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2014.03.30
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カテゴリ: 歴史
プラント関連のエンジニアとして職歴を終えた大使であるが、地元の製紙企業への就職も選択肢のひとつに数えたこともあったわけで・・・
和紙に関しては、ひとかたならないこだわりがあるのです。


和紙
久米康生著、岩波書店、2004年刊

<「BOOK」データベース>より
手すきによってつくられる日本の紙「和紙」は、その品質・風合いなどから世界的にも高い評価を受けている。東洋に伝わる手すき紙の伝統のなかで、とくに中国大陸や朝鮮半島との文化交流を通じて、和紙はどのように形づくられ、独自の発展を遂げるに至ったのか。海外の文献や現地での調査報告などをもとに、和紙の源流をさぐる。

<大使寸評>
プラント関連のエンジニアとして職歴を終えた大使であるが、地元の製紙企業への就職も選択肢のひとつに数えたこともあったわけで・・・
和紙に関しては、ひとかたならないこだわりがあるのです。
rakuten 和紙の源流




<はじめに> pv~viiより
 産業革命の激流のなかにあったヨーロッパ製紙業界では、この機械漉き化が急速に進み、手漉き紙は短期間に衰滅したが、東洋では2世紀を経ても、多くの国でなお命脈を保っている。なぜ東洋の手漉き紙の生命力が強いのだろうか。この和紙の源流である中国を中心に東洋各地の手漉き紙の歴史をたどり、地域と民族による造紙法の差異を比較調査することを思い立ったのは、東洋の手漉き紙の伝統とたくましいエネルギーを改めて認識したかったからである。

 中国で紙が開発されたのは、近年の古代遺跡からの出土紙が語るように紀元前の前漢期であり、ヨーロッパで紙をつくりはじめたのは12世紀である。そして15世紀中期に活字印刷術が開発され、その普及につれて印刷用紙の需要が巨大となり、製紙業は機械力を活用してより安く速く量産するための改良が進められた。

 Paperは古代エジプトで文字を書いたpapyrusに由来し、一般に「紙は書写材である」として論じられている。その書写には、中国・日本などで軟らかい毛筆を用い、西欧は金属ペンなどの硬い筆記具を用いるので、それに適する紙質は異なるが、西欧の紙を改良する目標は筆写よりもむしろ印刷に重点を置いていたように思える。したがって、抄紙機による量産のために木材パルプを原料とし、両面印刷できるように白土などの填料を紙料に混ぜ、塗被剤や樹脂を塗工する技術が進んでいるが、紙の耐久性を損なっている。東洋の手漉き紙は、樹皮の靭皮繊維を主原料とし、その耐久性を重視し、書写材として文化情報の伝達に重要な役割を果たすとともに、各種の生活用品の加工素材となった。書写材としてのはかに生活文化材としての広い用途があったのがひとつの特徴である。


生活物資としての和紙が絶頂期のころのお話です。

<町人社会の生活物資としての紙> p171~174より
 中世の紙の主要な消費者は公家・僧侶と武家であったが、近世には大多数の町人が消費層に加わり、17世紀後期から紙種が多くなるとともに生産量も増大して重要な生活物資となった。近世前期には全国の貨物の約70%が大坂に集まるといわれ、大坂は「天下の台所」として、その時期の経済動向を最もよく反映していた。

 小葉田淳著『日本経済史』のなかの「江戸時代の和紙の発展と藩経済」によると、正徳4年(1714)の大坂市場入荷商品119種のうち1商品で銀高1万貫以上のものは米・菜種・干鰯・白毛綿・鉄・紙で、紙は1万4446貫で第6位の商品であった。そして元文元年(1736)の統計では大坂に出荷される紙の銀高が6884貫に減っているが、米・木材に次ぐ第3位の商品になっている。

 一方、江戸には徳川政権の幕府が設けられて、着々と都市づくりが進められ、江戸初期の紙はほとんど大坂から回送されるものに頼っていたが、中期頃からは関東周辺の紙産地が成長し、とくに武蔵・駿河・甲斐などから直接江戸市場に出荷された。大産地の常陸・下野・磐城などは大坂にも出荷したが、主として江戸に送るものが多く、中部地方の大産地美濃・越前などでも、京都・大坂よりも江戸送りが多くなったといわれる。

 中世には杉原紙が最も多く流通し、ついで檀紙・引合紙・美濃紙・奉書紙など文書用紙が主体であったが、近世には大多数の町人の求める、量産できる安い半紙・半切紙・塵紙などが主流となった。紙を半分に切って節約して用いることは中世からふえているが、近世の町人層は半紙類を常備して帳簿をつけ文書をつくり、半切紙に手紙を書いた。障子紙は毎年張り替え、鼻汁拭きや化粧・衛生用として小半紙・延紙・塵紙などを毎日使うようになっている。
(中略)
 ところで、このように急増した町人層の需要にこたえる生産体制をささえたのは、諸藩の紙専売制であったといえる。近世の幕藩体制のもとでは藩ごとに自給経済の政策がとられ、米の増産とともに商品作物の振興をはかり、その商品作物の急速な発展が領国内商品流通の範囲を超えて、全国的な市場の形成をうながし、領主の財政を窮迫させた。そこで諸藩はその対策として藩営専売制をしき、米・塩・綿・蝋などとともに紙も専売制に組み入れ、特産地が形成されて増産が進んだのである。
 この専売制は商品経済の発展していた機内以西で盛んであったが、紙も西日本の20余藩で専売制になっている。そして周防・長門の宋支藩はこの紙専売制を請紙制といい、その地域の石高に応じて米の代わりに納める紙を割り当て、その割当量を請け負って必ず上納する義務を負わせる制度で、萩藩は寛永8年(1631)、岩国藩は寛永17年(1640)、徳山藩は明暦元年(1655)に請紙制を実施している。
 また隣接する石見の津和野藩は寛文5年(1665)、安芸の広島藩は宝永3年(1706)に紙専売制をしいており、西中国地方は江戸前期に日本最大の紙産地に成長した。
(中略)

 しかし、このきびしすぎる専売制に紙漉き農民は抵抗してしばしば紙一揆を暴発させ、青木虹二『百姓一揆の年次的研究』によると、江戸時代の紙一揆60件のうち29件は周防・長門で発生している。紙一揆は当然生産量を減少させるが、江戸末期には四国地方の伊予・土佐が紙市場で優位を占めるようになる。文政10年刊の『経済要録』には、「世に多く有用なるは半紙より要なるは無し。・・・今の世に当って伊予の大洲半紙、厚くして幅もゆたか也。故に大洲半紙の勢い天下に独歩す」と記している。伊予や土佐は農民の抵抗で紙専売制の中断、復活を繰り返したところで、農民に平紙の自由販売権も認めて生産意欲をかきたてている。




<町人社会の需要にこたえた半紙> p178~179より
 近世初期の町人たちは、杉原紙を半分に切って使っていたが、やがてその小さい判型の製品が市場に出回るようになった。生保2年(1645)刊の松江維舟『毛吹草』には周防産として山代半紙が記されている。周防の山代地方は萩藩領で、萩藩は最も早く寛永8年(1631)に紙の専売制をしいており、ついで岩国藩が寛永17年(1640)に専売制としているが、半紙は防長宋支藩の最重点製品であった。永宝7年(1677)刊の『難波すずめ』には、大坂の紙問屋の大半は周防・長門・石見・安芸など西中国地方の紙の特約問屋であることを記している。
(中略)
 これらの産地に、安永6年(1777)版の『新撰紙鑑』では、淡路・土佐・伊予・備中・豊前・豊後・肥前などが加わっている。約20ヶ国の半紙が上方市場に流通したわけであるが、武蔵には山半紙、駿河にはミツマタ製の駿河半紙があるなど、全国ほとんどの紙郷で漉かれていた。大坂市場では江戸末期に、半紙出荷量の多い周防・石見・安芸・土佐・伊予・阿波・肥前・豊後諸藩の蔵屋敷にちなんで「八蔵半紙」と呼んでいた。




<海外で高く評価された和紙> p210~211より
 紙史研究の国際的権威として定評のあるアメリカ合衆国のハンターは1933年に来航して岐阜・福井・高知・愛媛県などの主要紙郷を巡歴し、さらに韓国・中国を旅行したあと、1936年に『日本・韓国・中国への製紙行脚』を出版、和紙を世界最高級のすばらしい紙と絶賛した。
 「日本人はもともと非常にすぐれた手工業の技能をもっており、そしてコウゾ、ミツマタ、ガンピの樹皮を原料として用いているので、今日の手漉き和紙は、すべての製紙工業のなかで驚嘆に値するすばらしい工芸といっても誇張ではない」

 (文字数制限により、以降省略)



<明治末期から衰退の一途> p228~230より
 和紙は記録印刷用の書写材としてのほか生活用品の加工素材でもあるので、明治維新以後は生活物資の消費増大にともなって需要がふえ、小学校教科書用紙でもあったため生産額はふえつづけ、製紙家も多くなっていた。農商務統計によると、明治27年の製紙戸数は6万2685戸、明治34年は6万8562戸となっている。しかし、これを頂点として製紙戸数は減少し、明治40年は5万9300戸、大正10年は4万196戸となっている。

(文字数制限により、中略)

 昭和12年日中戦争が始まり、原材料は配給制となり、つくる紙は軍需用を強制された。そして日本手漉紙工業組合聯合会が調査した昭和16年の和紙業者は1万3577戸となっている。
 昭和20年太平洋戦争が終わるとともに、統制から解放されて活況がよみがえったが、大規模な製紙工場の機械設備が復旧するとともに和紙業界の好況は過ぎ去った。昭和30年から約10年間は近代産業の高度成長期といわれ、日本の洋紙生産高はアメリカ、カナダに次いで第3位となったが、手漉き和紙業界は逆に高度衰退を経験しなければならなかった。これには高知県の高岡丑研究所が開発した懸垂式短網抄紙機の影響も大きい。

 これは手漉きによく似た紙を機械漉きすることができ、高度な流し漉き技術を必用とした極薄の典具貼紙もつくれたので「典具革命」とも言われた。そしてそれまで手漉き和紙の主要な部分を占めた障子紙が機械漉きされるようになって、粗悪な粕障子紙をつくっていた辺地の副業製紙家を廃業させた。手漉きの温床紙は機械漉きからさらにビニール製に移って消滅し、戦後の高知・岐阜県の業者をうるおしていた謄写版原紙も機械漉きがふえ、やがて電子複写機が出現して命脈を断たれた。

 その高度衰退の状況を統計によってみると、昭和34年に1万戸を割って9077戸、昭和37年に3869戸となっている。これらは伝統工芸の急激な衰退を憂えた文化庁文化財保護部が独自に調査した数字である。絶頂期の5.6%に減退した現実に直面して、全国手漉和紙振興協議会が結成され、翌年松江で第一回大会を開いた時の和紙業者数は、さらに約1000戸減って2868戸となっていた。この協議会は昭和44年に全国手漉和紙連合会と改称されて現在に至っているが、その後の推移をたどると、昭和48年には884戸、昭和57年586戸、平成9年362戸、平成16年317戸となっている。衰退の一途をたどっているが、1997年の専業率は76.5%となっており、特に四国地域の専業率は93.3%である。量より質を重視してその仕事に打ち込まなければ生き残れなくなっている。


このところ和紙は伝統工芸品として見直されて、やや興隆の兆しが見られるが嬉しいですね。






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Last updated  2014.03.30 13:15:30
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