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2015.09.02
XML
カテゴリ: 歴史
図書館でモ-ス著『日本その日その日1』という本を手にしたのです。
活字が小さくびっしりで訳文も古めかしい本なのだが・・・とにかく写生図が多い本である。
この「何でも見てやろう」精神がいいではないか♪


【日本その日その日1】
日本

エドワ-ド・シルヴェスタ-・モ-ス著、平凡社、1989年刊

<「BOOK」データベース>より
古書につきデータなし

<読む前の大使寸評>
活字が小さくびっしりで訳文も古めかしい本なのだが・・・とにかく写生図が多い本である。
この「何でも見てやろう」精神がいいではないか♪

wikipediaを見ると、18歳で博物学協会へ入会したとあるが・・・その資質が表れた日記なんでしょうね。

rakuten 日本その日その日1


まず、モースさんをwikipediaで見てみましょう。

wikipedia エドワード・S・モース より
モース

 エドワード・シルヴェスター・モース(1838年6月18日 - 1925年12月20日)は、アメリカの動物学者。標本採集に来日し、請われて東京大学のお雇い教授を2年務め、大学の社会的・国際的姿勢の確立に尽力した。大森貝塚を発掘した。日本に初めて、ダーウィンの進化論を体系的に紹介した。

 メイン州ポートランドに生まれた。高校は入退学を繰り返し、製図工の勤めも長続きしなかったが、13歳ごろから採集し始めた貝類の標本は、学者が見学にくるほど充実していた。1854年、18歳で博物学協会に入会し、1857年に新種のカタツムリを協会誌上に報告した。


7頁にもわたる長い緒言の冒頭のあたりに、この本の成り立ちが出ています。

<緒言>p19~21
 私が最初日本を訪れた目的は単に日本の近海に産する腕足類の各種を研究するだけであった。それで、江ノ島に設けた小さな実験所で仕事をしている内に、私は文部省から東京の帝国大学で動物学の講座を受持つ可く招聘された。

 殆ど4年日本にいた間、私は国へ送る手紙の重複を避ける為に、毎日日記をつけた。私の滞在の一期限は、後になって発表してもよいと思われた題目に関する記録が出来上がらぬ内に、終わってしまった。が、これは特殊な性質を持っていたのである。即ち住宅およびそれに関係した緒事物の覚書きや写生図だった。

 これ等の防備録は私の著書『日本の家庭及びその周囲』の材料になったのである。この理由で、本書には、この前著に出ている写生図の少数を再び使用した以外、家庭住宅等に関する記述は極めて僅かしか出て来ない。また私は私が特に興味を持っている問題以外に就いては、記録しようとも、資料を募集しようとも努めなかった。日本の宗教、神話、民話等に大した興味を持たぬ私は、これ等を一向研究しなかった。また地理にも興味を持っていないので、横切った川の名前も通過した地域の名も碌に覚えなかった。
(中略)

 私が何等かの、時には実に些細なことの、覚書きか写生かをしなかった日とては1日もない。私は観察と同時に興味ある事物を記録することの重大さを知っていた。そうでないとすぐ陳腐になってしまって、目につかぬ。

 ブリス・ペリー教授は彼の尊敬すべき著述『パーク・ストリート・ペーパーズ』の中で、ホーソンがまさに大西洋を渡らんとしつつある友人ホレーシオ・ブリッジに与えた手紙を引用している。曰く「常に、君の心から新奇さの印象が消えぬ内に書き始めよ。そうでないと、最初に君の注意を引いた特異な事物も、記録するに足らぬ物であるかのように思われやすい。しかもこのような小さな特異な事柄こそ、読者に最も生き生きとした印象を与える、大切なものなのである。最小限度に於いてでも特質を持っている物ならば、何物をも、記録すべくあまりに軽少だと思うなかれ。君はあとから君自身の旅行記を読んで、このような小さい特異性が如何に重大な、そして描写的な力を持っているかに驚くであろう。」

 本書にして若し価値ありとすれば、それはこれ等の記録がなされた時の日本は、数世紀に亘る奇妙な文明から目ざめてから、数ヵ年を経たばかりだという事実に立脚する。

 その時(1877年)にあってすら、既に、軍隊の現代的調練、公立学校の広範な制度、陸軍、財政、農業、電信、郵便、統計等の政府の各省、及び他の現代的行政の各官署といったような変化は起こっていて、東京、大阪等の大都会には、これ等新制の影響が僅かに見られた。それは僅かではあったが、しかもたった数年前、武士がすべて両刀を帯び、男子がすべてちょんまげに結い、既婚婦人がすべて歯を黒くしている頃の、この国民を見た人を羨ましく思わせる程、はっきりしていた。だがこれ等外国からの新輸入物は田舎の都会や村落を、よしんば影響したにせよごく僅かしか影響しなかった。

 私の防備録や写生図の大部分は田舎に於いてなされた。私が旅行した地域の範囲は、北緯41度に近い蝦夷の西岸オタルナイから31度の薩摩の南端に至るといえば大略の見当はつくであろう。これを私は主として陸路、人力車ならびに馬によった。私の記録や写生図の大部分は1千年前につくられた記録と同じであろう。事実、この国は『土佐日記』の抄本が、私が毎日書いていた所のものによく似た光景や状態を描いている程、変化していなかったのである。


それでは、写生図がちりばめられた日記の冒頭あたりを見てみましょう。
モースさんは、この調子でえんえんと綴るのであるが・・・
その好奇心と持続力にはおそれいるのです。

<1877年の日本-横浜と東京>p6~7
 朝飯が終わるとすぐに我々は町を見物に出かけた。日本の町の街々をさまよい歩いた第一印象は、いつまでも消え失せぬであろう。―不思議な建築、最も清潔な陳列箱に似たのが多い見馴れぬ開け放した店、店員たちの礼儀、いろいろなこまかい物品の新奇さ、人々の立てる奇妙な物音、空気を充たす杉と茶の香。

 我々にとって珍しからぬ物とては、足の下の大地と、暖かい輝かしい陽光とくらいであった。ホテルの角には、人力車が数台並んで客を待っていたが、我々が出て行くや否や、彼等は「人力車?」と叫んだ。我々は明瞭に要らぬことを表示したが、それにも拘わらず二人我々についてきた。

 我々が立ち止まると彼等も立ち止る。我々が小さな店をのぞき込んで、何かを見て微笑すると、彼等もまた微笑するのであった。私は彼等がこんなに遠くまでついて来る忍耐力に驚いた。何故かなれば我々は歩く方がよかったから人力車を雇おうと思わなかったのである。しかし彼等は我々よりも、やがて何が起こるかよく知っていた。

 歩き廻っているうちに、くたびれてしまうばかりでなく、路に迷いもするということである。果たしてこの通りのことが起こった。一歩ごとに出くわした、新しいこと珍しいことによって完全に疲労し、路に迷い、長く歩いて疲れきった我々は、よろこんで人力車に乗って帰る意志を示した。

 如何にも弱そうに見える車に足をかけた時、私は人に引かれるということに一種の屈辱を感じた。若し私が車を下りて、はだしの男と位置を代えることが出来たら、これ程面食らわずに済んだろうと思われた。

 だが、この感はすぐに消え去った。そして自分のために一人の男がホテル迄の道のりを一休みもしないで、自分の前を素敵な勢いで駆けているということを知った時の陽気さは、この朝の経験の多くと同様に驚くべきことであった。

 ホテルへ着いた時、彼等は十セントとった。この為に彼等は朝半日を全くつぶしたのである!かかる人々の驚くべき持久力はまさに信用できぬ程である。彼等はこのようにして何マイルも何マイルも走り、しかも疲れたらしい容子もしないということである。


明治維新という激動期の日本と該博なモースが出合ったことは理想的なマッチングだったようです。

<解説:藤川玄人>p250~251
 モースは、1862年に腕足類に関する最初の論文を発表したが、その研究を深める目的で、腕足類を多産する日本へやってきた(1877年6月18日)のが、日本と直接に関係を持つに至った契機となる。

 その日、横浜から当時の新橋までの途中、大森に貝殻が捨ててあるのを汽車の窓から見付け、太古人が食べて捨てた貝塚であることを知り、直ぐに調査を始めて、これが貝塚であることを突きとめたことは、周知の事実である。

 この貝塚の発見は、後に『大森介墟編』として、当時の東京大学理学部のメモアに発表されたが、これが日本での考古人類学の嚆矢である。これに続いて、東京近郊に多くの貝塚が発見され、またこれを探す人も増して、全国いたる所に発見されることになる。日本でも、太古は欧米人と同様、貝類を多く食べたことが分かったが、これと同時に石器なども多く見付けられ、日本にも石器時代の人間が住んでいたことが分かった。

 そればかりでなく、石器と共に人骨も獣骨も多く発見され、人骨の中には打ち砕かれたものもあって、昔、日本の島々に住んでいた人間が人の骨髄をとり出して食べたものであるから、これらの人びとは食人種であった、とモースは結論した。

 このように大森の貝塚の発見は、彼の興味を生物学から人類学へと大転換させる契機となったが、それだけではなく、日米両国の学問文化の交流進展に多大な影響を与えたと言ってよい。300年の鎖国からやっと抜け出そうとしていた当時の日本にとって、考古学は全く未知の分野であった。

 腕足類が生物の進化の研究に如何に重要な意味を持つかを語るモースの熱意は聴く者をいたく感動させ、文部省は旬日を経ずして東京大学に動物学科を設置することを決定した。

 東京大学が総合大学として発足したのは、モースが来朝する2ヶ月前のことにすぎない。その前身の開成学校には、動物学と植物学は学科として設けられていなかった。

 人を逸らさぬモースの話術と柔らかい肌触り、そして何よりもその該博な学殖は、関係者一同にモースを措いて初代教授の椅子につく適任者はないと確信させ、早速高給を以って就任を懇望した。モースはそのような意図から来日したのではなかったが、破格の待遇と豊富な腕足類の魅力、またまだ文明の洗礼を受けぬ日本の美しさが、予定外の教授就任を拒みきれなくした。かくして来日以来僅か3週間で、動物学科設立の契約をむすぶに至る。

 当時は外国人教師も教授と呼ばれていたから、モースは東京大学の初代動物学教授である。時に彼は39歳であった。






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Last updated  2015.09.02 01:14:58
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