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2014.10.22
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カテゴリ: 歴史
<ナショナリズム入門>
図書館で『ナショナリズム入門』という新書を借りて読んでいるのだが・・・
このところの大使の関心はナショナリズム、歴史認識、嫌中感になるわけです。

中華民族のナショナリズムに着目して、この本を読んでみます。


ナショナリズム

植村和秀著、講談社、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
クリミア・尖閣・竹島…衝突は、なぜ起こるのか?21世紀最大の難問。
【目次】
はじめに ナショナリズムを見た日/第1章 ネイションの作り方/第2章 ネイションの自明性ー日本の形/第3章 ネイションの多義性ードイツの変形/第4章 人間集団単位のネイション形成(一)-ドイツと東欧/第5章 人間集団単位のネイション形成(二)-ユーゴスラヴィアの滅亡/第6章 地域単位のネイション形成(一)-アメリカ大陸の状況/第7章 地域単位のネイション形成(二)-ヨーロッパの西と南/第8章 ネイション形成のせめぎ合いー重複と複雑化/第9章 ナショナリズムのせめぎ合いー東アジアの未来/第10章 政治的仕組みとネイション

<読む前の大使寸評>
評者が吉岡桂子記者ということで、とりあげた新書なんですが・・・・
吉岡記者が選んだ本なら、「外れ」はないでしょう。
とにかく、この本に戦争を防ぐ知恵を期待したいのです。

<図書館予約:(9/11予約、10/15受取)、予約#:>

rakuten ナショナリズム入門
ナショナリズム入門 by吉岡桂子


この本を読む上で大使の観点は、日中対立ただ一点になるので・・・
「漢人のこだわり」メカニズムにふれた箇所を読んでみました。

<中華民族というこだわり> よりp233~235
 東アジアにおける世界強国は、現在は中国です。それでは中国というネイションへの肯定的なこだわりは、どのような特徴を持っているのでしょうか。

 費孝通は、20世紀の中国を代表する社会学者です。その費は、1988年に香港中文大学で行った講演において、「中華民族の多元一体構造」という見解を提示しました。費はこの「中華民族」という言葉を、「現在の中国の国境内にあって、民族としてのアイデンティティーを持つ11億の人民を指すものとして使いたい」と提案し、「中華民族が内包する50余の各民族単位は多元的であるが、中華民族としては一体的なものである」と主張しました。

 そしてこの言葉は、中国共産党の最高指導者の口からも語られます。習近平総書記は、2012年11月北京で、「中華民族の偉大なる復興」を中国の夢として語りました。

 ここで重要であるのは、この中華民族という言葉が英語では通常、Chinese Nationと訳されることです。中国ネイションの多元一体構造や中国ネイションの偉大なる復興と日本語で読み替える場合と、中国語の中華民族をそのまま中華民族と日本語読みする場合とでは、日本語読者の印象は変わってくるのではないでしょうか。

 ちなみに費は、中華民族、すなわち中国ネイションについて、その持つ土地を説明し、ネイションへと形成されていった歴史を概説しています。そしてその際に、漢族という人間集団が、「凝集する一つの核心」として多元一体構造を成り立たせていることを強調します。費が強調するのは、「2000余年の時間を経て、漢族は四方に拡大し、多くの他民族を融合吸収し」、1982年時点で「中華民族の総人口の93.3%」を占めている、ということです。

 費はまた、「漢人は大量に少数民族の居住地域に侵入し、点と線によるネットワークを形成している。それは東部で密、西部で疎となっているが、このネットワークこそ、多元一体構造の骨格をなしている」とも指摘します。つまり漢族あるいは漢人という人間集団が、人口的にもネットワーク的にも中華民族の本体を形成しており、その生活空間が中華人民共和国の支配地域と一致している、とするのです。
(中略)
 費は提案の締めくくりに、「中華民族は百花が咲き競う一つの大円圃となろう」という夢を語っています。その夢から判断すれば、費のこだわりは、力強さや一体性よりも豊かさや多様性の方向にあったのかもしれません。では、はたして習総書記の夢は、どのようなものなのでしょうか。


ムスリム系少数民族や漢字文化圏と絡めて「漢人のこだわり」が述べられています。

<統一へのこだわり> よりp238~240
 いずれにせよ、民族という中国語をそのまま日本語で理解すべきではないでしょう。しかしもしかしたら、日本語の民族という語感が、中国を漢民族化させる傾向を促進しているかもしれません。中国のナショナリストが日本と競争し、対決するに際して、日本国家の強さは一つの参考事例でした。そして、日本国家の強さが日本ネイションの自明性の強さと連動していることも、的確に把握されいいたのです。

 とはいえ、日本の事例と中国の事例とでは、やはりあまりにも状況が異なっています。中国の事例はむしろロシアの事例と比較した方が、理解しやすいように思います。そしてロシア帝国が、ロシア・ネイションの形成に大きな役割を果たしたように、中国の場合にも、清帝国が実は大きな役割を果たしていたのかもしれません。

 平野聡氏は、なぜ「儒学と漢字を共有せず『東アジア世界』に属するとは言えないモンゴル・チベット・トルコ系ムスリムが『漢民族とその文化を中心とする中華民族』の不可分の一体として組み入れられ、宗教的・民族的な緊張が続いてきたのか」という問いを提起しています。

 そして、そこには清帝国の支配地域という歴史的経緯があり、「ヨウ正帝・乾隆帝という独裁君主によって打ち出された『中外一体』『皇清の大一統』概念の中に、統合と紛争の二つの契機が内在していた」と指摘するのです。

 つまり清帝国の支配には、「文化的多元性の承認による多民族統合」の側面と、「近現代の領域主権国家を準備する事実上の排他的領域形成」の側面の両面があった、ということです。そして平野氏は、「清帝国の統治実績に加えて、国際環境の追い風が存在したゆえに、膨大な非儒学・非漢字文化圏が、漢民族の文化的価値を強調する近代中国ナショナリズムの下に帰属することになったと考えられる」と指摘しています。

 実際、中華民国も中華人民共和国も清帝国の版図を継承しようとし、それをかなりの程度実現してきました。旧版図であるチベットやウイグル、台湾などに対して、中国政府は独自のネイション形成の動きを厳しく警戒しています。そしてその際には、分裂は許さないとするこだわりが表面化するのですが、それはつまり統一へのこだわりが強いということでしょう。しかしなぜ、統一は死守されねばならないのでしょうか。

 統一というテーマは、ドイツ、イタリア、アラブ、中央アメリカの事例にも出てきますし、そのそれぞれにこだわりがあります。しかし中国の事例においては、このこだわりが突出して強く、それゆえここに、最も重大な争いの原因があるのだと思います。国内の統一を欠いたがゆえに、清帝国も中華民国も諸外国に攻め込まれ、滅亡の実感を多くの人に抱かせたからかもしれません。文明国としての自負心を深く傷つけられたこともあるでしょう。


著者の専攻は政治思想史・ナショナリズム論とのことであるが・・・
この学者から見ても、昨今の突出する中華ナショナリズムは異常に映るようです。
つまるところは、コンプレックス、屈辱感なのではないか?


・・・できるだけ軟着陸を願うわけであるが、著者はその処方箋を次のように述べています。

<ナショナリズムの季節> よりp247~250
 日本の政治状況は、現在の中国の政治状況とは大きく異なっています。現在の中国には中国共産党があり、すべての政治勢力を横につなげて、共産党主導の政治を行っているからです。ただ、上からの統制を強化すれば経済発展の前途が危うく、民主化を促進すれば下の不満の暴発が危うい状況ではあります。すでに共産党への信頼は根本的に揺らいでおり、国民の不満は膨大に蓄積してしまいました。共産党主導の政治を今後も進めていくのは、きわめて困難な道筋となります。

 いずれにせよ、昭和戦前期の日本と現在の中国に共通して見えるのは、ナショナリズムの盛上がりということです。第一章で紹介したフリードリヒ・マイネッケは、1924年に『近代史における国家理性の理念』という大著を刊行し、軍国主義とナショナリズムと資本主義の三つの力が合成されると、政治指導は翻弄されて国家は危機に陥ると指摘しました。それはヨーロッパ諸国と日本で20世紀前半に生じた現象だったのですが、現在の中国にも生じているように思います。
 そしてナショナリズムについて考えると、わたしは、その盛上がりに季節があるのではないかと思います。すなわち、近代化が中途半端な時期にこそ、ナショナリズムは盛り上がるのではないかと思うのです。それは簡単に言えば、普通の人が外国のことを知っていても、現実にはまだ行ったことがない時期です。近代化が成功して強大化した実感はあるものの、自分自身の生活に関して言えば、まだそれほどでもない、という頃合いになります。
 ネイションへのこだわりが大衆にまで普及し浸透するこの時期は、力強さと一体性へのこだわりが強くなり、ネイションにすがって暮らしを良くしてもらおうと期待しがちな時期なのです。

 中国は、経済発展の成功によって今やこの時期に到達しているのではないでしょうか。そしてそうであれば、現在の中国のナショナリズムの盛り上がりは、今後も続いていくと判断すべきでしょう。しかも近代化の中途半端さは、人心を攻撃的にして、力への期待と過信をもたらしがちです。中国発のナショナリズムの連鎖反応が起きる可能性が、東アジアから東南アジアにかけて高まっている、と思います。

 それではどのようにして、この季節を乗り切っていくべきでしょうか。
 (中略)

 この争いをさらなる活力へと転化できるかどうか。これが、ネイションの運命を決定的に左右します。国家が強大化するにつれて、国家の権力を握った人間たちが絶対的に優位な立場を占めるようになりますが、だからといってネイションの活力を削いでしまうと、国家は衰退してしまいます。そしてここで、民主主義の仕組みを上手に利用できるかどうかが決定的に重要となるのです。

 中国国家が中国ネイションの活力を高めていくためには、どうしても、民主主義の仕組みを取り入れていくことが不可欠です。ただしそのためには、情報の自由な流通が必要となります。このハードルは高いと思いますが、盛り上がりすぎるナショナリズムの暴発を予防するために、長期的にはこうするしかないのではないでしょうか。

中国が近代化の中途半端な時期を迎えていると、著者は述べています。
ちょうど、戦前の日本がこの時期を経たわけであるが・・・
中国と戦いながら、大東亜共栄圏という夢を掲げ、国内では言論統制で引締めていたわけです。まったく、今の中国と相似形ですね。

大儀なきニッポンは、ABCD包囲網にさらされて、無茶な開戦に走った(陥った?)わけであるが・・・
このように痛い目に会わないと、独善的な思考方法は改まらないのか?







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Last updated  2014.10.23 05:39:19
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