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2014.01.20
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カテゴリ: 気になる本
「フィールドワークへの挑戦」という本を図書館で借りたが、後で「BOOK」データベースを見ると、フィールドワーカーのセンスを体得できる最良の指南書と絶賛していました。

図書館でこの本を選んだのは、予想以上のクリーンヒットだったようです♪

【フィールドワークへの挑戦】
フィールド

菅原和孝著、世界思想社、2006年刊

<「BOOK」データベース>より
仕事・社会・コミュニケーション・宗教・異文化の5ジャンルを網羅し、40人の初々しいフィールドワークを一挙公開。技術的なノウハウから理論的な設問まで、実践的な助言を満載。フィールドワーカーのセンスを体得できる最良の指南書。

菅原和孝(スガワラカズヨシ)
1949年東京生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。同総合人間学部で人類学関係の全学共通科目を開講し、フィールドワークの授業をもっている。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。霊長類の社会行動研究から出発し、1982年より、南部アフリカのボツワナに住むグイ・ブッシュマンの社会で、身体的な関わり、会話、語り、動物認識などをテーマにフィールドワークを続けている。並行して、日本人の会話と身ぶり、民俗芸能の伝承などについて研究している。

<読む前の大使寸評>
記憶に残るフィールドワークといえば、「全国アホ・バカ分布考」であるが、著者はこれにかなり対抗意識燃やしているようです。

著者の薫陶宜しきを得て、未来の柳田国男、梅棹忠夫が生まれることを期待しております。(おっと 大きく吹いたかも)

amazon フィールドワークへの挑戦
全国アホ・バカ分布考 byドングリ


このところの大使の関心は中韓にあるわけで、この本で華僑問題の箇所を紹介します。

<「アイデンティティ」の不快>
 インタビュー記録のなかで異彩をはなっているのは、在日華僑でみずから華僑問題の研究もしているSA(男性)に叱責されたという事件である。

 全国各地に大陸系と台湾系の二つの華僑総会が分立している。後者の正式名称を「留日中華民国華僑総会」という。黒田がSAへの質問のなかでこの名称を口にすると、突然怒りだした。「日本では、台湾のことをチャイニーズ・タイペイって呼んでいるんですよ。台湾は国とみなしていないんですよ。知ってますか?」となじられた。「中華民国」の存在を認めない大陸系の人かと思ったが、あとでべつの華僑の人に聞くと、SAは台湾系であった。SAはつねづね「この市では、大陸系と台湾系が協力しあってきた歴史がある。<中華義荘>(華僑の共同墓地)だって区別していない。台湾が独立したら、お墓を二つに分けなければいけなくなって大変だ」と話しているそうだ。どうやら、彼は台湾が中国に併合される事態は避けたいが、かといってあからさまな「台湾独立」によって、国内の華僑が二分されることも怖れているようだ。つまり、台湾の実質的な独立性が曖昧に保たれている現状を望んでいる。だからこそ、中国を刺激し、台湾への進攻をまねきかねない「中華民国」という語には拒否反応を示すのだ。 

 右の逸話には、フィールドワークにとって重要な教訓が含まれている。現地の人に怒られるのはショッキングなことだが、彼や彼女の「表情をおびた身ぶり」を手がかりにして、その背後に広がる世界に分け入ることもできるのだ。この一点をとっても、黒田が誠実に調査を積み重ねたことは疑いえない。だが、彼がレポートの末尾で展開した「考察」は、ある意味で「力作」であるだけに、わたしに(ネガティブな意味での)衝撃をあたえた。まず黒田は、当初の「仮説」をあっさりと取り下げ、むしろ、在日華僑・華人の「アイデンティティの多様性」に注目すべきである、と主張する。


 いっぽうで「日本への同化」を迫る圧力に憤慨する人もいれば、AYのように「ほとんど日本人のアイデンティティといってよい」人もいる。人によってアイデンティティにさまざまなパターンがあることは確かだが、そこには一定の共通性がある。「母国」に対してまったく帰属感を感じずにいられる人はいないということだ。AYのように、ほとんど自分を日本人だと認識している人でさえも、「血は中国人(漢民族)だ」と感じるという。では、ある民族の血をひいているということは、何を意味するのだろう。たしかに人種の違いといったものは認めざるをえないが、民族と呼ばれるものには、目に見える違いのあるものもあれば、差がはっきりしないものもある。民族という実体的基盤があるにしてえも、完全に純血を保つことは不可能であろう。ナショナリズムが社会的構成物とされるように、民族にもそうした側面があるのは否めない。ナショナリズムは、帰属感を与えるという意味で、たしかに意味をもつ。しかし同時に、それは排他的な側面をもつ。グローバリゼーションのなかで、日本のナショナリズムの負の側面を直視し、なんらかの解決策を見出さなくてはならない。


 明らかな誤謬や論理の混乱には傍点を付した。文化人類学の重要なジャンルである「エスニシティ論」をもっと勉強していたら、黒田は満点に近い「答案」を書くこともできただろう。だが、「文化人類学用語」を連ねてつじつま合わせをする前に取り組まなければならない、もっとも大切なことがある。それは、自分自身の<感覚>に目を向け、その<感覚>について自分のことばで考え直すことである。黒田は、自分が「日本人としてのアイデンティティ」を考える機会の乏しいことを「恥ずかしく思った」。「なぜ恥ずかしいのか」こそが、彼が格闘すべき問いの中心になるはずだ。その問いを徹底的に突きつめることは、きっと彼を深い不安につき落とすだろう。人類学的な知とは、そのような不安と向きあうことから始まる。

 黒田の「知」が表層を上すべりしているのは、彼が最初からアイデンティティという空虚な概念に呪縛されているからだ。AYやSAへのインタビューからは、生活の便宜に合わせてみずからの帰属を選ぶという「御都合主義」が浮かび上がってくる。そのような生のかたちを「アイデンティティの多様性」と呼ぶのは不正確な概念化である。在日「外国人」や海外に住む「日本人」のコミュニティを研究する際に、アイデンティティという概念に寄りかかってしまうのは、固定的な帰属意識をもつのは人間として当然だという前提に、調査者自身が安らぎを感じていることの反映なのではなかろうか。

 最後にもっとも重くわだかまる違和感がある。黒田は、特高に拷問された「悲惨な体験」をもつ戦前生まれの華僑や、同化を強要するような帰化政策をとる日本の閉鎖性に憤慨する戦中派の華僑にもインタビューしている。にもかかわらず、そうした「悲惨」に対する鋭敏な想像力が、彼の考察からは読みとれない。「ナショナリズムには<帰属感を育む>良い面もあるが、<排他性>という悪い面もある」という八方美人的な結論は、排除される可能性を「わがこととして」想像したことのない人だけにいえることである。 


著者の菅原さんはフィールドワーカーとしての誠意について、斯様に述べているわけで、さすがと思うのです。
一方の漢民族であるが、辺境民族の心情について一顧だにしないのは、中華の中華たる由縁なんでしょうね(怒)

フィールドワークへの挑戦1 byドングリ





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Last updated  2014.01.20 00:30:14
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