報道」のネットワークによるビッグデータの解析というデジタル時代の新たな「調査報道」の可能性が示された。 「調査報道」は、一般の人々にとっても「勧善懲悪」のストーリーとして理解されやすく、したがって、「調査報道」を「良い」ジャーナリズムの典型と評価する文化を広めていく戦略は確かに効果的。 私:しかし、山腰氏は、ジャーナリズムのあるべき姿を「専従チーム」を立ち上げて取材にあたる「調査報道」のみに還元するのでなく、「政治部」「経済部」「社会部」といった部署の日常的なニュース制作の現場には「良いもの」は存在しないのか、論説やフォーラムといったニュースメディアの機能はどう評価されるべきなのか、と問うている。 デジタル化が進展する現代社会において、ニュース文化全般について改めて理解を深める必要があり、そうした基盤があってこそ、ニュースやジャーナリズムに対する批判は有意義なものとなるとして、山腰氏は、この欄では、これからニュース文化の現状について多角的に検討していきたいとしている。 次回を期待したい。
2018.05.16
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私:米国では60~70年代に公民権運動やベトナム反戦、90年代以降は経済格差に反対する街頭運動が起こり、世界にうねりが広がったが、最近は、女性や性的少数者、移民・難民の支援から、科学予算削減に反対する科学者のデモまで、主張の多彩さが際立つ。 変容をもたらしたのがソーシャルメディア。 動員が容易になっただけではなく、学生運動にくわしい歴史家のアンガス・ジョンストン氏は、「社会で孤立していた当事者同士がつながるのを促した」という。 目の前で級友を失ったフロリダの高校生がツイッターなどで上げた声に「ひとごととは思えない」と同世代が呼応した運動は典型。 「#Me Too (私も)」は、セクハラや性暴力など、埋もれていた被害をあぶりだした。 A氏:ソーシャルメディアの普及は日本も共通だが、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチの土井香苗・日本代表は「米国はマイノリティーの存在が身近なうえ、彼らの権利が侵害されると周囲が結束して対抗する伝統が強い」と、日米の違いを指摘。 米国の場合、排他的な自国第一主義を掲げ、社会分断をあおるトランプ政権の誕生も背景にありそうだ。 今の高校生は物心ついて以来、オバマ前政権時代のリベラルな空気を吸ってきた世代。 一方、ワシントン・ポスト紙の調査では、ほかに社会運動に関心が強い層として「都市近郊に住み、収入・学歴が比較的高い50代以上」が浮かび上がった。 スタンフォード大のダグラス・マカダム教授は「貧困や戦争の恐怖より、民主主義が劣化する不安に突き動かされている」と指摘。 私:さらに、かつては社会運動とは縁が薄かった経済界が「助っ人」として登場。 デルタ航空は銃規制行進の参加者のために無料のチャーター機を飛ばした。 IT企業トップは、イスラム圏の一部からの入国禁止令には公然と批判し、トランプ大統領が白人至上主義者を擁護するような発言をすると、主要企業の経営者たちがそろって大統領の助言機関を辞任。 コロンビア大のウィリアム・クレッパー特任教授は、経営陣の若返りや企業イメージに敏感になった風潮に加え、「大統領や議会が社会的な『正しさ』を追求する指導力を失い、自分たちがそれを担わねばと意識する経済人が増えた」という。 A氏:しかし、新しい社会運動は主張が細分化され、組織やリーダーの求心力を欠くだけに「息切れする」との見方がある。 一方、銃規制の行進を主導した高校生は今、秋の中間選挙に向けて有権者登録を仲間に呼びかけ、「#Me Too 」に触発されて中間選挙に初出馬する女性も大幅に増えそうだ。 私:既存政治の枠組みを否定するのではなく、むしろ積極的に関与することで、政治改革の起爆剤になるとの期待も大きい。 トランプ大統領の11月の米国の中間選挙に向けての必死の公約実現の努力に対して、これらの運動は影響を及ぼすことができるだろうか。
2018.05.15
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私:イスラエル軍は10日、「シリア領内のイランのほぼ全ての軍事施設」を空爆。 きっかけは同日、「シリア領内に展開するイランの精鋭部隊・革命防衛隊が、ゴラン高原のイスラエル軍拠点に向けてロケット弾約20発を発射した」とするイスラエル軍の発表。 イスラエル軍の発表が事実なら、イランがイスラエル軍を攻撃したのは初めてで、イスラエルのネタニヤフ首相は同日、「イランはレッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と非難する声明を出した。 ところが、イランは「イランがイスラエルを攻撃している」とするイスラエルの主張を否定。 イスラエルからの攻撃には「不意打ちで立ち向かう」(ハタミ国防相)とし、報復するとしている。 A氏: イランとイスラエルはなぜ敵対しているのか。 イランでは1979年のイスラム革命で親米のパーレビ王政が崩壊し、国教のイスラム教シーア派の法学者が最高指導者として、国政の最終決定権を握る体制を確立。 初代最高指導者のホメイニ師は「イスラエル占領下で苦しむパレスチナ人を解放する」としてイスラエルと断交し、反イスラエル闘争を続ける人やアラブ人の武装組織への支援を開始。 レバノンのシーア派民兵組織ヒズボラは、戦闘員約2万人を有し、レバノン南部からイスラエル軍を撤退させる強力な組織に成長。 さらに、イランは近年、シリア内戦で力を一気に高めた。 それは、親子2代にわたるシリアのアサド政権は、イランの「盟友」だからだ。 革命後のイランは、反米、反イスラエルでアサド政権と同じ立場で、イラン・イラク戦争(80~88年)では、王政のアラブ諸国が「革命の輸出」を恐れてイラクを支持したが、アサド政権はイランを支持。 私:イランはイラクでも革命防衛隊や民兵を派遣してイラク軍のIS掃討作戦を支援し、勝利に貢献。 この結果、イランからイラク、シリア、レバノンを横断する「シーア派の三日月地帯」が完成。 イランは、シリア領内にすでに多くの軍事拠点を構築したとされ、シリア領内のイランの軍事拠点からミサイルが発射されれば、イスラエル領のほとんどがその射程に入るため これをイスラエルは安全保障上の重大な脅威と受け止めている。 A氏:危機感を深めるイスラエルの「援軍」になっているのが、17年1月に発足したトランプ政権で、トランプ氏はイランに厳しく、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にしている。 トランプ氏は今月8日、欧州の反対を押し切ってイラクの核合意からの離脱を表明し、14日にはパレスチナや国際社会の猛反発を無視して、米国大使館をテルアビブからエルサレムに移すが、エルサレムにはイスラム教の聖地もあり、イスラム諸国の反発も招いている。 私:イスラエルとイランは、本格的な軍事衝突は望んでいないと公言している。 しかし、レバノンで6日に実施された総選挙では、イランが支援するヒズボラの政治部門を中心とする勢力が過半数を獲得する可能性が高く、シリアとレバノンで影響力を強めるイランとイスラエルの攻撃の応酬がエスカレートすれば、シリアやレバノンを舞台に新たな紛争を誘発しかねない。 特にシリアでイランとイスラエルが衝突する事態になれば、アサド政権の後ろ盾としてイランとともに同政権を軍事支援するロシアも、現在は良好な関係にあるイスラエルと対決する状況になる恐れがある。 A氏:シリアではISを掃討するため、米国も少数民族クルド人が支配する北部などに米軍兵士約2千人を派遣し、米国は中東の覇権をめぐってイランと争うサウジアラビアや他のアラブ諸国と「イラン包囲網」をつくろうとしている。 米軍とイスラエルが、ロシア、イラン、アサド政権とぶつかる事態になれば、紛争はシリア領内にとどまらず、中東各地に拡大することが危惧される。 私:さらに、イラン各合意からの離脱、米国大使館のエルサレムへの移転などのトランプ氏の中東政策、緊張高めている。 「IS王国」問題の後に、新たな中東での紛争が起きそうだね。
2018.05.14
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私:平成経済を「会社員の昼食代」と「企業の交際費」という2つの観点からまとめているね。 まず、「会社員の昼食代」だが、1990年代後半から日本経済をデフレの影が覆い始め、物価が下がって会社の売り上げが減り、給料が削られ、人々の財布のひもが固くなり、経済が縮こまるという悪循環に陥っていき、小銭をきちんと数えて支払う人が目につくようになったのもこのころ。 新生銀行の「サラリーマンのお小遣い調査」で、92年に746円だった男性会社員の昼食代は、05年、500円台に突入。 17年は590円に増えたが、ピークよりは2割少ない水準にとどまる。 A氏:厚労省の国民生活基礎調査によると、全世帯の年間の平均所得は15年、545万8千円だったが、これはピークの94年(664万2千円)の約8割の水準。 収入が減った一方、消費税率は上がり、平成元年の89年の導入時に3%だった税率は97年に5%、14年に8%と引き上げられた。 会社員の目はますます、ランチメニューの「値段」に吸い寄せられる。 私:一方、「企業の交際費」のほうだが、バブルのころ、もう一つの「財布」の「企業の交際費」を使いこなす会社員がめだった。 銀座の大通りには「予約車」のタクシーが二重三重にも連なり、1万円札を振って空車を探す人もざらだった。 00年前後のITバブル景気は、銀座の客層を変え。ITや外資系金融など、それまで見られなかった業種の客が来るようになった。 A氏:08年9月にはリーマン・ショックが日本経済を襲ったが、すぐには影響は表れず、銀座のクラブでは年末までは盛況が続いたが、年明けからはパタッと客足が止まった。 そこに追い打ちをかけたのが、11年3月に起きた東日本大震災。 東京は電力不足に見舞われて街からネオンが消え、ぜいたくや楽しむことを良しとしない空気が広がり、銀座のクラブの扉には「非国民」と貼り紙をされた。 「企業の交際費」は震災後の11年度、ピークの半分に満たない2・8兆円まで落ち込んだ。 私:12年末に第2次安倍政権が発足し、アベノミクスで企業の業績は回復し、交際費も16年度は3・6兆円まで回復。 銀座のクラブの客足も昨年末から伸びているが、浮かれきっているわけではなく、関係者は「バブル崩壊にリーマン・ショック、大震災。 この30年の経験から、備えへの意識が強まったのではないでしょうか」という。 そういえば、最高益を出したトヨタも先行きの世界的な自動車の競争激化に危機感を持っているのと同様、高利益の大手企業も先は見えないが、「企業の交際費」はどうなるかね。 「会社員の昼食代」も、消費税は19年10月に10%に引き上げられることになっているが、どうなるか。
2018.05.13
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私:今月の佐伯教授のテーマは「学生運動」に関するものだ。 タイトルの1968年とは、この年のフランスに起きた5月革命と称される出来事を指している。 この学生反乱は、先進国全体に共通する動きであり、日本ではいわゆる「全共闘」運動。 佐伯氏は、「全共闘」運動には参加もしなければ、さしたる共感ももっていなかった。 それは、佐伯氏がそもそも集団行動が嫌いだったこともあるが、まわりには、マルクスやら毛沢東から借用したあまりに粗雑な「理論」を、疑うこともなく生真面目に信奉しつつも、実際にはまるでピクニックにでも出かけるようにデモに参加する連中をずいぶん見ていたせいでもあるという。 A氏:しかし、佐伯氏は、それでも、あるひとつの点において「全共闘的なもの」に共感するところがあったという。 それは、この運動が、どこか、戦後日本が抱えた欺瞞、たとえば、日米安保体制に守られた平和国家という欺瞞、戦後民主主義を支えているエリート主義という欺瞞、合法的・平和的に弱者を支配する資本主義や民主主義の欺瞞、こうした欺瞞や偽善に対する反発を根底にもっていたからであるという。 私:だから、これらの欺瞞と戦うには、合法的手段ではありえず、暴力闘争しかないということになり、佐伯氏が共感したのは、この暴力闘争への傾斜であったが、そんなものはうまくゆくはずもない。 そして、事実、暴力は内向してあさま山荘事件や内ゲバへと至り、「全共闘」運動は終焉。 戦後日本の学生主体の新左翼は、こうして暴力主義の果てに崩壊し、これはほとんど必然的な成り行きのように佐伯氏には思われたという。 むしろ、佐伯氏が衝撃を受けたのは、70年に生じた三島由紀夫の自衛隊乱入、割腹自殺事件の方で、米製の憲法を理想として掲げて、米軍に国防を委ねる平和国家を作り、あの戦争を誤った侵略戦争と断じたあげくに、とてつもない経済成長のなかでカネの亡者と化した日本、こうした戦後日本の欺瞞を三島は攻撃し、一種の自爆テロを起こした。 A氏:そのころ、評論家の江藤淳が「『ごっこ』の世界の終ったとき」と題する評論を書き、全共闘の学生運動も、三島の私設軍隊(楯〈たて〉の会)もどちらも「ごっこ」だと論じていた。 学生運動は「革命ごっこ」であり、三島は「軍隊ごっこ」であり、どちらも現実に直面していないと佐伯氏は指摘する。 私:真の問題は、日米関係であり、アメリカからの日本の自立である、というのであり、確かに、フランスやアメリカと比較しても、日本の学生運動は、どうみても「革命ごっこ」というほかなく、機動隊に見守られながら「市街戦ごっこ」をやっているようなものであるという。 三島の方はといえば、効果的な「ごっこ」を意図的に演出していたのであると佐伯氏は指摘する。 三島は、精神の道義を問うたのであり、この道義を戦後日本は失ったのではないか、と問うた。 フランスの68年は、それでもポストモダンといわれる思想を生み出したが、日本は何も生み出さなかった。 そして左翼主義は、その後、ただただ「平和憲法と民主主義を守れ」に回収されてしまったと佐伯氏は指摘する。 A氏:佐伯氏は、68年をさほど評価しないが、それでも今日の大学や学生文化にはないものが当時はあり、それは、社会的な権威や商業主義からは距離をとり、既成のものをまずは疑い、自分の頭で考え、他人と議論をするというような風潮であり、その自由と批判の気風こそがかけがえのない大学の文化なのであるという。 私:しかし、今はSNS時代。 こないだ、ある50才台の大学関係者と会ったが、彼が嘆いていたのは、最近の学生は、片手にスマホを持ち、画面を見ながら議論するので、膨大なナ既成の情報にとらわれ、佐伯氏のいう既成のものをまずは疑い、自分の頭で考え、他人と議論をするというような風潮は考えられないという。 佐伯氏のいう、自由と批判の気風の大学の文化は危機に陥っているのではないか。
2018.05.11
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私:政権の不祥事を起こしたのは財務省などの官僚機構だが、背景には総理の意向への「忖度」があると思われる。 野党は関係者の証人喚問、財務大臣の辞任、真相究明を求め、自民党が応じるまで国会審議を拒否したが、国会をこれ以上ストップさせれば、国民の批判が自分たちに向くと気をもむ野党は、どうしたら面目を保って審議に戻れるかと焦り、ようやく、今日の柳瀬氏の参考人喚問で、手をうち、国会が正常化した。 A氏:カーティス教授は、他の議会制民主主義国ならば、この時点で野党は選挙の必要性を唱えて、総理に不信任案でも出して国民の信を問うべきだと政権を攻めるが、日本は違うという。 自民党の方が解散の可能性をちらつかせて、野党を牽制し、内閣支持率が下がっても野党の支持は上がらないのが、日本政治の「常識」だという。 1994年に「中選挙区制」を「小選挙区制比例代表並立制」に変えたとき、日本は政策本位の「二大政党制」になるはずだったが、野党の政策の軸は自民党との違いが見えず、スキャンダル追及ばかりで建設的な政策論争をせず、「中選挙区制」での自民党候補者同士の争いが生んだ緊張感はなくなった。 日本の社会構造に合わないこの選挙制度をどう変えるのか、考えるときがきているとカーティス教授は指摘する。 私:もう一つの問題は「官邸指導」だ。 「官邸主導」の強化と省庁の統合をめざした橋本行革から、約20年が経ち、総理と内閣の権限は強化され、「官邸主導」になった。 権力構造を正しく変えるため、橋本龍太郎総理は政治史に残る大きな貢献をしたが、権力が官邸に集中しすぎたとカーティス教授はいう。 「ゆがみ」が副作用のように現れていて、長期政権のもと、「内閣人事局」がトップの600人以上の官僚の昇進を決める権限を握り、官僚が総理ばかりではなく、総理に近いスタッフが嫌がると思う政策提言をしない。 自分が所属する省庁の大臣よりも官邸に目を向け、多くの大臣の立場が弱くなる。 そして、自民党議員もポスト配分や選挙での公認という党総裁としての権限を握る総理を恐れ、総理が好まないことを言わない。 官僚が官邸を「忖度」し、自民党の議員が自由な発言をためらって、野党が何のために存在しているのかを見失った結果、総理の一強が強まった。 「選挙制度改革」と「橋本行革」が、日本の政治構造にダブルパンチを与えたようなものだとカーティス教授はいう。 私:これらが本来、安倍首相のいう「膿」ではないのかね。 さらに、カーティス教授は、森友、加計学園問題問題の真相究明が大事なのはわかるが、歪曲した仕組みを直す努力をせずに、対立が続くことの方がより深刻だという認識が、政治家にもメディアにも足りず、与野党ともに日本政治の構造問題を冷静に分析して、改善策を論じるべきだという。 安倍首相が「膿」を出す、というのは、カーティス教授が指摘した現在の日本政治の構造の見直しにあたるね。 野党も「膿」出しを積極的に行うべきで、それが最後に野党強化につながることを自覚すべきだね。
2018.05.10
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私:ニコラス・クリストフ氏は、「北朝鮮専門家」として、金正恩朝鮮労働党委員長は4月27日、北朝鮮の指導者として初めて韓国に足を踏み入れたが、弱いカードを極めて巧妙に切ってきて、金氏は何としても制裁から逃れて経済を成長させ、核兵器を保有し続ける気だという。 このコラムで、クリストフ氏は、1980年代からこの国を取材している者として、なぜ深く疑いを持つべきか、そして、なぜ少しは期待を持てるのかについて、このコラムで、見解を述べたいという。 A氏:金氏は、オリンピック外交と南北首脳会談の進展を足掛かりにトランプ氏や中国の習近平国家主席との会談を取り付けた。 どちらも北朝鮮が長年目指してきたことで、金氏と文氏は、「これ以上戦争がないこと」、「新たな平和の時代」、そして「完全な非核化」を約束する宣言を採択した。 クリストフ氏は、感動的ではあるが、「懐疑的」だという。 南北朝鮮の首脳はこれまでも00年と07年に壮大な和平文書に署名したが、どちらも持続しておらず、12年には、北朝鮮はミサイル実験を行わないことに合意したが、その数週間後に「衛星」と称してミサイルを発射している。 私:北朝鮮が「完全な非核化」を持ち出す場合、たいてい、米国がまず韓国との同盟を終わらせ、北朝鮮が自国を守るための核兵器を必要としなくなることを意味する。 だが、クリストフ氏は、米国が韓国を見放すことはなく、北朝鮮は50年代から核兵器の開発を続けていて、保有する兵器を本当に引き渡すと考える専門家を一人も知らないという。 トランプ氏がイラン核合意を破棄しようとするのを目の当たりにしている今、北朝鮮が核兵器を手放す可能性はさらに低いという。 A氏:金氏は、非核化を目指す誓約に署名し、詳細は以後の協議に委ねる作戦のようで、査察も決して入らないと確信した上で、誓約が完全に実行されることはないという。 北朝鮮は不誠実かもしれないが、ひどいわけでもなく、北朝鮮と米国の双方が面目を保ち、戦争の瀬戸際から脱することができるのだクリストフ氏はいう 北朝鮮が、核やミサイルの実験を(願わくは、短距離ミサイルも)すべて停止し、寧辺でのプルトニウムの製造を中止すると予想していて、見返りとして、中国と韓国は静かに制裁を緩めるだろう。 そして金氏は望んでいたものを手に入れ、世界の指導者の一人、対等な存在、そして事実上の核保有国の支配者として扱われる正当性だという。 私:クリストフ氏は、金氏もトランプ氏も、このシナリオで政治的な恩恵を受け、世界全体も同じで、強硬派は、私たちがもてあそばれ、北朝鮮が検証可能な形で核兵器を放棄しないことに腹を立てるだろうが、戦争よりはましなのだという。 クリストフ氏の北朝鮮の「完全非核化」の実現に対しては「諦めに近い予測」だね。 どうやってこの事態を終わらせるのか? クリストフ氏は、西側の計画は、北朝鮮の崩壊まで長引かせることで、そうなる可能性はあるが、問題は、94年の核合意の時も米国が同じように計画していたことで、告白すると、90年代末にニューヨーク・タイムズの東京支局長のポストをクリストフ氏が選んだのは、間もなく北朝鮮の体制崩壊を取材できると考えたのが理由の一つだったが、それからというもの、金王朝が終わる時期を予想するのはやめたという。 浮上している枠組みがすべて失敗に終わる可能性はあるが、戦争を回避する道筋を思い描くことができるのだから、北朝鮮懐疑論者も感謝すべきだろうとクリストフ氏はいう。 このコラムか書かれたのは4月29日付のNYタイムズだが、それ以降、5月になって、金氏がまた飛行機で大連に飛び、中国の習主席と会談するなどバタバタし始めているのは、クリストフ氏の金氏に対する懐疑論があながち、間違いでないことを示しているね。 本番の米朝会談の成果は楽観できないね。 トランプ大統領が、金氏の煮え切らない姿勢に怒り、席を立ち、会談は決裂する可能性も容易に考えられられるね。
2018.05.09
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私:前米大統領補佐官(科学技術担当)、ハーバード大学教授のジョン・ホルドレン氏は、オバマ政権下で歴代最長の8年間、科学技術担当の大統領補佐官として仕えた米科学界の重鎮。 ホルドレン氏は、発足から1年余りのトランプ政権の科学政策の批判をこのインタビューで述べているね。 トランプ政権の予算教書では科学技術予算の大幅削減を提案し、「パリ協定」離脱など環境規制を次々と撤廃し、世界の科学をリードしてきた米国が「科学政策不在」の事態に陥っているという。 A氏:トランプ政権の科学政策の問題点は、まず、「1つ目」に、科学技術担当の大統領補佐官が不在で、大統領とホワイトハウスの高官が科学技術に関する政策課題に対処するとき、政権内で誰に直接助言を求めたら良いのか分からない状態。 ホワイトハウスの政策決定過程から、科学的な視点が奪われているという。 「二つ目」は、政府全体の科学技術政策を仕切る仕組みがなく、(政府の科学技術予算を策定する)科学技術政策局(OSTP)には45~50人の職員がいるが、補佐官が兼務していた局長が不在で、リーダーシップが失われている。 科学的な専門知識もない人たちが予算を大統領に進言することになり、実際に大統領の予算教書として議会に提示されている。 「三つ目」に、省庁や議会、科学界に対して大統領の使者として、渡り合う人がいないこと。 A氏:一番やる気を失っているのが、(予算が大幅に削られ、環境規制も次々と撤廃されている)環境保護局(EPA)の職員で、かなり士気をそがれていて、科学者が政権から離れ続けていいて、トランプ氏が政権を去っても、政府機関で有能な人材が空洞化した状況は、一夜にして修復不可能という。 オバマ政権時代は、科学技術担当の大統領補佐官は、好きなときに大統領と面会の約束や、自由にメモを渡すことができ、大統領も直接呼び出して助言を求めた。 ホルドレン氏も科学技術担当補佐官として、オバマ大統領との面会は、平均で週2回、多い週は5、6回の時もあり、彼に仕えた8年間は素晴らしいものだったという。 私:トランプ政権で米国が研究開発のスピードを落とす中、中国の躍進が目立ち、これも大きな問題点だね。 中国は過去数十年間でめざましい発展をし、15年には、経済の差を縮めたのと同じように、科学分野でも差を劇的に縮め、研究開発に使うお金はすぐに米国を抜くだろうという。 ホルドレン氏は、中国・清華大学の客員教授もしていたが、中国の自動車技術やバイオ、情報、ナノテクなどは素晴らしく、米国のMIT、スタンフォード大なみだという。 懸念するのは、米国が適切な科学投資ができなかった場合、10年後、15年後に、中国が盗むに値するような機密が米国からなくなってしまうとことだとホルドレン氏はいう。 だから、米国のためには中国とは敵対関係でなく、協調関係が必要だという。 A氏:科学者と政治の関係については、どれだけのお金を科学に使うのか、どのように割り当てるのかは多くの国では政治プロセス。 だから、科学者は利益団体と同じではないかという人もいるが、その通りで、科学者の利益は知識を深め、人類の発展に応用することにあり、誇るべきことであり、恥じることはなく、科学者が政治の舞台で沈黙するだけの集団なら、政治も貧しくなると、ホルドレン氏はいう。 私:このままだと、中国の科学技術が米国を追い越すことになりかねないね。 別のチャイナスタンダードができそうだね。 中国の科学技術の進歩の最新状態は、ブログ「中国の夢と足元」でとりあげており、ついでに成果をあげているドイツの科学政策については、ブログ「科学界、存在感増すドイツ 研究資金安定、論文数の伸び堅調」でとりあげている。 このブログでは全米科学財団が1月に発表した2016年の科学技術の論文総数ランキングでは、 1位=中国、2位=米国、3位=インド、4位=ドイツ、5位=英国、6位=日本、とあり、この科学技術分野では中国は、すでに米国を追い越しているね。
2018.05.08
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私:最近、週刊誌で食品店の店頭食品のコレコレに気をつけろという記事をよく見かけるが、この本の書評をみると、恐ろしい背景を知ることになるね。 しかし、評者は、この本はタイトルを見て「買ってはいけない」系の話かと思ったらまったく違い、本書が描くのはトマト缶業界で台頭してきた中国企業だという。 「イタリア産」の缶詰も、加工地がイタリアであり、中身は中国から運ばれているものが多いという、産地偽装でよく聞く話。 A氏:中国の場合、トマトの主要な産地・新疆は、反革命犯や政治犯を「改造」するために労働をさせる「労働改造」の一大拠点。 著者は2013年にこの制度が廃止された後も、多くの収容者がトマトの収穫作業を強いられているという証言を新疆で引き出しており、評者は、私たちはどこかで、反体制の知識人を含む人々がもいだトマトを食べているかもしれないのだという。 私:本書はグローバル経済の実態を示す一冊でもあるという。 フランスのトマト加工企業が、中国企業に買収された時点で、地元産トマトを使うという約束は反古にされ、中国から濃縮トマトが運ばれる。 フランスの地域の生産者の多くは転職を余儀なくされるが「フランス産プロヴァンス風トマトソース」は欧州のスーパーに並び続ける。 A氏:最も衝撃的な場面は、アフリカのガーナにある中国企業のトマト缶加工工場で、著者が人目をしのんで原料の入ったドラム缶に手を突っ込み、その「黒さ」を目の当たりにするところ。 酸化し変色した濃縮トマト(ブラックインクと呼ばれる)はアフリカで薄められ、着色される。 私:ブラックインク再加工の現場をおさえた著者の執念は相当なものだが、そうしたセンセーショナルな部分だけでなく、末端で働く人々の生活現場まで取材し、声を拾っているところに本書の意味はあると評者はいう。 著者はジャーナリストで、アマゾンの配送センターに潜入取材した前著がベストセラー。 評者は「奴隷制度がいかに自由主義とかかわりが深いか」という認識のもと書かれた本書は、たとえばTPPを推進した人々の間ではすでにそんなことは暗黙の了解なのだろうから、市井の人々にこそ広く読まれてほしいという。 評者は、タイトルから、「買ってはいけない」系の話かと思ったらまったく違うというが、やはり、最後は「買ってはいけない」系の話になるね。
2018.05.07
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私:このエッセイでは、まず、例の大相撲の土俵の女人禁制の「伝統」をとりあげているね。 騒がれているうちに、日本書紀には女性が相撲をとったという記述があるなど、ほんとうに女人禁制が「伝統」かどうかあやしくなった。 早大のスポーツ科学学術院のリー・トンプソン教授は、「江戸時代、女性は相撲の観戦もできなかった。ではなぜ、観戦禁止は明治になって解除されたのに、土俵の女人禁制は守ることになったのか。興行上の理由でしょう」という。 トンプソン教授は「横綱の発明と優勝制度、あるいは双羽黒の逆襲」という論文で、大相撲の代名詞のような横綱も創られた「伝統」だと指摘している。 横綱が番付で大関の上に載るようになったのは20世紀初頭で、ちょうどその時期に、場所ごとに成績で個人優勝者を決める制度も発達。 以前にはなかった優勝制度で、その導入は相撲の近代化だったと言える。 A氏:ただ近代化しても「伝統」の国技というイメージは必要と考えられ、その役割を担ったのが横綱を掲げる番付。 「伝統」性を表象する横綱制度は、優勝制度導入による近代化とのバランスをとるかのように発明され、行司がえぼしなどで「伝統」を装うようになったのもそのころ。 トンプソン教授は「日本には、『伝統』を守りながら近代化してきたという物語があります。西洋の国々に追いつき追い越せとやってきたけれど日本の精神は守ったんだと。大相撲もそれを体現しています」と指摘する。 私:ここで、テーマは「伝統」一般論に移る。 英国の歴史家、エリック・ホブズボーム氏らが1983年に出した研究書「創られた伝統」で、「『伝統』とされるものごとは、古いと言われるし、そう見える。しかし、その起源がかなり最近であることはしばしばで、ときには発明されることもある」という考え方を打ち出した。 ホブズボーム氏は、「発明された『伝統』」の場合、過去とのつながりがあるようでも「大半が見せかけ」という。 でも、それはそのときどきの社会が抱える問題の「症状」や「指標」でもあるという。 彼の分析によると、多くの国が「伝統」の発明に励んだのは19世紀末から20世紀初めにかけてで、近代化の大波にもまれ、人々は自分の居場所について動揺していた頃。 その心を国や地域に結びつけ、人々を束ねたい政治権力に役立つような「伝統」が創られていったという。 A氏:ここでテーマは一般論から、現在に移る。 日本では、憲法に日本の「伝統」的価値観を盛り込もうという主張が目立つ。 2006年に改正された「教育基本法」は「伝統」を「継承」したり「尊重」したりする教育の推進をうたっており、ほかの国でも、自国の誇りを取り戻せとばかりに「伝統」を強調する言説が広がる。 おりしもグローバル化や少子高齢化で社会は急激な変化にさらされていて、不安が消えない人々に向けて政治家や言論人がせっせと「伝統」を発明しているように見える。 「夫婦別姓は『伝統』を壊す」「家族で助け合うのが『伝統』」などなど。 私:トンプソン教授は「『伝統』って何でも入れられる箱みたいなもので、『伝統』といえば、人は守らなければと思ってしまいがちです」と注意を促す。 大野氏も「『伝統』というだけで、なにかを説明したことにはならない。『伝統』といわれただけで、恐れ入るわけにはいかない」という。 大相撲の土俵の女人禁制の「伝統」は相撲協会で再検討するらしいが、どうなるかね。 挨拶や、賞状授与、緊急事態の場合など、条件付きで緩和するか、頑として「伝統」を押し通すか。 いずれにせよ大相撲の「伝統」に新たな歴史的根拠の説明が必要だね。
2018.05.06
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私:4月末のブログ「人間関係の質の低下 孤独の病、助長するSNS」で、米国でSNSの影響で、リアルな人間関係が減り、格差まで生んでいるというエッセイを取りあげたが、今日の新聞記事は日本の小中高校生の「ネット依存症」問題をとりあげている。 ある男子生徒は中学2年の夏、専門病院で「ゲーム依存症」と診断された。 部屋に引きこもって体を動かさなかったため、健康診断で肺の働きは「53歳程度」と判定されたという。 友達との会話の時間もすくないので、リアルな人間関係ができにくい。 A氏:内閣府の2017年度の調査によると、小中高生の7割以上がネットゲームをしており、比率は年々高まっていて、ゲーム以外にもSNSなどネットを利用する時間も長くなっていて、1日の平均利用時間は159分で、14年度より約17分伸びた。 厚労省.研究班の12年度の推計によると、「ネット依存症」の疑いがある中高生は全国に約52万人に上るが、ネットやゲームをする子どもがすべて依存症になるわけではない。 私:単なるやり過ぎと依存症の違いは、自分で制御できるかに加え、心身の健康悪化、遅刻や不登校、家庭内暴力などの問題が起きているかいないかで判断する。 国内で初めて「ネット依存症」外来を開いた久里浜医療センターでは年間約1800人が受診。 未成年が56%、20代が31%で、男性が85%を占め、樋口進院長は「始めるのが若いほど依存症になりやすい」と警告。 子どもは脳が十分に発達しておらず、快感や刺激を求める欲求が理性に勝る傾向があるという。 A氏:「ネット依存症」には、SNSなどへの依存症も含まれるが、圧倒的に多いのは「ゲーム依存症」で、センターの患者の9割を占める。 主流の「オンラインゲーム」は内容が常に更新され、際限なく続けてしまうという。 樋口院長は「勉強やスポーツに比べて簡単に達成感が得られ、依存に陥りやすい」と指摘。 同センターで「ゲーム依存症」と診断された人は、朝起きられない(76%)、昼夜逆転の生活(60%)、学校や会社を休む(59%)などの問題を抱えていた。 物を壊す(51%)、家族に暴力をふるう(27%)といった暴力的な傾向も目立った。 私:WHOは今年6月に公表する国際的な病気の分類の改訂案で初めて、「ゲーム依存症」を「ゲーム障害」として疾患名に入れる方針。 これに対し、日本の企業も加盟する米国のゲーム業界団体は「ゲームに依存性はない」と反対を表明している。 しかし、現実に、ゲームに熱中している多くの子供達をみると、なんらかの影響は無視できないね。A氏:近所にいる男の孫は小学生高学年頃から、ゲームに熱中しだしたので、ゲームの攻略本を買い与えたら、熱心に読んでいた。 俺のところに遊びに来ても、ゲームに熱中するから、会話が減ったね。 中学生のときは、部活が運動部だったので、土曜も部活で運動不足とはなっていないね。 親しい友だちも数人いるらしい。 小学生のときのゲーム攻略本の効果か、国語は好成績だが、他の科目は勉強不足。 今年、高校入試で、間際の勉強でなんとか公立高校に入学した。 「ゲーム依存症」ではないが、インターネットに俺よりはるかに詳しくなり、将来、ハッカーになって、政府の公安関係の仕事を依頼されるのではと冗談を言ったね。私:ゲームやSNSが今後の彼の人生に大きな影響を与えていることは確かだね。
2018.05.05
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私:先日のブログ「独自の統治モデルを意識、『Gゼロ』世界、中国の好機 識者に聞く」で、「チャイナスタンダード」の拡大にふれたが、実は、同日の朝日新聞のトップには、その「チャイナスタンダード」化したカンボジアが一面トップに掲載されていた。 「チャイナスタンダード」化の例としてこれにふれておこう。 A氏:カンボジアのシアヌークビルは、旧宗主国フランスをはじめ海外の人々を引きつけてきたリゾート地で、大型船が接岸できるカンボジア唯一の深海港をもつ国際貿易の適地。 シルクロード経済圏構想「一帯一路」を打ち出す中国は、この港町の重要性に目をつけ、官民を挙げて投資を進め、中国資本によるカジノ建設が相次ぎ、年内に40カ所を超える予定。 30年以上にわたりカンボジアを率いてきた首相のフン・センは7月の総選挙を前に、最大野党による追い上げへの危機感から同党を解党させ、欧米から批判を浴びるが、「選挙は与党が100%勝つ。安心した中国人の投資が増える。政党が少ないほど政治は安定し、経済は成長する。中国が手本だ」という。 私:2月、中国の支援で首都プノンペン郊外に建設する橋の起工式でフン・セン首相は「我々が中国に近すぎると言う人に聞きたい。侮辱や脅し以外に、欧米諸国が何かしてくれたのかと」とあいさつした。 自国民を大虐殺したポル・ポト政権時代とその後の内戦を経験したカンボジアは、91年、国際社会の仲介で内戦を終結させ、93年には民主国家建設に向けて内戦後初の総選挙も実施。 だが、四半世紀たった今、フン・センは中国を後ろ盾と頼んで独裁色を強め、民主化は後退。 フン・センが追いかけるのは一党支配の中国が示す「チャイナスタンダード」の「民主化なき発展」の道。 ポル・ポト時代の貧困から、カンボジアが復興し、人々が携帯電話を持てるようになった新しい時代のスタート地点にようやく立った発展のさなかに、政治で混乱してはならず、今大事なのは安定だという。 手を貸してくれるのが中国なら、今はその手をつかむしかない。 人々は期待と不安を抱えたまま、限られたカードを引きつつあるというのが、「チャイナスタンダード」に立つカンボジアの姿である。 低開発国への「チャイナスタンダード」化は進むだろうか。
2018.05.04
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私:以前、「大隅氏、基礎研究の危機訴え ノーベル賞金、若手支援に活用」のブログでとりあげたが、大隅良典氏のノーベル医学生理学賞の受賞が決まったが、大隅氏を含め、2001年以降の自然科学系での日本のノーベル賞受賞者は16人で、約60人の米国に次ぐが、ほとんどが10~30年前の研究成果で、いわば「過去の遺産」。 財政難もあり、国は近年、すぐに成果を見込めそうな研究に競争的資金を重点的に配分し、基礎研究にしわ寄せがいく傾向があり今は、基礎研究の環境は厳しくなっているとあったね。 A氏:事実、引用数がトップ級の論文数は、中国などが伸びる一方、日本は徐々に下がっていて、日本の研究力が低下している。 政府の科学技術政策の司令塔を担う総合科学技術・イノベーション会議(CSTI・議長、安倍首相)の重要なテーマの一つは、6月につくる政府戦略に盛り込む「大学改革」で、国際競争力を高めるイノベーションの起点にするための議論が半年以上続く。 私:だが、政府の思惑とは逆に、日本の研究力は低下。 研究の質を測る指標として、世界の研究者から引用されることの多い論文数でみると、科学技術予算を積極的に増やしている中国や安定的な研究資金を確保するドイツは、質の高い論文数を増やしているが、一方、日本は国立大学を独立行政法人化し、人件費などに使われる基盤的経費を減らし始めた2004年ごろから低下傾向。 1990年以降、政府は「選択と集中」で、競争的研究資金に力を入れてきたが、大型の研究プロジェクトであっても数年で終わるため、研究者が大学で安定したポストにつきにくくなったことも原因の一つと指摘されている。 A氏:CSTI委員の上山隆大・元政策研究大学院大副学長は「大学が研究開発の拠点になっている世界的な流れに乗り切れていない。研究費と研究時間が確保される必要がある」と話す。 若い研究者の多くが最初に職を得る地方大学にも資金を回したり、運営費交付金でまかなってきた大学の人件費や施設費などを競争的資金からも出せるようにして間接経費を確保したりする仕組みも必要という。 ただ、国の歳入が伸びず、大学への研究費を大幅に増やしにくい中、民間企業からの投資も使って状況を打開しようとしているが、こうした方針に、先にブログの引用でふれた大隅教授は「研究費の確保のため、企業の下請け化が進んでしまうのではないか」と懸念する。 私:研究予算の現状について、都内の国立大学で、自然科学系の研究をする50代教員は「大学に配られる予算が減らされ、学内でも学部や本部と奪い合いになっている」と明かす。 この教員の研究室の研究費は、年に数十万円程度で、約20年前と比べて数分の1に減った。 教員は「ノーベル賞を受賞した研究が始まった時に、国が『選択と集中』と言って研究予算を減らしていれば、受賞できなかったはず。すぐに役に立つ成果を求めすぎだ」と訴える。 A氏;任期付きで雇用される博士研究員(ポスドク)の立場も厳しく、文科省の科学技術・学術政策研究所が2月に発表した報告書によると、12年度に博士課程を修了し、3年半後に大学や研究機関に勤めるポスドクに、今後のキャリアを尋ねたところ「研究者として安定的なポジションを得たい」が6割近くに上った。 関東地方の国立大学で非常勤の教員を務める30代のポスドクも、大学の研究職の公募を待っているが、約15人いた大学の研究室の同級生で、研究の道に進んだのは1人だけで、安定した立場はまだ得られていない。 「日本では研究予算が減らされても不思議に思わない人が増えている。科学が国にとって重要という教育がきちんと行われてこなかったのではないか」と話す 私:日本の研究力が低下には、政府が進めてきた研究資金の「選択と集中」の影響だと指摘されているが、CSTIは「選択と集中」の看板を下ろしていないという。 日本の研究力の低下に対応して、CSTIは、6月までに若手研究者の支援など大学改革を盛り込んだ統合戦略をまとめるという。 今後、日本の自然科学部門のノーベル賞受賞者数は、どうなるだろうか。
2018.05.03
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私:昨日に続き、「チャイナスタンダード」をとりあげる。 ここでは、朝日新聞は、識者として、早大名誉教授・天児慧氏と、ユーラシアグループ社長、イアン・ブレマー氏の両氏に意見を聞いている。 天児慧氏は、「国家主席の任期制限撤廃など、習氏による『独裁』を巡る議論は、人類共通の歴史的な政治課題と捉えた方がいい。ドイツでヒトラーが台頭したように、政治システムは民主主義が問題を解決できなくなると独裁に、独裁が強まると民主主義に振れる。 冷戦の終結はリベラルデモクラシーの勝利ととらえられたが、いま民主主義は世界が直面する課題を解決していない」という。 A氏:トウ小平を含む指導者たちの時代は、民主化も考えていたが、今は、西側の民主主義は行き詰まったと指導者が認識。 習氏が国家主席に就任した2013年ごろから共産党は、経済と政治を含む概念として新たな「中国モデル」を意識し始めたという。 昨年の共産党大会などを見ると、50年ごろには米国を超えるという目標を立てているようで、理念やシステムで世界的な影響力を持つという戦略が出てきているのではないかと天児慧氏はいう。 「賢人政治」は、民主主義か独裁か、という問題への一つの答えだが、中国の文脈では儒教の伝統という面があり、修身によって聖人をつくり、その聖人による統治を理想とする考えが、中華帝国の中心的イデオロギーとしてあり、近代以降、儒教は遅れた思想とされ、共産党も否定したのだが、最近は復活しつつあるという。 私:明確な方向性を提起するには「賢人政治」の方が優れた面もあり、中国を「あいつらは独裁だ」と批判するだけでは低質な議論にしかならず、民主主義を鍛える努力を抜きにして、独裁と比べるべきではないという。 しかし、一方、習氏は「賢人政治」に必要な、優れた指導者を選ぶ仕組みを作っておらず、民主主義と中国式統治は、どちらも試されている。 中国はかつての英米のように基準をつくり、世界をデザインする意欲があっても、一番の障害は中国の政治文化がトップダウン型だが、欧米はボトムアップ型であり、そこから民主主義も生まれ、中国が善政を敷くといっても抵抗があるはずだという。 天児慧氏は、「『パックスシニカ(中国による平和)』の実現は、やはり人権や自由といった普遍的価値を中国自身が受容するかどうかにかかっているのではないか」という。 A氏:もう一人の識者であるユーラシアグループ社長、イアン・ブレマー氏は「(リーダー不在の)『Gゼロ』世界、中国の好機 米の政治、深刻に壊れている」として、「Gゼロ」は中国にとって、とても大きな機会となり、ブレマー氏は、中国が政治的空白を利用することを今年の10大リスクの1位に挙げており、明らかにそうなっているという。 それは、中国により適した秩序である「一帯一路」の構想、また終身制になりうる習氏の国家指導者としての地位などに表れているという。 私:習氏は昨年10月の共産党大会で、経済、技術、軍事面で世界の超大国になる用意がある、と公言。 これは、米国への直接的な挑戦で、1991年にゴルバチョフ氏がソ連の終わりを宣言して以来、世界で最も重要な演説だとブレマー氏はいう。 また、「米国が主導した世界は、中国が主導しそうな世界より個人の権利に関心を払ってきたと言える。米国がそうした関心や能力を持たなくなれば、我々は重要なものを失う。価値を築くのは長い時間がかかり、再建するのはとても難しい」とも、ブレマー氏はいう。 いずれにしても両氏の意見には「チャイナスタンダード」に対する危機感が共通して感ぜられるね。
2018.05.02
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私:中国的な価値観が生み出す「チャイナスタンダード」は国際秩序を変えるのか。 中国は今、多様な分野で世界を席巻している。 ・海外旅行者数――1位で1.2億人で、2位はドイツの0.9億人。 ・海外留学生数――1位で80万人、2位はインドの30万人。 ・インターネットユーザー数――1位で7億人、2位はインドの4億人。 ・国際特許出願件数―――中国は米国に次いで2位の5万件で日本に追いつく。 ・太陽光発電量――1位で70テラワット、2位は米国の60万テラワット。 A氏:欧米とは異質な中国の価値観は、人権意識の高い先進国にも影を及ぼし始めた。 例えば、ノルウェーのノーベル委員会は10年、中国共産党の支配を批判した「獄中の人権活動家」、劉暁波にノーベル平和賞を贈ったが、中国の対応は「劉暁波は罪人だ。両国関係が損なわれる」と素早く執拗だった。 ノルウェーのサーモンは中国の税関を通らなくなり、94%あった中国市場の占有率は2%まで落ちた。 ノルウェーのサーモン業界はノルウェーで強い政治力を持つので、ノルウェー政府は、世論を押し切って中国との関係改善にかじを切った。 北極圏の権益を狙う中国は13年、ノルウェーの支持を得て「北極評議会」でオブザーバーの地位を獲得。 ノーベル平和賞受賞者で、中国が敵視するダライ・ラマ14世がノルウェーを訪れても政府幹部は面会しなかった。 私:中国がノルウェーとの関係の正常化を受け入れたのは6年後のこと。 この間の経験を踏まえ、ノルウェー国会では十数人の議員が超党派の親中グループを結成し、中国理解を広げようと、中国大使を議会に招いたり夕食会をしたりと交流を深める。 メンバーのケント・グッドムンドセン氏は「自由や民主主義は大事だが、『我々の道が唯一の道』というのは傲慢だ。我々は違う歴史を歩んできたのだから」と話す。 ついに、ノルウェーにチャイナスタンダードが根付いたようだね。 A氏:民主政治の原型を生み出したギリシャにも、中国は深く食い込む。 EUは昨年6月の国連人事理事会で、中国の人権状況を批判する声明を準備しながら挫折。 EU全加盟国の賛成が必要だが、ギリシャが反対したためだ。 「EUが人権問題で声明を出せなかったのは初めて」と、国際人権団体に衝撃が走った。 ギリシャの反対は、10年、ギリシャが深刻な経済危機に陥りEUで「お荷物」扱いされた時、支え続けたのが中国だからだ。 中国は、ギリシャのピレウス港の開発に投資し、地中海屈指の貿易港へと成長させ、苦しい時に寄り添った中国を「恩人」とみる気分は、政権のみならず市民にも広がる。 発展を急ぐ途上国とグローバリズムの影響などで揺れる欧米の自由主義国。 中国の影響は双方に及び、人権外交の構図も変えようとしている。 私:今年3月、スイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で、米国代表は強い口調で「中国は国連人権システムの弱体化を狙っている」と中国にかみついた。 これに対し、中国がまとめた決議案は、人権保護の取り組みでも「国家の特殊性と歴史的、文化的、宗教的背景は留意されなければならない」と訴え、共同提案国にカンボジア、ベネズエラ、スーダンそして内戦が続くシリアなどが名を連ねた。 国家の事情が人権よりも優先される場合があるとも読める内容に、米国は反発し、理事国による投票を求めた。 結果は賛成28、反対1、棄権17、反対は米国だけで日本やEU諸国は棄権に回ったが、アジア・アフリカの発展途上国、サウジアラビアやエジプト、メキシコなどが賛成。 A氏:ひるがえってみれば、トウ小平が改革開放にかじを切って40年。 当時、貧困国だった中国は世界第2の経済大国になり、軍事やサイバー、宇宙などの技術でも先進国に引けを取らない。 ヒト・モノ・カネ、さらには文化や価値観まで中国的なものが世界にあふれ出す。 欧州でさえ、巨大市場の魅力から中国批判をはばかる空気が漂う。 背景には、歴史的な国際関係の地殻変動がある。 「米国第一」を掲げるトランプ政権下で、米国の国際的な影響力は退潮傾向で、中国共産党幹部は「トランプが大統領でよかった。『米国第一』に固執するほど、中国が発展する空間が広がる」と本音を明かす。 私:冷戦が終わり、社会主義や全体主義は淘汰されるとだれもが信じた。 2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した時、欧米主導のグローバルスタンダードに中国も寄り添うとだれもが感じたが、その期待ははずれた。 中国は今、独自路線で米国をもしのぐ「社会主義現代化強国」を目指している。 欧米の影響力が陰るなか、望むと望まざるとにかかわらず、中国的なモデルがスタンダードになるかもしれないという動きが様々な分野に現れてきた。 世界は、欧米から中国に覇権が移る歴史的転換を目にしているのだろうか。 新たな世界秩序をめぐる相克を、この記事は各地から報告するとしている。 その視点にたっての各地からの報告を期待したい。
2018.05.01
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私:もともと、シリア内戦は、中東の民主化運動「アラブの春」の影響を受けて、民主化を求める人々をアサド政権が弾圧したことをきっかけに始まる。 イランは「主権尊重」を掲げ、アサド政権の支援にまわり、イランが派遣した民兵や部隊は政権軍の屋台骨を支える。 A氏:一方、サウジはアサド大統領退陣を訴え、反体制派を支援したが、反体制派は劣勢に追い込まれ、残る大規模拠点は北西部イドリブ県のみで、支配地は国土の1割にすぎない。 イランにはイスラム教シーア派が多く、サウジはイランについて、「イスラム教シーア派の人々を扇動して、各国の政体転覆をもくろんでいる」とみる。 イラン封じ込めは最優先の対外政策になっているが、成果は出せていない。 中東ではシリアとイエメンのほか、レバノンとイラクでもイランと関係の深い勢力が影響力を持つ。 アラブ諸国、そしてイスラム教多数派のスンニ派の盟主を自任するサウジだが、その周辺では、イランの影響力が強まる一方。 私:焦るサウジに、千載一遇のチャンスと映ったのがトランプ政権の誕生。 トランプ氏は17年の大統領就任前からオバマ前政権が結んだイランとの核合意を批判。 就任後は破棄をちらつかせ、イランへの厳しい姿勢を保っている。 トランプ氏は17年5月、初めての外遊先にサウジを選び、その外遊中、サウジは米国と計1100億ドル(約12兆円)に及ぶ巨額の武器購入契約を結び、米国の利益にこだわるトランプ氏を喜ばせた。 サウジ政府は否定するが、イスラエルと接触しているとの情報は17年以降、たびたび報じられており、「対イラン」で結束するサウジとトランプ政権、イスラエルの関係は、今後さらに強まる可能性が高い。 A氏:アラブだが、ムハンマド皇太子は32歳だが、国王の信頼を得てライバルになる勢力を追放し、禁止されてきた映画館の運営や女性の車の運転を次々に解禁すると表明し、「新世代の改革者」という名声を確立し、大な権力を独占している。 だが、台所事情は厳しく、「20年までに石油に依存しない経済に移行する」とぶち上げたが、政府歳入は今も7割近くを原油に頼る。 歳出の2割超を占める軍事費は「イランの脅威」で年々増加し、5年連続の赤字予算を圧迫しており、国民に対する補助金も減らさざるを得ない状況。 サウジにアラブの連帯を尊重する余裕がなくなり、ムハンマド皇太子が国益の最大化を目指す「サウジ・ファースト」の姿勢を強めていることは、アラブ諸国の分断を招いている。 私:イランに対するサウジ劣勢の巻き返しを狙うムハンマド皇太子の「賭け」は、混迷の中東をさらに不安定にするリスクを伴う。 内戦が続くシリアでは、イランが支えるアサド政権が優勢を固め、サウジが支援する反体制派は退潮が著しい。 サウジはトランプ米政権に接近して挽回を期すが、なりふり構わぬ外交がアラブ諸国を分裂させている状況。 シリアとイランとの連合にロシアもからんで、これに対立するサウジと米国の争いは、複雑な構造となっているね。 サウジの成否は、サウジを最大の石油調達先とする日本にとってもひとごとではない。
2018.04.30
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私:崔成国氏は、脱北し、韓国でウェブ漫画家として活躍、ネット上に「労働新聞」「南朝鮮日記」などの漫画作品を発表。 今回、初めて軍事境界線を越え、韓国側に来た金正恩・朝鮮労働党委員長を、メディアの多くは好意的に伝えたが、崔成国氏の目には、これは、全世界を相手にした「偽装平和ショー」に映ったという。 正恩氏のねらいは、自分たちは世界に危険な存在ではないとアピールし、経済制裁を解くこと。 そういえば、最初、「北朝鮮の非核化」が、「朝鮮半島の非核化」となり、いつの間にか「北朝鮮」消えていて、巧妙だね。 トランプ米大統領との会談を前に、韓国が北朝鮮の口となり、剣となることを望んでいて、独裁体制の北朝鮮を西側と同じようにとらえ、素顔を見せたように報じるのは純粋すぎるという。 A氏:崔氏は、時々、北朝鮮にいる知人に電話をかけるが、正恩氏が神格化され、住民の人権が極度に抑圧されている状況に何の変化もないという。 会談や夕食会での正恩氏の打ち解けた肉声は、住民には伝えられないのは、正恩氏が自分たちと同じ人間であることがわかってしまうからだ。 私:4月初めに韓国のアイドルグループらが平壌公演をするなど、正恩氏が急いで開放的な「普通の国」を装い始めたが、こうしたことを続ければ、北朝鮮住民の外部世界への好奇心はいずれ大きくなる。 独裁体制を維持するためには本来住民が外部社会に触れられないようにし続けなければならないのに、失敗で、トランプ米政権による圧力外交は成果を上げていると言えるだろうという。 A氏:崔氏は、日本の人たちには、北朝鮮住民の等身大の姿をもっと知ってほしいという。 北朝鮮住民約2300万人の多くは情報から遮断される一方、生きるために密輸や商売を手がけ、自分の力で生きるたくましい力を身につけていて、統一した場合、韓国に依存し、荷物になるというのは表面的な見方だという。 私:崔氏は、「私は、ウェブ漫画という手段で伝えてきたが、脱北者がいる日本でも、たとえば韓国のように脱北者のトーク番組を放送してはどうか。北朝鮮の多様な姿を知ることは日本が朝鮮半島問題に関わる上で役立つはずだ」という。 それにしても北朝鮮は、個人独裁の社会主義国家、韓国は民主主義の資本主義国家。 水と油のような体質の違いをどのように統一しようとするのか、朝鮮の人々の誰も先が見えていないのではないか。 統一は朝鮮民族の幻か。
2018.04.29
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私:コラムニスト・デイビッド・ブルックス氏は、このコラムでSNSの普及拡大による大きな社会的問題点として、米国でSNSによる新たな「格差」の拡大を指摘している。 米国では、この数十年、人間関係の質が低下し続けてきたことを示す証左は山のようにあるという。 80年代には、孤独を感じることが多いと答えた米国人は20%だったが、今や40%に増加し、自殺率は過去30年間で最も高い。 「うつ病」の割合は60年から10倍に増え、30歳未満の母親のもとに生まれた子は、ほとんどが婚外子で、職場の同僚同士の人間関係に関する米国人の満足度は、この30年間、減少の一途をたどっているとブルックス氏は指摘。 A氏:米国の公衆衛生局長官を務めたビベック・マーシー氏は、医師としての経験を昨年9月のハーバード・ビジネス・レビューに「私が一番多く目にした病状は心臓病でも糖尿病でもなく、『孤独』だった」と掲載した。 患者たちは「孤独」を理由に、また、「孤独」によって病になったことを理由に彼を訪ね、社会的なつながりの弱さは、1日に15本のたばこを吸うのと同様の影響を健康に与え、肥満よりも悪影響が大きい、とマーシー氏は言う。 こうした傾向は過去5年間で急激に悪化し、2012年には、深刻なメンタルヘルスの問題を抱える若者の割合は5.9%だったが、15年には8.2%になった。 私:昨年、心理学者のジーン・トゥエンジ氏が「スマートフォンは一つの世代を破壊したのか」と題した記事を書いた。 社会の崩壊が加速するさまを示した内容で、議論を呼び、10代の若者はいつの間にか、デートをしたり、親の同伴なしに外出したりすることが少なくなり、大人がするような行為を先延ばしにすることが多くなった。 彼らはより多くの時間をデジタル画面とともに1人で過ごし、画面を見ている時間が多くなればなるほど不幸だと感じる人は多く、ソーシャルメディアを長時間使用する8年生(中学2年生)は、うつ状態になる確率が27%高いという。 A氏:フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグCEOがワシントンの連邦議会の公聴会で彼に投げかけられた質問や報道された分析のほとんどは、FBのプライバシー保護の失敗についてで、FBを取り巻く最大の問題はプライバシーではなく、FBや他のソーシャルメディア企業が、孤独や社会的孤立という伝染性の病を助長しているということにふれないのに、ブルックス氏がくぜんとしたという。 ソーシャルメディアを長時間使用している人の方が寂しい思いをしているというだけではなく、インターネットを長時間使う人は、すぐそばの隣人と接して、世話をし合ったり、手を差し伸べたりすることがずっと少ない傾向にあり、近隣住民の社会構造において、何か大きな変化が起きている。 私:英国の人類学者、ロビン・ダンバー氏は、人間社会が「クラン」(家族と近しい友人)、村(地域社会)、部族(より大きな集団)という三つの階層からなると述べているが、今日の米国では、「クラン」は分裂し、村は衰退し、部族は武器と化したと言えるだろうとブルックス氏はいう。 つまり、高度な教育を受けた家庭には過保護で過干渉な親がいる一方、あまり恵まれていない家庭には親がいないことも多い。 「クラン」と部族の中間にある、町や近所の様々な層の住民同士のつながりは、バラバラになってしまい、密接な関係の欠落を補おうとして、人々は精神的、感情的な切望を、政治的、民族的、その他の部族に求め、互いに激しくぶつかり合う。 これほど大きな問題がFBのザッカーバーグ氏の公聴会で取り上げられなかったのは、社会的に豊かな人と社会的に貧しい人ではFBの使い方が異なり、現実や社会問題の受け止め方も違うからで、ブルックス氏は、「人間関係の質の低下を定量化して伝えるのは非常に難しいが、私たちのように社会的に豊かな人の多くが、自分たちとは違う境遇の人々の暮らしをよく知らないのは確かだ」という。 この格差は、米国のトランプ現象の一因となっているのかも知れない。
2018.04.28
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私:森友学園問題で、官庁が国有地売却の公文書を改ざんし、政治家の関与も疑われているということから、この寄稿では政治と官僚の関係に歴史的に焦点をあてている。 日本の政治と官庁の関係には、苦い歴史があり、1920年代には、政友会と民政党が政権交代するたびに、自党に有利な官僚人事を行った。 これが政党批判を招き、軍部の台頭につながった。 政官の癒着は、今に始まったことではなく、国有地払い下げへの政治家の介入も明治からあったが、近年、官庁に対する政治の介入がとくに目立つ。 それは、戦争体験世代の政治家は、右派であっても露骨な介入を控えていたが、これに加え、もっと大きな原因は、日本社会の変化に伴い、自民党と官庁が保ってきた昔の秩序が不安定になってきたこと。 A氏:自民党政権が安定していた時代には、政治家は性急な無理強いをせずとも、ゆっくりと要求を実現させる「熟柿戦術」をとればよかったし、官僚たちも、規制を口実に要求を断ったり、「盥回し」にしてやり過ごしたりしていた。 だが、政権喪失を経験した自民党は、そんな「大人の構え」を失ない、官庁もかつての力を失い、政権に近づくことで影響力を回復しようとした。 私:「文芸春秋」5月号の報道によると、今回の改ざんの背景には「官邸との距離を少しでも縮めたい財務省のなりふり構わぬ事情」「何とか権力中枢と結んで『オレたちが仕切ってる感』をもう一度取り戻さないと組織のモラルが本当に底抜けしかねない、との本能的な危機感」があったという。 行政学者の金井利之氏によれば、そうした変質を促進したのが、「政治主導」「規制改革」の誤用。 90年代の官僚不祥事を経て台頭した「政治主導」は、「単に与党に基盤のない橋本/小泉首相と与党との権力抗争における標語にすぎなかった」が、「これが勘違いされ、与党政治家が行政に容喙することは正しいことである、という間違った発想がまかり通ってしまった」。 さらに「規制改革」は、官僚が政治家の要求を断る口実を奪う事態を招き、その結果の一つが、国家戦略特区での加計学園問題であるという。 A氏:また、以前は官僚の昇進は、年次などの慣行で決まっていたが、「政治主導」を掲げた改革で2014年に「内閣人事局」ができ、内閣が官庁幹部600人の人事を左右できるようになった。 政治学者の加藤創太氏によれば、「600人の候補者の多くは、次の役職が与えられなければ退官という立場にある。以前なら天下りポストが用意されていたが最近は非常に限られる」。 このことが、「忖度」がはびこる背景だという。 私:昔の秩序を懐かしむより、現代に即した制度改正を考えるべきだと小熊氏はいう。 日本の官庁人事の問題点は、「政治主導」が強すぎることだけではなく、もっと問題なのは、人事のチェック機関がなく、選考過程が不透明なことであるという。 政治との癒着が生じやすいのもそのためで、この点は、旧来の慣行による省庁人事も同様。 米国は大統領が変わると、官庁幹部は大幅に入れ替わるが、ただし、その多くは民間からの登用なので、官庁の官僚たちが昇進を期待する「忖度」は働きにくい。 また上院が人物審査を行い、チェック機能を果たしていて、米国は大統領と議会が分立している制度なので、大統領による人事を上院がチェックする。 A氏:では、日本と同じ議院内閣制の英国や豪州はどうか。 この場合、議会多数派は首相と一体なので、内閣による人事を議会がチェックするのでは十分でないので、代わりに、幹部公務員は公募を原則とし、独立の選考委員会が能力を審査する。 登用された公務員は政治家との接触が制限され、政治的中立が求められ、制度の細部は英国と豪州で違うが、独立機関が能力を審査する趣旨は共通。 私:これらと比べると、日本の制度の問題が見えてくる。 日本の現行制度は「他国にも例がないほど強大な権力を「内閣人事局」や大臣に与えている」うえ、人事の適正さをチェックする仕組みがない。 独立の機関を設けて、登用された官僚の能力を誰もが納得する形で審査し、透明性のある人事にすれば、官庁と政治の癒着も制限できるだろう。 実は類似の制度の導入は、戦後改革でも試みられた歴史があり、当時の占領軍は、入省年次などによる人事をやめ、専門能力での登用に変革しようとした。 その目的で、職務能力に応じた人事を掲げた1947年の「国家公務員法」と、省庁を超えた独立人事機関としての「人事院」が作られた。 だが官庁の抵抗で、旧来の人事慣行が「当面の処置」として残され、「人事院」も形骸化。 現在の事件は、戦後改革が未完に終わったために起きた問題だともいえる。 小熊氏は「日本の官庁は、『昭和の繁栄』には貢献した。だが新しい時代に即した変化を遂げなくては、国の未来を危うくする」という。 安倍首相は「膿を出す」というが、自らが「膿」の中にいることになる。
2018.04.27
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私:世界有数の規模の「北京国際モーターショー」が25日、中国・北京で始まり、中国政府が2019年に始める新たな環境規制に対応すべく、日系メーカーは次々電と気自動車(EV)などを発表し、世界最大の市場を巡るエコカー競争は激しさを増しそう。 一方、中国政府が国家を挙げて電気自動車(EV)やその関連産業を育てようとしているなか、地方ではその先を見越して、水素燃料電池車(FCV)の普及に向けた態勢づくりが着々と進んでいる。 A氏:FCVが本格的に普及すれば、EVで後れを取る日本勢も活躍するチャンスが増えそうだ。 FCVは、水素と酸素を化学反応させてつくった電気で走り、大気汚染物質を排出しないため、究極のエコカーと呼ばれる。 「水素エネルギー」の応用に一日の長がある日本。 また、2014年にトヨタは世界で初めてFCVを発売。 トヨタは江蘇省常熟市に「水素ステーション」を設置し、17年10月からFCV「MRAI(ミライ)」2台による3年間の実証実験を始めた。 中尾清哉常務役員は25日、記者団に「商用車への適応がきわめて重要と考えている」と語り、中国の地方政府が進めるFCVの運行への関与もありうるとの見方を示した。 私:中国政府はEVとともにFCVも推進する姿勢を打ち出してきたが、具体的な計画は南海区など地方政府が主体になって定めてきた。 しかし、国レベルで普及計画立案も動き出した。 きっかけは17年秋の中国共産党大会で、ここで習近平総書記(国家主席)が環境に優しく、低炭素型、循環型の経済発展を通じた「美しい中国の建設」を提起したことだ。 2月には、エネルギー関連の国有企業など17団体が「中国水素エネルギー・燃料電池産業イノベーション戦略連盟」を設立。 中国中央テレビによると万鋼・科学技術相(当時)は連盟の成立式典で、「『水素エネルギー』の生産、貯蔵、運輸と『水素ステーション』のネットワークを建設する計画を立てなければならない」と強調し、国レベルで具体策に取り組む方針を明らかにした。 A氏:4月19日、上海市であった「上海国際技術輸出入交易会」で、習氏の側近の一人で上海市トップの李強書記が、「水素エネルギー」の普及に力を入れる横浜市の展示を訪れ、斎藤信明・上海市事務所長に「上海に先進的技術を紹介することを歓迎する」と呼びかけた。 李氏は、「水素ステーション」を出展した「水素エネルギー」の応用に一日の長がある日本の計量機メーカー・タツノ(東京)の商談まで視察した。 私:EVの次はFCVか。 それにしても大国となった中国の国家エネルギーはすごいね。
2018.04.26
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私:日本人は、本来、歴史上、文書好きの国民だったはずだ。 それで、3人のうち、日本の歴史専門家の磯田道史氏と保阪正康氏のインタビューに興味をもった。 まず、日本史全体の専門の磯田道史氏は、歴史家として過去の様々な記録を読むと分かるのは、江戸から明治までの日本は、細かく正確に文書を残す記録大国だったということだと指摘。 その日本の国がいま「改ざんする」「うそを書く」「残さない」という公文書3悪で歴史に残る問題を起こしてきた。 A氏:江戸時代に細かく記録を残すようになったのは、農民と武士が離れて暮らすようになり、武士が統治の役割を担うようになったからで、武士は、領地での出来事の細かい記録を積み重ね、よりよい統治を行おうとしたのだという。 250年を超える江戸時代に日本人に染みついた記録をとる癖は、明治時代に力を発揮し、福沢諭吉や岩倉具視の海外使節団が残した西洋の詳細な記録は共有され、急激な近代化を支えた。 私:しかし、日露戦争に勝ってから記録の軽視が始まり、太平洋戦争の時代にはひどい状態になり、例えば、台湾沖航空戦では、実際には米軍の空母と艦艇を撃沈できていないのに、「多数沈めた。大戦果だ」と国民に伝えた。 うその情報を基に立てた作戦で南方の島に送り込まれた兵は、いないはずの米艦隊に遭遇して多数が戦死。 太平洋戦争の時代にはうその多い「大本営発表」が有名だね。 A氏:今回の公文書改ざんは、国が主権者たる国民から歴史を奪う悪質な行為だと磯田氏は指摘。 「首相案件」と言ったか否かが問われている柳瀬唯夫・元首相秘書官(現・経済産業審議官)は「記憶にない」と、面会の事実を認めていないが、各省や愛媛県に残っていた文書の記述で、事実が明らかになってきた。 財務省の福田淳一事務次官によるセクハラ疑惑辞任も、音声記録の存在が決め手で、文書や記録が残っていることはとても重要。 私:磯田氏は、文字に記録された王がいる国らしきものが九州にできて約2千年。 議会政治になって130年足らず、国民主権になって70年余り、一連の問題で公文書への高い意識が生まれつつあると、日本の進化の歴史の一つだと思いたいという。 ちなみに、記録文化があった幕末にも、うその文書が出されたことがあった。 それは、桜田門外の変で、大老だった井伊直弼の首を民衆が見ていたのに、井伊家は、直弼は生きているという偽りの文書を出し、幕府は天下万民の信用を失って倒れるきっかけとなった。 見えているものに対してうそをついたら、政権は短命化すると、歴史が証明する教訓だと、磯田氏はいう。 A氏:インタビューした2人目の保坂氏は、昭和史や戦争史に詳しい。 戦前が終わり戦後が始動した1945年8月に、日本各地で起きたのは、連合国側による責任追及から逃れるため、役人や軍人が公文書を大量に焼却する事件で、資料の焼却を指示自体も隠蔽しようとする徹底ぶりだった。 公文書の重要性は、戦争指導者を裁く東京裁判でも明らかになり、不当な戦犯容疑だと被告側が自らの潔白を証明したくても、証拠となる公式記録を焼却していたので、仕方なく雑誌や新聞の記事を法廷に提出する者もいた。 公文書が焼かれた国には、歴史の空白が生まれ、戦争の政策がいつどう決定され、どう進められたのか、戦後に国民が知ろうにも手がかりとなる記録がない。 私:米国は敗戦直後の日本に、戦略爆撃調査団という大規模な調査組織を送り込み、戦争政策の決定過程や被害実態などを、要人から聞き取ったり埋もれた資料を探したりして調べ上げた。 悲しいことだが、その報告書は、“あの戦争”を日本人が知る貴重な資料になった。 ただ、米国の視点で書かれたもので、戦後の日本では、ジャーナリストや研究者が関係者へのインタビューや、要人の日記の分析から、史実を固め、空白を埋める作業をした。 A氏:このブログでもとりあげた、日本の敗戦時の姿を描いた名著、ジョンダワー著「敗北を抱きしめて・は、著者が外国人であったのは残念だね。 保坂氏は「私たちは確かに、為政者に政治を任せます。ただ、歴史を確定させる権限までは渡していないはずです。戦前も今も日本の為政者に欠けているのは歴史への責任意識、歴史への良心だと私は思います」という。 私:保坂氏は、「首相が退任したら5年以内に回想録を公表するよう義務づけることから始めてみてはどうでしょう。米国ではしばしば大統領や側近がすぐれた回想録を発表しますが、日本の昭和史の特徴の一つは、首相が回想録を著す例が少ないことだからです」という。 誠実に書かない元首相もいるだろうが、執筆に備えて資料を残そうとはするはずで、そうした回想録や資料は、国民が歴史の教訓とは何かを学ぶ機会になると思うという。 政治家の書く本はあまり売れないと言うが、歴史の記録としては貴重なものになるだろう。
2018.04.25
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私:乗客と運転士計107人が死亡し、562人が負傷したJR宝塚線(福知山線)脱線事故からあす25日で13年。 JR西日本は以来「安全最優先」を誓ってきたが、昨年12月、新幹線「のぞみ34号」の台車に破断寸前の亀裂が見つかり、国は事故につながりかねない新幹線初の「重大インシデント」に認定。 A氏:3月下旬、大阪市内で、台車亀裂問題を検証した有識者会議が、JR西の副社長ら幹部4人に提言書を示した。 それによると、脱線事故後の安全対策には一定の評価をしたが、「のぞみ34号」の乗務員らが音など計30の異変に気づきながら新大阪まで2時間半、運行を続けたことを問題視。 提言書では、大事故がなかった新幹線では危機管理に甘さがあったとし、「組織全体が『安全最優先』に転換できていない」と厳しく指摘。 私:JR西は、台車の亀裂について、メーカーの川崎重工業が、設計基準で厚さ7ミリ以上と定められた底面を最も薄い部分で4・7ミリまで削ったことが一因と、他人事のようで、異変に気づきながら新大阪まで2時間半、運行を続けたことには、きちんとした説明がなかったようだね。 A氏:だから、 有識者会議は、設計開発時から人的ミスを考慮した施工や保守が必要とし、メーカー任せだったJR西の管理態勢にも言及。 「トラブルが発生して慌てて対策に取り組む姿は改めるべきだ」と戒めた。 有識者会議座長の安部誠治・関西大教授の目には、提言を受けた副社長らは不満げに映ったので、実行を促すため、「1年後にどこまで進んだか見せていただく」と釘を刺したという。 まだ、トップからしてJR西の「安全最優先」軽視の根が深いようだね。 私:JR西の新幹線の安全対策は東海道を運行するJR東海より遅れていた。 JR東海は、走行中の台車の異常を温度上昇で検知するセンサーを3年前に配備。 実際に、愛知、神奈川両県内のセンサーは「のぞみ」の台車の温度上昇に反応。 JR西の来島達夫社長は、今月18日の会見で「(センサーの)必要性に思いが至っていなかった」と対策の遅れを認めた。 A氏:JR西は、宝塚線脱線事故から13年になろうとしているのに、昨年12月の「のぞみ34号」のトラブルから現場の「安全最優先」の意識改革に再び取り組んでいる。 昨年4月から12月11日の台車亀裂発覚までの約8カ月で、山陽新幹線で約100件の異音などが報告されたが、止めて点検したのはたった1件。 台車亀裂問題発覚後は、今月17日まで約4カ月で163件が報告され、25件で列車を止めて調べた。 やっと動き出した。 背景に、13年前も、「安全最優先」意識の徹底が叫ばれたが、事故後に入社した社員が4割を超え、「安全最優先」意識の「風化」も指摘される状態があるようだ。 私:神戸市北区の上田弘志氏は、事故で次男を亡くした遺族。。 昨年12月、台車亀裂問題の説明で上田氏宅を訪れた来島社長は「定時運行しないとお客さんに怒られるんです」と言ったという。 13年前の脱線事故の背景には、余裕のないダイヤがあったとされたのに、上田氏は「安全第一なら、まず止めるはずだ。13年前の教訓がまだ生かされていない」と話した。 その通りだね。 13年経っても107人が死亡し、562人が負傷した反省からの「安全最優先」の意識がいまだに全く、無視されているとはね。 台車の亀裂問題でなく、13年間で「安全最優先」の意識が風化した原因追及と効果的対策の実施が本質的な問題だね。 要するに、たまたま、台車亀裂というリスクを回避できなかったことで、表面化したJR西のマネジメント体質の問題で、根が深いね。
2018.04.24
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私:米移民局が2月、行政理念をうたった綱領の「移民の国、アメリカとしての約束」をさりげなく削除して改訂。 米国の成り立ちを象徴する表現を削った理由につき、当の移民局は、「単純で明解な内容にした」としか説明しない。 だれもが思い浮かべるのは、移民規制強化を掲げ、「国境に壁を」と叫ぶトランプ大統領の顔であると沢村亙氏はいう。 米国にも「忖度」があるらしい。 米国は、政権が変わると官僚もいっせいに変わるからありえるね。 日本は伝統的に政権が変わっても官僚は変わらないが、内閣人事局ができてから、「忖度」が始まったようだ。 A氏:昨年12月には政府の保健部門に「トランスジェンダー」などの用語を予算文書で使わないよう指示した通知が回ったと報道された。 いかなる政策効果を目指したのかは不明だが、トランプ氏が保守的なキリスト教宗派から熱烈な支持を受けているのは広く知られているという。 単なる「言葉狩り」を超えて、国の理念や国民のありようを根本から変える予兆を感じさせるだけに、よけい不気味さが募ると沢村亙氏はいう。 私:その「国の『闇』」に手探りで立ち向かおうとする市民もいる。 きっかけは、フィラデルフィアの科学史協会に勤めるニック・シャピロ氏が一昨年の大統領選後、友人の科学者ら12人に送った「環境データを守ろう」という1本のメールだった。 地球温暖化に懐疑的なトランプ氏の当選で、政府が長年かけて収集してきた観測データの存亡が危ぶまれたので、メールは全国に転送され、データを取り出して保存する100人以上のネットワークができた。 悪い予感は当たり、トランプ政権の発足後、環境保護局が地球温暖化に関する200以上のウェブサイトを削除していたことが判明。 内容の改変もあり、例えば、「政策の優先課題」の項目にあった「クリーンで再生可能なエネルギー」を「エネルギー自立を通じて米国をより安全に」という具合に、子供向けに気候変動を解説するサイトも探しにくい所に移されていた。 「データの削除は適正な政策立案を妨げる」「科学軽視の態度を子供の頃から植え付けかねない」とシャピロ氏は案じる。 A氏:政府が保有する膨大なデータの何が削除され、どう変えられたのかを調べるのは大変で、シャピロ氏らは、データを自動保存したり、改変を覚知したりする技術も開発する。 ここまでは科学者やIT技術者ら理系の独壇場であるが、そこに文系の助っ人が加わり、大学で歴史を教えるクリストファー・セラーズ氏は、環境保護局の職員やOBからの「聞き取り」を重ねている。 データを分析し、規則を駆使して環境政策につなげるというノウハウは役所の中で培われてきた職人技。 「組織の記憶も人類の遺産。いったん失われたら取り返せない」。 十数人の研究者やジャーナリスト、学生がオーラルヒストリーに取り組む。 私:個々の市民が、得意分野をいかして国家という巨像の暗黒部分に挑む。 先に「国」ありきではなく、まず人がいて、国をつくったという、そんな米国の成り立ちを体現する営みがまぶしいと沢村亙氏はいう。 同日の朝日新聞の「政治断簡」欄の編集委員・佐藤武嗣氏筆の「公文書にみる民主主義の成熟度」と題した記事に「公文書の在り方は、その国の民主主義の成熟度を測る尺度とも言える」というのは、上記の沢村亙氏が指摘する「米国の『闇』」の記事と矛盾するようだ。 A氏:最近、スピルバーグ監督の映画「ペンタゴン・ペーパーズ」が話題だが、ペンタゴン・ペーパーズとは、トルーマン政権など4代の政権によるベトナム戦争の政策判断や秘密工作、軍事記録が記された最高機密文書で、ニューヨーク・タイムズ紙が入手して特報。 当時のニクソン政権は記事掲載差し止めを連邦裁判所に要求。 連邦最高裁の判決は、「報道の自由は守られ、政府の機密事項を保有し、国民に公開できる。制限を受けない自由な報道のみが政府の偽りを効果的に暴くことができる」と政府の差し止めを退けた。 民主主義の成熟度というのは、政権がいつも正しいということでなく、政権がおかしいことをしたら、これをすぐに追及できる強力な市民のパワーの存在の有無だといえるね。
2018.04.23
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私:福島第一原発事故の当時政権にいた民主党は、脱原発路線に傾いたが、それに冷や水を浴びせた二つの勢力があった。 まず、米国だね。 12年9月上旬、フロマン米国家安全保障会議補佐官が、ワシントンの日本大使館幹部に 「『もんじゅ』を廃止するなどの一方で再処理を続けると、プルトニウムが蓄積される。米側としては、核不拡散における懸念は他の問題よりもはるかに大きい」と言い切り、この衝撃は野田政権に伝わった。 長島昭久首相補佐官らが急きょ訪米したが、長島氏らは「北朝鮮やイランに核武装を正当化する口実を与えかねない」と主張するカントリーマン国務次官補らを説得できなかった。 野田政権は「30年代原発ゼロ」にかじを切る一方、使用済み燃料については当面、再処理を続ける方向で調整に入っていた。 A氏:政権がそんな「矛盾」に追い込まれた裏に、もう一つの勢力の存在がある。 原発ゼロと同時に、民主党政権が当初、再処理政策を見直そうとすると、「国策」に協力してきた地元自治体は猛反発した。 また、民主党内の原発容認派の筆頭が、電力会社の労働組合「電力総連」出身の議員。 「電力総連」の原発容認派が原発政策に影響を与える構図は今も続き、立憲民主党が今年3月に国会提出した「原発ゼロ基本法案」を、「電力総連」は「唐突感が否めない」などと批判し、「電力総連」出身議員を抱える民進党との合流を決めた希望の党は、「原発ゼロ法案」の提出を見送る方向。 私:ところで、自民党は、福島第一原発事故のときは、野党。 。 当時の菅首相が世論を背景に模索していた「脱原発解散」に備える必要に迫られ、自民党にも原発政策の見直し議論が起きた。 11年7月、自民党総合エネルギー政策特命委員会を設置し、脱原発派の河野太郎衆院議員が「原発をフェードアウトさせていくべきだ」と訴えるなど、将来の脱原発を求める意見が続いた。 12年5月のとりまとめでは「早期に原子力に依存しなくても良い経済・社会構造の確立を目指す」とし、委員長を務めた山本一太参院議員は「国民の気持ちを踏まえれば、踏み込まざるを得なかった」と振り返る。 A氏:その裏ではもっと「過激」な政策提言が準備されていた。 特命委内に設けられた二つのプロジェクトチーム(PT)の一つの座長の岩屋毅衆院議員を中心に練った報告書案には「核燃料サイクル事業は大幅に見直すことが求められている」とあった。 私:しかし、12年9月の自民党総裁選で安倍晋三氏が返り咲くと、政調会長に甘利明元経済産業相を据えるなど党中枢は原発容認派に占められ、報告書案は忘れ去られた。 福島第一原発の事故は政界をも揺さぶったが、結局は、平成が始まったころにはできあがっていた「岩盤」が崩れるには至っていない。 記事には、11年9月から5年余り、米国国務省次官補(核不拡散担当)を務めたトーマス・カントリーマン氏へのインタビュー記事が載っている。 カントリーマン氏は、米国は日本の脱原発に反対でなく、再生可能エネルギーの方が原発より将来性があり、一番の問題は核燃料サイクルで、日本は多くの国民が安全性を疑問視し、原発の新増設に反対が増えたという。 日本の再処理政策については再考すべきで、再処理より直接処分の方が安く米国はやめており、プルトニウムはテロリストに奪われるリスクがあり、プルトニウムがたまれば、核不拡散の取り組みは信頼を損なうという。 「(民主党政権のときの長島昭久首相補佐官氏らが訪米した)12年、六ヶ所村の再処理工場を運用しないことは経済的利点があると伝え、(政権交代後も)何度も外務、経産省と話しをしたが、政府はなぜ経済性がよくないものに何兆円も使うのか答える必要があるとカントリーマン氏はインタビューに答えている。 しかし、平成の原発の「岩盤」が崩れるには至っていない。 日本は、北朝鮮には、非核化を強く要求しながら、原発再稼働、燃料廃棄物の再処理、プルトニュームの蓄積という政策はそのままなのだろうか。
2018.04.22
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私:今週は「書評」コーナーのほうに興味ある本がなかったが、この「売れてる本」コーナーの『ココ・シャネルの言葉』の紹介記事を読んで興味が湧いたね。 男だから、シャネル自体に興味がないが、シャネルの人物をとりあげた紹介記事に興味を持ったね。 A氏:彼女は、貧しい少女期を過ごしたんだね。 だから、彼女は経済的成功を強く欲した。 そんなシャネルは、宝石をこれみよがしに身につける上流階級の女たちを嫌い、その嫌悪感がイミテーションの宝石作りへ駆り立て、センスよい偽物は、本物の宝石より格好よく映ったという。 彼女はまず野心家だった。 既成の権威への反抗が、宝石だけでなくコルセットや大きな帽子など19世紀的な美を破壊した。 私:ココ・シャネルの伝記は硬軟とりまぜ何冊もあるが、彼女を象徴する短い言葉を右ページに、その背景を左ページにまとめてある本書は格好の入門書だと評者はいう。 たとえば「シンプルで、着心地がよく、無駄がない。私はこの三つのことを自然に、新しい服装に取り入れていた」という言葉が目に入るが、その意味は、第1次世界大戦が起き、女性も体を動かしやすい実用的な服が求められた時代と合致したという解説があり、評者はその解説に納得という。 それまでは喪服の色だった黒で「リトルブラックドレス」を作り、黒はパリ・モードを代表するシックな色となる。 A氏:シャネルはまた恋多き人でもあったが、貴族や芸術家たちとのスキャンダルは、彼女のステータス上昇に貢献し、そんなシャネルの生き方に共感する女性も多いだろうと評者はいう。 裕福になった彼女は、無名の芸術家のパトロンにもなるが、ただ善意の行為ではない。 彼らが成功すれば、シャネルその人の格が上がる。 フランスは階級社会だ。 彼女を蔑んでいた上流の淑女が、シャネルのサロンに呼ばれることを欲する。 すごい上昇志向だね。 善でも悪でもない、両義的な存在。 私:そんな謎と複雑な個性もまた、シャネル・スーツ同様に女性を心地よく包むようだと評者は、この本がよく売れている理由を説明している。 普段は、有名なブランド名としか知らなかったのが、その背景にココ・シャネルという女性の生き方があったとはね。 女性問題は、世界的な「#Me Too」運動がある中、日本では最近の財務省次官のセクハラ問題などで、世間の関心が高まっているね。 一方で、女性活躍社会の推進政策がある。 相撲の女性の土俵立入り禁止もある。 まだ、もめそうだん。
2018.04.21
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私:防衛庁統合幕僚監部に勤務する30代の男性3佐は16日夜、東京・永田町の参院議員会館前をジョギングしていて民進党の小西洋之参院議員と遭遇。 小西氏だと確認したうえで、3佐は自衛隊と名乗り、「お前は国民の敵だ」などとののしってきたという。 A氏:まさに「日報」問題に次いで「シビリアンコントロール・文民統制」が試された事態となったね。 さらに、問題だったのは、3佐の暴言が明らかになった17日、小野寺防衛相が報道陣に「若い隊員なので様々な思いもある」と3佐を擁護したともとれる発言をし、野党側が反発。 それで反省したのか、小野寺防衛相は、19日の参院外交防衛委員会では、「自衛官にも憲法で保障された内心の自由は認められるが、今回のような不適切な発言は決して認められない」と強調し、「不適切な発言をした者を擁護するつもりはない。厳正に対処する」と釈明。 私:どうも「日報」問題のときから、小野寺防衛相の「シビリアンコントロール・文民統制」の考えは甘いね。 自衛隊のイラク派遣の「日報」がやっと見つかったのを「シビリアンコントロール・文民統制」がされていないのではないかと野党に追及されたら「提出するように強く要請したら、出てきたから『シビリアンコントロール・文民統制』されている」という答弁だった。 強く言われて提出するということは、強く言われないと放置して平気という「コントロール・文民統制」されていない状態なのが小野寺防衛相は理解していないらしい。 「日報」問題で小野寺防衛相の「シビリアンコントロール・文民統制」の考えの甘さが、今回の統幕3佐の問題にも出ているね。 小野寺氏は「自衛官にも憲法で保障された内心の自由は認められる」と言っているが、これも問題だね。 このブログの「自衛隊のこれから」元防衛大学校長・五百旗頭真氏で、五百旗頭氏は、槇智雄・初代防衛大校長の「服従の誇り」という言葉を引用している。 槇智雄・初代校長は、防大生に示し、外からの強制ではなく、自ら進んで民主政府に従う、それは誇りに足ることだと、「シビリアンコントロール・文民統制」の「内面化」を説いていたという。 自衛隊員の内心は「憲法で保障された内心の自由は認められる」ですまない。 「自ら進んで民主政府に従う、それは誇りに足ることだと、『シビリアンコントロール・文民統制』の『内面化』が求められる」のだ。 A氏:自衛隊員は「憲法で保障された内心の自由は認められる」だからといって、内心はクーデターを起こすことを考える自由はないのだね。 これを槇智雄・初代校長は「シビリアンコントロール・文民統制」の「内面化」と言っているわけだ。 自衛官トップの河野克俊統合幕僚長は19日、会見で「(3佐の言動は)非常に不適切。いかなる理由があろうと国会議員にあのような暴言を吐くことは許されない」と述べた。 防衛省は、3佐の言動が自衛隊員の品位の保持や政治的行為の制限などを定めた自衛隊法に違反する疑いがあるとみて、懲戒処分を検討している。 しかし、その前に、自衛隊はこの3佐にどのような「シビリアンコントロール・文民統制」の「内面化」教育をしてきたのか明らかにすべきだね。 私:「自衛隊法」は自衛隊員に対し、58条で「品位を保つ義務」を課し、61条で選挙権の行使を除く政治的行為を制限している。 同法施行令は、特定の政党を支持・反対する目的で職権を使うことなどを禁じ、憲法15条が定める「全体の奉仕者」である公務員としての規定だが、これを厳格に適用することで、文民統制を具現化してきた。 今回、暴言を発した3佐の階級は、戦前の軍組織に当てはめれば将校の少佐にあたり、その立場で国民の代表である国会議員に公然と敵意を示したとして、希望の党の玉木雄一郎代表は「1938年に帝国議会で陸軍中佐が議員に『黙れ』と一喝した事件を思い出す」と話す。 32年には青年将校が「国民の敵」と書いた紙をまいて当時の犬養毅首相を暗殺した5・15事件も起きた。 「80年たって非常に嫌な雰囲気が漂ってきた。実力組織の統制に大変危機を感じる」と希望の党の玉木雄一郎代表は話す。 同志社大の武蔵勝宏教授(立法学)は「今回は野党の政治家に対する威嚇だったが、そうした憤りが転じ、首相に向かうことがないとも限らない」と懸念。 ジャーナリストの布施祐仁氏は「自分の立場を自衛官と明かして国会議員に『敵』と言うのは、『文民統制』なんか受けないと宣言しているに等しい」と指摘し、「今回の行動に何らかの土壌があるなら、非常に危ない。災害派遣で国民に信頼されてきたのに、不安を抱かれるのは自衛隊にとってもプラスにならない。しっかり原因究明すべきだ」という。 A氏:「日報」問題でも、底辺にその「自ら進んで民主政府に従う、それは誇りに足る」という意識が欠如しているね。 私:今回の行動に何らかの土壌があるなら、非常に危ない。 災害派遣で国民に信頼されてきたのに、不安を抱かれるのは自衛隊になっては、プラスにならないから「シビリアンコントロール・文民統制」の「内面化」教育の原点にもどり、しっかり実態究明すべきだね。「内面化」の理解不足の小野寺防衛相にそれができるだろうか。
2018.04.20
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私:昨年末にソースネクスト社が発売した「ポケトーク」は、世界60以上の言語に対応し、一時は生産が追いつかなくなった。 ネットに接続し、言語ごとに翻訳エンジンを選択する仕組みを取り、資生堂ジャパンも導入、デパートの店頭などで外国人の接客に活用している。 音声翻訳機「ポケトーク」は手のひらサイズだが、通訳として活躍している。 A氏:2000年に480万人だった訪日外国人の数は、昨年には2870万人にまで増え、「ポケトーク」などの機器や、スマートフォンに入れる翻訳アプリなどで、外国人は日本で観光をしやすくなり、日本人も海外を訪ねやすくなるだろう。 私:京都の学研都市にある「情報通信研究機構(NICT)」の研究所は、無料の音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」の開発拠点。 スマートフォンなどにアプリを入れると、31言語に対応し、通訳してくれ、グーグルの自動翻訳を使う人も増えているが、政府系のこの研究所は、日本の企業の協力も得て、「日の丸」翻訳エンジンの性能向上に力を入れている。 「ボイストラ」の翻訳エンジンも、グーグル同様、人工知能(AI)を使って大量の例文を読み込ませることで、進化している。 A氏:研究所長の木俵豊氏は、日英など日本語を介する翻訳では、グーグル翻訳よりも精度が上だと自信を示す。 「みらい翻訳」と共同開発した翻訳エンジンは、英語検定のTOEICで900点を取るビジネスマンと同等以上の和文英訳の能力があり、2年後の東京オリンピックに向け、民間企業と協力し、タクシー運転手が使いやすいアプリの開発も急いでいる。 私:そうなると、日本人が苦労してきた「英語の壁」は低くなりつつあるが、一方で、英語が再来年度から小学校の教科になり、大学入試の英語も変革期にある。 自動翻訳が進化する中、英語学習はどこまでやるべきなのか。 研究所長の木俵豊氏は、「英語学習を通じて他国の文化を知るのは大切です。海外で活躍するビジネスマンなどは今後も英語で話した方が良いでしょうが、日常会話なら自動翻訳で十分になると思います」といい、「英語はコミュニケーションの道具ですから、英語教育も、子供たちが学ぶのが楽しいと思える方向になってほしいですね」という。 俺たち世代は、中学生の頃、始めて英語に接したとき、日本語や漢文と違った言語体系の文化に大いに好奇心を持って飛びついた記憶があるね。 A氏:自動翻訳が進化していけば、ネット上の膨大な海外の情報に、簡単に触れられるようになり、音声翻訳を使えば、外国人とも気軽に話せるようになる。 日本人にとって外国は、より身近になり、自動翻訳は英語教育の「代替」ではなく、「促進」にもなりうると感じると山脇岳志氏はいう。 私:俺たち世代は、英語の本を読むのは得意だったが、会話には閉口したね。 もっと、早く自動翻訳が進んでいたら、もっと豊かなコミュニケーションが、外国人とできたのにと思うね。 東京オリンピックには大いに活躍することを期待したいね。
2018.04.19
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私:フランスのマクロン大統領は3月末、世界中からAI分野の有識者を招き意見交換会とシンポジウムを開催し、フランスを「AI立国」とすると宣言。 2022年までに15億ユーロをAI分野に投資し、規制緩和を進める。 新井紀子氏は、このフランスの動向をAI分野で、地政学的な変化が起きようとしていると指摘。 すでに、ドイツは早々に、ビッグデータやAIを活用することで製造業の革新を目指す国家プロジェクトの「インダストリー4.0」を開始。 日本でも各省が競ってAI関連のプロジェクトに着手したが、それでも、米国や中国との距離は縮まるどころかますます水をあけられている。 A氏:ところが、新井氏が、フランスの意見交換会が開かれるエリゼ宮に到着したら出席者の約半数が女性なのに驚いたという。 女性研究者は1割程度といわれるAIの会合では極めて異例。 そして、「破壊兵器としての数学 ビッグデータはいかに不平等を助長し民主主義を脅かすか」の著者キャシー・オニールや、データの匿名化に精通したハーバード大学のラタニア・スウィーニーが含まれていた。 私:マクロン大統領は、「AIの影響を受ける人々は『私』のような人(白人男性で40代)だけではない。すべての人だ。AIがどうあるべきかの議論には多様性が不可欠だ」という。 マクロン大統領のAIに対する姿勢が違うね。 「新技術が登場する時には心配する人は必ずいる。電話やテレビが登場したときもそうだが、何の問題もなかった。AIも同じだ」と楽観論を展開するヤン・ルカンに対し、マクロン大統領は「これまでの技術は国民国家という枠の中で管理できた。AIとビッグデータは違う。圧倒的な寡占状況があり、富の再分配が行われていない。フランスが育成した有能な人材がシリコンバレーに流出しても、フランスに税金は支払われない」と厳しく指摘。 A氏:アメリカと中国でブームになると、日本は慌ててAIに手を出したが、「何のため」か、はっきりしない。 夏目漱石そっくりのロボットを作ってみたり、小説を書かせてみたりと、よく言えば百花繚乱悪く言えば迷走気味で、メディアも、AIと聞けば何でも飛びつく状況。 フランスは違い、AIというグローバルゲームのルールを変えるために乗り出してきた。 私:最後発のフランスにルールを変えられるのか。 マクロン大統領のAIアドバイザーを務めるのは数学者のセドリック・ビラニ氏で、氏は、法学者や哲学者も連係して、アルゴリズムによる判断によって引き起こされ得る深刻な人権侵害、AIの誤認識による事故の責任の所在、世界中から最高の頭脳を吸引するシリコンバレーの「教育ただ乗り」問題を鋭く指摘し、巨大なIT企業の急所を握り、「データとアルゴリズムの透明性と正当な利用のための共有」という錦の御旗を掲げながら、同時に投資を呼び込む作戦。 最初の一手は、5月に施行されるEU一般データ保護規則になることだろう。 ヨーロッパでは哲学も倫理学も黴の生えた教養ではなく、自らが望む民主主義と資本主義のルールを通すための現役バリバリの武器なのだ。 振り返って、我が国はどうか。 哲学者・森岡正博氏寄稿の朝日新聞1月22日の「AIは哲学できるか」と題した記事で、森岡氏が「人間の研究者が『人工知能カント』に向かっていろいろ質問をして、その答えを分析することがカント研究者の仕事になると私は予想する」とあるが、これに対して、新井氏は、「これでは、日本の哲学者の仕事は風前の灯と言わざるを得ない」と厳しい。 この森岡氏の寄稿文をこのブログでとりあげようとしたが、どうもピンとこなかたのでやめた経緯があるね。
2018.04.18
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私:エズラ・ボーゲル氏は、高度成長期の日本を描いた「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で有名な知日派だが、深い中国研究でも知られる。 国家主席の任期制限を撤廃して「一強」となった中国の習近平氏はこれからどこへ進み、米国や日本とどう向き合おうとしているのかをエズラ・ボーゲル氏にインタビュー。 まず、米中の貿易摩擦がエスカレートしていることについて、中国が継続的な経済成長によって強大になり、米国が相対的に衰退したことが背景にあるとボーゲル氏はいう。 米国内で中国への見方が変わったのはこの数年のことで、中国で今後民主化が進むことが期待できず、それが、米国内の警戒論に拍車をかけているという。 A氏:これまで中国との関係改善に積極的だった米経済界と学術界が、今はそれほど前向きではなく、中国の外資参入障壁で米企業がしばしば中国市場から締め出されていることに、経済界は失望しており、米学術界も、中国の学術界では、自由があまりにも制限されていると感じているという。 中国は昨年の党大会で、内外に自信を誇示したので、北京の若者は中国の政治制度が世界一だと信じているようで、特にトランプ大統領が誕生してから、米国の時代は終わったと思っているのかもしれず、そうした姿勢が米国の世論を刺激しているという。 私;トランプ政権は新たな国家安全保障戦略で、中国をロシアと同じ「競争国」と位置づけたが、いま米中は、大変厳しい時期を迎えているという。 今後さらに国力が強まった中国がどう出るかわからず、米国は大変危惧していて、習近平国家主席が大きな力を持つにつれ、中国は強硬姿勢をとり、軍事行動に出る可能性すらあるが、今後中国の経済成長が鈍化する中で、各国と対立すればさらに難しい問題を抱えることになるので、ボーゲル氏は、習氏はそこまでの行為には至らないとみている。 私:ボーゲル氏などの有識者はトランプ氏を評価しておらず、歴代大統領で最悪だと思っている。 トランプ政権下の米国は自由貿易や環境問題で建設的な役割を果たさず、TPPからの離脱などで米国に多大な損害すら与えているからで、メキシコやカナダにも被害を及ぼしている。 その米国が退いた空白を突き、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード経済圏構想で各国から支持を得ている。 中国は政治的にも影響力を世界に及ぼそうとし、中国は宣伝工作部門を使って国民を統制するやり方で、世界中にも影響力を及ぼそうとしているが、それは他国には受け入れがたいものだと、ボーゲル氏は指摘する。 A氏:言論が制限されている中国では、一人の指導者が長く政権に就くことで、自由な言論が抑圧され、習氏が進める「反腐敗キャンペーン」によって、処罰されることを恐れている人も大勢いるという。 トウ小平研究で知られるボーゲル氏から見ると、ホワイトハウス高官は「習氏の権力はトウ小平を超えた」と評したのに対し、ちょっと違う気がするという。 トウ氏は1920年代初頭から毛沢東の右腕として地下活動を続けた経験があり、軍のリーダーも務め、5年間をフランスで、1年間をソ連で過ごした経験があり、多くの海外指導者とも面識があり、彼はそれまでの実績や経歴で偉大な権力を得ており、肩書を必要としなかった。 これに対して、習氏は北京での勤務経験や軍の経験はほとんどなく、だからこそ、主席の続投にこだわり、肩書では習氏はトウ氏よりもはるかに力があるように見えるが、真の権力という意味ではトウ氏の方が圧倒的な強さを持っていたと、ボーゲル氏は指摘する。 ただ、以前、ボーゲル氏は習政権にまだ期待を持っているとも言っていたが、経済構造改革はそれなりにいいと思うが、一方で、いまは政治改革については悲観的で、数年前には、政治体制の改革が起こるとみていたが、今その可能性は極めて低いという。 私:今は成長率が年6%あるいはそれ以上で成長しているが、今後数年間での失速が見込まれていて、経済成長が鈍化すれば様々な問題が浮上し、習氏は難しい立場に置かれることになるという。 例えば地方債務の問題で、現在は政府資金を投入することで何とか取り繕っているが、今後このやり方を続けていくことは難しいという。 A氏:「ポスト習」候補については、ボーゲル氏は、習氏は知名度や人気度よりも、個人的な関係の深さを重視しているようで、自分に忠誠を誓う人材を登用したいと考えているような気がし、これまでの共産党の人事システムでは、まず地方で実績を重ねてから省レベル、そして中央政府に登用されてきましたが、習氏はかつて一緒に働いたことがある側近を登用する傾向があるようだという。 「お友達、仲良し政権」だね。 私:冷え切った対日関係に2期目の習体制が、好転させる可能性について、ボーゲル氏は、 2019年にかけては、李克強首相の訪日を皮切りに、安倍首相の訪中、そして習主席の訪日につながれば意義ある前進となり、重要な進歩があるという。 しかし、中国が『反日』というカード中国国民を一致団結させるのに非常に有効だからこれを捨てるとは思われないという。 だが、少しずつ変化の兆しがあり、民間レベルでの交流の積み重ねが、両国関係の好転に寄与するはずだと信じているという。 A氏:北朝鮮問題については、習指導部は、朝鮮半島政策について長期的な視点で考えているとみていて、軍事衝突を避けつつ、長期にわたり影響力を行使し、在韓米軍の撤退も含まれるという。 この状況下での日本の行動については、トランプ政権の不確実性を考えれば、米国による日本への関与を確かなものにするため、両国の防衛装備の相互運用を強化し、在日米軍を維持していくことが賢明なやり方で、あわせて中国のほかインドや東南アジア諸国との関係強化も進めていくことも必要だとボーゲル氏はいう。 私:ボーゲル氏の意見は、ある意味で、広くバランスのとれたものだが、今後、指摘された「習氏一強」体制の不安要因がどうなるか、気がかりだね。
2018.04.17
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