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2013.10.04
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カテゴリ: 経済
コンビニやスーパーでは、期限切れの食料品を惜しげもなく捨てているが…「もったいない」のである。
この矛盾に体当たりでかかわってきたイギリス人ジャーナリストがいるんですね。
日本では馴染みのない言葉だが、フリーガニズムという運動があるんだって。
しばしばマスコミを賑わすフーリガンではなくて、こちらは環境保護論者たちのいたって平和な抗議行動の一環として、ゴミとして捨てられた食物を回収して食べる運動だそうである。
けっこう根性があり、ある意味、過激とさえ思われる運動ではある。

フリーガニズムを実践したきたスチュアート氏の「世界の食糧ムダ捨て事情」という本を図書館で借りたので紹介します。

<希望の島―日本、台湾、韓国> よりp278~284
「モッタイナイ?」わたしはジンゴの義理の娘に訊ねた。「それは何ですか?」家族は互いに見合わせて、深いため息をついた。それから各自が日本文化におけるこの概念について、諸説を述べ始めた。
“もったいない”は翻訳不能で、浪費と乱費の戒め、質素と倹約の勧めを意味し、靴下の繕いから茶碗に残った米の最後の一粒を食べることまで、さまざまな場面に使われる。「学校で、わたしたちは」ユリコが言う。「食事を食べ残すのは、お百姓さんに対して罰当りなことで、そんなことをすると、“もったいないお化け”が捕まえに来ると、教えられるんです」
 わたしはユリコの家族に、日本に来たのは“もったいない”を調査するためだと打ち明け、どんな話でも聞けるとうれしいと言った。すると、ジンゴは即座に日本の暮らしについて、自分の子供時代からどんなにそれが変わってきたかを長々と話し始めた。
 戦後、日本は茶碗一杯のご飯と海藻がせいぜいという極度の食糧難を経験して、食べ物を故意に無駄にすることはけっしてなかった。ジンゴによると、状況が変わったのは、1964年の東京オリンピック以降で、1980年代には日本経済はバブル期に入っていた。にわかに羽振りがよくなった日本人は、その富を享受し誇示する対象として、とりわけグルメ食品を選んだ。多くの人はこの高度成長を日本文化のルネッサンスと見たが、それはまた、日本人に今までの伝統に反する行動様式をもたらした。「今日び」ジンゴはいら立った様子で手を振った。「子供たちは何でも持っていて、無駄使いしてばかりだ」
(中略)

 しかし、カワサキ家の味が日本文化を代表しているなら、同国の1億2700万人強の都市化した人口がどのようにして新鮮さ、量、バラエティにおいてこんなすばらしい水準を産業規模で維持し得るのか。山と海のどちらからも近く、先祖から受け継いだ食物栽培の経験によって異なる世代が結びついているカワサキ家では、自然に無駄が防がれる。しかし、裕福な都市で、こんな珍味が新鮮さを失われることも無駄にされることもなく、大量に入手できるなどということがあるのだろうか。
 答えはノーだ。日本人の高級食品、とびきり新鮮な食品への偏愛は、途方もない水準の廃棄物を招くことになる。

 2005年の調査では、毎年日本が出す食品廃棄物は、金額にしておよそ11兆円で、国民ひとり当り8万7300円分を捨てていることになる。量的に見ると、国民ひとり当り年間151キログラムとなり、イギリスの平均である223キログラムよりずっと少ないが、違いは実際の廃棄物の量の違いだけでなく、データの計算方法も大きく関係する。
 毎年、日本は1900万トンの食品関係の廃棄物(政府はそのうち食べられるものはあ600万トンとしている)を出している。このうち、1130万トンが食品産業から出る廃棄物、残りが家庭ゴミで、これらの数字に農業および漁業の廃棄物は含まれていない。日本はどうやら、農業および漁業が生み出すのと同じだけの食物を無駄にしているらしい。農林水産省によると、これは日本で消費される全食糧の四分の一に当るという。けれども、もし日本のゴミ箱に捨てられた食品を無駄にせずにすませれば、1億6千万人に食物を与えることができる。
(中略)
 日本の食糧供給は平均ひとり1日当り2548キロカロリーで、世界平均の2808キロカロリーより少なく、彼らの平均に満たない身長を考慮しても、アメリカの3900キロカロリーをはるかに下回る。
 ところが、日本人はお腹を空っぽに保ってはいてもゴミ袋は満杯にしている。皮肉にも、彼らのグルメ志向が大量の廃棄物を出すことにつながっているのだ。日本の人口密集都市は他の先進国並の贅沢には欠けるかもしれないが、こうした困難の代わりに、日本人は比類なきまでに美食の楽しみを極めてきた。高品質の食を示すものは、人々の家庭にも都会の通りにも、日本中どこにでも見られる。東京は世界のどの都市より多いミシュランの星獲得レストランがある。それを証明するかのように、日本人は収入を食べ物につぎ込むことについての特別の言葉を生み出した。“食い倒れ”がそれだ。

 日本人が何でも生で食べるのを好む習慣が物流管理上多くの問題をもたらし、廃棄物を生むことになる。スシ、刺身、タタキ、生卵など、日本人が生活様式の中心と見なす自慢料理の数々はすべて、海や農場から消費者に最短の時間で届けることのできる超スピード食品供給チェーンがあってこそ可能だ。日本の暮らしはこの緊急性で回っている。


p287~288
 廃棄物の出所で、他を圧倒しているのは、伝統的日本の美食習慣を蝕んできている部門だ。日本文化にすっかり定着したコンビニエンスストアは、数知れない調理済み“弁当”をびっくりするほどの量捨てている。日本の調理済み食品は概して、欧米のしょっぱくてまずい電子レンジ食品よりはるかに味がよい。問題は2,3日しか持たない場合が多いことだ。好き嫌いにかかわらず、ヨーロッパの電子レンジ食品は、製造の段階で殺菌・保存料漬けにされ真空パックされているので、事実上何年も持つわけで、表示にある2週間の貯蔵寿命などお笑いぐさだ。おぞましいことに思えるかもしれないが、この方法なら廃棄率を減らすことはできる。実際、日本国内で生み出される1900万トンの食品廃棄物のうち、600万トンをコンビニとスーパーが出しているのである。


p295~299
 アグリガイアやアルフォといった資本集中型のスーパー工場を見学後、わたしは相模原市にある小田急フードエコロジーセンターを訪れて、うれしくなった。東京から1時間半ほどのところにある工場を監督するのは、高橋功一という活力にあふれた人物で、ここでは健全な考え方がすべてを支配していた。どこを見ても、経済的利益と環境保護的利益が理想的に調和していた。

(以降は、 フリーページ 参照)


 面子を重視するのが、中韓の食事作法であるが・・・スチュアート氏はそれに抵抗があるようです。(というか嫌っているようです)その点、ウイグル人や日本人のような辺境の民のほうが食物に対する態度が謙虚ですね(それだけ、貧しかったせいもあるが)

<食物は食べるためにある> よりp226~227
 中央アジアのイスラム教徒として、ウイグル人は、自分たちの国を治めている中国漢民族とは根本的に違うと思っており、地区によっては、植民地支配者と見なす彼らに対し、深く根ざす敵意が見られる。文化の衝突は食物に対する態度にとくに顕著だ。中国流のもてなしは、食卓に客が食べ切れないほどの食べ物を並べることで成り立っている。中国のレストランでえは、食事のあと、テーブルにほとんど手を付けられていない皿が山積みになる。中国料理店の客の81%(と言われる)が料理を残す。ウイグル人は、それとは対照的に、食物を無駄にするのは、ハラム(宗教上のタブー)と考える。動物を屠るときは、どの部分も利用される。新疆の朝市をぶらつくと、内臓専門の肉屋がトレーラー一杯の牛や山羊や羊の心臓、肺、腎臓、足、頭を売っているのを見ることができる。わたしが訪ねたカシュガルから30キロメートルほどの家畜市では、屋台丸々ひとつが茹でた牛のひづめに充てられていて、お腹を空かせた農民や町の人々が列を作っていた。動物のすべての部分を利用する知恵はウイグルの文化的遺産なのだ。
 この倹約精神は屠場から台所まで行き渡っている。誰もが自分が食べられる以上の料理を取ることがないよう、どのレストランもメインディッシュを三つのサイズ―フルサイズ、ハーフサイズ、四分の一サイズ―に分けているので、誰もうっかり必要以上を注文することはあり得ない。もしも家庭で余りが出たら、近所におすそ分けするか、通りの貧しい人たちの元に持っていく。皿の料理を残すのは、主人を、料理人を、農民を、そして、アラーを侮辱する行為なのだ。

 この対照的なグループ(漢民族とウイグル人)で食物の無駄に対する態度がこれほどまでに違う理由は知られていない。おそらく、中国宮廷の贅沢さと階級制度が、もてなしの概念の中心として、これ見よがしの消費を奨励する結果になったのかもしれない。一方、ウイグル人が、コーランの戒め「度を越してはならない。なぜなら、アラーは食物を無駄にする者を愛されないからだ」の影響をある程度受けているのは間違いない。これらの文化的態度は、自然環境が決定してきたとも言えるだろう。チュルク語系の人々は長く不毛地帯に居住してきて、土地が生み出す作物を一口たりとも無駄にしないことを学んだ。これに対し、比較的裕福な中国人は、アジア東部の肥沃な河川の流域に住んでおり、チュルク語系民族のような食糧不足はない。または、逆に、近年の悲惨な飢饉の歴史が倹約に対する文化的反動を煽っているのかもしれない。この際立った違いの決定的原因が何であれ、はっきりしているのは、社会が無駄にする食物の量は文化的態度によって決まるということだ。




食料

トリストラム・スチュアート著、NHK出版、2010年刊

<「BOOK」データベース>より
食べ物を買っておきながら、結局食べきれずに捨てる。誰しも経験のあるこの行為、じつは途上国の飢餓と結びついている。でも具体的にどうつながっているのか?それを解き明かすのが本書のテーマだ。スーパーのゴミ箱のなかから拾い集めた食材だけで数年間生活し、食料大量廃棄を目の当たりにしたジャーナリストがついに発奮。消費者、生産者、小売業者、そして国家が無理なく実現できるムダ捨て削減策は何かを探っていく。

<大使寸評>
著者はロンドン生まれのジャーナリストで、現在、イギリスで豚、鶏、ミツバチを飼育しているそうです。
「もったいない」という考え方をノーベル賞を受賞したマータイさんが評価したが・・・ついにイギリス人にまで広まったのか♪と、感慨を覚えるのです。

だが、著者の次のような切り口は、なかなか日本人ジャーナリストからは聞かれないのです。
「日本人の高級食品、とびきり新鮮な食品への偏愛は、途方もない水準の廃棄物を招くことになる」

rakuten 世界の食糧ムダ捨て事情








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Last updated  2013.10.05 14:17:22
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