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2015.06.26
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カテゴリ: 歴史
図書館で予約していた『イチョウ 奇跡の2億年史』を手にしたが・・・
予想していた以上に分厚い本であった。

とにかく、一つの樹種で、なぜこれだけ分厚い本になるのか?

葉っぱフェチの大使は、当然として樹木に関心があるのだが、一つの樹種で、これだけ分厚い本を見たのは初めてなんで・・・
著者のこだわりも含めて、興味深いのです♪


【イチョウ 奇跡の2億年史】
イチョウ

ピーター・クレイン著、河出書房新社、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
長崎の出島が悠久の命をつないだ!ヒトの役に立ち、敬われてきたからこそ、この愛すべき樹木がたどったあまりに数奇な運命!2億年近く生き延びたあとに絶滅寸前になったイチョウは、人間の手で東アジアから息を吹き返した。その壮大な歴史を、科学と文化から描く名著。

<読む前の大使寸評>
人類の過去の記憶、過去のDNAに寄り添うようなイチョウがええなぁ♪

葉っぱフェチの大使は、当然として樹木に関心があるのだが、一つの樹種で、これだけ分厚い本を見たのは初めてなんで・・・
著者のこだわりも含めて、興味深いのです♪

<図書館予約:(12/03予約、6/21受取)>

rakuten イチョウ 奇跡の2億年史


この本は日本人の業績に多くを割いているので、日本人読者にとって興味深いわけです。

<泳ぐ精子>よりp93~96
 そのイチョウは江戸時代からあった。明治時代になって東京大学教授に任命された伊藤圭介は、着任する前からこの木のことを知っていたはずだ。伊藤はシーボルトの教え子だった。いまでは樹齢300年、樹高80フィート(24m)になったこのイチョウは、1923年の関東大震災も、第二次世界大戦の東京大空襲も生き延びた。そしてこの気高い老雌木は、日本の近代科学発展にかけがえのない貢献をした。
 小石川植物園は、かつて徳川幕府の薬草園だったところに設立された。1868年、日本の激動期にここの土地は明治新政府に移管され、できたばかりの東京大学の付属植物園となった。
(中略)

 ドイツ人植物学者エドアルド・シュトラスブルガーは、1890年代にイチョウの生殖について関心をもちはじめた。ウィーン大学の植物学教授リヒャルト・フォン・ヴェットンシュタインは、同大学のイチョウの種子(胚珠)をシュトラスブルガーに送った。何十年も前にジョセフ・フォン・ジャカンが雄木に雌木の枝を接ぎ木した、あのイチョウにできた種子だ。種子は6月から9月初旬にかけて2週間おきに送られた。シュトラスブルガーはそれを題材に、イチョウの有性生殖のあれこれを記載した。しかし、彼の記録には重要な点が欠けていた。その穴をすぐさま埋めたのが、小石川植物園で働いていた平瀬作五郎である。

 平瀬は熟達した技術者で画工であった。1895年、彼はイチョウの種子内で胚がどのように発生するのかを詳細に報告して発表した。そして1896年の夏じゅう、平瀬は小石川のイチョウに育つ種子を採取しては精査するという研究をくり返した。その年の9月9日、彼はそれ以前の研究者が見つけられないでいたイチョウの有性生殖の最終段階を、はじめて観察した人物になった。

 平瀬が見たものは、植物学の世界を震撼させた。珠孔液に付着して種子(胚珠)内にとりこまれた花粉粒は、種子の先端にある組織の中で根のような管を一本、伸ばしていた。種子内にぶらさがる形になっているその管の、根元のふくらんだところには、一対の大きな精子細胞が種子先端の空洞内に放出されるところを見たのだ。精子は、数千の繊毛をらせん状の帯にしたものを同期させて動かし、短い距離を泳いで卵に到達した。

 この奇妙な受精方法は当時知られていたほかのどんな植物の受精方法とも違う、と平瀬はすぐさま気づいた。精子が泳ぐ場面はシダ類やコケ類などではよく知られていたが、それまで種子植物で観察されたことはなかった。

 平瀬の発見から二ヶ月もしないうちに、ソテツで同じく泳ぐ精子の観察が報告された。発見者の池野成一郎は帝国大学農科大学に所属しており、平瀬の研究を手助けしていたこともあった。どちらの発見も画期的で、日本人科学者の名が国際舞台にのぼる最初の二つの研究成果となった。1897年、池野と平瀬は研究結果を英語の共著論文にして世界に向けて発表し、1912年には二人そろって帝国学士院恩賜賞を受賞する初の生物学者となった。
 植物の進化を探るという点で、池野と平瀬の発見は予期せぬ突破口を開いた。それ以前は、イチョウやソテツの受精は針葉樹と同じ方法なのだろうと思われていた。花粉粒から伸びる管を通して精細胞が卵に届けられる、という方法だ。泳ぐ精子が発見されたということは、イチョウとソテツの生殖方法は針葉樹よりシダ植物に近いことを意味する。これは、植物進化の初期においては生殖に水が必要だったことを思い起こさせる。


長田敏行・東大名誉教授の解説の一部を紹介します。

<解説>よりp341~342
 イチョウは日本中いたるところにあり、1000年余を経たといわれる大木もあちこちに見られるので、日本にもかつて自生していたがいったん途絶えて、中国から導入されたものであると説明されても、にわかには信じられない方も多いのではないかと思う。

 実際、街路樹としては最も好まれ、日本中に55万本余植えられている。さらに世界に目を向けると、イチョウは今や極地と熱帯圏を除いて各地に広く植えられているが、これも不思議である。

 そのイチョウは二億年前に誕生し、中生代の後半には世界中に広く分布しており、きわめて多様な種分化をしていたことが知られている。ところが、新生代に入るとともに衰退し、中国南西部に一種類のみ残った。そのイチョウが日本へ持ち込まれて繁栄し、そして世界へ広がっていったことは、それ以上の不思議である。

 世界中へ展開して入った過程は、専門家はともかく一般的にはそれほどよく知られていることではないだろう。そのストーリーの全容を示してくれるのが本書である。

 このようなテーマを幅広い読者層に対して語るのに、ピーター・クレイン博士以上に適切な人はいないであろう。いやクレイン卿と呼ぶべきであろうが、ここではイギリスの習慣に従って、サー・ピーターと呼ばせていただく。

 サー・ピーターの現職は、アメリカ・アイビーリーグの雄イェール大学の林学・環境科学部長である。もともと古生物学を専攻していたが、本書でも重要なテーマである分岐分類学の発展にも尽力され、それを武器に、チャールズ・ダーウィンによって「忌まわしい謎」と呼ばれた被子植物の成立とその後の発展に関する究明に大きく貢献された。

 そのような業績から、世界で最も著名で影響力のある植物園、イギリス王立キュー植物園の園長に選任されて7年間務められた。研究上の成果のほかに、世界の生物多様性保全への指針の策定にも大きく貢献し、また、ミレニアム・プロジェクトの推進者としても力を尽された。このため2004年には爵位を得ている。


イチョウ 奇跡の2億年史(1)
イチョウ 奇跡の2億年史(2)
イチョウ 奇跡の2億年史(3)





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Last updated  2015.06.26 22:56:56
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