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2013.06.22
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カテゴリ: 歴史
「漢字がつくった東アジア」を読み進めています。

日韓お互いの歴史認識を正すためにも、歴史に対するこのようなセンスが求められるのでしょうね。

石川さんは、更に駄目押しのように説いています。

<大陸の視点が脱落した古代史観>p266~269
 計量比較言語学者の安本美典さんは『日本語の成立』という本のなかで、「音韻上、文法上の特徴を全体的にみたばあい、上古日本語にもっとも近いのはアイヌ語である」。また「アイヌ語についで上古日本語に近いのは、現代朝鮮語」であると言っています。
 先ほども触れましたが、自然人類学者の植原和郎さんは、『日本人の起源』のなかで、「渡来人、すなわち北東アジア民族の影響をほとんど受けなかったのが、北端のアイヌと南端の琉球人であり、したがってこれらの人びとは、現在でも縄文人的特質をよく残していると考えられます」という説を述べています。
 また、考古学者の坪井清足さんは、『縄文との対話』という本のなかで、「最近の考古学、人類学研究の成果からも、アイヌ語が縄文語の伝統を今日に伝えるいる可能性がある」と述べています。日本の地名にはアイヌ語に似ているものがあるといわれるのですが、現在までのところ、その由来については謎に包まれたままです。
 むろん、縄文時代には古代倭語があったと考えられています。現代のアイヌ語、あるいは近世・近代になって書きとめられたアイヌ語のもとになった言葉(前アイヌ語といってもいいし、古アイヌ語といってもいいと思いますが)は、古代倭の諸語のなかのひとつであったことは間違いありません。古代倭にはいろいろな言葉があっり、そのなかのひとつに書きとめられた古アイヌ語が当然含まれていたのです。なぜなら、アイヌ人はこの孤島に住んでいたからです。そういうことになると思います。

 縄文時代は単一言語であったはずがありません。この島に単一言語である「やまと言葉」がもともと存在したということはありえないのです。なぜかといえば、アイヌ語以前のアイヌ語も倭にあったし、琉球語以前の琉球語も倭にあったからです。
 これらのいわゆる縄文アイヌ説は、千島、カムチャッカ、樺太、あるいは大陸からの視点が脱落しているのではないかと思われます。縄文時代の孤島の中央部に弥生人や弥生文化が割り込んできて、縄文人が北のアイヌと南の琉球に分かれるという本州中心の図式のみで考えているのではないかと思われます・
 しかし、はたしてアイヌを北へ追われた縄文人、と考えるので十分なのかどうか。北から渡ってきたということはないのかは、もう少し丁寧に辿ることが必用だと思われます。おそらくアイヌの領域はもっと北まで広げて考える必要があります。縄文という枠組みだけで考えていくと、千島や樺太まで広げるのには無理があります。その意味でアイヌは「北方の人たち」という前提で考える必要があると思います。

 ところで縄文文化について、司馬遼太郎さんは、三内丸山で、この時代にこれだけの文明は世界でも類例を見ないというようなことをいっていますが、それは1万年程度のスケールで考えればそういうことになるのかもしれませんが、日本人はもともと素晴らしい力をもっていたのだ、大陸から入ってくる前に、ものすごく素晴らしい文明・文化が日本にはあったのだということをいいたいという心理が、縄文神話を異様に肥大化させ、そう言わせている要因になっています。それは朝鮮半島において檀君神話が神話の域を超えて史実とされていくのと同じようなものです。
 むしろそれよりも、それはもっと汎東北アジア的な視野で、孤島にも、朝鮮半島にも、大陸にもいろいろな文化がいっぱいあったけれども、そういう中から漢字ができ、それによって東アジアが文明化され、やがて新しいステージに入っていき、徐々に各地方に分節されていったと考える方が事実に即していると思います。

 日本人が縄文をいうと、朝鮮人が檀君神話をいうのとほとんど同じようなことになります。なぜかといえば、縄文時代にすでに孔子がいるからです。孔子がいて、孔子は基本的な東アジアの政治のあり様から、政治的支配のあり様に至るまで、もうすでに語っている。その時期に日本はまだ無文字縄文だったのですから、縄文時代はそんなに自慢できるような話ではやはりないのです。
 朝鮮が云々、日本が云々ということより、東北アジアがその時代にどんな状態であったかということに事実として冷静に明らかにすればいいのです。それが東北アジア全体の遺産です。したがって、殷の時代に東北アジアの大陸に漢字ができたけれども、それはなにも大陸の人が偉かったわけではなく、われわれの文字が大陸に生まれたと思えばいいということになあるのです。
 縄文思慕は本居宣長的、うるわしきやまとごころ幻想の一亜種であるといえます。


 なるほど、我々の文字が大陸に生まれたと思えばいいのか♪
 漢字文化圏のプリンシパルとでもいうべき、目からウロコが落ちるようなスケールが大きいご宣託ですね。
 司馬史観もやや影が薄くなったが・・・
漢字が、儒教とか司馬史観の礎となったと考えるなら、救われる気がするのです。


【漢字がつくった東アジア】
アジア

石川九楊著、筑摩書房、2007年刊

<「BOOK」データベースより>
始皇帝が文字を統一したとき、漢字が東アジアの歴史を照らし始め、漢字文明圏が決定づけられる。やがて大陸(中国)の変動に呼応する形で、平仮名(日本)、ハングル(朝鮮)、チューノム(越南)が生まれ、それぞれの文化の枠組みが形成されてゆく。その延長上に現代を位置づけなおすとき、二十一世紀が目指すべき方向が見えてくる…。鬼才の書家が巨視的な観点から歴史をとらえなおし、国民国家を所与とする世界観を超え、読者を精神の高みへと導く知的興奮に満ちた一冊。

<大使寸評>
漢字の生い立ち、漢字文化圏に関する本には、つい手が出てしまうのです。
日本が最初に中華圏から独立したとする切り口が、ええでぇ♪

Amazon 漢字がつくった東アジア


中韓とは歴史認識、領土問題でメンツをかけてにらみ合っているが、“我々の文字”という視点を維持することは、かなり能天気のような気がしないでもない。


漢字がつくった東アジア1
漢字がつくった東アジア2







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Last updated  2013.06.22 18:53:28
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