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2014.06.02
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カテゴリ: 経済
 香港大学教授がインタビューで「一党支配の裏側で土地と中央を頼り、地方が重ねる借金」と説いているので、紹介します。
 インタビュアーは私が個人的に注目している吉岡桂子記者です。このインタビューは期待できるかも。
許

(香港大学教授へのインタビューを2/26デジタル朝日から転記しました)



Q:米国の金融緩和が縮小され、新興国の経済が動揺しています
A:一時的でしょう。中国を含めて新興国は先進国に追いつこうとしている段階です。ものづくりや経営管理の手法をとりこんで、成長できる余地がある。むしろもっと大きな問題は、いまのうちに政治体制を変えられるかどうかです。新興国の多くがここで『罠(わな)』にはまります。

Q:安い賃金で経済を成長の軌道に乗せたあと、社会の変革が進まず失速する「中所得国の罠」ですね
A:中国はとりわけ複雑です。中国共産党が一党支配する中央集権体制にもかかわらず、インフラ整備から社会保障給付まで行政の実権はかなりの程度、地方政府にゆだねられています。 私は『分権式権威体制』と呼んでいますが、いまに始まったことではありません。皇帝がいた時代から、軍事と地方官吏の任命は朝廷の仕事でしたが、地方経済を動かしてきたのは地元の役人たちでした。

 改革・開放政策を進めたこの30年余りでいえば、国内総生産(GDP)成長率が地方の政治家の出世の判断基準でした。各地が競い合って外資を誘致し、不動産開発にいそしんだ。その財源を支えてきたのが、土地使用権の売却収入でした。中国の土地は基本的に国有ですが、実際に使用権を売るのは地方なのです。

Q:GDP至上主義はやめる、人々の生活や権利、環境に配慮した成長方式に転換すると、前政権のときから中央政府は口を開けば言っています。習近平政権のもと、3月に開かれる全国人民代表大会(全人代)でも、また宣言されるでしょう
A: 国家主席から地方の村長まで、理屈では分かっています。でも、できない。地方は成長の目標を捨てられない。彼らは同時に、中央から住民サービスの拡充を求められています。財政収入は減らせない。土地の使用権を売り、投資し、開発し、成長し続けるしかないのです。
 土地の乱暴な収用や公害など、成長の負の部分に憤る住民が増えると出世の基準がもう一つ加わりました。安定を揺るがす暴動やストの数です。だから、集団で抗議しようとしたら警察が時に暴力的な手段を使ってでも抑圧する。北京への陳情も妨げる。地方の政治家の人事を決めるのは、住民ではないからです。


Q:首相を務めた朱鎔基氏が1990年半ばに実施した税制改革で地方の税金の取り分について、7割以上から半分以下に減らしました
A:それまで中国では中央と地方が取り分を交渉して決めていました。しかも地方は自分の懐に入る税の徴収には熱心だけど、中央のための取り立ては嫌う。これでは、中央は景気のコントロールもやりにくい。だから朱氏は中央と地方の取り分を逆転させたのです。しかし、道路や空港の建設、社会保障や住民サービスなどの多くは、地方が担い、財政支出の8割以上を負っています。

しかも、地方政府が債券を発行してお金を調達することは、厳しく管理されています。地方独自の財源となる土地ビジネスに向かいました。高金利のノンバンクのようなものをつくり、土地を担保にお金を借りて開発を進め、成長率を稼いだのです。中国一の投資家でもある地方政府が米ウォール街なみに発明した金融の道具です。

    ■     ■
Q:「影の銀行」と呼ばれる正式な銀行を通さないお金の流れですね。資金源には、「理財商品」と呼ばれる高利回りの金融商品を買っている投資家が含まれます。償還できなくなった商品を、地方政府が肩代わりしているともみられています
A:その地方が肩代わりできなくなれば中央がでてくるだろうと、借り手も貸手もモラルハザードをおこしています。

Q:しかし土地の価格が上がり続けるとは思えません。公式発表されているだけでも地方の借金は約20兆元にのぼります。なんだか債務危機が起きた欧州に似ていませんか
A:どこが?。

Q:ユーロ圏は通貨は共通でも、財政は各国バラバラ。ギリシャはユーロの信用をよりどころに安いコストで国債を発行し、返せなくなりました。中国も通貨は一つですが、地方が中央の信用をもとにお金を集め、不動産バブルの様相です。中国全体の成長が減速すれば……
A:おもしろい比較ですが、良くも悪くも中国と欧州連合(EU)で決定的に異なるのは政治体制です。どこかの地方が危機に直面すれば、中国は中央がすぐに動く。EUの救世主役のドイツと異なり、民意を気にしなくていいからです。財政黒字に加えて4兆ドル近い外貨準備があり、国有資産もあります。すぐに大きな経済危機は起きないと思います。

 ただ、中国は悪循環に陥っています。財政刺激をやめるとすぐに成長率が下がる。北京、上海、広州、深センなど不動産の需要が続くとみられる大都市を除けば、土地と中央の信用に頼った財政が機能し続ける保証はありません。行き詰まったときのコストは、中国のほうがギリシャより大きい。欧州の有権者は危機をもたらした政治家を投票で代えられる。中国のリーダーたちは共産党が選んでおり、人々は投票という手段を持たない。深刻な衝突が起こりかねない。そんな事態を避けたい中央は必ず助けるとふんで、地方は放漫財政を続けてきたともいえます。

    ■     ■
Q:習氏は権力を中央、もっといえば自分に集めて改革を進めようとしていると伝えられます
A:中国は政治体制の変革にできるだけ手をつけず、多くの人たちを豊かにする経済成長によって、一党支配を維持してきました。共産党がモデルと考えたのがシンガポールです。しかし、私は二つの意味でシンガポールは参考にならないと考えます。なによりも国の規模が違いすぎる。中国の一つの市にも満たないサイズだからこそ、一握りの優秀な人たちが国家の隅々にまで目配りできた。中国のようなサイズの場合、住民が自らのニーズを政策に反映し、権力を監視できる仕組みがより重要になります。

 私はいまこそ真の地方自治が必要だと思います。中国がほかの社会主義国よりうまくいった理由の一つは、地方にいる何百万人もの役人が知恵を絞ったことにあります。中央で集約して計画を示す手法がうまくいかないのは歴史が示しています。

Q:もう一つの違いは
A:シンガポールには旧宗主国イギリスが残していった法治の伝統があります。 中国では司法が独立しておらず、共産党傘下にあります。これでは権力の暴走を牽制できません。
Q:しかし、そんな中国が経済規模で日本の2倍。2020年代にも米国に追いつきそうです
A:歴史を思い出してみてください。清の経済規模は19世紀前半まで圧倒的に世界一だったのですよ。しかし、優れた製品も統治もなかった。アヘン戦争がおき、列強が押し寄せた。 最大の問題は中国の内部にありました。腐敗だけではありません。憲政や民主など新しい制度を受け入れない体制でした。再び世界一になったとして、内部に同じ問題を抱えたままなら、どうなるでしょうか。規模がすべてではありません。

    ■     ■
Q:許さんの父親はアインシュタイン研究にとりくみ、民主派科学者として知られた許良英さん(昨年死去)ですね。天安門事件で捕らえられた若者を助けようと声明を出し、人権を守る活動にも熱心でした
A:父は1960年代から『右派分子』として農村に送られ、20年近く離ればなれでした。(天安門)事件の後は10年間、アパート7階にある自宅に軟禁され、その1階には公安が住んでいた。当時も民主や人権は経済成長を妨げるとして、権威主義的な国家を築くべきだとする主張があったが、父は反対していました。

 最近の中国経済をみていると、父親の主張は正しいと確信を持つようになりました。中国経済の最大のリスクは政治と、それが生み出す社会問題です。世界経済のリスクとされている地方の借金を含めて、中国の経済問題の多くは、土地や金融など国が支配する領域が多すぎることに起因しています。民間の力をどれだけとりいれられるか。権力を牽制する司法の独立性を広げられるか。成長率の低下とともに問題の解決はますます難しくなります。3月の全人代で、こうした課題にどんな方向性が示されるか、注目しています。
    *
 許成鋼:50年生まれ。清華大学大学院(機械)を経て米国留学。ハーバード大学経済学博士。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス終身教授。

<取材を終えて>
天安門事件のとき、許さんはハーバード大にいた。恩師でハンガリーの著名な学者コルナイ・ヤーノシュさんは、血気はやる青年に言った。「政治活動か学問か。どちらかだ」。「問題のありか」を示す学者を選び、母校清華大でも教えている。鋭い批判は、生涯「民主と人権」を説いた父と同様、「愛国」の表現だと感じた。(編集委員・吉岡桂子)


ちなみに、 吉岡記者の中国論が、ええでぇ♪
波聞風問一覧 に吉岡記者の中国論が載っています。

この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップ に収めておきます。





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Last updated  2014.06.04 01:13:04
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