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2013.08.03
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カテゴリ: 経済
 エール大学教授・陳志武さんがインタビューで「むだな開発続ける借り手の地方政府、政治改革が必要」と説いているので、紹介します。


s-影.jpg

中国の景気が減速している。不透明な融資を膨らませてきた「シャドーバンキング(影の銀行)」が不良債権を積み上げるのではないか、と不安視されている。世界の成長エンジンだった中国経済は軟着陸できるか。米国から母国の発展を見つめてきた陳志武・エール大学教授は、政治体制と外交がもたらす失速リスクも心配している。
(8/02デジタル朝日から 中国と影の銀行 を転記したけど・・・・・・無料で見せるのが木鐸というものでは?)


Q:「影の銀行」に代表される中国の不透明な金融システムへの懸念が高まっています。

A:私の考えはちょっと違います。『影の銀行』を支持しています。

Q:なぜですか。

A:中国で『表』の銀行、すなわち通常の銀行業務は、金利も融資先も政府にがんじがらめに縛られています。大手の国有企業や政府が育てようと考えている産業、地元政府にコネを持つ企業でなければ、銀行はお金を貸してくれません。『影』は、中小やコネがない企業、政府が重要だと思いつかないような産業にお金を回せる仕組みなのです。
 中国政府は投資を活発にして成長を促そうと、経済の実勢より貸出金利を低く抑えて、企業や地方政府がお金を借りやすいようにしてきました。物価の上昇が預金の金利を上回るような状況下で、人々は利回りの高い金融商品を求める。自然な流れとして、『影』の資金源である理財商品が広まりました。

 『影』は、社会のニーズに沿った金融サービスや商品を提供する仕組みでもあるんです。金融不安の責任を押しつけてつぶしたら社会的には損害の方が大きい。むしろ金融業への政府の規制は緩めるべきです。

Q:では、何が問題なのですか。

A:真の問題は借り手にあります。地方政府が資金調達のために設立した会社が、『影』を利用してお金を引き出し、むだな開発を続けていることです。地方に財源が足りないうえ、成長が評価の基準だし自らの懐も潤うので、造成した工業団地に無理をして企業を誘致している。たとえば世界的に生産過剰な太陽光パネルの会社も、中国では倒産同然なのに、地元政府がお金を借りて支援したり、銀行に命令してお金を出させたりして延命しているのです。

 地方政府にいくら借金があってどう使われたか、本当のところ誰も分からない。最大の問題は、地方政府を監督し規制する政治の仕組みが事実上ないことです。これは金融を超えて、統治システムの問題です。

Q:景気が減速するなかで、中国各地に「鬼城・死城(ゴーストタウン)」と呼ばれるひとけのない工業団地や住宅街が出現しています。

A:採算がとれない事業が相次いで地方政府が銀行に返済できなくなれば、中国の金融システムを大きく揺るがしかねない。こうした借金は2008年の米金融危機後の景気対策をきっかけに増えたものです。担当者は変わっていないし、へたをすると偉くなっているから、手がつけられない。中国で金融危機が起きる可能性は次第に大きくなっています。

 中央政府の経済官僚たちも非常に心配しています。でも、彼らも自らの限界をよく分かっている。

   ■     ■
Q:限界?

A:金融危機が発生するリスクを下げるのは、経済財政政策だけでは難しい。政府が権力を野放図に行使できないようにコントロールする政治改革が欠かせません。逆に言えば、これを抜きに30年間、経済官僚たちはよくやってきたと思いますよ。政治が経済に関与する場が大きすぎること、その権力をコントロールする仕組みがないことが問題なのです。
Q:危機のシグナルはどこで点滅するのですか。

A:三つあります。まず財政です。外国の専門家はかれこれ20年近く中国の金融危機の可能性を指摘してきました。でも、起きていないのは、銀行の不良債権を中央政府や地方政府がお金をだして処理してきたからです。財政の危機が起きれば、金融システムの危機は抑えられない。

Q:中国は日本に比べれば財政に余裕はありますが、高齢化とともに社会保障の支出もさらに増えます。

A:しかも、土地の使用権を売って得た収入を財源にしている地方政府は多いのです。歳入の7~8割が土地収入という都市もある。従って二つ目のポイントは不動産価格です。 土地の価格が下がったら、地方政府の財政に大きな打撃を与えます。公共サービスもできなくなるし、銀行にお金も返せなくなる。

Q:温家宝・前首相は常々、住宅価格を合理的な水準に戻す、と強調していました。

A:私は信じていませんでしたよ。そんなことは地方政府が許さないし、中央政府の財政にも影響が出てくる。しかし土地は無限にないし、価格も永遠には上がらない。

   ■     ■
Q:三つ目は。

A:外交関係です。

Q:尖閣諸島をめぐって、日本とも深刻な対立が続いています。

A:日本だけでなく、フィリピン、ベトナム、インドと緊張関係にあります。中国が武力で問題を解決しようとしたら、中国経済には非常に大きな打撃です。貿易を通じた経済活動で成り立っている国家にとって、平和的な国際環境は死活的に重要です。5年先、10年先、中国が外交環境をうまく整えられなければ、経済危機の導火線になると思います。

Q:しかし、中国にとって日本との貿易の比重は次第に下がっています。中国政府は、相手を軽く見始めているのではないですか。

A:比重の大小ではありません。外国と、たとえば日本と武力で衝突することは、根本的にゲームのルールを変えてしまう。外国が中国を見る目は明らかに変わります。どちらが先にしかけたとか、どちらが良い悪いじゃない。それぞれ言い分がある、と国際社会は考えるはずです。その意味で、日本も同じです。平和憲法を変えたり中国と衝突したりすれば、アジアの国々にとっては、第2次大戦以降に接してきた日本とは違う日本になるのです。

 島の問題は絶対多数の中国人の生活にはなんの関係もありません。日本人もそうでしょう。政治家は野心を持って領土問題を語り、民族感情をあおる。双方ともそのうち自分であおった国民感情を制御できなくなる。非常に危険です。心配です。

Q:首相の名をもじった新政権の経済政策「李克強経済学(リーコノミクス)」をどう評価しますか。景気の減速をある程度は受け入れながら改革を進めると言っています。

A:中国政府には成長率が6%でも7%でもかまわないという高官もいます。ただ、景気の減速にあわせて社会の期待や構造もかわっていくことを含めて、覚悟できているかどうか。人々が収入や企業の利潤、不動産の価格がこれまでほど上がらないのではないか、と思い始めたら、中国政府が人々から受ける政治的な圧力は大きくなると思います。高成長すると思うからこそ許容できた政治の前提がかわるわけですからね。

Q:李首相に助言するなら?

A:景気対策は政府がお金の使い道を決める公共事業より、減税で民間に任せたほうがいい。また、国有企業は共産党の人事を含めた政治基盤になっているから民営化はできないにしても、もうけている国有企業の資産を拠出しあって基金をつくり、その株式を売り出して人々に利益を実感できるようにする。そして農民に土地の売買を認めて、不動産価格の上昇の恩恵を還元することです。

   ■     ■
Q:土地の公有も共産主義の基礎ではないのですか。

A:地方政府が農民から買い上げた土地を、自分の息子、親戚や知人に安く譲ってもうけさせていることはみんな承知ですよ。いまさら何を。

 李首相も、景気や政治的な環境を見ながら一番いいタイミングを選んで改革したいと思うでしょうが、そんなことを言っていたらいつまでもできません。ただ、これは中国も日本も同じ。人間の本性でしょう。とりわけ中国の政治改革は、この体制から恩恵を受けている人が多いうちは難しい。危機が起きてから、いや棺おけに足をつっこみかけてから、やっと犠牲を払おうと動き出すものかもしれません。

陳志武:62年生まれ。湖南省の農村出身。地元の大学でシステム工学を学んだ後、86年に留学して以来、米国に滞在。米エール大博士(金融)。

<取材を終えて>
夏休みに中国の大学で講義するために帰国した陳さんに、北京で会った。文化大革命が終わり大学に進んだ1980年代、故郷で楽しんだ日本のドラマや映画を懐かしみ、当時の対日感情の良さを慈しむように語った。隣国との関係悪化をなぜ巨大なリスクと考えないのか――。率直な物言いはおそらく、日本にも向けられている。
(編集委員:吉岡桂子)


陳志武さんが次のように説いているが・・・卓見というべきでしょうね。
・「影」は社会的ニーズに沿った金融サービスや商品を提供する仕組みでもあるんです。金融不安の責任を押し付けてつぶしたら社会的に損害の方が大きい。
・今年後半から来年は重要。中国政府が本当に社会を変える気があるか見えてくる。
・危機のシグナルは三つある。すなわち、財政、不動産価格、外交関係である。


今年後半にも領土問題で硬直した方針を取り続けるなら、中国の経済危機はより大きくなりそうですね・・・・日本としては耐え続けて、中国の自滅を待つのが良策なのかも。

なお、 中国経済は凋落するのか によれば、(残念ながら)中国経済は多くの弱点を抱えつつも崩壊はしないのだそうです。





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Last updated  2013.08.03 00:48:05
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