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2015.02.10
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『歴史の中で語られてこなかったこと』という本を手にしたのだが・・・


冒頭の対談テーマが「映画『もののけ姫』をめぐって」となっていて・・・
『無縁・公界・楽』よりは、読みやすそうなので借りたわけです。


【歴史の中で語られてこなかったこと】
歴史

網野善彦, 宮田登著、 洋泉社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
歴史民俗的な視点で日本列島の歴史を遡っていくと、養蚕と織物の世界では女性が、未来を予見する民俗行事では子供たちが重要な役割を担っていた。さらに、社会の調整役としての「老人力」が、陰から歴史を動かしていたのだ。彼女、彼らの存在抜きには、もう歴史を語ることができない。歴史学と民俗学の泰斗が語り尽くした目からウロコの歴史世界。

<読む前の大使寸評>
冒頭の対談テーマが「映画『もののけ姫』をめぐって」となっていて・・・これが図書館で借りる決め手になりました。

なお、借りたのは2001年刊の旧版です。

rakuten 歴史の中で語られてこなかったこと


百姓のなかにも商人や職人が居たことなどについて、 歴史の中で語られてこなかったこと1 で紹介したので、その後読んだ箇所を追加して紹介します。

柳田民俗学、民具学、日本常民文化研究所と歴史学の関係、そして歴史学のあり方が語られています。

<「もの」を無視した民俗学> よりp153~156
宮田:民具学という言い方をしているんでしょうが、その前の柳田国男とか折口信夫とか渋沢敬三といった草創期の人々の当時の問題意識の持ち方が、後世の個別分散化の方向につながったように思えます。たとえば柳田国男のやらないことを押さえようというのが渋沢さんや折口さんにもありますし、柳田さん自身が、あれは折口さんがやっている、渋沢さんがやっているという言い方で避けているんですね。それはやむを得ないことだと思うんですが・・・。

 柳田民俗学の中で漁業の研究は、もっぱら不浄とか浄という観念の、農民にないものを漁民が持っていて、具体的には漁村では、出産のときの女の人の穢れの期間が農村よりもはるかに長いということがある。そして漁民の日常生活の生業形態、労働の危険性がもたらす不安感とそれに対応する神の関係が、農民の信仰とは違ったタイプであるとする漁民の精神構造の研究が先行してくる。

 そこでは網野さんのおっしゃるとおり、技術的な問題はたぶん足りないでしょうが、桜田勝徳さんとか亀山慶一さんらが精神史と技術史の両方の接点をいこうと考え仕事をしています。こうした面からいうと、渋沢さんの、たとえば『塩俗問答』は、日本人の塩を使う民俗における浄めの観念と関わるんです。

 塩を売り歩く行商の生態的な面もあると思いますが、こうした問題が研究されたことはすぐれて柳田民俗学的な視点が用意されていたことを示しています。
 民具学というと、要するに道具を集めてくるという誤解が先行してしまって、文化財保存的な意味にのみとらわれがちです。ものを分類して保存するということは、博物館のいちばん基礎的な仕事に関わっているんだということになっている。しかしたとえば猟(漁)をする行為は、漁業の漁と狩猟の猟に関わる。そこで山と海が文化的につながるというかたちでとらえてくる。海側に漂着した人間が、平地を飛びこして山に入っていくと、どのような生活を作っていくかということとか、神観念の平地民との違いも問題になる。

 ここには壮大な文化交流史が生まれてくる。そういうことを渋沢さんは考えていたのではないか? あるいは宮本さんはこうしたかたちでどんどん領域を拡げていったのではないかと思うんですが、どうでしょうか。それはもちろん歴史学的なアプローチがなくてはできない仕事です。

 日本常民文化研究所が折り目を迎えたとするならば、若い世代を今後吸収していくような方向を持つかどうかに関わるはあずです。
 民俗学がものを無視したがために、祖霊信仰説で頭打ちになって動きが鈍ってしまった。民具を中心に民俗を構成する視点から日本の歴史全体を体系化できるということを、既成の民俗学や歴史学を批判されながら主張されるのが、網野さんではないかと思うんです。どうも野次馬的な言い方で恐縮ですが。

網野:そんな資格も力量も私なんかには全然ないですよ。しかし先ほど職人集団の問題が民具に関係して出てくると言ったんですが、日本常民文化研究所に多少とも関わっているかぎり、民具学に対して歴史学がどう対応したらいいかは、やはり考えざるを得ないですね。

 最近、歴史学もようやく絵巻を資料として本気であつかうようになってきましたが、この分野はやはり渋沢さんの着眼で、日本常民文化研究所の人たちが戦前から研究してきたわけで、それが『絵巻物による日本常民生活絵引』(平凡社)として結実しているんです。この仕事に見られるような渋沢さんや宮本さんの視野の広さで、今後歴史学も民具学も考えていかねばならないことはいうまでもない。まだまだ研究すべき余地はたくさんあるのですが、歴史学の本来の史料である文献でなにができるのか、ということですね。

 実は河岡武春さんから最近「中世史はどうやって民具学に協力していただけるのでしょうか?」と聞かれましてね。さて困ったと考えてみたんです。
 ただ、まったく手がかりがないというわけでもない。中世文書の中に、時々、罪を犯した武士や百姓の家が差し押さえられたとき、あるいは不法に家財が奪い去られたときに、追捕注文とか雑物注文とかいう財産目録が作られるんです。余りたくさんは残っていないんですが、それには庶民の家財の中で、大切だと見られているものはすべて書きあげられるわけです。それを集めて並べてみたらどうかと思ってやってみたんですが、これはそれなりの意味がありそうです。

 まず、武具、弓矢、刀が出てくる。この程度の武具を、庶民はみんな持っていますね。つまり武装できるわけです。それから犂や鍬、斧のような道具、それから帷や小袖、小袖には布小袖とか縫小袖、絹小袖などがあるんです。このへんも民具の研究と関係が出てきそうですね。


つくも神という神様までいる日本は八百万の神の国なんでしょうね。
今後の民俗学や民具学が、どうあるべきかについて語られています。

<民俗学と民具学の「不幸」> よりp157~158
網野:最近、宮田さんは柳田民俗学の批判的発展という観点から、都市民俗を取り上げておられますが(『都市民俗論の課題』未来社)、民具と職人の問題とも関連してくると思うので、ご自身の最近の構想や今後の民俗学がどうあるべきかについてのお考えをお聞きしたいのですが・・・。

宮田:今おっしゃった道具の問題で、最近、小松和彦さんが付喪神という妖怪を取り上げている。つまり道具の化け物ですね。それを室町時代のデータで説明しているんです。民俗学の例からも道具にともなう霊的なものがあって、妖怪になってあちこちに出現する例があるんです。家の中の器材はお膳とかお椀が多いんですが、それが踊りだすというのは特別な霊力が働いたことになる。柳田さんは、膳椀を作った職人は山の民で、彼らが農民の日常の場に入ってきた。そして朱塗りのお膳や椀が家の宝になる。椀貸し伝説を背景に持った木地屋の力が背景にあることを指摘している。

 山人の作ったものが里に入ってくると、里の人間はそれらに対して畏怖感を持つ。道具そのものに対して霊的なものを感ずれば、それを家財として文献に残しておかなくてはならないということになる。そこで記録に残すわけです。無用なものは捨ててしまうわけですが、道具が保存されると、それにともなって器物の霊力が妖怪となり、つくも神という名称を持つわけです。これはものと人間の精神史を考えるうえで重要なデータだと思われます。

 問題が民俗学と民具学の共通の話題となって出てくるわけです。柳田民俗学と民具学は、組織が別であったと因縁がそのまま今でも続いていてはよくないわけですよ。それが解消されていくような研究課題が設定されなければならない。ものを知らない民俗学と、カミを抜きにした民具学という割り切り方でいくのは、そもそも不幸だと思います。そういった方向がなくなっていく可能性はあるのではないか。若い世代も生まれつつあるという気がするわけですがどうでしょう。河岡さんや網野さんがもっとラッパを吹かれるといいのでは(笑)・・・。



南方熊楠を最初に見出した渋沢さんが、偉かったようです♪

<博物館構想> よりp225~228
宮田:もうひとつ、渋沢自身はもう少し突っ込んで、たとえば博物館構想を持っているんです。延喜式博物館、野外博物館とか・・・。一部は国立民族学博物館につながるわけですが、民博だって、渋沢さんの、ああいう文化史的な背景を生かしている博物館とはいえないですね。歴史性は無視されている。

網野:民博は成功した方でしょう。渋沢さんは、自分の集めた蔵書や資料を決して自分で抱え込もうとはしなかったんですね。それを種にしてあとは国や自治体でやれというやり方で一貫してきたのだと思いますよ。民博もそれでできたのではないかと思います。文部省史料館、今の国文学研究資料館も、渋沢さんの蔵書が種になっている。水産庁の水産資料館も同様なんですね。

(文字数制限により省略、全文は ここ )



柳田民俗学、民博、宮本常一、南方熊楠など、大使のツボを突いていて、読みどころの多い本なのですが・・・・
このあたりできりあげます。

ついでに、先日読んだ網野さんの名著『無縁・公界・楽』の読書フォームを付けておきます。

【無縁・公界・楽】
無縁・公界・楽

網野善彦著、平凡社、増補版1996年刊

<「MARC」データベース>より
近代から古代まで遡り、駆込寺や楽市など多様な領域に、人間の本源的自由に淵源する無縁の原理の展開をよみとる。日本歴史学の流れを捉え換えた画期的な名著。

<読む前の大使寸評>
無縁・公界・楽という三つのキーワードが、何やら断定的であり・・・・気になるわけです。
<図書館予約:(11/29予約、12/07受取)>

Amazon 無縁・公界・楽
無縁・公界・楽 byドングリ






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Last updated  2015.02.10 19:56:32
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