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2013.10.07
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カテゴリ: 経済
図書館で「資本主義以後の世界」という本を借りたが、中谷巌さんの論説を読んで、感情的な反中、反米を正そうではないかと思ったわけです。

(その2)では、主に日本の「失われた20年」とは何だったのかということで、読み進めます。

<「主権国家体制」と「朝貢システム」> よりp37~40
 そもそも「主権国家」という概念が生まれたのは1648年に締結されたウェストファリア条約がきっかけである。それまでのヨーロッパではプロテスタント勢力とカトリック勢力が争っていて、それが最高潮に達したのがあの悲惨な30年戦争(1618~48年)であった。西ヨーロッパを舞台にして凄絶な殺し合いが行われ、当時のドイツの人口は3分の1に減ってしまったという。そこで、さすがのヨーロッパ人も「宗教や外交を戦争に持ち込むのはやめよう」という合意がまとまり、ここに初めて主権国家という考え方が生まれたのである。
 一般的には、これは立派なシステムだという認識があるようだが、私に言わせれば主権国家という概念はかなりインチキくさい。なぜなら、「大きな国も小さな国もそれぞれ主権を持っているから対等だ」という考え方は、たとえば戦争ないし経済競争の結果、一方の国が負けても「お互い、対等なんだからしようがないではないか」という言い訳に使われてきたからである。「対等」の思想には「用意、ドン」で競争を始めたら、負ける国が出ても、それは「自己責任」であって仕方がないという冷たさが秘められているのである。

 主権国家の思想に対比されるのが中国の朝貢システムだ。
 (以下、文字数制限により省略、全文は フリーページ 参照)



<本格化する「途上国の逆襲」> よりp91~92
 注目すべきは、第二次世界大戦が終わった時点で植民地支配の時代が終わったということである。植民地帝国主義の時代が終わったという点に関して言えば、日本が先の戦争で西洋列強からアジアの国々を解放したという事実が非常に重要だ。イギリスからビルマ、マレーシア、シンガポールを、オランダからインドネシアを、フランスからベトナムを、またアメリカからはフィリピンを・・・といったぐあいに、東南アジアの諸国を日本はいったん開放している。旧宗主国の多くはいったん開放された植民地を、戦争終結を機に再び元に戻そうと試みたが、さすがに当時の国際世論を考えるとそれを実現することは難しかった。また、世界の覇権国にのし上がったアメリカが基本的に植民地主義的なスタンスを取らなかったという点も重要である。いずれにしても、アジアの国々が植民地支配から脱却し、独立に向かって歩み始めた意義は非常に大きかった。
 なぜなら、それまでに西洋が非西洋をフロンティアとして開拓しながら発展してきた資本主義世界の様相が大きく変質するからである。1945年以降、民族自決の原則に従って、途上国が次々と独立していったために、欧米はそれまで維持していたさまざまな権益を手放さざるをえなくなった。その意味で、西洋主導の資本主義において「1945年」という年は非常に大きなターニング・ポイントとなった年なのである。

 別の言い方をすると、西洋諸国がそれまでの資本主義発展に不可欠であった原材料の支配権を途上国の独立、民族自決の動きの中で失うきっかけになったのが1945年だということである。石油、石炭、鉄鉱石、綿花、コーヒー…なんであれ、原材料を安い値段で仕入れ、それを使って製品化した商品を世界中に高い値段で売りさばく。この輸出価格と輸入価格の巨大な差こそ、西洋資本主義を潤す大きな利潤となったのである。その余剰が大きいかぎり資本主義的な再生産はどんどん進み、成長も加速されるというのが、戦前までの基本的な構造だった。
 終戦を機に先進国による資源支配の構造は大きく転換していく。「途上国の逆襲」が始まったのである。



<決定的となった「交換条件」の悪化> よりp93~94
 西洋がもたらした植民地という頸木を脱し、独立を果たした途上国が急激に伸びてきたなかで、いちばん大きな「事件」となったのは、1960年に誕生したOPEC(石油輸出国機構)の成立であろう。
 1959年2月、中東をはじめとする石油の産出量や価格を支配していた国際石油資本(メジャー)が、産油国の了承なしに一方的に原油公示価格の引き下げを発表した。これに強い不満を抱いた産油国は、国際石油資本に対して価格改定の事前通告を要求するが受け入れられなかった。1960年8月に国際石油資本が再び価格の引き下げを行うと、石油産出国はそれに反発し、同年9月、イラクの呼びかけに応じて、中東を中心とした産油国が集まり、OPECを設立した。これは、それまで長らく欧米メジャーに支配蹂躙されていた産油国がメジャーの影響力を排除すべく立ち上がった歴史的事件であった。
 中東は石油の埋蔵量が多く、それを狙って最初に進出してきたのはフランスとイギリスであった。第一次世界大戦中、「カトリック教徒の住民保護」という名目で、まずフランスがシリアを占領した。しかしアラブの太守としては、なんとかしてシリアの独立を目指したい。そこで、イギリスに独立を援助してくれるように頼み込んだとき、カイロ駐在高等弁務官ヘンリー・マクマホンである。彼は「アラブ側がイギリスの対戦国であるドイツやトルコへの攻撃に協力してくれるなら、戦後シリアの独立を認めよう」と約束した。太守は王子の一人を独立後のシリア国王にする予定で参戦したが、さて、戦争が終わるとイギリスは約束を守らない。マクマホンが誓約を結んだのはイスラム教徒を戦争に参加させるためだったのだ。
(中略)
 このような経緯を経て、中東の石油はエクソン・モービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、ブリティッシュ・ペトロリアムなどの欧米の8大メジャー(国際石油資本)によって支配されてきた。これらはオランダやイギリス、アメリカなど旧宗主国国籍の会社ばかりであり、彼らはタダ同然の値段で中東の石油を産出しては、自分たちの都合のいい分量を都合のいい価格で手に入れ、それを売りさばいたり、それを原料にして工業製品化したりしてきた。ここでも「西洋による非西洋諸国の収奪」という新大陸発見以来の構造は生きていたことになる。
 そうした体制が資本主義の推進力になってきたのであったが、中東諸国にすればそんなことはもう耐えられない。そこで彼らは1960年にOPECを結成したのである。まさに途上国の逆襲であった。



<日本がこの「失われた20年」で本当に失ったもの> よりp124~126
 バブル崩壊から今日までの20年を日本人は自嘲的に「失われた20年」と呼ぶ。改革論者に言わせれば、日本政府が十分な構造改革を迅速に実行しなかったためにこのような長い時間を無駄にしたのだという。もっと完全に構造改革をやり、日本における取引がことごとく市場原理に基づくものに変わっていたなら「失われた20年」は回避できたというのである。
 現在の私はその意見にはとうてい賛成できない。逆に、日本経済の強みが損なわれるような、日本社会に根づいていた「相互信頼をベースにした長期経済的取引関係」が突き崩され、それが日本社会の分断、企業組織の分断、求心力の低下を引き起こした。その結果、日本経済の競争力が大きく低下させられてしまった。そう考えるからである。
 実際、日本がいちばん競争力という点で強かったのは、本格的な構造改革が始まる前の1980年前後だった。あらゆる経済的規制を撤廃し、市場原理に任せさえすれば日本経済は活性化するという、ありえない絵空事を主張し続けることはもうやめにしてほしいと思う。むしろ重要なのは、日本をどのような国にしたいのか、そのために市場をどのように活用すべきか、といった観点から、「国が市場をうまく使いこなす」という発想を持つことである。

 できるだけ「小さな政府」にして、国が市場に口出しできないようにすべきであるという「小さな政府論」はアメリカのレトリックであり、実際のところ、アメリカがそれを実行している気配は全くない。むしろ、アメリカという国は、国家戦略を明確に持ち、それを実行するための道具(ツール)として、「小さな政府」を打ち出しているに過ぎない。彼らにとっては、市場はあくまで目的を達成するための「仕掛け」なのであって、市場にすべてを任せれば経済が活性化して思うような結果が得られるというような発想をもともとないと考えるべきなのである。

 そもそもアメリカ政府による日本政府に対する構造改革要求の中味はなにかといえば、「長期的な信頼関係をベースにした取引関係はやめよ」ということにほかならない。アメリカが金融立国を決意した段階から、長期的な信頼関係をベースにした日本の経済社会体制から、短期市場での取引を主体にした経済社会体制への転換を画策する。これがアメリカの戦略だった。ソ連が崩壊したため、東西冷戦の橋頭堡としての日本に配慮する必要もなくなったアメリカは、日本の競争力の源泉として重要な役割を果たしていた「系列取引」も「株式の相互持合い」も、「メインバンク・システム」も「政府と産業界の緊密な関係」も、さらには日本の「完全雇用文化」も、みな切り崩してしまうべしと考えたのである。
 (以下、文字数制限により省略、全文は フリーページ 参照)




資本主義

中谷巌著、徳間書店、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
壊に向かう世界経済、500年に一度の大変動に我々は何をなすべきか?ユーロ危機、財政破綻、貧困の蔓延、原発事故…「西洋からアジアへ」。迫り来る大転換に向けて日本の進むべき道を示す。

<大使寸評>
アメリカを熟知している中谷さんの反グローバリズム、反TPPであるだけに説得力がありますね。
それから「三方よし」という経済規範を生んだ日本の特殊性を、騙し騙されの中華と対比して説いているが…これはもう、文明の衝突なんでしょう。

rakuten 資本主義以後の世界

『資本主義以後の世界』その1

以前読んだ中谷さんの本です。
「資本主義はなぜ自壊したのか」1
「資本主義はなぜ自壊したのか」2






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Last updated  2013.10.09 07:54:56
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